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続々編-蒼き薔薇と不協和音-
第26話『裏黒硬貨』
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昨日と同じように、有紗さんと割り勘という形で水泳喫茶の代金を払う。有紗さんや詩織ちゃんと一緒に水泳喫茶を後にした。
「水泳喫茶良かったね!」
「そうですね! かき氷もそうですけど、お二人が頼んだフランクフルトやラーメンも美味しかったです。あと、競泳水着にTシャツという姿はインパクトがありましたけど、海の家という感じがして良かったですね」
「そうだね、詩織ちゃん。美来にこのことを話したら驚きそうだ」
ただ、驚くだけでなく、何かしらの嫉妬や対抗心を燃やしそうな気もする。そういえば、美来の競泳水着の姿は見たことがなかったな。
「智也君、詩織ちゃん。次はどこに行こうか。今は9時50分くらいだけど」
「美来ちゃんの接客時間って昨日と同じなんですか? 氷室さん」
「昨日とは違って、9時から11時までだよ。ただ、昨日のコンサートで反響があったし、もしかしたら11時を過ぎても接客を続けるかもしれないって」
「そうですか。今日も接客する美来ちゃんの姿を見たいですし、11時までにはメイド喫茶に行きたいです」
「あたしも接客する美来ちゃんを見たいし、美来ちゃん達に例のメッセージについて意見を聞きたいから、メイド喫茶に行こうか」
「分かりました。では、1年2組のメイド喫茶に行きましょう」
僕らは1年2組にあるメイド喫茶に向かい始める。
文化祭が始まってから1時間くらいだけど、結構盛り上がっている。窓から外の様子が見えるけど、来客の方もかなり多そうだ。ただ、テレビカメラらしきものはないので、マスコミ関係者の立ち入りは学校側が禁止しているのかな。
「今ごろ、青薔薇もこの天羽女子のどこかにいるのかな」
「そう考えていいと思います。昨日も来ていたみたいですし、メッセージが届いたことで何か学校で何か動きがあるか見ているかもしれないです」
もしかしたら、羽賀や浅野さんを中心にメッセージの解読を行なっていることを既に把握しているかも。僕らがこうしているのも青薔薇の想像通りである可能性もありそうだ。
教室棟に戻ると、たまに女の子からの視線を感じる。昨日のコンサートで美来が僕のことを彼氏だと紹介したし、その影響なのかな。目が合うとキャーと黄色い声を上げる子もいるし。
「智也君、人気者ね」
「……どうなんでしょうね。ただ、6月の事件もありましたし、変な目で見られるかもしれないと思っていたくらいですから、今の状況は嫌ではないです」
「ふふっ、智也君らしい」
まさか、女子校で美来の恋人として注目を浴びるとは思わなかったな。もしかして、美来は6月のことで僕が変な目で見られないために、コンサートでの自己紹介で僕のことを彼氏だと紹介してくれたのかな。
1年2組のメイド喫茶に到着し、中を覗いてみると……メイド服姿の美来がいた。亜依ちゃんや乃愛ちゃんも元気にメイドさんをしているな。
すると、僕らの来るタイミングが分かっていたかのように、美来はこちらに振り向いて笑顔でやってきた。
「おかえりなさい! ご主人様! お嬢様!」
「3人だけれど大丈夫かな」
「はい、大丈夫ですよ」
「……ところで、僕がお店の中を覗いてすぐに振り向いたけど、それってたまたまだったのかな」
「いいえ。智也さん達の話し声が聞こえましたし、実際に智也さんの匂いがほんのりと香ってきましたから」
「……さすがは美来だね」
僕の匂いに限るのかもしれないけれど、美来の嗅覚は犬並みじゃないだろうか。
僕らは美来によって4人テーブルに案内される。
「失礼します。お水とメニューになります」
「ありがとう、美来。こっちでは何か変わったことはあった?」
「文化祭が始まってから、ずっとメイドさんとしてここにいますけど、特に変なことは起きていませんね。昨日と違うことといえば、青薔薇さん効果で文化祭自体の来客が多いのか、それとも昨日のコンサート効果があったのか、メイド喫茶に来る方が多いということでしょうか」
「そっか。盛況で何よりだよ。あと、例の青薔薇のメッセージについては、何か思いついたことってあるかな?」
「文化祭を始めるまでは、乃愛ちゃんや亜依ちゃんとその話をしました。500円玉については、裏側を黒く塗られているので、お金絡みの問題を示しているんじゃないかと考えました。ただ、2枚の赤い紙についてはさっぱり分からなくて」
「なるほどね。僕らも全然分かっていないよ」
羽賀でさえも苦戦しているくらいだ。美来達も青薔薇が送ったものの写真を見ただけでは、すぐには分からないか。
「そういえば、今は10時くらいですけど、ずっと会議室で羽賀さん達と青薔薇のメッセージについて考えていたんですか? それとも、どこかに行ってきたんですか?」
「ううん、水泳喫茶っていうお店に行ってきたの。青薔薇のメッセージに水泳部が関わっているんじゃないかってあたしが推理して。間違っていたけどね」
「それでも、推理するなんて有紗さんは凄いですよ」
「冴えていましたね、お姉さん。それで、水泳喫茶に行ったら、水泳部の方々が競泳水着にTシャツ姿だったので、海の家みたいだったよ」
「そうだったんだ、詩織ちゃん! 前に、水着喫茶が中止になった話を知っているから驚いた。そっか、Tシャツを着れば競泳水着はOKなんだ。じゃあ、そんな格好をした女の子を智也さんはじっと見たんですか……」
美来は不機嫌そうな様子で、半目で僕のことを見てくる。Tシャツを着ているとはいえ、競泳水着を着ている女の子のお店に行ったことを知ったら、恋人として複雑な気分になるか。
「智也さん、水着姿の女の子を見て変な気持ちとか抱きませんでしたよね。まあ、私の競泳水着姿を想像していたならいいですけど。それに、私なら競泳水着にエプロンを着て、このメイド付きカチューシャを着けて接客できますけどね! もちろん、そんなことをするのは智也さんの前だけですが」
そう言って、すぐにデレデレした様子に。本当に美来らしいな。
「まあ、美来の競泳水着姿が興味ないと言ったら嘘になるけど、水泳部の子を見て変な気持ちは抱いていないから安心して。あと、じっとは見ていないから」
「そうですか。……有紗さんや詩織ちゃんの様子からして、智也さんは嘘を付いていないようですね。いいでしょう。ご注文はお決まりですか?」
「アイスコーヒーとクッキーをいただこうかな。有紗さんと詩織ちゃんは決まりました?」
「うん。あたしも飲み物はアイスコーヒーで、プレーンのホットケーキで」
「私はホットティーを」
「かしこまりました。少々お待ちください」
美来は軽くお辞儀をして、料理担当の子の方へと向かっていく。昨日も見たけれど、美来のメイド服姿は可愛いな。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴っているので確認してみると、羽賀から電話がかかってきた。何か分かったのかな。
「羽賀から電話が来ました。……もしもし、氷室だけど」
『羽賀だ。今、大丈夫だろうか』
「ああ。今は美来のクラスのメイド喫茶にいるよ。それで何かあったのか?」
『例の500円玉について、鑑識から分析の結果が出た。月村さんの推理通り、黒い油性マジックではなく、アイブロウペンシルの成分が検出された』
「そっか。有紗さんの言う通り、アイブロウペンシルで塗ったんだ」
僕がそう言ったので、有紗さんと詩織ちゃんは真剣な様子で僕のことを見てくる。
『ああ。アイブロウペンシルで500円硬貨の裏側を黒く塗ったことは重要なポイントだと考えている。今は職員に頼んで生徒の家庭調査票から、化粧品会社に従事している生徒の保護者がいないかどうか調べてもらっている』
「化粧品会社……ちょっと待って。美来!」
「は、はい。どうしましたか?」
大きな声で美来のことを呼んだからか、美来は驚いた様子で僕らの方にやってくる。
「僕の記憶違いかもしれないから確認させて。前に赤城さんの件で花園さんのことも話してくれたけど、彼女って、化粧品会社の社長令嬢じゃなかった?」
「はい、そうです。なので、赤城先輩は自分のような一般家庭の女の子とは付き合えないのかなとも言っていました」
僕の記憶通りだったか。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう、美来。……今の話を聞いていたか、羽賀」
『ああ。はっきり聞こえた。花園で化粧品というと、株式会社花園化粧品。随分と前に海外へ進出した大企業だな。その社長令嬢が天羽女子の生徒なのか』
「うん。3年3組の花園千秋さん。親が花園化粧品の社長だ。何か金について変な匂いがしてきそうじゃないか?」
『私も同じことを考えた。ありがとう、氷室。一応、家庭調査票を調べてはみるが、その3年3組の花園千秋を最重要人物として調べてみることにする。彼女とは直接話を聞こうと思う』
「分かった。じゃあ、また後で」
『ああ。また何か分かったら連絡する』
羽賀の方から通話を切った。
まさか、ここで花園さんのご家族が関わっている可能性が浮上するとは。昨日、焼きそばを売っているときの花園さんの笑顔を知っているだけに、何とも言えない気分になる。
「やっぱり、アイブロウペンシルで塗られていたんだ」
「ええ。それで、前に美来から花園さんが化粧品会社の社長令嬢であることを思い出して、美来に確認を取ったんです」
「そうだったんですね。というか、あの500円玉、マジックじゃなくて化粧品で塗られていたんですね。写真で見ただけなので気付かなかったです」
「私もだよ、美来ちゃん。調査が進んだのは、お姉さんがアイブロウペンシルで塗られているかもしれないと気付いたからです。今日は本当に冴えていますね」
「いやいや、それほどでも。詩織ちゃんの分はあたしが払ってあげるよ!」
有紗さん、相当ご機嫌がいいようで。
ただ、有紗さんの気付きをきっかけに、500円玉はアイブロウペンシルで塗られていると分かった。それはきっと、青薔薇からのメッセージを解く大きな一歩になるだろう。
「水泳喫茶良かったね!」
「そうですね! かき氷もそうですけど、お二人が頼んだフランクフルトやラーメンも美味しかったです。あと、競泳水着にTシャツという姿はインパクトがありましたけど、海の家という感じがして良かったですね」
「そうだね、詩織ちゃん。美来にこのことを話したら驚きそうだ」
ただ、驚くだけでなく、何かしらの嫉妬や対抗心を燃やしそうな気もする。そういえば、美来の競泳水着の姿は見たことがなかったな。
「智也君、詩織ちゃん。次はどこに行こうか。今は9時50分くらいだけど」
「美来ちゃんの接客時間って昨日と同じなんですか? 氷室さん」
「昨日とは違って、9時から11時までだよ。ただ、昨日のコンサートで反響があったし、もしかしたら11時を過ぎても接客を続けるかもしれないって」
「そうですか。今日も接客する美来ちゃんの姿を見たいですし、11時までにはメイド喫茶に行きたいです」
「あたしも接客する美来ちゃんを見たいし、美来ちゃん達に例のメッセージについて意見を聞きたいから、メイド喫茶に行こうか」
「分かりました。では、1年2組のメイド喫茶に行きましょう」
僕らは1年2組にあるメイド喫茶に向かい始める。
文化祭が始まってから1時間くらいだけど、結構盛り上がっている。窓から外の様子が見えるけど、来客の方もかなり多そうだ。ただ、テレビカメラらしきものはないので、マスコミ関係者の立ち入りは学校側が禁止しているのかな。
「今ごろ、青薔薇もこの天羽女子のどこかにいるのかな」
「そう考えていいと思います。昨日も来ていたみたいですし、メッセージが届いたことで何か学校で何か動きがあるか見ているかもしれないです」
もしかしたら、羽賀や浅野さんを中心にメッセージの解読を行なっていることを既に把握しているかも。僕らがこうしているのも青薔薇の想像通りである可能性もありそうだ。
教室棟に戻ると、たまに女の子からの視線を感じる。昨日のコンサートで美来が僕のことを彼氏だと紹介したし、その影響なのかな。目が合うとキャーと黄色い声を上げる子もいるし。
「智也君、人気者ね」
「……どうなんでしょうね。ただ、6月の事件もありましたし、変な目で見られるかもしれないと思っていたくらいですから、今の状況は嫌ではないです」
「ふふっ、智也君らしい」
まさか、女子校で美来の恋人として注目を浴びるとは思わなかったな。もしかして、美来は6月のことで僕が変な目で見られないために、コンサートでの自己紹介で僕のことを彼氏だと紹介してくれたのかな。
1年2組のメイド喫茶に到着し、中を覗いてみると……メイド服姿の美来がいた。亜依ちゃんや乃愛ちゃんも元気にメイドさんをしているな。
すると、僕らの来るタイミングが分かっていたかのように、美来はこちらに振り向いて笑顔でやってきた。
「おかえりなさい! ご主人様! お嬢様!」
「3人だけれど大丈夫かな」
「はい、大丈夫ですよ」
「……ところで、僕がお店の中を覗いてすぐに振り向いたけど、それってたまたまだったのかな」
「いいえ。智也さん達の話し声が聞こえましたし、実際に智也さんの匂いがほんのりと香ってきましたから」
「……さすがは美来だね」
僕の匂いに限るのかもしれないけれど、美来の嗅覚は犬並みじゃないだろうか。
僕らは美来によって4人テーブルに案内される。
「失礼します。お水とメニューになります」
「ありがとう、美来。こっちでは何か変わったことはあった?」
「文化祭が始まってから、ずっとメイドさんとしてここにいますけど、特に変なことは起きていませんね。昨日と違うことといえば、青薔薇さん効果で文化祭自体の来客が多いのか、それとも昨日のコンサート効果があったのか、メイド喫茶に来る方が多いということでしょうか」
「そっか。盛況で何よりだよ。あと、例の青薔薇のメッセージについては、何か思いついたことってあるかな?」
「文化祭を始めるまでは、乃愛ちゃんや亜依ちゃんとその話をしました。500円玉については、裏側を黒く塗られているので、お金絡みの問題を示しているんじゃないかと考えました。ただ、2枚の赤い紙についてはさっぱり分からなくて」
「なるほどね。僕らも全然分かっていないよ」
羽賀でさえも苦戦しているくらいだ。美来達も青薔薇が送ったものの写真を見ただけでは、すぐには分からないか。
「そういえば、今は10時くらいですけど、ずっと会議室で羽賀さん達と青薔薇のメッセージについて考えていたんですか? それとも、どこかに行ってきたんですか?」
「ううん、水泳喫茶っていうお店に行ってきたの。青薔薇のメッセージに水泳部が関わっているんじゃないかってあたしが推理して。間違っていたけどね」
「それでも、推理するなんて有紗さんは凄いですよ」
「冴えていましたね、お姉さん。それで、水泳喫茶に行ったら、水泳部の方々が競泳水着にTシャツ姿だったので、海の家みたいだったよ」
「そうだったんだ、詩織ちゃん! 前に、水着喫茶が中止になった話を知っているから驚いた。そっか、Tシャツを着れば競泳水着はOKなんだ。じゃあ、そんな格好をした女の子を智也さんはじっと見たんですか……」
美来は不機嫌そうな様子で、半目で僕のことを見てくる。Tシャツを着ているとはいえ、競泳水着を着ている女の子のお店に行ったことを知ったら、恋人として複雑な気分になるか。
「智也さん、水着姿の女の子を見て変な気持ちとか抱きませんでしたよね。まあ、私の競泳水着姿を想像していたならいいですけど。それに、私なら競泳水着にエプロンを着て、このメイド付きカチューシャを着けて接客できますけどね! もちろん、そんなことをするのは智也さんの前だけですが」
そう言って、すぐにデレデレした様子に。本当に美来らしいな。
「まあ、美来の競泳水着姿が興味ないと言ったら嘘になるけど、水泳部の子を見て変な気持ちは抱いていないから安心して。あと、じっとは見ていないから」
「そうですか。……有紗さんや詩織ちゃんの様子からして、智也さんは嘘を付いていないようですね。いいでしょう。ご注文はお決まりですか?」
「アイスコーヒーとクッキーをいただこうかな。有紗さんと詩織ちゃんは決まりました?」
「うん。あたしも飲み物はアイスコーヒーで、プレーンのホットケーキで」
「私はホットティーを」
「かしこまりました。少々お待ちください」
美来は軽くお辞儀をして、料理担当の子の方へと向かっていく。昨日も見たけれど、美来のメイド服姿は可愛いな。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴っているので確認してみると、羽賀から電話がかかってきた。何か分かったのかな。
「羽賀から電話が来ました。……もしもし、氷室だけど」
『羽賀だ。今、大丈夫だろうか』
「ああ。今は美来のクラスのメイド喫茶にいるよ。それで何かあったのか?」
『例の500円玉について、鑑識から分析の結果が出た。月村さんの推理通り、黒い油性マジックではなく、アイブロウペンシルの成分が検出された』
「そっか。有紗さんの言う通り、アイブロウペンシルで塗ったんだ」
僕がそう言ったので、有紗さんと詩織ちゃんは真剣な様子で僕のことを見てくる。
『ああ。アイブロウペンシルで500円硬貨の裏側を黒く塗ったことは重要なポイントだと考えている。今は職員に頼んで生徒の家庭調査票から、化粧品会社に従事している生徒の保護者がいないかどうか調べてもらっている』
「化粧品会社……ちょっと待って。美来!」
「は、はい。どうしましたか?」
大きな声で美来のことを呼んだからか、美来は驚いた様子で僕らの方にやってくる。
「僕の記憶違いかもしれないから確認させて。前に赤城さんの件で花園さんのことも話してくれたけど、彼女って、化粧品会社の社長令嬢じゃなかった?」
「はい、そうです。なので、赤城先輩は自分のような一般家庭の女の子とは付き合えないのかなとも言っていました」
僕の記憶通りだったか。
「そうなんだ。教えてくれてありがとう、美来。……今の話を聞いていたか、羽賀」
『ああ。はっきり聞こえた。花園で化粧品というと、株式会社花園化粧品。随分と前に海外へ進出した大企業だな。その社長令嬢が天羽女子の生徒なのか』
「うん。3年3組の花園千秋さん。親が花園化粧品の社長だ。何か金について変な匂いがしてきそうじゃないか?」
『私も同じことを考えた。ありがとう、氷室。一応、家庭調査票を調べてはみるが、その3年3組の花園千秋を最重要人物として調べてみることにする。彼女とは直接話を聞こうと思う』
「分かった。じゃあ、また後で」
『ああ。また何か分かったら連絡する』
羽賀の方から通話を切った。
まさか、ここで花園さんのご家族が関わっている可能性が浮上するとは。昨日、焼きそばを売っているときの花園さんの笑顔を知っているだけに、何とも言えない気分になる。
「やっぱり、アイブロウペンシルで塗られていたんだ」
「ええ。それで、前に美来から花園さんが化粧品会社の社長令嬢であることを思い出して、美来に確認を取ったんです」
「そうだったんですね。というか、あの500円玉、マジックじゃなくて化粧品で塗られていたんですね。写真で見ただけなので気付かなかったです」
「私もだよ、美来ちゃん。調査が進んだのは、お姉さんがアイブロウペンシルで塗られているかもしれないと気付いたからです。今日は本当に冴えていますね」
「いやいや、それほどでも。詩織ちゃんの分はあたしが払ってあげるよ!」
有紗さん、相当ご機嫌がいいようで。
ただ、有紗さんの気付きをきっかけに、500円玉はアイブロウペンシルで塗られていると分かった。それはきっと、青薔薇からのメッセージを解く大きな一歩になるだろう。
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