向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ

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第28話『ひまわりハウス』

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 5月15日、金曜日。
 今日も放課後はみんなで勉強会。今日は撫子と冴島さんも参加する。
 ただ、向日葵が「たまには環境を変えた方が、勉強に集中しやすくなるかも」と提案してきた。なので、今日は向日葵の家で勉強会を開くことに。
 撫子と冴島さんが園芸部で育てている花の水やりをするのを待ってから、僕らは下校し、向日葵の家に向かって歩き始める。

「向日葵の家って、学校からだとどのくらいで着くの?」
「10分くらい。線路の高架下を通って南口方面に向かうの。駅の方に行くと遠回りになって。といっても、帰りは駅の方に行って、ナノカドーとかに行くことが多いけどね」
「そうなんだ」

 10分ってことは、僕の家よりも少し遠いくらいか。
 学校の正門を出てから数分ほどで線路の高架下を通る。駅周辺以外は南口の方にあまり行かないから、急に新鮮な景色が広がる。初めての場所に来ると、自宅から近い場所でもちょっとした旅行気分になるな。
 向日葵の家に行ったことがないので、ちょっと緊張してきた。ただ、どんな雰囲気の家で、向日葵の部屋もどんな感じが気になる自分もいて。何度かクレーンゲームでぬいぐるみを取ってあげたし、ぬいぐるみで溢れたりしているのかな。
 向日葵が言ったように、正門を出てからおよそ10分後。

「ここよ」

 そう言って、向日葵は立ち止まる。
 向日葵の視線の先にあるのは、ベージュを外観とした落ち着いた雰囲気の一軒家。結構立派な家だ。みんなも同じようなことを思っているのか、向日葵と福山さん以外は「おぉ……」と声を漏らしている。

「うちよりも大きいね、兄さん」
「そうだね。パッと見て……うちの1.5倍くらいの大きさかな」
「そのくらいあるよね。……私達の家、先輩に狭いって思われていたのかな」
「そんなことないわ、撫子ちゃん。2人の家も素敵だと思うわ。……じゃあ、みんな家に入って」

 向日葵についていく形で、僕らは宝来家の敷地に入る。定期的に手入れしているのか庭が綺麗だ。

「ただいま。高校の友達連れてきた~」

 向日葵は鍵を解錠してゆっくりと玄関を開け、僕らを家の中に招き入れる。僕らはその際に「お邪魔します」と言う。
 家の中……甘くていい匂いがするな。香ばしさもある。クッキーのような焼き菓子の匂いだ。ご家族が作ったのか。それとも、女の子の家の匂いはこういうものなのか。

「向日葵、おかえり~」

 そんな綺麗な声が聞こえると、奥からジーンズにブラウス姿の女性が出てきた。向日葵や百合さんと同じく美しい金髪。背も高めで綺麗な顔立ちの方だ。お姉さんかな?

「ただいま、お母さん。今日は家で中間試験の勉強会をすることにしたの」
「そうなのね。じゃあ、クッキーを持っていきなさい。さっきたくさん焼いたから」
「うん、分かった。ありがとう」

 お、お母様だったのか。大学生と高校生の娘がいるとは思えない若々しさだ。
 あと、この甘くて香ばしい匂いはクッキーの匂いだったんだな。

「愛華ちゃん以外は初めて見る顔ね。……いや、黒髪のセミロングの子は、向日葵のスマホの写真で見ているから顔を知っているわ。三毛猫ちゃんを撫でていたわね。名前は……撫子ちゃんだったかな?」
「そうです。加瀬撫子といいます。初めまして。こちらの加瀬桔梗が私の兄で、向日葵先輩のクラスメイトなんです。それがきっかけで、先輩とは仲良くさせてもらっています」

 おぉ、撫子。初対面の人にもしっかりと挨拶ができて偉いぞ。この流れだと次は僕が自己紹介するのがいいかな。

「初めまして、加瀬桔梗です。クラスメイトで友人です」
「津川千恵といいます、初めまして」
「岡嶋海斗です、初めまして」
「初めまして。冴島和花と申します。撫子さんとは園芸部の仲間でもあります」
「ご丁寧にどうも。美男美女揃いねぇ。みなさん初めまして。向日葵の母の悠花ゆうかといいます。よろしくね」

 そう挨拶をすると、悠花さんは明るくて爽やかな笑顔を見せる。とても笑顔の素敵な人だな。向日葵の笑顔の良さは悠花さんから譲り受けたものでもありそうだ。
 悠花さんは僕の方に顔を向けて、僕の目の前まで近づいてくる。

「あなたが向日葵の話によく出てくる加瀬桔梗君ね。かなりのイケメンじゃない。凄く優しい感じがして」

 ニッコリ笑ってそう言うと、悠花さんは食い入るように僕を見てくる。こう近くで見ると、より母親ではなくお姉さんのように見えるな。

「百合さんだけじゃなくて、御両親にも僕のことを話しているんだな」
「ま、まあね。最近は増えてる。夕食のときのいい話題になってるわ」
「そうか」
「向日葵から色々な話を聞いているわ。1年のときからずっと学年1位だったり、サカエカフェでしっかり接客していたり、クレーンゲームが得意だったり、猫が大好きだったり、シスコンだったり」
「……本当に娘さんは色々なことを話しているみたいですね」

 まあ、宝来家の食事の時間に笑いをもたらしているのならいいか。
 悠花さんは両手で僕の左手をぎゅっと掴んでくる。

「半月ほど前には、ナンパしてきた男達から向日葵を助けてくれたと聞きました。遅くなりましたけど……ありがとう。これからも向日葵のことをよろしくお願いします」
「いえいえ。こちらこそよろしくお願いします」
「……できれば末永く」
「お、お母さんったら! もう何言ってるのっ! ていうか、いつまで桔梗の手を握ってるのっ!」

 顔を真っ赤にして、怒った様子で向日葵はそう言う。悠花さんは「ふふっ」と明るく笑いながら僕の手を放した。

「ほら、勉強会するから早くあたしの部屋に行きましょう! お母さん、邪魔しちゃダメなんだからね!」
「ふふっ、はいはい。みんなゆっくりしていってね」

 僕らはようやく家に上がり、2階にある向日葵の部屋へ。
 家全体が大きいだけあって、向日葵の部屋もかなり広い。僕や撫子の部屋よりは確実に広い。これなら7人一緒に勉強しても大丈夫そうだ。
 テーブルの上に本がいくつか置かれているけど、床にゴミなどは落ちておらず綺麗だ。本棚……パッと見た感じ、作品別で綺麗に並んでいるな。
 ベッドや掛け布団のカバー、カーテン、絨毯、クッションの色などは暖色系がメイン。だからか、僕の部屋とは結構違った雰囲気に感じられる。
 あと、ベッドの上にはこの前、僕がクレーンゲームでゲットしたニャン太郎先生や猫のぬいぐるみが置かれている。抱きしめながら眠っているのだろうか。

「そんなに部屋の中をじっと見られると恥ずかしいわ、桔梗」
「ごめん。初めて来たから、つい」
「……恥ずかしいだけで嫌じゃないわ。それに、あたしも桔梗の部屋を色々と見たから。……お姉ちゃんの部屋からテーブルと足りない分のクッションを持ってくる。愛華、手伝ってくれる?」
「いいよ」
「ありがとう。みんなは今あるクッションに座ってゆっくりしてて。荷物は端っことかに置いといて」
「分かった。……向日葵、本棚にどんな本があるか見ていいか?」
「どうぞ」

 向日葵と福山さんは荷物を置くと、テーブルとクッションを取りに一旦部屋を出る。
 僕はスクールバッグを端の方に置き、本棚へと向かう。見たところ、少女漫画や恋愛漫画や日常系4コマ漫画、女性向けのレーベルのラノベが多いな。もちろん、本棚にはニャン太郎先生が出てくる『秋目知人帳』も。僕の好きな本がいくつもある。シリーズものはちゃんと1巻から順番に並んでおり、美しい見た目となっている。
 一番下の段には猫の写真集やイラストレーターの画集などが入っている。あと、背表紙が分厚いものがある。『Memories』って書いてあるから、アルバムなのかな。

「宝来さんは恋愛系作品が好きみたいですね」

 気づけば、僕の隣には冴島さんが立っていた。

「そうだね。そういえば、冴島さんはどんな本が好きなの?」
「私も恋愛系が好きですね。ミステリーやサスペンス系も好きですよ。漫画や映像ならホラー系作品も」
「へえ、そうなんだ。ホラー系が好きなのは意外だね」
「そうですか? あと、遊園地でもお化け屋敷には必ず行きます」

 どうやら、冴島さんはホラーや心霊系がかなり好きなようだ。今まで以上に彼女のことが頼もしく思えてきた。
 ちなみに、向日葵の本棚には……やっぱり、ホラーや心霊系の作品は一つもない。以前、劇場ではホラー系の作品は観ないと言っていたし。DVDで観ても、一緒に観ている福山さんにしがみついていたそうだから。
 それからすぐに向日葵と福山さんがテーブルとクッションを持ってきてくれた。そして、向日葵はその後にアイスティーとクッキーも。
 僕から時計回りに撫子、冴島さん、津川さん、岡嶋、福山さん、向日葵の並びでクッションに座る。僕は撫子と向日葵に挟まれる形だ。
 今日も勉強会が始まるのであった。
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