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続編-ゴールデンウィーク編-
第24話『春の夜』
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夕食は予定通り、サクラ特製のハヤシライスと野菜サラダ。
デミグラスソースに牛肉や野菜の旨みが出ているのでご飯とよく合う。さすがはサクラと言える美味しさだ。和奏姉さんや小泉さんはもちろんのこと、うちの両親もハヤシライスの味を絶賛。そのことにサクラも喜ぶ。
昼から夕方までバイトしていたのもあり、1杯目はペロリと平らげ、2杯目も難なく食べられた。
また、小泉さんは持ち前の大食いを発揮し、俺よりも多い3杯のハヤシライスを食べていた。小泉さんの食べっぷりは見ていて気持ちいいと思えるほどだ。これでパワーを付けて、明日からの合宿を頑張ってほしい。
俺と小泉さんがたくさん食べると予想して用意していたのか、ハヤシライスのルーも白飯も足りなくなってしまうことはなかった。
「ごちそうさまでした! さすがは文香! 美味しかったよ!」
「美味しかったよね。たくさん食べていたね、青葉ちゃん」
「スプーンが止まりませんでしたよ!」
「2人に美味しいと言ってもらえて良かったです」
「美味しかったよ、サクラ。あと、後片付けは俺がやるよ」
「分かった。ありがとう。夕食前にお風呂のスイッチを押したから、もう入れると思う。2人ともさっそく入りますか?」
サクラのそんな問いかけに、和奏姉さんと小泉さんは笑顔で頷いた。
サクラと和奏姉さん、小泉さんがキッチンを出て行った後、俺は夕食の後片付けを始める。今も食卓で、赤ワインを呑みながら談笑する両親の話し声をBGMにして。
「息子の恋人やお友達とも一緒に食事して、たくさん話すと私も学生に戻った感じがするわ」
「そうだね。それを深く実感するってことは、それだけ僕らも歳を取ったんだなぁ」
「ええ。私達の高校時代はもう30年前だものね」
「もうそんなに経つのかぁ」
まあ、あなた達が30歳になる年に俺が生まれましたからね。そりゃ、あなた達の高校時代から30年経つでしょう。
「あと、和奏と文香ちゃんと青葉ちゃんを見ていると、学生時代に美紀ちゃん達とお泊まりしたことを思い出すわぁ。和奏達みたいに一緒にお風呂にも入ったっけ。お風呂とか、寝る前は恋バナをして。高校時代に徹君と付き合い始めてからは、徹君との話でも盛り上がることが多かったわぁ。美紀ちゃん達が色々訊くから、恥ずかしかったけど徹君とのあれこれを話して……」
うふふっ、と母さんの楽しげな笑い声が聞こえてくる。本人は恥ずかしいと言っているけど、きっと今みたいに、父さんとの惚気話を美紀さん達に楽しそうに話していたのだろう。
「休み明けになると、松倉達にニヤニヤしながら『優子ととってもラブラブなことをしているんだねぇ』って言われたことが多かったな」
「当時はごめんなさいね」
「最初は恥ずかしかったけど、徐々に慣れたさ。それに、今となってはいい笑い話だよ」
「そう言ってくれて助かるわ。……若い子達を見習って、今夜は私達も一緒にお風呂に入りましょう?」
「それは名案だね」
本当に仲のいい両親だ。付き合い始めた高校時代から何度もお互いの家にお泊まりして、一緒に入浴したこともあるらしい。当時のことを思い出しながら入るのだろう。
そういえば、今……サクラはお風呂の中で、和奏姉さんと小泉さんと俺絡みの話をしているのだろうか。夕方、一緒にベッドで寝る話をしたときは、顔を真っ赤にして恥ずかしそうだったけど。俺がいない場だと結構話せたりするかもしれないし。後片付けが終わったら、洗面所の前で聞き耳を立てて会話を聞いてみたいけど……そんなことをしてはダメか。
あと、ふと思ったけど、サクラ達はどこで寝るんだろう。小泉さんはサクラの部屋で寝るのは確実だとして。サクラの部屋や客間にあるふとんを敷いて、3人でサクラの部屋で寝るのかな。それとも、サクラか和奏姉さんが俺の部屋に来て、一緒にベッドで寝るのだろうか。あとで訊いてみるか。
「大輝。和奏達が出たら、次は大輝が入りなさい。父さん達はワインを呑んでいるから、少し酔いを醒ましてから入るよ」
「分かった」
ゆっくりと食卓の方に振り返る。夕食のときからお酒を呑んでいるからか、2人の頬はそれなりに赤くなっている。
「あと、サクラ達を見て懐かしい気分になれるからって、あまり呑みすぎないように気をつけろよ」
「ああ」
「徹君と一緒だから大丈夫だよ、大輝」
そう言って、母さんは幸せな様子で父さんに寄りかかっている。そんな母さんの頭を父さんは優しく撫でていて。息子ながら、この光景には微笑ましさを感じられた。
夕食の後片付けを済ませて、俺は2階にある自分の部屋に戻ろう……とするのだが、洗面所の前で勝手に歩みを立ち止まってしまう。
耳を澄ませると、洗面所の扉の向こうからサクラ達の声が聞こえてくる。何を話しているのかまでは分からないけど、笑い声が聞こえたり、声色も明るかったりするので、きっと楽しくおしゃべりしているのだろう。これ以上は詮索してはいけないな。
部屋に戻って、俺はベッドで横になりながら、読みかけのラブコメラノベを読み始める。ちなみに、この作品のヒロインの1人は幼馴染。サクラと恋人になってからも、幼馴染ヒロインは魅力的に思えるのだ。
――コンコン。
「はい」
ラノベを40ページほど読んだとき、部屋のノック音が聞こえた。サクラ達がお風呂から上がったのかな。
部屋の扉をゆっくりと開けると、そこには寝間着姿のサクラと和奏姉さん、小泉さんの姿があった。お風呂上がりなのもあり、みんなの頬はほんのりと赤くて、髪は湿っぽい。あと、シャンプーの甘い匂いや、ボディーソープのシトラスの香りが感じられる。
「ダイちゃん。お風呂空いたよ。優子さんに話したら、ワインの酔いを醒ましたいからダイちゃんが先に入ってって」
「ああ、分かった。……ところで、うちの風呂で3人一緒に入れたか?」
「入れたよ。窮屈には感じなかったですよね」
「体が触れちゃうけどね。たまにはこういうのもいいなって思ったよ。気持ちよかった」
「青葉ちゃんの言う通りね。ただ、3人が精一杯で、 4人一緒には入れなさそうかな……」
ちょっとしょんぼりしている和奏姉さん。どうやら、姉さんは明日、サクラと一紗、杏奈と一緒に入浴するつもりでいたようだ。3人で入るなら、一紗と杏奈と一緒に入ることになりそうかな。
この3人で窮屈に感じなかったのなら、俺とサクラと和奏姉さんが一緒にお風呂に入っても大丈夫そうな気がする。
「あと、今夜って3人はどこで寝るんだ? さすがに小泉さんはサクラの部屋で寝るだろうけど」
「青葉ちゃんがお泊まりに来ているし、私も自分の部屋で寝るよ」
「あたしも。青葉ちゃんと初お泊まりだからね。女子同士で語り合いたいこともあるし」
何を語り合うのか気になるけど、それは訊かないでおこう。
あと、サクラと和奏姉さんの今の言葉からして、明日は杏奈と一紗と4人でサクラの部屋で寝る形になるかな。
「分かった。じゃあ、俺もお風呂に入ってくるよ」
「うん!」
「あたし達は文香の部屋でゆっくりしているわ」
「お父さんもお母さんも結構酔っ払っていた感じだったから、ゆっくり入っても大丈夫だと思うよ」
「ああ、分かった」
俺は寝間着や下着など必要なものを持って、1階の洗面所へ向かう。
ただ、ついさっきまでサクラ達が入浴していたためか、洗面所の時点でシャンプーやボディーソープの匂いがほのかに香ってくる。さっきまで入浴していた人が誰か知っているから、ちょっとドキドキしてしまうな。
浴室に入ると、ボディーソープの残り香がはっきりとしており、鼻腔をくすぐってくる。
俺はバスチェアに座って髪や体を洗っていく。
付き合い始めてから、サクラとは何度もお風呂に入っている。その際、サクラと話しながら髪や体を洗うことが多い。なので、今日はとても早く洗い終えた感じがした。
湯船に浸かり、脚をゆっくりと伸ばす。
「あぁ、気持ちいい。……でも、こんなにうちの湯船って広かったっけ」
こう思うのも、最近はサクラと一緒に入浴することが増えたからだろうか。
ドキドキしながらもサクラと一緒に入るのもいいけど、こうして1人でゆっくりと入浴するのもいいと思える。
「でも、付き合う前まではこれが当たり前だったんだよな」
ただ、いつかはサクラと2人で入浴することが当たり前になって、1人で入浴することが珍しくなるのだろうか。そうなったとしたら、それはとても幸せなことだろう。
それからしばらくの間、俺は1人での入浴を堪能した。
風呂から上がると、サクラ達からの誘いで、サクラの部屋で4人とも好きなゲームをやったり、アニメを観たりして過ごすのであった。
デミグラスソースに牛肉や野菜の旨みが出ているのでご飯とよく合う。さすがはサクラと言える美味しさだ。和奏姉さんや小泉さんはもちろんのこと、うちの両親もハヤシライスの味を絶賛。そのことにサクラも喜ぶ。
昼から夕方までバイトしていたのもあり、1杯目はペロリと平らげ、2杯目も難なく食べられた。
また、小泉さんは持ち前の大食いを発揮し、俺よりも多い3杯のハヤシライスを食べていた。小泉さんの食べっぷりは見ていて気持ちいいと思えるほどだ。これでパワーを付けて、明日からの合宿を頑張ってほしい。
俺と小泉さんがたくさん食べると予想して用意していたのか、ハヤシライスのルーも白飯も足りなくなってしまうことはなかった。
「ごちそうさまでした! さすがは文香! 美味しかったよ!」
「美味しかったよね。たくさん食べていたね、青葉ちゃん」
「スプーンが止まりませんでしたよ!」
「2人に美味しいと言ってもらえて良かったです」
「美味しかったよ、サクラ。あと、後片付けは俺がやるよ」
「分かった。ありがとう。夕食前にお風呂のスイッチを押したから、もう入れると思う。2人ともさっそく入りますか?」
サクラのそんな問いかけに、和奏姉さんと小泉さんは笑顔で頷いた。
サクラと和奏姉さん、小泉さんがキッチンを出て行った後、俺は夕食の後片付けを始める。今も食卓で、赤ワインを呑みながら談笑する両親の話し声をBGMにして。
「息子の恋人やお友達とも一緒に食事して、たくさん話すと私も学生に戻った感じがするわ」
「そうだね。それを深く実感するってことは、それだけ僕らも歳を取ったんだなぁ」
「ええ。私達の高校時代はもう30年前だものね」
「もうそんなに経つのかぁ」
まあ、あなた達が30歳になる年に俺が生まれましたからね。そりゃ、あなた達の高校時代から30年経つでしょう。
「あと、和奏と文香ちゃんと青葉ちゃんを見ていると、学生時代に美紀ちゃん達とお泊まりしたことを思い出すわぁ。和奏達みたいに一緒にお風呂にも入ったっけ。お風呂とか、寝る前は恋バナをして。高校時代に徹君と付き合い始めてからは、徹君との話でも盛り上がることが多かったわぁ。美紀ちゃん達が色々訊くから、恥ずかしかったけど徹君とのあれこれを話して……」
うふふっ、と母さんの楽しげな笑い声が聞こえてくる。本人は恥ずかしいと言っているけど、きっと今みたいに、父さんとの惚気話を美紀さん達に楽しそうに話していたのだろう。
「休み明けになると、松倉達にニヤニヤしながら『優子ととってもラブラブなことをしているんだねぇ』って言われたことが多かったな」
「当時はごめんなさいね」
「最初は恥ずかしかったけど、徐々に慣れたさ。それに、今となってはいい笑い話だよ」
「そう言ってくれて助かるわ。……若い子達を見習って、今夜は私達も一緒にお風呂に入りましょう?」
「それは名案だね」
本当に仲のいい両親だ。付き合い始めた高校時代から何度もお互いの家にお泊まりして、一緒に入浴したこともあるらしい。当時のことを思い出しながら入るのだろう。
そういえば、今……サクラはお風呂の中で、和奏姉さんと小泉さんと俺絡みの話をしているのだろうか。夕方、一緒にベッドで寝る話をしたときは、顔を真っ赤にして恥ずかしそうだったけど。俺がいない場だと結構話せたりするかもしれないし。後片付けが終わったら、洗面所の前で聞き耳を立てて会話を聞いてみたいけど……そんなことをしてはダメか。
あと、ふと思ったけど、サクラ達はどこで寝るんだろう。小泉さんはサクラの部屋で寝るのは確実だとして。サクラの部屋や客間にあるふとんを敷いて、3人でサクラの部屋で寝るのかな。それとも、サクラか和奏姉さんが俺の部屋に来て、一緒にベッドで寝るのだろうか。あとで訊いてみるか。
「大輝。和奏達が出たら、次は大輝が入りなさい。父さん達はワインを呑んでいるから、少し酔いを醒ましてから入るよ」
「分かった」
ゆっくりと食卓の方に振り返る。夕食のときからお酒を呑んでいるからか、2人の頬はそれなりに赤くなっている。
「あと、サクラ達を見て懐かしい気分になれるからって、あまり呑みすぎないように気をつけろよ」
「ああ」
「徹君と一緒だから大丈夫だよ、大輝」
そう言って、母さんは幸せな様子で父さんに寄りかかっている。そんな母さんの頭を父さんは優しく撫でていて。息子ながら、この光景には微笑ましさを感じられた。
夕食の後片付けを済ませて、俺は2階にある自分の部屋に戻ろう……とするのだが、洗面所の前で勝手に歩みを立ち止まってしまう。
耳を澄ませると、洗面所の扉の向こうからサクラ達の声が聞こえてくる。何を話しているのかまでは分からないけど、笑い声が聞こえたり、声色も明るかったりするので、きっと楽しくおしゃべりしているのだろう。これ以上は詮索してはいけないな。
部屋に戻って、俺はベッドで横になりながら、読みかけのラブコメラノベを読み始める。ちなみに、この作品のヒロインの1人は幼馴染。サクラと恋人になってからも、幼馴染ヒロインは魅力的に思えるのだ。
――コンコン。
「はい」
ラノベを40ページほど読んだとき、部屋のノック音が聞こえた。サクラ達がお風呂から上がったのかな。
部屋の扉をゆっくりと開けると、そこには寝間着姿のサクラと和奏姉さん、小泉さんの姿があった。お風呂上がりなのもあり、みんなの頬はほんのりと赤くて、髪は湿っぽい。あと、シャンプーの甘い匂いや、ボディーソープのシトラスの香りが感じられる。
「ダイちゃん。お風呂空いたよ。優子さんに話したら、ワインの酔いを醒ましたいからダイちゃんが先に入ってって」
「ああ、分かった。……ところで、うちの風呂で3人一緒に入れたか?」
「入れたよ。窮屈には感じなかったですよね」
「体が触れちゃうけどね。たまにはこういうのもいいなって思ったよ。気持ちよかった」
「青葉ちゃんの言う通りね。ただ、3人が精一杯で、 4人一緒には入れなさそうかな……」
ちょっとしょんぼりしている和奏姉さん。どうやら、姉さんは明日、サクラと一紗、杏奈と一緒に入浴するつもりでいたようだ。3人で入るなら、一紗と杏奈と一緒に入ることになりそうかな。
この3人で窮屈に感じなかったのなら、俺とサクラと和奏姉さんが一緒にお風呂に入っても大丈夫そうな気がする。
「あと、今夜って3人はどこで寝るんだ? さすがに小泉さんはサクラの部屋で寝るだろうけど」
「青葉ちゃんがお泊まりに来ているし、私も自分の部屋で寝るよ」
「あたしも。青葉ちゃんと初お泊まりだからね。女子同士で語り合いたいこともあるし」
何を語り合うのか気になるけど、それは訊かないでおこう。
あと、サクラと和奏姉さんの今の言葉からして、明日は杏奈と一紗と4人でサクラの部屋で寝る形になるかな。
「分かった。じゃあ、俺もお風呂に入ってくるよ」
「うん!」
「あたし達は文香の部屋でゆっくりしているわ」
「お父さんもお母さんも結構酔っ払っていた感じだったから、ゆっくり入っても大丈夫だと思うよ」
「ああ、分かった」
俺は寝間着や下着など必要なものを持って、1階の洗面所へ向かう。
ただ、ついさっきまでサクラ達が入浴していたためか、洗面所の時点でシャンプーやボディーソープの匂いがほのかに香ってくる。さっきまで入浴していた人が誰か知っているから、ちょっとドキドキしてしまうな。
浴室に入ると、ボディーソープの残り香がはっきりとしており、鼻腔をくすぐってくる。
俺はバスチェアに座って髪や体を洗っていく。
付き合い始めてから、サクラとは何度もお風呂に入っている。その際、サクラと話しながら髪や体を洗うことが多い。なので、今日はとても早く洗い終えた感じがした。
湯船に浸かり、脚をゆっくりと伸ばす。
「あぁ、気持ちいい。……でも、こんなにうちの湯船って広かったっけ」
こう思うのも、最近はサクラと一緒に入浴することが増えたからだろうか。
ドキドキしながらもサクラと一緒に入るのもいいけど、こうして1人でゆっくりと入浴するのもいいと思える。
「でも、付き合う前まではこれが当たり前だったんだよな」
ただ、いつかはサクラと2人で入浴することが当たり前になって、1人で入浴することが珍しくなるのだろうか。そうなったとしたら、それはとても幸せなことだろう。
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