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本編
第53話『風向き』
4月18日、木曜日。
今日は朝からよく晴れている。気温も上がるみたいだし、今日の体育の授業は暑さに気を付けないと。
美優先輩とほぼ同じくらいのタイミングで目が覚めたので、今日は俺が朝食を作ることに。焼き鮭と野菜たっぷりの味噌汁を作るつもりだったそうなのでそれを作った。ただし、すぐ側で先輩に見守られなから。
「うん、味噌汁美味しい。出汁も効いているし。濃さもちょうどいいよ」
「ありがとうございます。ただ、味は美優先輩のアドバイスを基に作ったので、これは先輩の味ではないかと。とても美味しいです」
「……そう言われると照れちゃうな。でも、嬉しいよ。ありがとう」
言葉通り、美優先輩は照れくさそうに笑っている。
「話は変わるけど、風花ちゃん……元気になっているといいね」
「そうですね」
昨日の部活帰りの風花のことを美優先輩も気にしていたようだ。あのときの風花はかなり不機嫌な様子だったから、一晩経って気持ちが落ち着いているといいな。
「美優先輩は昨日家に帰ってから風花に電話をしたり、メッセージを送ったりしましたか?」
「ううん、してない。かなり不機嫌そうだったから、そっとしておいた方がいいかなって」
「そうですか。俺も同じような感じです」
「そっか。風花ちゃんから電話やメッセージがあればまだいいんだけど、それもないから不安になってきちゃって」
「そうですか。俺も一切ないですね」
月曜日の花柳先輩のときと似ているな。あのときのように、いつも通り風花と一緒に学校に行ければいいな。
朝食を食べ終わり、俺達は学校に行く準備をする。その間に風花から連絡は来なかった。それが普段通りに学校に行くからという理由だといいけど。もし、一緒に行かないことになったら、風花に電話やメッセージをすることにしよう。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので、モニターで確認すると花柳先輩と風花の姿が映っていた。美優先輩もそれを確認し、安心した笑みを浮かべている。
「はい」
『桐生君の声だ。風花ちゃんと一緒に迎えに来たよ』
「分かりました。今すぐに、美優先輩と一緒に行きますね」
『うん、待ってるね』
「……行きましょうか、美優先輩」
「そうだね!」
美優先輩と一緒に外に出ると、そこには花柳先輩と風花の姿が。風花は普段よりも元気がなさそうに見えるけど、俺達のことを見ると静かな笑みを浮かべた。
「おはよう、風花、花柳先輩」
「おはよう、瑠衣ちゃん、風花ちゃん」
「おはよう、美優、桐生君」
「……おはよう、由弦、美優先輩。その……昨日はごめんなさい。あんな態度を取っちゃって。しかも、先に帰っちゃって」
ごめんなさい、と風花は深く頭を下げた。この様子だと、風花自身も昨日の帰りのことを結構気にしていたようだな。
「ううん、気にしないで、風花。今日は一緒に学校に行けるのかなって不安だったけど、こうして風花と一緒に行くことになって安心しているから」
「私も同じだよ。今日、風花ちゃんの顔を見ることができて安心したよ」
「……昨日の話はここまでにして、4人集まったんだから学校に行きましょう」
花柳先輩がそう言ってあけぼの荘を出発するので、俺達3人は花柳先輩の後をついて行く形に。
「4月も半分が過ぎたからか、陽差しが強くなってきたわね。陽差しを浴びながら歩いていると結構暑くなってくるわ」
花柳先輩はジャケットのボタンを外す。花柳先輩の頬はほんのりと赤くなっていて。自宅からあけぼの荘まで10分くらいあるそうだし、あけぼの荘に来た時点で体が熱くなっていたのかも。
そういえば、校則で4月中はジャケットを着なきゃいけないんだっけ。5月になると、かなり暑くなる日もあるからジャケットの着用が自由になるんだったかな。
花柳先輩が言ったように陽差しが強いな。確かに、歩いていると体が熱くなってくる。穏やかだけど、風が吹いていて良かったよ。
「桐生君のクラスは今日、体育があるの? バッグだけじゃなくてジャージの袋も持っているから」
「ええ。木曜日はうちのクラスは体育があるんですよ。先週は涼しかったので、ジャージを着てちょうどいい感じだったんですけど、今週は着なくてもいいかもしれませんね」
「今日は一日晴れるみたいだもんね。熱中症には気を付けなさいよ」
「ええ、気を付け――」
「あっ」
風花ははっとした表情をして急に立ち止まった。
「どうしたんだ、風花」
「……今日、体育あるのをすっかりと忘れてた。水着はちゃんと持っているんだけど、体操着やジャージを忘れちゃったよ。部活と違って体育の授業は毎日ないからかな。あたし、取りに戻るね」
「分かった。俺達、ここで待っていようか?」
「ううん、いいよ。先に行ってて。あぁ、近いところに住んでて良かった。じゃあ、また後でね!」
風花はあけぼの荘の方に向かって走り始めた。この時間帯に学校と反対方向に向かって走っているからか、そんな風花のことを見る生徒がちらほらと。
先に行っていていいということなので、俺達は3人で再び学校に向かって歩き始める。
「風花ちゃん、昨日のことを気にして忘れちゃったのかな」
「可能性はありそうですね。ただ、本人が言っていたように、毎日ある水泳部で着る水着は忘れないんでしょうけど、週に3回の体育では忘れてしまったのかもしれないです。あとは、水着の入っているバッグを持っているので、体操着やジャージが入っている袋も持っていると勘違いしたとか」
「その可能性もあるかな」
「ただ、あけぼの荘くらいに近いと、忘れ物に気付いたときにいいよね。今の風花ちゃんみたいに走って戻れば十分に間に合うし」
「そうだね、瑠衣ちゃん。私も忘れ物しちゃったときに、あけぼの荘で良かったなぁって思ったことが、1年生のうちに何度かあったな」
美優先輩も忘れ物をすることがあるんだな。とてもしっかりしているし、忘れ物なんてしないイメージがあったけど。
そのまま3人で陽出学院に到着する。風花がいないと何だか変な感じだな。
いつも通り、階段で4階まで登ったところで先輩方と別れて、1年3組の教室へ向かう。教室には加藤と橋本さんが話していた。橋本さんは俺の席に座っている。
「おはよう、加藤、橋本さん」
「おはよう、桐生」
「おはよう、桐生君。席を使わせてくれてありがとね」
俺の席から立ち上がった橋本さんは、教室の中を見渡している。
「ところで、風花は? 体調を崩してお休みなの? それとも、水泳部で朝練があるの? まさか、風花と喧嘩した?」
「橋本さんは色々と訊いてくるね。風花とは一緒にあけぼの荘を出発したんだけど、途中で体操着を忘れたことに気付いたから家に戻ったんだよ。だから、遅れて登校してくるよ」
「そっか。なら一安心ね」
そういえば、今までは登校するときは風花といつも一緒だったな。だから、俺が1人で来たことに橋本さんは心配したんだ。
「こんなことは珍しいから、俺はてっきり姫宮と喧嘩したんだと思ったぜ」
「そっか。まあ、喧嘩はしてないから安心して」
昨日の部活帰りにあんなことがあったけど、今朝、風花が謝ってきたし、きっと大丈夫だろう。それでも、今日はいつも以上に風花のことを気にするようにしておこう。
それからおよそ10分後に風花が登校してきて、橋本さんが風花のことをぎゅっと抱きしめていた。そのことに風花は驚いていたけど、すぐに嬉しそうな笑みを顔に浮かべていた。
ただ、朝のときほどの笑顔を見せることは放課後になるまで一度もなかった。
授業中も何度かため息をついていて。体育は男女別だけど、場所は同じ校庭なので風花のことをたまに見ていたけど、あまり調子が良くなさそうで。
昼休みに美優先輩や花柳先輩と一緒にお昼ご飯を食べるときも、笑顔を見せるものの、昨日までの楽しげな笑顔の面影はなかった。
今日は朝からよく晴れている。気温も上がるみたいだし、今日の体育の授業は暑さに気を付けないと。
美優先輩とほぼ同じくらいのタイミングで目が覚めたので、今日は俺が朝食を作ることに。焼き鮭と野菜たっぷりの味噌汁を作るつもりだったそうなのでそれを作った。ただし、すぐ側で先輩に見守られなから。
「うん、味噌汁美味しい。出汁も効いているし。濃さもちょうどいいよ」
「ありがとうございます。ただ、味は美優先輩のアドバイスを基に作ったので、これは先輩の味ではないかと。とても美味しいです」
「……そう言われると照れちゃうな。でも、嬉しいよ。ありがとう」
言葉通り、美優先輩は照れくさそうに笑っている。
「話は変わるけど、風花ちゃん……元気になっているといいね」
「そうですね」
昨日の部活帰りの風花のことを美優先輩も気にしていたようだ。あのときの風花はかなり不機嫌な様子だったから、一晩経って気持ちが落ち着いているといいな。
「美優先輩は昨日家に帰ってから風花に電話をしたり、メッセージを送ったりしましたか?」
「ううん、してない。かなり不機嫌そうだったから、そっとしておいた方がいいかなって」
「そうですか。俺も同じような感じです」
「そっか。風花ちゃんから電話やメッセージがあればまだいいんだけど、それもないから不安になってきちゃって」
「そうですか。俺も一切ないですね」
月曜日の花柳先輩のときと似ているな。あのときのように、いつも通り風花と一緒に学校に行ければいいな。
朝食を食べ終わり、俺達は学校に行く準備をする。その間に風花から連絡は来なかった。それが普段通りに学校に行くからという理由だといいけど。もし、一緒に行かないことになったら、風花に電話やメッセージをすることにしよう。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので、モニターで確認すると花柳先輩と風花の姿が映っていた。美優先輩もそれを確認し、安心した笑みを浮かべている。
「はい」
『桐生君の声だ。風花ちゃんと一緒に迎えに来たよ』
「分かりました。今すぐに、美優先輩と一緒に行きますね」
『うん、待ってるね』
「……行きましょうか、美優先輩」
「そうだね!」
美優先輩と一緒に外に出ると、そこには花柳先輩と風花の姿が。風花は普段よりも元気がなさそうに見えるけど、俺達のことを見ると静かな笑みを浮かべた。
「おはよう、風花、花柳先輩」
「おはよう、瑠衣ちゃん、風花ちゃん」
「おはよう、美優、桐生君」
「……おはよう、由弦、美優先輩。その……昨日はごめんなさい。あんな態度を取っちゃって。しかも、先に帰っちゃって」
ごめんなさい、と風花は深く頭を下げた。この様子だと、風花自身も昨日の帰りのことを結構気にしていたようだな。
「ううん、気にしないで、風花。今日は一緒に学校に行けるのかなって不安だったけど、こうして風花と一緒に行くことになって安心しているから」
「私も同じだよ。今日、風花ちゃんの顔を見ることができて安心したよ」
「……昨日の話はここまでにして、4人集まったんだから学校に行きましょう」
花柳先輩がそう言ってあけぼの荘を出発するので、俺達3人は花柳先輩の後をついて行く形に。
「4月も半分が過ぎたからか、陽差しが強くなってきたわね。陽差しを浴びながら歩いていると結構暑くなってくるわ」
花柳先輩はジャケットのボタンを外す。花柳先輩の頬はほんのりと赤くなっていて。自宅からあけぼの荘まで10分くらいあるそうだし、あけぼの荘に来た時点で体が熱くなっていたのかも。
そういえば、校則で4月中はジャケットを着なきゃいけないんだっけ。5月になると、かなり暑くなる日もあるからジャケットの着用が自由になるんだったかな。
花柳先輩が言ったように陽差しが強いな。確かに、歩いていると体が熱くなってくる。穏やかだけど、風が吹いていて良かったよ。
「桐生君のクラスは今日、体育があるの? バッグだけじゃなくてジャージの袋も持っているから」
「ええ。木曜日はうちのクラスは体育があるんですよ。先週は涼しかったので、ジャージを着てちょうどいい感じだったんですけど、今週は着なくてもいいかもしれませんね」
「今日は一日晴れるみたいだもんね。熱中症には気を付けなさいよ」
「ええ、気を付け――」
「あっ」
風花ははっとした表情をして急に立ち止まった。
「どうしたんだ、風花」
「……今日、体育あるのをすっかりと忘れてた。水着はちゃんと持っているんだけど、体操着やジャージを忘れちゃったよ。部活と違って体育の授業は毎日ないからかな。あたし、取りに戻るね」
「分かった。俺達、ここで待っていようか?」
「ううん、いいよ。先に行ってて。あぁ、近いところに住んでて良かった。じゃあ、また後でね!」
風花はあけぼの荘の方に向かって走り始めた。この時間帯に学校と反対方向に向かって走っているからか、そんな風花のことを見る生徒がちらほらと。
先に行っていていいということなので、俺達は3人で再び学校に向かって歩き始める。
「風花ちゃん、昨日のことを気にして忘れちゃったのかな」
「可能性はありそうですね。ただ、本人が言っていたように、毎日ある水泳部で着る水着は忘れないんでしょうけど、週に3回の体育では忘れてしまったのかもしれないです。あとは、水着の入っているバッグを持っているので、体操着やジャージが入っている袋も持っていると勘違いしたとか」
「その可能性もあるかな」
「ただ、あけぼの荘くらいに近いと、忘れ物に気付いたときにいいよね。今の風花ちゃんみたいに走って戻れば十分に間に合うし」
「そうだね、瑠衣ちゃん。私も忘れ物しちゃったときに、あけぼの荘で良かったなぁって思ったことが、1年生のうちに何度かあったな」
美優先輩も忘れ物をすることがあるんだな。とてもしっかりしているし、忘れ物なんてしないイメージがあったけど。
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「おはよう、加藤、橋本さん」
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俺の席から立ち上がった橋本さんは、教室の中を見渡している。
「ところで、風花は? 体調を崩してお休みなの? それとも、水泳部で朝練があるの? まさか、風花と喧嘩した?」
「橋本さんは色々と訊いてくるね。風花とは一緒にあけぼの荘を出発したんだけど、途中で体操着を忘れたことに気付いたから家に戻ったんだよ。だから、遅れて登校してくるよ」
「そっか。なら一安心ね」
そういえば、今までは登校するときは風花といつも一緒だったな。だから、俺が1人で来たことに橋本さんは心配したんだ。
「こんなことは珍しいから、俺はてっきり姫宮と喧嘩したんだと思ったぜ」
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