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本編
エピローグ『管理人さんといっしょ。』
4月21日、日曜日。
目を覚ますと、部屋の中がうっすらと明るくなっていた。部屋の時計を見てみると……午前8時過ぎか。昨日はお風呂から出てすぐに寝たから、とても長い時間眠ったんだ。恋人になってから初めての夜だったけど、ドキドキしながらもすぐに眠りについてしまった。
「おはよう、由弦君」
その声が聞こえた瞬間、美優先輩の甘い匂いと温もりをはっきりと感じた。
壁側を向いてみると、そこには優しい笑顔で俺を見ている美優先輩が。
「おはようございます、美優先輩」
「うん、おはよう」
美優先輩からおはようのキスをしてくる。目覚めてすぐに恋人の笑顔を見て、キスできるなんて。何て幸せな朝だろう。
唇を離すと、美優先輩は俺の頭を優しく撫でた。
「少し前に目が覚めて。由弦君がぐっすり寝ていたから、頭を撫でたり、唇や頬にキスしたり、匂いを嗅いでみたり。色々なことをしてたの」
「そうだったんですか。本当に可愛いですね、先輩」
「恋人がすぐ側で寝ているんだもん。色々なことをしたくなっちゃうって。あと、由弦君の寝顔はもちろんだけど、私の寝間着をぎゅっと掴んできたのも可愛かったよ」
ふふっ、と美優先輩は上品に笑う。今の笑顔を含めて、先輩はたまに1歳年上とは思えない大人っぽさや妖艶さのある姿を見せることがある。これから、先輩の魅力をもっと知っていくのだろう。
お互いに宿題も終わっているし、今日はずっとベッドの中で過ごすのもありかもしれない。そんなことを考えながら美優先輩のことを抱きしめる。
「どうしたの、由弦君。急に抱きしめてきて」
「今日はずっと、美優先輩と一緒にこうして過ごすのもありかなって」
「ふふっ、由弦君となら飽きないかもね。由弦君も私も宿題とかやるべきことは終わっているから、朝食を食べながらでもゆっくり考えようよ」
「それがいいですね」
「うん。……それにしても、寝ている由弦君は可愛いけれど、起きている由弦君はかっこいいね。今みたいにキュンとなることもしてくるし。本当に好き」
再び美優先輩の方からキスしてくる。キュンとなることをしてくるのは美優先輩の方じゃないかなぁと思うけれど。
これまでの中で一番幸せな朝だと思いながら、それから少しの間、ベッドの中で美優先輩とキスし続けるのであった。
美優先輩の作った洋風の朝食はとても美味しかった。ここに引っ越してきてから、洋風の朝食を食べることが多くなったけど、先輩の料理の腕がいいから、こういう朝食もいいなと思えるようになった。
また、朝食を食べている間、今日はどう過ごそうかと話した。お互いに宿題などは終わっているし、買い物は昨日行ったので、家でゆっくりと過ごすことに決めた。
それからは、美優先輩と家でゆっくりとした時間を過ごす。
また、午前中に一度、風花のお見舞いに。風花はすっかりと体調が良くなっており、明日から学校に行けそうだという。ただ、大事を取って今日はゆっくりするとのこと。
「風花ちゃんの体調ももう大丈夫そうだね」
「ええ。金曜日はどうなるかと思いましたが、本当に安心しました。……ここ何日か色々なことがあったからか、こうして美優先輩とソファーで隣同士に座ってゆっくりと過ごすのは、とても幸せなことだと思います」
「そうだね。由弦君と一緒にゆっくりとした時間を過ごせるのは私も幸せだよ。恋人になったからか、より幸せ」
美優先輩は不意打ちのキスをしてきた。引っ越した直後から、ソファーに座ってゆっくり過ごすことはしているけれど、キスすると恋人になったんだなぁと実感する。
美優先輩は唇を離してにっこりと笑うと、俺の方に寄り掛かってくる。もう幸せでたまらない。
「こういう時間がゆっくりと過ぎればいいのにね」
「……ですねぇ。ゆっくりと平和に過ぎていってほしいです」
「そうだねぇ。……こんなことを話していると、もうおじいちゃんやおばあちゃんになった感じだよね」
「確かに、そんな感じがしますね。一緒に歳を重ねて、結構な年齢になっても、今みたいに好きな飲み物を飲んでゆっくりできるように頑張りましょうか」
「ふふっ、そうだね。ほどほどに頑張ろう」
「そうですね。途中で息切れしたらそこで終わりか、後の人生に大きく影響することが多そうですし。……本当にこういった話をすると老人になった感じがしますね」
「でしょ? でも、ずーっとこういった時間を過ごせるようにしたいね」
「ええ」
すると、美優先輩はゆっくりと目を閉じる。今度は俺からしてほしいってことかな。
俺は美優先輩にキスをする。何年経っても、付き合い始めた頃のことを笑って話せるようになりたいな。
美優先輩の言うように、好きな人との楽しい時間はゆっくりと流れてほしい。
ただ、現実は甘くないのか、こういう時間ほどあっという間に過ぎてゆく。だからこそ、楽しい時間がより楽しく、大切にしたいと思えるのかもしれない。美優先輩の笑顔を見たり、温もりを感じたり、たまに唇の柔らかさを感じたりしながらそう思うのであった。
4月22日、月曜日。
今週もまた学校生活が始まる。
ただ、今週が終わったら、10日間にも及ぶゴールデンウィークが到来し、その間に元号が平成から令和へと変わる。つまり、今週は平成最後の学校生活の1週間になるわけか。
それに、今日からは美優先輩と恋人として付き合い始めてから初めて登校する。この1週間は本当に特別な週になるだろう。
「今週も学校生活が始まるね。ただ、由弦君と付き合い始めてから初めての登校だし、今週で平成も終わるから特別な感じがするな」
「俺も同じようなことを考えていました。そんな今週を乗り切れば10連休のゴールデンウィークですよ。頑張りましょう」
「頑張ろうね! あと、10連休の間には由弦君と一緒にたくさん思い出を作りたいなぁ」
「ええ。色々なところに行ったり、遊んだりしてたくさん思い出を作りたいですね」
「うん! 約束だよ!」
美優先輩はとびっきりの可愛らしい笑顔を浮かべて、俺にキスをしてくる。もうこれだけでこの1週間を乗り切ることができそうな気がしてきた。
今後、学校でも……キスできたら嬉しいけれど、周りの目があるしあまりすることはないのかな。2人きりとか、俺達の関係を知る親しい人しかいないときならまだしも。
ゆっくりと唇を離すと、美優先輩は俺のことをぎゅっと抱きしめてきた。これから学校で、日中は離ればなれになるからだろうか。
「……そういえば、今日からも風花や花柳先輩と一緒に登校するんですかね。俺は4人で登校することもかまわないのですが」
「……私もそれは考えた。私達が恋人として付き合い始めたから、2人が気を遣って別々に登校する可能性もあるね。私は2人と一緒に登校する時間が好きだし、私達に気を遣わなくても大丈夫だよってメッセージを送ろうとも考えたんだけど、そうしたら逆に気を遣わせちゃうかもしれないと思って送らなかったの」
「そうですか。俺も送ってませんね……」
今からメッセージを出すのは遅い気もするし、ここは2人の判断を待つことにするか。もし、別々で行くことになったら、風花や花柳先輩と学校で話すことにしよう。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので、美優先輩が早足でモニターに向かう。
「はい。……あっ、瑠衣ちゃんに風花ちゃん」
『迎えに来たよ、美優』
「うん。由弦君と一緒に行くね」
そう言って、俺のことを見る美優先輩はとても嬉しそうな表情だった。特に花柳先輩とは1年以上も一緒に学校に行っているから、今日もそれができることが嬉しいのだろう。
俺はスクールバッグを持って、美優先輩に手を引かれる形で一緒に家を出る。そこには普段と同じように風花と花柳先輩の姿が。
「おはようございます、由弦、美優先輩」
「おはよう、美優、桐生君」
「おはようございます、風花、花柳先輩」
「おはよう、瑠衣ちゃん、風花ちゃん」
朝の挨拶を交わした後の2人は笑みを見せているけれど、俺達に気を遣っているのかどこか堅さを感じる。
「……昨日の夜、風花ちゃんとこれから登校するときはどうしよっかって話したの。今まで通り4人で行くのか。それとも、2人とは一緒に行かずに1人で登校するのか。美優は桐生君と恋人として付き合い始めたし、2人きりで登校したいかもしれないから」
「ただ、いきなり一緒に行かないのも2人に気を遣わせちゃうかもしれないと思って、今日は一緒に登校することにしたんです。そのときにこれからはどうしようか話し合おうと思って。……いきなりですけど、2人はこれから登校するときはどうしますか?」
昨日のうちに、風花は花柳先輩とそんな話をしていたのか。今まで一緒に登校していた美優先輩と俺が付き合い始めたら、これからどういう形で登校するか考えるか。
美優先輩の方を見ると、美優先輩は俺のことを見ながら優しい笑みを浮かべた。
「ついさっきまで、由弦君とその話題になったの。その中で私達はこれからも瑠衣ちゃんや風花ちゃんと一緒に登校したいっていう考えに固まったよ。だから、2人さえ良ければこれからも4人一緒に登校してくれませんか?」
俺達の考えを美優先輩が伝えると、風花と花柳先輩は見る見るうちに嬉しそうな表情に変わっていく。
「あたしも4人一緒がいいです! ありがとうございます!」
「……2人がそう言ってくれて良かったよ」
とても嬉しかったのか、花柳先輩は美優先輩のことをぎゅっと抱きしめる。そんな花柳先輩の頭を美優先輩は優しく撫でていた。
「じゃあ、これからも4人一緒に行こうね」
「決定ですね。ところで、風花は体調の方は大丈夫かな?」
「うん! 色々とあったけど、週末はゆっくり休むことができたから、今日からは心機一転頑張るよ!」
「うん、応援しているよ。ただ、病み上がりだから気を付けてね。特に部活のときは」
「もう由弦ったら。心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫だって!」
そう言って、風花は俺の背中を思いっきり叩いてくる。こんなにも痛い想いをさせることができるのだから、本人が言うように大丈夫なのかな。
「じゃあ、今日も4人で一緒に学校に行こう!」
美優先輩がそう言い、俺達はいつも通り4人で学校に向かって歩き始める。ただし、今までとは違って美優先輩と恋人繋ぎをして。
新しい場所で住み始めて、その日々を過ごしていくうちに変わることもある。だからこそ、変わらないことがあるというのはとても幸せだと思えるのだ。
一緒に住み始めたとき、美優先輩とは単なる同居人だった。
4月になって、学校の先輩後輩になった。
そして、一昨日、美優先輩と俺は恋人同士になった。
それでも、あけぼの荘の管理人さんと一緒に住んでいることに変わりはない。そのことにとても安心感を覚える。
これからも、恋人でもある白鳥美優先輩という可愛らしい管理人さんと一緒に、楽しくて愛おしい時間を過ごせるように頑張っていこう。
春の日差しはもちろんのこと、美優先輩の手や笑顔から感じられる温もりは今日も優しかった。
本編 おわり
続編に続く。
目を覚ますと、部屋の中がうっすらと明るくなっていた。部屋の時計を見てみると……午前8時過ぎか。昨日はお風呂から出てすぐに寝たから、とても長い時間眠ったんだ。恋人になってから初めての夜だったけど、ドキドキしながらもすぐに眠りについてしまった。
「おはよう、由弦君」
その声が聞こえた瞬間、美優先輩の甘い匂いと温もりをはっきりと感じた。
壁側を向いてみると、そこには優しい笑顔で俺を見ている美優先輩が。
「おはようございます、美優先輩」
「うん、おはよう」
美優先輩からおはようのキスをしてくる。目覚めてすぐに恋人の笑顔を見て、キスできるなんて。何て幸せな朝だろう。
唇を離すと、美優先輩は俺の頭を優しく撫でた。
「少し前に目が覚めて。由弦君がぐっすり寝ていたから、頭を撫でたり、唇や頬にキスしたり、匂いを嗅いでみたり。色々なことをしてたの」
「そうだったんですか。本当に可愛いですね、先輩」
「恋人がすぐ側で寝ているんだもん。色々なことをしたくなっちゃうって。あと、由弦君の寝顔はもちろんだけど、私の寝間着をぎゅっと掴んできたのも可愛かったよ」
ふふっ、と美優先輩は上品に笑う。今の笑顔を含めて、先輩はたまに1歳年上とは思えない大人っぽさや妖艶さのある姿を見せることがある。これから、先輩の魅力をもっと知っていくのだろう。
お互いに宿題も終わっているし、今日はずっとベッドの中で過ごすのもありかもしれない。そんなことを考えながら美優先輩のことを抱きしめる。
「どうしたの、由弦君。急に抱きしめてきて」
「今日はずっと、美優先輩と一緒にこうして過ごすのもありかなって」
「ふふっ、由弦君となら飽きないかもね。由弦君も私も宿題とかやるべきことは終わっているから、朝食を食べながらでもゆっくり考えようよ」
「それがいいですね」
「うん。……それにしても、寝ている由弦君は可愛いけれど、起きている由弦君はかっこいいね。今みたいにキュンとなることもしてくるし。本当に好き」
再び美優先輩の方からキスしてくる。キュンとなることをしてくるのは美優先輩の方じゃないかなぁと思うけれど。
これまでの中で一番幸せな朝だと思いながら、それから少しの間、ベッドの中で美優先輩とキスし続けるのであった。
美優先輩の作った洋風の朝食はとても美味しかった。ここに引っ越してきてから、洋風の朝食を食べることが多くなったけど、先輩の料理の腕がいいから、こういう朝食もいいなと思えるようになった。
また、朝食を食べている間、今日はどう過ごそうかと話した。お互いに宿題などは終わっているし、買い物は昨日行ったので、家でゆっくりと過ごすことに決めた。
それからは、美優先輩と家でゆっくりとした時間を過ごす。
また、午前中に一度、風花のお見舞いに。風花はすっかりと体調が良くなっており、明日から学校に行けそうだという。ただ、大事を取って今日はゆっくりするとのこと。
「風花ちゃんの体調ももう大丈夫そうだね」
「ええ。金曜日はどうなるかと思いましたが、本当に安心しました。……ここ何日か色々なことがあったからか、こうして美優先輩とソファーで隣同士に座ってゆっくりと過ごすのは、とても幸せなことだと思います」
「そうだね。由弦君と一緒にゆっくりとした時間を過ごせるのは私も幸せだよ。恋人になったからか、より幸せ」
美優先輩は不意打ちのキスをしてきた。引っ越した直後から、ソファーに座ってゆっくり過ごすことはしているけれど、キスすると恋人になったんだなぁと実感する。
美優先輩は唇を離してにっこりと笑うと、俺の方に寄り掛かってくる。もう幸せでたまらない。
「こういう時間がゆっくりと過ぎればいいのにね」
「……ですねぇ。ゆっくりと平和に過ぎていってほしいです」
「そうだねぇ。……こんなことを話していると、もうおじいちゃんやおばあちゃんになった感じだよね」
「確かに、そんな感じがしますね。一緒に歳を重ねて、結構な年齢になっても、今みたいに好きな飲み物を飲んでゆっくりできるように頑張りましょうか」
「ふふっ、そうだね。ほどほどに頑張ろう」
「そうですね。途中で息切れしたらそこで終わりか、後の人生に大きく影響することが多そうですし。……本当にこういった話をすると老人になった感じがしますね」
「でしょ? でも、ずーっとこういった時間を過ごせるようにしたいね」
「ええ」
すると、美優先輩はゆっくりと目を閉じる。今度は俺からしてほしいってことかな。
俺は美優先輩にキスをする。何年経っても、付き合い始めた頃のことを笑って話せるようになりたいな。
美優先輩の言うように、好きな人との楽しい時間はゆっくりと流れてほしい。
ただ、現実は甘くないのか、こういう時間ほどあっという間に過ぎてゆく。だからこそ、楽しい時間がより楽しく、大切にしたいと思えるのかもしれない。美優先輩の笑顔を見たり、温もりを感じたり、たまに唇の柔らかさを感じたりしながらそう思うのであった。
4月22日、月曜日。
今週もまた学校生活が始まる。
ただ、今週が終わったら、10日間にも及ぶゴールデンウィークが到来し、その間に元号が平成から令和へと変わる。つまり、今週は平成最後の学校生活の1週間になるわけか。
それに、今日からは美優先輩と恋人として付き合い始めてから初めて登校する。この1週間は本当に特別な週になるだろう。
「今週も学校生活が始まるね。ただ、由弦君と付き合い始めてから初めての登校だし、今週で平成も終わるから特別な感じがするな」
「俺も同じようなことを考えていました。そんな今週を乗り切れば10連休のゴールデンウィークですよ。頑張りましょう」
「頑張ろうね! あと、10連休の間には由弦君と一緒にたくさん思い出を作りたいなぁ」
「ええ。色々なところに行ったり、遊んだりしてたくさん思い出を作りたいですね」
「うん! 約束だよ!」
美優先輩はとびっきりの可愛らしい笑顔を浮かべて、俺にキスをしてくる。もうこれだけでこの1週間を乗り切ることができそうな気がしてきた。
今後、学校でも……キスできたら嬉しいけれど、周りの目があるしあまりすることはないのかな。2人きりとか、俺達の関係を知る親しい人しかいないときならまだしも。
ゆっくりと唇を離すと、美優先輩は俺のことをぎゅっと抱きしめてきた。これから学校で、日中は離ればなれになるからだろうか。
「……そういえば、今日からも風花や花柳先輩と一緒に登校するんですかね。俺は4人で登校することもかまわないのですが」
「……私もそれは考えた。私達が恋人として付き合い始めたから、2人が気を遣って別々に登校する可能性もあるね。私は2人と一緒に登校する時間が好きだし、私達に気を遣わなくても大丈夫だよってメッセージを送ろうとも考えたんだけど、そうしたら逆に気を遣わせちゃうかもしれないと思って送らなかったの」
「そうですか。俺も送ってませんね……」
今からメッセージを出すのは遅い気もするし、ここは2人の判断を待つことにするか。もし、別々で行くことになったら、風花や花柳先輩と学校で話すことにしよう。
――ピンポーン。
インターホンが鳴ったので、美優先輩が早足でモニターに向かう。
「はい。……あっ、瑠衣ちゃんに風花ちゃん」
『迎えに来たよ、美優』
「うん。由弦君と一緒に行くね」
そう言って、俺のことを見る美優先輩はとても嬉しそうな表情だった。特に花柳先輩とは1年以上も一緒に学校に行っているから、今日もそれができることが嬉しいのだろう。
俺はスクールバッグを持って、美優先輩に手を引かれる形で一緒に家を出る。そこには普段と同じように風花と花柳先輩の姿が。
「おはようございます、由弦、美優先輩」
「おはよう、美優、桐生君」
「おはようございます、風花、花柳先輩」
「おはよう、瑠衣ちゃん、風花ちゃん」
朝の挨拶を交わした後の2人は笑みを見せているけれど、俺達に気を遣っているのかどこか堅さを感じる。
「……昨日の夜、風花ちゃんとこれから登校するときはどうしよっかって話したの。今まで通り4人で行くのか。それとも、2人とは一緒に行かずに1人で登校するのか。美優は桐生君と恋人として付き合い始めたし、2人きりで登校したいかもしれないから」
「ただ、いきなり一緒に行かないのも2人に気を遣わせちゃうかもしれないと思って、今日は一緒に登校することにしたんです。そのときにこれからはどうしようか話し合おうと思って。……いきなりですけど、2人はこれから登校するときはどうしますか?」
昨日のうちに、風花は花柳先輩とそんな話をしていたのか。今まで一緒に登校していた美優先輩と俺が付き合い始めたら、これからどういう形で登校するか考えるか。
美優先輩の方を見ると、美優先輩は俺のことを見ながら優しい笑みを浮かべた。
「ついさっきまで、由弦君とその話題になったの。その中で私達はこれからも瑠衣ちゃんや風花ちゃんと一緒に登校したいっていう考えに固まったよ。だから、2人さえ良ければこれからも4人一緒に登校してくれませんか?」
俺達の考えを美優先輩が伝えると、風花と花柳先輩は見る見るうちに嬉しそうな表情に変わっていく。
「あたしも4人一緒がいいです! ありがとうございます!」
「……2人がそう言ってくれて良かったよ」
とても嬉しかったのか、花柳先輩は美優先輩のことをぎゅっと抱きしめる。そんな花柳先輩の頭を美優先輩は優しく撫でていた。
「じゃあ、これからも4人一緒に行こうね」
「決定ですね。ところで、風花は体調の方は大丈夫かな?」
「うん! 色々とあったけど、週末はゆっくり休むことができたから、今日からは心機一転頑張るよ!」
「うん、応援しているよ。ただ、病み上がりだから気を付けてね。特に部活のときは」
「もう由弦ったら。心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫だって!」
そう言って、風花は俺の背中を思いっきり叩いてくる。こんなにも痛い想いをさせることができるのだから、本人が言うように大丈夫なのかな。
「じゃあ、今日も4人で一緒に学校に行こう!」
美優先輩がそう言い、俺達はいつも通り4人で学校に向かって歩き始める。ただし、今までとは違って美優先輩と恋人繋ぎをして。
新しい場所で住み始めて、その日々を過ごしていくうちに変わることもある。だからこそ、変わらないことがあるというのはとても幸せだと思えるのだ。
一緒に住み始めたとき、美優先輩とは単なる同居人だった。
4月になって、学校の先輩後輩になった。
そして、一昨日、美優先輩と俺は恋人同士になった。
それでも、あけぼの荘の管理人さんと一緒に住んでいることに変わりはない。そのことにとても安心感を覚える。
これからも、恋人でもある白鳥美優先輩という可愛らしい管理人さんと一緒に、楽しくて愛おしい時間を過ごせるように頑張っていこう。
春の日差しはもちろんのこと、美優先輩の手や笑顔から感じられる温もりは今日も優しかった。
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