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続編-螺旋百合-
第12話『おはなしおかず』
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仁実さんと大学の正門で会ったときには時刻が正午近くだったので、大学の食堂でお昼ご飯を食べることになった。仁実さんのように大学を利用する学生さんがいるからか、夏休み中も営業しており、一般の人も利用できるとのこと。
食堂に行くまでの間に、智也さんに仁実さんと大学で会えたとメッセージを送った。すると、
『それは良かった。仁実ちゃんはどんな感じに成長しているんだろう』
『桃花ちゃんにとってはひさしぶりの再会だから、まずは仁実ちゃんと楽しい時間を過ごすのがいいんじゃないかな。今朝の桃花ちゃん、とても緊張していたし……』
というメッセージが届いた。何か機会があったら仁実さんの写真を撮って、智也さんへ送ることにしよう。
食堂に着くと高校の食堂よりも凄く広くて、驚きを越えて感動しかなかった。お昼時なので学生さんらしき人がちらほらといる。
私は海鮮パスタ、桃花さんはざるそば、仁実さんは生姜焼き定食を食べることに。さすがに大学の食堂だけあって、安価で食べることができる。
「あっ、このパスタ……とても美味しいです」
「そばも美味しいよ」
「うちの大学の麺類は美味しいからね。メニューは豊富だし、季節限定のメニューも出たり、郷土料理フェアとかもやったりするから食堂ばかりでも飽きないよ。おまけに安い」
「私が通っている大学の食堂もそうだなぁ。こっちは男子もいるからかボリュームたっぷりの料理もあるけれどね」
「へえ、そうなんだ。女子大だからなのか、量があまり多くなくてね。定食のご飯はいつも大盛りだよ」
そういえば、仁実さんのご飯の量……かなり多い。元々、たくさん食べるのかな。スラッとしているので、そんなイメージはないけど。
「高校だとこういった食堂はないのかな。あたしとモモちゃんが卒業した高校は食堂がなくて、購買部だったから」
「うちの高校には食堂がありますよ。友達と一緒にたまに使ってます。さすがにここまで立派じゃないですけど。お値段は……高校生価格と言えばいいのでしょうか」
「ははっ、高校生価格ってことは、ここよりももっと安いってことかな」
「ええ」
値段とかは関係なく、友達と楽しくお昼ご飯を食べているからかとても美味しい。前の高校では入学早々いじめられていたからかもしれないけど。
「それにしても、まさかモモちゃんがトモくんの恋人を連れて会いに来るなんてね。本当に驚いちゃった。こんなに驚いたの、トモくんが逮捕されたっていうニュースをスマホやテレビで観たとき以来だなぁ……」
「やっぱり、驚きましたか。智也さんが誤認逮捕されたこと……」
「もちろんだよ。あんなに優しくて、真面目で……好きなことになると熱中するようなトモくんが逮捕だなんて信じられなかった」
そのことを話す仁実さんを見ていたら、彼女から私と同じような匂いを感じた。一昨日、智也さんの実家で、桃花さんが智也さんを抱きしめていたところを見たときも同じような匂いを。
「そういえば、あのときはひとみんの方から電話がかけてきたよね」
「ま、まあね。ひさしぶりにトモくんの顔を見たのがあんな形だったのがショックだったからさ……」
警察に逮捕されちゃったら何もできないもんね。でも、何かをしたいと思って桃花さんに電話を掛けたのかもしれない。
「でも、トモくんが無事に釈放されて……美来ちゃんと幸せに暮らしているって分かって安心したよ」
「……はい」
私の知らないところで、智也さんを慕っている女性がいたことに戸惑いもあったけど、こんなにも智也さんのことを心配してくれていたことは嬉しい。
「話を戻そうか。ねえ、モモちゃん。この時期にトモくんの家に行ったのは、久しぶりにトモくんの顔が見たかったからなのかな?」
仁実さんは爽やかな笑みを浮かべながら桃花さんにそう問いかける。ただ、爽やかな笑みの中にある仁実さんの目つきはとても真剣なものだった。
「……もちろんだよ、ひとみん。誤認逮捕されたこともあってか、お兄ちゃんの顔を久しぶりに見たかったの。うちの大学も夏休みになって。お盆も過ぎて落ち着いたからさ」
顔を赤くしながら桃花さんはそう答える。今の内容は嘘じゃないけど、きっと仁実さんのことを想っているから赤くなっちゃうんだと思う。
「……そっか。モモちゃん、昔はトモくんにべったりだったもんね。美来ちゃん、そんな感じじゃなかった?」
「えっと……再会したときに智也さんのことをぎゅっと抱きしめていましたね。でも、小さい頃に遊んでいた従兄とひさしぶりに会ったら、多少は甘えてしまうのも仕方ないかと……」
正直、最初はちょっと嫌だなって思った。私より前に智也さんと出会っていて、私の知らない顔を桃花さんや仁実さんは知っていて。2人は智也さんに甘えて、一緒にいて。それがとても羨ましく思ったのだ。
でも、そんな彼女だからこそ、ひさしぶりに智也さんと再会すると甘えてしまうんだろう。その気持ちは私にもよく分かるから。
「ううっ、恥ずかしいな。一昨日、お兄ちゃんと再会したときに抱きしめなければ良かった……」
「気にしないでください。智也さんを抱きしめたくなる気持ちも分かりますし」
「……うん」
それだけ、智也さんが昔から素敵な人だった証拠なんだ。
「そういえば、美来ちゃんはどんなことがきっかけでトモくんと出会ったの? しかも、結婚を前提に付き合っているなんて」
「10年前に家族で遊園地に遊びに行ったら迷子になってしまって。そのときに智也さんと出会って、迷子になった私を助けてくれたんです。そのときに智也さんの優しさに触れてから、もう智也さんにゾッコンで。プロポーズをしました」
「それで、今年、10年ぶりに再会してまたプロポーズしたんだよね。16歳にもなっているし、結婚を前提に付き合うことになったんだって」
「へえ、そんな運命的なこともあるんだね。でも、迷子になっているところを助けたことがきっかけなのがトモくんらしいかも」
素敵だね、と言って仁実さんはご飯を食べ進める。仁実さん、さっきから本当に美味しそうにお昼ご飯を食べているなぁ。きっと、食べることが大好きなのだろう。
「でも、美来ちゃんはとても可愛いし、美人だからたくさん告白されたんじゃない?」
「ふふっ、桃花さんにも同じことを訊かれましたね。何度か告白されましたが、智也さん一筋だったので全て断りました。なので、恋人としてお付き合いしたことがあるのは智也さんだけです」
「なるほどね。美来ちゃんっていうここまで想ってくれる女の子がいるなんて、トモくんはとても幸せ者だ」
「……そうだね」
実際には有紗さんと恋の争いをしたけどね。私で良かったと智也さんや有紗さんに思ってもらえるように頑張らないと。
「それで、そんな2人が私に会いにやってくるなんてね。……何か企んでるの?」
まるで、仁実さんは私達の心を見透かしているようにニヤリとした表情を見せる。
「お、お兄ちゃんと美来ちゃんが同棲している家が桜花駅に近いって分かったから、じゃあ……突然会いに行ってひとみんを驚かそうかなと思って。まあ、結局、ひとみんが見つからなくて電話しちゃったんだけれど」
桃花さんは苦笑いをしながらそう言う。
「あと、紅花女子大学って名前は聞いたことはあったのですが、どんな雰囲気なのか一度キャンパスの見学をしたいと思っていて……」
とっさにそうフォローしてみる。ただ、紅花女子大学のキャンパスを一度見学してみたかったのは本当だ。進路のことは全然考えていないけど、文系の学部に進学すると決めたら、きっと選択肢の一つになると思うから。
「なるほどね。そういうことか。さっきの電話で十分に驚いたけどね。でも、キャンパスを見学したい美来ちゃんにとってはいいタイミングだったね。よし、じゃあ……お昼ご飯を食べたらキャンパス内をお散歩しようか」
「でも、茶道サークルの方は大丈夫ですか? 今日は集まりがあったんですよね?」
「ああ、そっちはもう終わったから大丈夫だよ。ただ、荷物は部室に置いてきてあるから、散歩の途中に行くことにしようか」
「分かりました、ではよろしくお願いします」
「うん。あと、今日はもう何にも予定がないから、キャンパス内の見学をしたら、私の家に行こうか。2人、一度はアパートに行ってくれたもんね。それに、うちにアルバムやDVDがあるからさ」
「そうなんですか! それは楽しみです!」
もしかしたら、まだ見ぬ智也さんの昔の姿があるかもしれない。何だか、キャンパス見学よりもそっちの方が断然楽しみになってきたよ!
「やっぱり、お兄ちゃんのことが大好きなんだね、美来ちゃんは。凄く興奮してる」
「もちろんですよ!」
「……何だか、トモくんと美来ちゃんが2人きりのときの様子が想像できるね。といっても、今のトモくんの姿が分からないけど」
「では、現在の智也さんの写真を」
私はつい最近撮影した智也さんの写真をスマホの画面に表示させて、仁実さんに見せる。
「へえ、これが今のトモくんなんだ。昔の面影は残っているね。何だか草食系イケメンって感じ」
「お兄ちゃん、今でもとても優しいよ。草食系かどうかは分からないけれど」
智也さん、普段は優しいけど、えっちのときは意地悪になることもあるから、草食系の雰囲気を纏った肉食系って感じかも。酔ったときはその肉食系の部分が垣間見える場面が多いから、そういうときの智也さんも好き。
「どうやら、美来ちゃんにしか見せない顔があるみたいだね、トモくんは」
「そんな感じがするね。結婚を前提に付き合っている子がいるんだから、お兄ちゃんもそういうところがあるよね。きっとそれは美来ちゃんも同じじゃないかな?」
「ま、まあ……智也さん以外に見られたら恥ずかしいときもある……かな?」
そう言って思い出すのはやっぱり……営んでいるときかな。あのときの姿は有紗さんであっても恥ずかしくて見せられないな。
「……きっと、トモくんを思い浮かべているんだよね。今の美来ちゃんの顔、凄く可愛いよ」
「あ、ありがとうございます……」
可愛いって言ってもらえるのは嬉しいけど、そういうことは桃花さんに言ってほしいよ。それに、何だか恥ずかしくなってきた。仁実さんは可愛いって言ってくれたけれど、きっと変な表情になっていると思うし。
そんな恥ずかしい気持ちを抱いたまま、私は残りの海鮮パスタを食べた。
その後、私と桃花さんは仁実さんの案内で大学のキャンパスを見学した。高校とは違った雰囲気であり、とても広い。智也さんと同級生か1年後輩で、一緒にキャンパスライフを送りたかったと思うのであった。
食堂に行くまでの間に、智也さんに仁実さんと大学で会えたとメッセージを送った。すると、
『それは良かった。仁実ちゃんはどんな感じに成長しているんだろう』
『桃花ちゃんにとってはひさしぶりの再会だから、まずは仁実ちゃんと楽しい時間を過ごすのがいいんじゃないかな。今朝の桃花ちゃん、とても緊張していたし……』
というメッセージが届いた。何か機会があったら仁実さんの写真を撮って、智也さんへ送ることにしよう。
食堂に着くと高校の食堂よりも凄く広くて、驚きを越えて感動しかなかった。お昼時なので学生さんらしき人がちらほらといる。
私は海鮮パスタ、桃花さんはざるそば、仁実さんは生姜焼き定食を食べることに。さすがに大学の食堂だけあって、安価で食べることができる。
「あっ、このパスタ……とても美味しいです」
「そばも美味しいよ」
「うちの大学の麺類は美味しいからね。メニューは豊富だし、季節限定のメニューも出たり、郷土料理フェアとかもやったりするから食堂ばかりでも飽きないよ。おまけに安い」
「私が通っている大学の食堂もそうだなぁ。こっちは男子もいるからかボリュームたっぷりの料理もあるけれどね」
「へえ、そうなんだ。女子大だからなのか、量があまり多くなくてね。定食のご飯はいつも大盛りだよ」
そういえば、仁実さんのご飯の量……かなり多い。元々、たくさん食べるのかな。スラッとしているので、そんなイメージはないけど。
「高校だとこういった食堂はないのかな。あたしとモモちゃんが卒業した高校は食堂がなくて、購買部だったから」
「うちの高校には食堂がありますよ。友達と一緒にたまに使ってます。さすがにここまで立派じゃないですけど。お値段は……高校生価格と言えばいいのでしょうか」
「ははっ、高校生価格ってことは、ここよりももっと安いってことかな」
「ええ」
値段とかは関係なく、友達と楽しくお昼ご飯を食べているからかとても美味しい。前の高校では入学早々いじめられていたからかもしれないけど。
「それにしても、まさかモモちゃんがトモくんの恋人を連れて会いに来るなんてね。本当に驚いちゃった。こんなに驚いたの、トモくんが逮捕されたっていうニュースをスマホやテレビで観たとき以来だなぁ……」
「やっぱり、驚きましたか。智也さんが誤認逮捕されたこと……」
「もちろんだよ。あんなに優しくて、真面目で……好きなことになると熱中するようなトモくんが逮捕だなんて信じられなかった」
そのことを話す仁実さんを見ていたら、彼女から私と同じような匂いを感じた。一昨日、智也さんの実家で、桃花さんが智也さんを抱きしめていたところを見たときも同じような匂いを。
「そういえば、あのときはひとみんの方から電話がかけてきたよね」
「ま、まあね。ひさしぶりにトモくんの顔を見たのがあんな形だったのがショックだったからさ……」
警察に逮捕されちゃったら何もできないもんね。でも、何かをしたいと思って桃花さんに電話を掛けたのかもしれない。
「でも、トモくんが無事に釈放されて……美来ちゃんと幸せに暮らしているって分かって安心したよ」
「……はい」
私の知らないところで、智也さんを慕っている女性がいたことに戸惑いもあったけど、こんなにも智也さんのことを心配してくれていたことは嬉しい。
「話を戻そうか。ねえ、モモちゃん。この時期にトモくんの家に行ったのは、久しぶりにトモくんの顔が見たかったからなのかな?」
仁実さんは爽やかな笑みを浮かべながら桃花さんにそう問いかける。ただ、爽やかな笑みの中にある仁実さんの目つきはとても真剣なものだった。
「……もちろんだよ、ひとみん。誤認逮捕されたこともあってか、お兄ちゃんの顔を久しぶりに見たかったの。うちの大学も夏休みになって。お盆も過ぎて落ち着いたからさ」
顔を赤くしながら桃花さんはそう答える。今の内容は嘘じゃないけど、きっと仁実さんのことを想っているから赤くなっちゃうんだと思う。
「……そっか。モモちゃん、昔はトモくんにべったりだったもんね。美来ちゃん、そんな感じじゃなかった?」
「えっと……再会したときに智也さんのことをぎゅっと抱きしめていましたね。でも、小さい頃に遊んでいた従兄とひさしぶりに会ったら、多少は甘えてしまうのも仕方ないかと……」
正直、最初はちょっと嫌だなって思った。私より前に智也さんと出会っていて、私の知らない顔を桃花さんや仁実さんは知っていて。2人は智也さんに甘えて、一緒にいて。それがとても羨ましく思ったのだ。
でも、そんな彼女だからこそ、ひさしぶりに智也さんと再会すると甘えてしまうんだろう。その気持ちは私にもよく分かるから。
「ううっ、恥ずかしいな。一昨日、お兄ちゃんと再会したときに抱きしめなければ良かった……」
「気にしないでください。智也さんを抱きしめたくなる気持ちも分かりますし」
「……うん」
それだけ、智也さんが昔から素敵な人だった証拠なんだ。
「そういえば、美来ちゃんはどんなことがきっかけでトモくんと出会ったの? しかも、結婚を前提に付き合っているなんて」
「10年前に家族で遊園地に遊びに行ったら迷子になってしまって。そのときに智也さんと出会って、迷子になった私を助けてくれたんです。そのときに智也さんの優しさに触れてから、もう智也さんにゾッコンで。プロポーズをしました」
「それで、今年、10年ぶりに再会してまたプロポーズしたんだよね。16歳にもなっているし、結婚を前提に付き合うことになったんだって」
「へえ、そんな運命的なこともあるんだね。でも、迷子になっているところを助けたことがきっかけなのがトモくんらしいかも」
素敵だね、と言って仁実さんはご飯を食べ進める。仁実さん、さっきから本当に美味しそうにお昼ご飯を食べているなぁ。きっと、食べることが大好きなのだろう。
「でも、美来ちゃんはとても可愛いし、美人だからたくさん告白されたんじゃない?」
「ふふっ、桃花さんにも同じことを訊かれましたね。何度か告白されましたが、智也さん一筋だったので全て断りました。なので、恋人としてお付き合いしたことがあるのは智也さんだけです」
「なるほどね。美来ちゃんっていうここまで想ってくれる女の子がいるなんて、トモくんはとても幸せ者だ」
「……そうだね」
実際には有紗さんと恋の争いをしたけどね。私で良かったと智也さんや有紗さんに思ってもらえるように頑張らないと。
「それで、そんな2人が私に会いにやってくるなんてね。……何か企んでるの?」
まるで、仁実さんは私達の心を見透かしているようにニヤリとした表情を見せる。
「お、お兄ちゃんと美来ちゃんが同棲している家が桜花駅に近いって分かったから、じゃあ……突然会いに行ってひとみんを驚かそうかなと思って。まあ、結局、ひとみんが見つからなくて電話しちゃったんだけれど」
桃花さんは苦笑いをしながらそう言う。
「あと、紅花女子大学って名前は聞いたことはあったのですが、どんな雰囲気なのか一度キャンパスの見学をしたいと思っていて……」
とっさにそうフォローしてみる。ただ、紅花女子大学のキャンパスを一度見学してみたかったのは本当だ。進路のことは全然考えていないけど、文系の学部に進学すると決めたら、きっと選択肢の一つになると思うから。
「なるほどね。そういうことか。さっきの電話で十分に驚いたけどね。でも、キャンパスを見学したい美来ちゃんにとってはいいタイミングだったね。よし、じゃあ……お昼ご飯を食べたらキャンパス内をお散歩しようか」
「でも、茶道サークルの方は大丈夫ですか? 今日は集まりがあったんですよね?」
「ああ、そっちはもう終わったから大丈夫だよ。ただ、荷物は部室に置いてきてあるから、散歩の途中に行くことにしようか」
「分かりました、ではよろしくお願いします」
「うん。あと、今日はもう何にも予定がないから、キャンパス内の見学をしたら、私の家に行こうか。2人、一度はアパートに行ってくれたもんね。それに、うちにアルバムやDVDがあるからさ」
「そうなんですか! それは楽しみです!」
もしかしたら、まだ見ぬ智也さんの昔の姿があるかもしれない。何だか、キャンパス見学よりもそっちの方が断然楽しみになってきたよ!
「やっぱり、お兄ちゃんのことが大好きなんだね、美来ちゃんは。凄く興奮してる」
「もちろんですよ!」
「……何だか、トモくんと美来ちゃんが2人きりのときの様子が想像できるね。といっても、今のトモくんの姿が分からないけど」
「では、現在の智也さんの写真を」
私はつい最近撮影した智也さんの写真をスマホの画面に表示させて、仁実さんに見せる。
「へえ、これが今のトモくんなんだ。昔の面影は残っているね。何だか草食系イケメンって感じ」
「お兄ちゃん、今でもとても優しいよ。草食系かどうかは分からないけれど」
智也さん、普段は優しいけど、えっちのときは意地悪になることもあるから、草食系の雰囲気を纏った肉食系って感じかも。酔ったときはその肉食系の部分が垣間見える場面が多いから、そういうときの智也さんも好き。
「どうやら、美来ちゃんにしか見せない顔があるみたいだね、トモくんは」
「そんな感じがするね。結婚を前提に付き合っている子がいるんだから、お兄ちゃんもそういうところがあるよね。きっとそれは美来ちゃんも同じじゃないかな?」
「ま、まあ……智也さん以外に見られたら恥ずかしいときもある……かな?」
そう言って思い出すのはやっぱり……営んでいるときかな。あのときの姿は有紗さんであっても恥ずかしくて見せられないな。
「……きっと、トモくんを思い浮かべているんだよね。今の美来ちゃんの顔、凄く可愛いよ」
「あ、ありがとうございます……」
可愛いって言ってもらえるのは嬉しいけど、そういうことは桃花さんに言ってほしいよ。それに、何だか恥ずかしくなってきた。仁実さんは可愛いって言ってくれたけれど、きっと変な表情になっていると思うし。
そんな恥ずかしい気持ちを抱いたまま、私は残りの海鮮パスタを食べた。
その後、私と桃花さんは仁実さんの案内で大学のキャンパスを見学した。高校とは違った雰囲気であり、とても広い。智也さんと同級生か1年後輩で、一緒にキャンパスライフを送りたかったと思うのであった。
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