向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ

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第25話『席替え』

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 連休明けだけど、今日は木曜日。だからか、教室に行くと気持ちが沈んでいるクラスメイトは全然いない。
 教室には岡嶋と津川さんの姿が。2人も連休が明けて学校が始まったのが嬉しいそうだ。岡嶋が5連休全てサッカー部の合宿に行っており、連休中は全然会えなかったかららしい。その分、合宿の自由時間に岡嶋と津川さんは電話で話したり、LIMEでメッセージしまくったりしたそうだけど。相変わらずラブラブな2人だ。
 やがて、朝礼のチャイムが鳴り、担任の女性教師・涼風千尋すずかぜちひろ先生がやってくる。背が高くて端正な顔立ち。真面目で落ち着いた性格。英語教師なのもあってか『クールビューティー』と呼ぶ生徒も。1年の頃から英語の授業でお世話になっているけど、担任は今年が初めて。
 教卓に立った直後、外から入ってきた風で涼風先生のロングヘアの青い髪がなびく。

「おはようございます。連休明けにクラス全員の顔を見られて嬉しいです。あと10日ほどで中間試験が始まります。今の時期から、試験対策をするようにしてください」

 中間試験の話をしたからか、一部の生徒から「あぁ……」と落胆の声が。
 そういえば、あと10日くらいで2年生初の定期試験が始まるのか。今のところつまずいている教科はないけど、しっかり対策して試験に臨もう。
 ……何だか視線を感じる。今の先生の話からして、僕に視線を送る生徒といえば向日葵くらいだろう。そう思って彼女の方を見ると、

「……おぉ」

 以前のような鋭い目つきで、向日葵は僕のことを見ていた。そのことに思わず声が漏れてしまう。涼風先生が試験の話をしたから、僕へのライバル心にギアが入り始めたのかな。「今度は桔梗に勝って絶対に1位を取るんだから!」って思っていそう。

「5月にもなりましたし、今日のロングホームルームの時間に席替えをします」

 と、涼風先生は言った。ロングホームルームは6時間目にある。
 この窓側の一番後ろの席だからとてもいいと思っていたのに。席替えをしてもいい場所の席に座りたいなぁ。
 この席で授業を受けるのはこれで最後かもしれないと思いながら、午前の授業を受けていく。この席が好きで名残惜しいからか、あっという間に時間は過ぎた。
 昼休みになり、今日も僕は岡嶋と津川さんと3人でお昼ご飯を食べる。そのときの話題は連休中の僕のことで持ちきり。2人に話していると、今年の5月の5連休は盛りだくさんだったと改めて思う。
 僕が連休中に話していなかったのもあり、岡嶋と津川さんは僕が風邪を引いていたことに驚き、向日葵がお見舞いに来たことにはもっと驚いていた。

「何だかんだ、連休中は宝来さんと毎日会っていたんだね」
「これは予想外だぜ。今後が楽しみだなぁ、ちー」
「そうだね、カイ君」

 岡嶋と津川さんはニヤニヤ。まったく、何が楽しみなんだか。
 ちなみに、向日葵はいつも通り福山さんと2人でお弁当を食べながら談笑していた。向日葵の笑顔は変わらず可愛いけど、以前よりも柔らかく感じられた。
 午後の授業を受け、いよいよ6時間目のロングホームルームの時間に。

「朝礼で言ったとおり、これから席替えをします。席はくじ引きで決めます。その前に、視力や背の低さなど、黒板が見えやすいように前の席に座りたい人は言ってください」

 涼風先生のクラスになっても、席替えはくじ引きで決めるのか。席によっては黒板が見えづらい生徒への配慮があるのはいいと思う。
 男子と女子それぞれ1人ずつ、視力が悪いため教卓近くの席に座ることになった。そのことで、くじ引きで最も当たりたくない2席が埋まったのは嬉しい。
 涼風先生は黒板に座席表を描いていく。窓側の一番前の席から番号が振られる。一番後ろの席、もしくは窓側か廊下側の席の番号を引き当てたいな。
 そして、事前に席を希望した生徒を除き、出席番号順にくじを引いていく。なので、僕は岡嶋の次だ。

「うわっ、マジか」

 岡嶋はくじを引くとそう言い、涼風先生に渡す。先生は7番……窓側から2列目の一番前の席に『岡嶋』と書いた。

「一番前だぜ、加瀬」
「……ドンマイ」

 がっかりして戻ってくる岡嶋の肩を叩き、僕は教卓へと向かう。くじが入っている箱に手を突っ込んで、くじを一枚引く。引いたくじには、

『12』

 と書かれていた。黒板を見ると……今の席から一つ右にずれただけだ。一番後ろの席なので、これは当たりかも。
 涼風先生にくじを渡して、僕は自分の席に戻る。

「いいなぁ、また一番後ろの席で。俺と交換しないか?」
「当たりの席だから、それはできないな。ごめん」
「だよなぁ」

 はあっ……と深い溜息をつくと、岡嶋は机に突っ伏した。それだけ、一番前の席に移動するのが嫌なんだな。
 それからもくじ引きは続く。友達と隣同士になって喜ぶ生徒、岡嶋のように前の方の席になって嘆く生徒、特に感情を表さない生徒など反応は様々。
 冴島さんは廊下側の真ん中の席。そして、津川さんは……窓側の前から2番目の席。そこは岡嶋の新しい席の左斜め後ろの席だ。これが分かった岡嶋は、

「よっしゃあっ!」

 と雄叫びを上げる。一番前の席になってしまったけど、決して悪いことばかりではなかったようだ。
 岡嶋と津川さんの仲はよく知られているのもあり、クラスメイトの多くは楽しそうに笑った。普段はクールな涼風先生も、口に手を押さえて笑っている。津川さんも斜めではあるが、すぐ近くに彼氏がいることに喜んでいるように見えた。
 クラスメイトの半分以上が引いたけど、今の僕の席……6番のくじを引いた生徒はいない。次にこの場所に誰が座るのか気になる。新しい僕の席の左隣だし。
 その後も6番のくじは引かれず、福山さんの番。

「21番です、先生」

 21番……ほぼ真ん中らへんの席か。福山さんはいつも通りの穏やかな笑みを浮かべて自分の席に戻った。
 次は向日葵。彼女はどの番号を引くのやら。

「6番です」
「……おぉ」

 まさか、6番を向日葵が引くとは。そのことに思わず声が漏れてしまった。

「宝来と縁がありますなぁ、加瀬」

 ニヤリと笑みを浮かべながら岡嶋はそう言ってきた。津川さんがすぐ近くの席になったのもあってか、彼はとても生き生きしているように見える。

「そうだね」

 僕と隣同士の席になったのもそうだけど、席替えしたらこの場所に向日葵が座ることに縁を感じる。
 黒板を見て右隣が僕であると知ったのか、向日葵はチラッと僕の方を見てくる。僕と目が合うと、彼女はほんのりと頬を赤くして自分の席へと戻った。
 それから程なくして、全てのクラスメイトがくじを引き終わった。

「全員の席が決まりましたね。では、新しい席に移動してください」

 机の中にある荷物を出して、新しい席へと移動する。
 僕は右に一つ動くだけなので非常に楽だった。新しい席の椅子に座ると……前とあまり景色は変わらないな。同じ列の一番前の席に座っている岡嶋と、彼の斜め後ろに座っている津川さんから手を振られたので、僕は2人に手を振った。
 2人に手を振っていると、向日葵が目の前を横切り、僕の左隣の席に座る。

「あぁ、愛華と離れたのが寂しいわ」
「今までは前後で座っていたもんな。……その席は気が楽だと思うよ。授業中、気分転換に外の景色を眺められるし。少しの間、壁に寄り掛かるのも体が楽になっていいぞ」
「そうなんだ。覚えておく」

 きっとすぐに、向日葵はその席が気に入るんじゃないかと思う。

「……一応、お隣さんになったわけだし。これからよろしく、桔梗」
「よろしくね、向日葵」

 そんな挨拶を交わすと、向日葵は微笑んでゆっくりと頷いてくれた。
 前と変わらず一番後ろの席だし、隣には向日葵が座っている。これまで以上に楽しい学校生活を送れるかもしれない。
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