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本編
第5話『初めての夜-後編-』
美優先輩がさっき淹れてくれた日本茶を飲む。茶葉の名産地である静岡県の人間なのもあって、小さい頃からたくさん日本茶を飲んできた。なので、こうしているととても落ち着く。
「本当に美味しそうに飲んでくれるね、由弦君は。淹れた甲斐があるよ」
「日本茶は大好きなので。静岡県出身だからか飲むことが多くて。何だか落ち着けるんです」
「そうなんだ。静岡はお茶の名産地だもんね」
美優先輩は日本茶を一口。温かい日本茶を飲むだけで、地元にいる感じがしてくる。
「そういえば、美優先輩は妹さんが2人いるんですよね」
「うん、そうだよ。上の妹は朱莉って言って、心愛ちゃんと同じで4月に中学に入学するの。クールな性格で年齢以上にしっかりしてる。私よりもしっかりしているんじゃないかなぁ」
美優先輩も16歳にしてはかなりしっかりしていると思うけど。そんな先輩がしっかりしていると言うのだから、朱莉ちゃんはとても大人な子なのだろう。
「下の妹は葵って名前で、4月に小学5年生になるの。朱莉とは違ってかなり甘えん坊で。元気があるのはいいんだけど。1年前にあけぼの荘に引っ越すときは、葵に大泣きされちゃったの」
「昨日の心愛がまさにそうでした」
「ふふっ、どこの家にも寂しがり屋の妹はいるんだね。でも、葵も心愛ちゃんのように、すぐに元気になって電話がかかってきた。そのときに私の声を聞けて安心したって言われたけど、私も安心したなぁ」
妹さん達のことを思い出しているのか、今までとはまた違う優しい笑みを浮かべている。実家ではこういう笑顔を見せることが多かったのかもしれない。そんな美優先輩はスマホを取り出している。
あと、今の美優先輩の言葉……分かる気がする。引っ越したけど、雫姉さんと心愛の声を聞いたら何だか安心した。裏返せば、俺も寂しいと思っていたのだろう。
「ふふっ、由弦君。朱莉から伝言が来てる。『こちらの不手際だそうなので、ひとまずは一緒に暮らすことを許しますが、姉さんには手を出さないように』だって」
「お姉さんが今日会った1歳下の男と暮らすことになれば、そう言うのは当然でしょうね。じゃあ、朱莉ちゃんに『分かった。約束するよ』と言っておいてください」
「うん、分かった。あと、葵の方は興奮しているみたい」
「ははっ、そうですか」
姉妹でも反応は真逆か。女性側としてはそうなるのは自然なのかな。美優先輩のご家族が一緒に住むのを許可したことを後悔してしまわぬよう気を付けないと。
「2人の写真を見る?」
「はい、見てみたいです」
「じゃあ、最近の……あった」
美優先輩は俺にスマホを見せてくれる。画面には先輩と同じく黒髪の女の子が2人映っており、ピースしている。
「可愛い妹さんたちですね」
「うん、自慢の妹達だよ。こっちのロングヘアでつり目の子が朱莉で、ツーサイドアップでまん丸の目をしているのが葵だよ」
「そうなんですね。心愛と同い年なのに朱莉ちゃんは随分と大人っぽい雰囲気ですね。葵ちゃんは小動物的な感じがします。ただ、2人とも姉妹だけあって、美優先輩に似ていて可愛いですね」
「……あ、ありがとう」
えへへっ、美優先輩はとても柔らかい笑顔を向けてくれる。一度、実際に三姉妹が揃ったところを見てみたいところだ。
あと、朱莉ちゃんは雫姉さん、葵ちゃんは心愛と雰囲気が似ているなぁ。だからか、この写真を見ていると、俺が小学校低学年くらいの頃を思い出す。先輩の妹さん達の写真を見ているのに、自分の姉妹に会いたくなってきたよ。
「先輩、見せてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。そうだ、お風呂の準備もしてあるから入ってきて」
「美優先輩が先でいいですよ。俺、実家では最後に入ることが多かったんで」
「じゃあ、明日からは私が先に入るから、今日くらいは由弦君が先に入って。せっかくの引っ越し初日だし、色々とあって疲れたでしょう?」
「……では、ご厚意に甘えて今日は一番風呂をいただきます」
「うんうん! それでいいんだよ。じゃあ、お風呂の説明をするからね」
俺は美優先輩に浴室関連のことを教えてもらう。その際にボディーソープは同じものを使っていることが分かった。
そのまま俺は一番風呂に入ることに。
毎日ここで美優先輩が髪や体を洗い、湯船に浸かってゆっくりしていると思うと緊張するな。色々と考えてしまってはまずいと思い、俺は無心で髪や体を洗った。
湯船に浸かると、今日の疲れが取れていく。実家のお風呂よりはさすがに狭いけど、それでも1人でゆっくりするには十分な広さだ。美優先輩と一緒に入ることなんていう状況は……さすがにないか。
「まさか、1つ年上の女性と一緒に住むとは思わなかったな」
その美優先輩が温和な方で良かったと思う。管理人としての責任感が強すぎる感じもするけど。
「これはこれで良かったのかもな」
ただ、今日出会った女性と一緒に住むんだから、色々と気を付けながら過ごしていかないと。
お風呂から出て、美優先輩にお礼を言うと先輩はすぐに浴室へ向かった。その際、リビングでも寝室でもいいからゆっくりしていてと言われた。
今のうちにふとんでも敷いておこうと思い、寝室に行くと俺が持ってきたふとんをベッドの横に敷かれていた。俺が風呂に入っている間に美優先輩が敷いてくれたのか。
「まったく、世話焼きなのか、責任感が強いのか」
もしかして、俺があまり甘えないと思って、こういうことをしていくつもりなのかな。
それにしても、ベッドとふとんだけど、こうして2人分の寝場所が並んでいると、美優先輩と一緒に同居しているんだと実感する。
ふとんで横になりながらスマホを手に取る。
すると、雫姉さんからメッセージが来ていた。両親に話して、美優先輩と一緒に住むことを了承してもらったそうだ。同棲した学生時代や新婚当時のことを思い出して興奮しているらしい。
「とりあえず、許してもらえて良かったよ」
美優先輩の方のご家族も一緒に住むことを許してくれたし。とりあえずは大丈夫かな。
「でも、学校側にもいずれ知られることになるだろうし、別々に暮らせって言われるのかなぁ」
可能性はゼロじゃない。付き合っているならまだしも、単なる先輩後輩、管理人と住人という関係だもんな。もしそう言われたら、俺があけぼの荘を離れるしかないな。そのときはなるべく美優先輩に迷惑がかからないようにしよう。
「あぁ、気持ち良かった」
すると、桃色の寝間着を着た美優先輩が寝室に入ってきた。
「先輩、ふとんを敷いてくださってありがとうございます」
「いえいえ。結構余裕があったよ。タンスを置いても大丈夫だと思う」
「そうですね。改めて部屋の中を見てみると、結構広いですよね」
「元々は伯父夫婦が2人で住んでいたからね。1人だととても広かった。由弦君と一緒でちょうどいい感じだよ。由弦君、この後はどうする?」
「今日は引っ越しの作業もありましたし、お風呂に入ったのでもう寝ようかなと」
「分かった。一緒に引っ越しのことをして、お風呂に入ったからかいい疲れが来てる。……私と一緒に寝てみる?」
そう言うと、美優先輩はふとんの上で正座をする。これも甘えさせてくれているのか、それとも単に先輩が俺と眠ってみたいだけなのか。
さすがに、ベッドやふとんで美優先輩と一緒に寝るのはまずいだろう。姉さんや心愛で歳の近い女の子と一緒に寝るのは慣れているけれど、出会った日に1歳年上の先輩と寝るのはさすがに緊張する。
「今日はベッドとふとん、別々で寝ましょう。どっちかで一緒だと緊張して眠れないかもしれませんし。もちろん、この部屋で一緒に寝ますから」
「……うん、分かった」
ただ、一緒の部屋で眠るってだけで、緊張して眠れないかもしれないけど。
その後、寝室の電気を消して俺はふとんに、美優先輩はベッドに横になる。ふとんも結構気持ちいいな。
やがて、暗さに目が慣れてきて、窓から入ってくる明かりで寝室の中の様子がうっすらと見えてくる。
「由弦君、起きてる?」
「はい、起きてます。どうかしましたか?」
「歳の近い男の子と2人きりで一緒に寝るから緊張しちゃって。なかなか眠れないの」
「そうですか。もちろん、先輩に何かするつもりはないので安心してください」
「……うん」
さすがに、俺と2人きりで寝室にいたら緊張しちゃうか。ベッドとふとんで別々にして正解だったな。
「由弦君。これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします。これからお世話になります。……ふとんが気持ち良くて眠くなってきました。おやすみなさい、美優先輩」
「うん、おやすみ」
俺が目を瞑って寝息を立てれば、美優先輩も安心できるだろう。まだ緊張もあるけど、こうしていれば本当に眠ることができるかもしれないし。
ふとんも柔らかく、温かさが心地良くなってきた。俺はそれから程なくして眠りにつくのであった。
「本当に美味しそうに飲んでくれるね、由弦君は。淹れた甲斐があるよ」
「日本茶は大好きなので。静岡県出身だからか飲むことが多くて。何だか落ち着けるんです」
「そうなんだ。静岡はお茶の名産地だもんね」
美優先輩は日本茶を一口。温かい日本茶を飲むだけで、地元にいる感じがしてくる。
「そういえば、美優先輩は妹さんが2人いるんですよね」
「うん、そうだよ。上の妹は朱莉って言って、心愛ちゃんと同じで4月に中学に入学するの。クールな性格で年齢以上にしっかりしてる。私よりもしっかりしているんじゃないかなぁ」
美優先輩も16歳にしてはかなりしっかりしていると思うけど。そんな先輩がしっかりしていると言うのだから、朱莉ちゃんはとても大人な子なのだろう。
「下の妹は葵って名前で、4月に小学5年生になるの。朱莉とは違ってかなり甘えん坊で。元気があるのはいいんだけど。1年前にあけぼの荘に引っ越すときは、葵に大泣きされちゃったの」
「昨日の心愛がまさにそうでした」
「ふふっ、どこの家にも寂しがり屋の妹はいるんだね。でも、葵も心愛ちゃんのように、すぐに元気になって電話がかかってきた。そのときに私の声を聞けて安心したって言われたけど、私も安心したなぁ」
妹さん達のことを思い出しているのか、今までとはまた違う優しい笑みを浮かべている。実家ではこういう笑顔を見せることが多かったのかもしれない。そんな美優先輩はスマホを取り出している。
あと、今の美優先輩の言葉……分かる気がする。引っ越したけど、雫姉さんと心愛の声を聞いたら何だか安心した。裏返せば、俺も寂しいと思っていたのだろう。
「ふふっ、由弦君。朱莉から伝言が来てる。『こちらの不手際だそうなので、ひとまずは一緒に暮らすことを許しますが、姉さんには手を出さないように』だって」
「お姉さんが今日会った1歳下の男と暮らすことになれば、そう言うのは当然でしょうね。じゃあ、朱莉ちゃんに『分かった。約束するよ』と言っておいてください」
「うん、分かった。あと、葵の方は興奮しているみたい」
「ははっ、そうですか」
姉妹でも反応は真逆か。女性側としてはそうなるのは自然なのかな。美優先輩のご家族が一緒に住むのを許可したことを後悔してしまわぬよう気を付けないと。
「2人の写真を見る?」
「はい、見てみたいです」
「じゃあ、最近の……あった」
美優先輩は俺にスマホを見せてくれる。画面には先輩と同じく黒髪の女の子が2人映っており、ピースしている。
「可愛い妹さんたちですね」
「うん、自慢の妹達だよ。こっちのロングヘアでつり目の子が朱莉で、ツーサイドアップでまん丸の目をしているのが葵だよ」
「そうなんですね。心愛と同い年なのに朱莉ちゃんは随分と大人っぽい雰囲気ですね。葵ちゃんは小動物的な感じがします。ただ、2人とも姉妹だけあって、美優先輩に似ていて可愛いですね」
「……あ、ありがとう」
えへへっ、美優先輩はとても柔らかい笑顔を向けてくれる。一度、実際に三姉妹が揃ったところを見てみたいところだ。
あと、朱莉ちゃんは雫姉さん、葵ちゃんは心愛と雰囲気が似ているなぁ。だからか、この写真を見ていると、俺が小学校低学年くらいの頃を思い出す。先輩の妹さん達の写真を見ているのに、自分の姉妹に会いたくなってきたよ。
「先輩、見せてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。そうだ、お風呂の準備もしてあるから入ってきて」
「美優先輩が先でいいですよ。俺、実家では最後に入ることが多かったんで」
「じゃあ、明日からは私が先に入るから、今日くらいは由弦君が先に入って。せっかくの引っ越し初日だし、色々とあって疲れたでしょう?」
「……では、ご厚意に甘えて今日は一番風呂をいただきます」
「うんうん! それでいいんだよ。じゃあ、お風呂の説明をするからね」
俺は美優先輩に浴室関連のことを教えてもらう。その際にボディーソープは同じものを使っていることが分かった。
そのまま俺は一番風呂に入ることに。
毎日ここで美優先輩が髪や体を洗い、湯船に浸かってゆっくりしていると思うと緊張するな。色々と考えてしまってはまずいと思い、俺は無心で髪や体を洗った。
湯船に浸かると、今日の疲れが取れていく。実家のお風呂よりはさすがに狭いけど、それでも1人でゆっくりするには十分な広さだ。美優先輩と一緒に入ることなんていう状況は……さすがにないか。
「まさか、1つ年上の女性と一緒に住むとは思わなかったな」
その美優先輩が温和な方で良かったと思う。管理人としての責任感が強すぎる感じもするけど。
「これはこれで良かったのかもな」
ただ、今日出会った女性と一緒に住むんだから、色々と気を付けながら過ごしていかないと。
お風呂から出て、美優先輩にお礼を言うと先輩はすぐに浴室へ向かった。その際、リビングでも寝室でもいいからゆっくりしていてと言われた。
今のうちにふとんでも敷いておこうと思い、寝室に行くと俺が持ってきたふとんをベッドの横に敷かれていた。俺が風呂に入っている間に美優先輩が敷いてくれたのか。
「まったく、世話焼きなのか、責任感が強いのか」
もしかして、俺があまり甘えないと思って、こういうことをしていくつもりなのかな。
それにしても、ベッドとふとんだけど、こうして2人分の寝場所が並んでいると、美優先輩と一緒に同居しているんだと実感する。
ふとんで横になりながらスマホを手に取る。
すると、雫姉さんからメッセージが来ていた。両親に話して、美優先輩と一緒に住むことを了承してもらったそうだ。同棲した学生時代や新婚当時のことを思い出して興奮しているらしい。
「とりあえず、許してもらえて良かったよ」
美優先輩の方のご家族も一緒に住むことを許してくれたし。とりあえずは大丈夫かな。
「でも、学校側にもいずれ知られることになるだろうし、別々に暮らせって言われるのかなぁ」
可能性はゼロじゃない。付き合っているならまだしも、単なる先輩後輩、管理人と住人という関係だもんな。もしそう言われたら、俺があけぼの荘を離れるしかないな。そのときはなるべく美優先輩に迷惑がかからないようにしよう。
「あぁ、気持ち良かった」
すると、桃色の寝間着を着た美優先輩が寝室に入ってきた。
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「いえいえ。結構余裕があったよ。タンスを置いても大丈夫だと思う」
「そうですね。改めて部屋の中を見てみると、結構広いですよね」
「元々は伯父夫婦が2人で住んでいたからね。1人だととても広かった。由弦君と一緒でちょうどいい感じだよ。由弦君、この後はどうする?」
「今日は引っ越しの作業もありましたし、お風呂に入ったのでもう寝ようかなと」
「分かった。一緒に引っ越しのことをして、お風呂に入ったからかいい疲れが来てる。……私と一緒に寝てみる?」
そう言うと、美優先輩はふとんの上で正座をする。これも甘えさせてくれているのか、それとも単に先輩が俺と眠ってみたいだけなのか。
さすがに、ベッドやふとんで美優先輩と一緒に寝るのはまずいだろう。姉さんや心愛で歳の近い女の子と一緒に寝るのは慣れているけれど、出会った日に1歳年上の先輩と寝るのはさすがに緊張する。
「今日はベッドとふとん、別々で寝ましょう。どっちかで一緒だと緊張して眠れないかもしれませんし。もちろん、この部屋で一緒に寝ますから」
「……うん、分かった」
ただ、一緒の部屋で眠るってだけで、緊張して眠れないかもしれないけど。
その後、寝室の電気を消して俺はふとんに、美優先輩はベッドに横になる。ふとんも結構気持ちいいな。
やがて、暗さに目が慣れてきて、窓から入ってくる明かりで寝室の中の様子がうっすらと見えてくる。
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「そうですか。もちろん、先輩に何かするつもりはないので安心してください」
「……うん」
さすがに、俺と2人きりで寝室にいたら緊張しちゃうか。ベッドとふとんで別々にして正解だったな。
「由弦君。これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします。これからお世話になります。……ふとんが気持ち良くて眠くなってきました。おやすみなさい、美優先輩」
「うん、おやすみ」
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