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続編
第26話『ババ抜き-予選-』
王様ゲームを遊び終え、みんなで温かい日本茶を飲みながらゆっくりしているとき、霧嶋先生が遊びにきた。寒いからか、先生はパンツスタイルの服装の上にベージュのロングコートを着ていた。
「白鳥さん、ごめんなさい。連絡をくれたのに。昨日、家に帰ってお酒を呑んだからぐっすり寝てしまって」
「いえいえ、気にしないでください。今日も来てくれて嬉しいです。しかも、雨が降って肌寒い中で」
「いいのよ。平成という時代の別れの寂しさを肌で感じているようで、とても貴重な経験ができたし。それに、眠気も覚めたから」
霧嶋先生は穏やかな笑顔でそう言った。さすがは国語教師。言うことが違うな。俺なんて、季節が冬に逆戻りした感じがしてちょっと嫌だと思った程度だし。
「何かスイーツでも差し入れしようと思って、コンビニでチョコレートマシュマロと抹茶マシュマロを買ってきたわ。私がオススメするコンビニスイーツよ。日本茶に合うかどうかは分からないけれど、どうぞ」
『ありがとうございます!』
すぐに女子学生全員が嬉しそうにお礼を言う。俺も彼女達に続いてお礼を言った。
美優先輩は霧嶋先生からコンビニの袋を受け取り、さっそくマシュマロの袋を開封する。みんな、マシュマロを食べて幸せそうだ。
「ところで、桐生君。ひとつ、訊きたいことがあるのだけれど」
「何でしょう?」
「……どうして、あなたは黒いネコ耳カチューシャを頭に付けているのかしら?」
コートを脱ぎながらそう問いかけられる。やっぱり、霧嶋先生も気になるよな。さっき、両親にビデオ電話で平成最後の日だからと感謝の気持ちを伝えたときにも同じことを訊かれたよ。
「実は10分くらい前まで王様ゲームをやっていて。花柳先輩が王様になったときの命令で、お昼ご飯を食べに行く直前までずっとネコ耳カチューシャを付けることになっているんです」
「なるほどね。……結構似合っているわよ」
笑顔でそう言って、霧嶋先生はスマホで俺のことを撮影した。猫が大好きな先生にとって、今の俺の姿はいいと思えたのだろう。
「まさか、平成最後の日に、教え子の自宅でネコ耳カチューシャをつけた教え子と会うとは思わなかったわ」
「俺だって、平成最後の日にネコ耳カチューシャを付けさせられて、その姿を担任の先生に写真を撮られるとは思いませんでしたよ」
「そう。……人生、何が起こるか分からないわね」
「同感です」
俺は霧嶋先生と目を合わせ、一度、しっかりと頷き合った。
「一佳先生、温かい日本茶を淹れました。あと、コートは寝室の方にかけておきますね」
「ありがとう、白鳥さん」
美優先輩はソファーの前にあるテーブルにマグカップを置き、霧嶋先生からコートを受け取ってリビングを後にする。
霧嶋先生はソファーに座って、美優先輩が持ってきた日本茶をさっそく飲む。
「美味しい。温かいものが身に沁みるわ。気持ちも落ち着く」
「外が結構寒かったって分かりますね。そうだ、一佳先生が来たから王様ゲームの延長戦でもやります? 一佳先生が関わるように、王様が誰なのか決めて、先生に命令するという形で」
「……それでは、私が不利益を被る可能性しかないわ、姫宮さん。却下よ。そもそも、それを王様ゲームと言うのかしら。却下よ。大事なことだから二度言ったわ」
二度却下して正解だと思う。特に風花や花柳先輩、雫姉さんが王様になったら霧嶋先生が酷い目に遭いそうだから。
「面白いと思ったんですけどね。王様ゲームもやったので、他に何か9人でできるゲームがありますかね、瑠衣先輩」
「数人だと、とりあえずはトランプで遊ぶことが多いけれど……」
「トランプはお姉ちゃん持ってきてるよ」
「トランプなら私も持ってきています。みなさんと遊ぶことがあるかもしれないと思って」
「トランプは家にもあるよ」
「3組あるならちょうどいいじゃないですか、美優先輩。ここには9人いますし。例えば、あるゲームを3人1組に分かれてまずは予選をやる。それで、勝った3人で決勝戦をやって優勝したらご褒美をもらうとか」
「いい考えね、風花ちゃん。ただ、その逆で、それぞれの予選で負けた3人が最下位決定戦をやって、そこで負けた人が罰ゲームを受けるっていうのも面白そう」
「それもいいですね、瑠衣先輩!」
どんなゲームをやるとはともかく、予選と決勝があるというのは勝負をする上で面白いかもしれない。多くの人が集まったからこそできる特別さも感じられるし。
その後、みんなで話し合った結果、トランプでババ抜きをすることに決めた。せっかくだからと、雫姉さんの提案で『平成最後のババ抜き最弱王決定戦』と称し、花柳先輩の考えた流れでゲームを進めることにした。
予選の組み合わせは白鳥3姉妹、桐生3きょうだい、それ以外の風花、花柳先輩、霧嶋先生という形にした。
トランプは3組あるため、予選は3組同時でスタートすることに。白鳥3姉妹は寝室。桐生3きょうだいは食卓。風花、花柳先輩、霧嶋先生はテレビの前にあるテーブルで行なうことに。
「よーし、お姉ちゃんやお兄ちゃんに勝つぞ!」
「ふふっ、お姉ちゃんは強いよ。ゆーくんもなかなか強いよね」
「家族や友達とやったときは結構勝ったな。でも、引っ越してきてからは初めてやるから、前よりは弱くなっていると思うよ」
雫姉さんには勝ちたいけれど、心愛には勝たせてあげたいな。
俺がトランプを配り、手札を確認する。おっ、ジョーカーがない。ということは、雫姉さんか心愛のどちらかが持っているのか。
「……はあっ」
心愛のそんなため息が聞こえたので、誰がジョーカーを持っているのかが分かってしまった。
ジャンケンで勝った雫姉さんが、心愛の手札からカードを引くところからゲームがスタート。俺は雫姉さんの手札からカードを引き、心愛に自分の手札を引かれる流れに。
「あらぁ」
雫姉さんのそんな声が聞こえた瞬間、心愛の表情が凄く良くなっている。雫姉さんがジョーカーを引いたのか。
「さあ、ゆーくん」
「……ああ」
雫姉さんって昔からポーカーフェイスで、表情から読むことができないんだよな。今のように常に穏やかな笑みを浮かべていて。
どこかにジョーカーがあるのは確実なんだ。でも、どれがジョーカーなのか見当が付かない。
「もう、ゆーくんったら。お姉ちゃんのことを見つめちゃって。優しいゆーくんも好きだけど、今みたいに真剣な表情で目を鋭くしているゆーくんもかっこよくて好き」
「……そりゃどうも」
ジョーカーを持っているのに、雫姉さんは余裕そうだ。ここは何も考えずに引いた方が良さそうだな。
雫姉さんの手札からカードを引くと、それはハートの5だった。手札にスペードの5があるので枚数を減らすことができた。
それからもジョーカーを引くことはなく、順調に手札を減らしていく。心愛や雫姉さんも順調に減らしているので、結構な接戦だな。そんな中、
「やったー! 上がりー!」
「おめでとう、風花ちゃん!」
「……ブランクね。見事に負けてしまったわ」
風花、花柳先輩、霧嶋先生による予選が終わり、どうやら霧嶋先生が負けてしまったようだ。先生のため息が切なく響く。
「さあ、ゆーくん。引いて」
「うん。……あっ!」
ジョーカーを引いてしまい、思わず声が出てしまった。
俺がジョーカーを引いたことで雫姉さんは上機嫌。残り1枚というのもあるかもしれない。それに対して、俺がジョーカーを引いたことが分かったのか、心愛は不安そうな表情になる。
「さあ、心愛」
「う、うん」
心愛、ジョーカーは引くなよ。
心愛は震えた手で、俺の手札からゆっくりとダイヤの7を引いた。ペアはできなかったようだけど、ジョーカーではなかったのかとてもほっとした様子だった。
そして、雫姉さんが心愛の手札からカードを引いて、
「よしっ! 揃った! 1番乗り!」
「やりましたね! 雫さん!」
「強いですね!」
「ありがとう、風花ちゃん、瑠衣ちゃん」
雫姉さんは嬉しそうな様子で風花や花柳先輩とハイタッチ。これが勝者の笑顔なのだろうか。物凄く眩しい。その奥に、ソファーでだらけている霧嶋先生の姿が見える。
「姉さんが上がったから、心愛が俺の手札を引くんだね。ハートのQを引くことができたら、心愛の勝ちだよ」
「よーし、あたし勝つよ!」
さあ、心愛。心愛から見て左側にあるハートのQを取るんだ。
「どっちにしようかなぁ……」
「どっちがQかな?」
「う~ん、じゃあ……」
そう言って、心愛は向かって右側のカード……ジョーカーの方を取ってしまった。
「ううっ、ジョーカー取っちゃったよ……」
「大丈夫よ、ここちゃん。これで終わりじゃないから。まだまだ勝つチャンスはあるよ」
「うん!」
俺も心愛を勝たせたい。心愛に罰ゲームをさせたくないし。よし、何としても次はジョーカーを引かなければ。
「さあ、お兄ちゃん! 勝負だよ!」
「ああ」
俺から向かって右側のカードと左側のカード。どっちがジョーカーなんだ?
とりあえず、右側のカードに手を伸ばすと、心愛は凄くがっかりとした表情に。逆に左側のカードに手を伸ばすととても嬉しそうな表情に変わる。選ぶのに最適な材料があって良かったよ。
「じゃあ、こっち」
左側のカードを引くと……予想通りジョーカーだった。心愛はほっとした表情に。
「次こそQを引くよ、お兄ちゃん」
「そうか。じゃあ、どっちがQかな?」
さっきと同じで、心愛から向かって左側のカードをハートのQにした。
「さっきはあたしから見て右側のカードがジョーカーだったから、今度は左側がジョーカー……なんていう単純なことをお兄ちゃんはしないはず! 今度は左側を取るよ!」
えいっ! と、心愛は左側……ハートのQのカードを取った。
「やったー! 勝ったー!」
「おめでとう、ここちゃん!」
「心愛ちゃん、由弦に勝ったね!」
「よくやったわ!」
「えへへっ」
心愛は雫姉さん、風花、花柳先輩から祝福されて嬉しそうだ。俺も心愛が勝ってくれて嬉しいけど、風花や花柳先輩が凄く喜んでいるので複雑な気持ちになる。
その後、白鳥3姉妹による予選も終わり、そちらでは朱莉ちゃんが最弱王決定戦に進出することが決まったのであった。
「白鳥さん、ごめんなさい。連絡をくれたのに。昨日、家に帰ってお酒を呑んだからぐっすり寝てしまって」
「いえいえ、気にしないでください。今日も来てくれて嬉しいです。しかも、雨が降って肌寒い中で」
「いいのよ。平成という時代の別れの寂しさを肌で感じているようで、とても貴重な経験ができたし。それに、眠気も覚めたから」
霧嶋先生は穏やかな笑顔でそう言った。さすがは国語教師。言うことが違うな。俺なんて、季節が冬に逆戻りした感じがしてちょっと嫌だと思った程度だし。
「何かスイーツでも差し入れしようと思って、コンビニでチョコレートマシュマロと抹茶マシュマロを買ってきたわ。私がオススメするコンビニスイーツよ。日本茶に合うかどうかは分からないけれど、どうぞ」
『ありがとうございます!』
すぐに女子学生全員が嬉しそうにお礼を言う。俺も彼女達に続いてお礼を言った。
美優先輩は霧嶋先生からコンビニの袋を受け取り、さっそくマシュマロの袋を開封する。みんな、マシュマロを食べて幸せそうだ。
「ところで、桐生君。ひとつ、訊きたいことがあるのだけれど」
「何でしょう?」
「……どうして、あなたは黒いネコ耳カチューシャを頭に付けているのかしら?」
コートを脱ぎながらそう問いかけられる。やっぱり、霧嶋先生も気になるよな。さっき、両親にビデオ電話で平成最後の日だからと感謝の気持ちを伝えたときにも同じことを訊かれたよ。
「実は10分くらい前まで王様ゲームをやっていて。花柳先輩が王様になったときの命令で、お昼ご飯を食べに行く直前までずっとネコ耳カチューシャを付けることになっているんです」
「なるほどね。……結構似合っているわよ」
笑顔でそう言って、霧嶋先生はスマホで俺のことを撮影した。猫が大好きな先生にとって、今の俺の姿はいいと思えたのだろう。
「まさか、平成最後の日に、教え子の自宅でネコ耳カチューシャをつけた教え子と会うとは思わなかったわ」
「俺だって、平成最後の日にネコ耳カチューシャを付けさせられて、その姿を担任の先生に写真を撮られるとは思いませんでしたよ」
「そう。……人生、何が起こるか分からないわね」
「同感です」
俺は霧嶋先生と目を合わせ、一度、しっかりと頷き合った。
「一佳先生、温かい日本茶を淹れました。あと、コートは寝室の方にかけておきますね」
「ありがとう、白鳥さん」
美優先輩はソファーの前にあるテーブルにマグカップを置き、霧嶋先生からコートを受け取ってリビングを後にする。
霧嶋先生はソファーに座って、美優先輩が持ってきた日本茶をさっそく飲む。
「美味しい。温かいものが身に沁みるわ。気持ちも落ち着く」
「外が結構寒かったって分かりますね。そうだ、一佳先生が来たから王様ゲームの延長戦でもやります? 一佳先生が関わるように、王様が誰なのか決めて、先生に命令するという形で」
「……それでは、私が不利益を被る可能性しかないわ、姫宮さん。却下よ。そもそも、それを王様ゲームと言うのかしら。却下よ。大事なことだから二度言ったわ」
二度却下して正解だと思う。特に風花や花柳先輩、雫姉さんが王様になったら霧嶋先生が酷い目に遭いそうだから。
「面白いと思ったんですけどね。王様ゲームもやったので、他に何か9人でできるゲームがありますかね、瑠衣先輩」
「数人だと、とりあえずはトランプで遊ぶことが多いけれど……」
「トランプはお姉ちゃん持ってきてるよ」
「トランプなら私も持ってきています。みなさんと遊ぶことがあるかもしれないと思って」
「トランプは家にもあるよ」
「3組あるならちょうどいいじゃないですか、美優先輩。ここには9人いますし。例えば、あるゲームを3人1組に分かれてまずは予選をやる。それで、勝った3人で決勝戦をやって優勝したらご褒美をもらうとか」
「いい考えね、風花ちゃん。ただ、その逆で、それぞれの予選で負けた3人が最下位決定戦をやって、そこで負けた人が罰ゲームを受けるっていうのも面白そう」
「それもいいですね、瑠衣先輩!」
どんなゲームをやるとはともかく、予選と決勝があるというのは勝負をする上で面白いかもしれない。多くの人が集まったからこそできる特別さも感じられるし。
その後、みんなで話し合った結果、トランプでババ抜きをすることに決めた。せっかくだからと、雫姉さんの提案で『平成最後のババ抜き最弱王決定戦』と称し、花柳先輩の考えた流れでゲームを進めることにした。
予選の組み合わせは白鳥3姉妹、桐生3きょうだい、それ以外の風花、花柳先輩、霧嶋先生という形にした。
トランプは3組あるため、予選は3組同時でスタートすることに。白鳥3姉妹は寝室。桐生3きょうだいは食卓。風花、花柳先輩、霧嶋先生はテレビの前にあるテーブルで行なうことに。
「よーし、お姉ちゃんやお兄ちゃんに勝つぞ!」
「ふふっ、お姉ちゃんは強いよ。ゆーくんもなかなか強いよね」
「家族や友達とやったときは結構勝ったな。でも、引っ越してきてからは初めてやるから、前よりは弱くなっていると思うよ」
雫姉さんには勝ちたいけれど、心愛には勝たせてあげたいな。
俺がトランプを配り、手札を確認する。おっ、ジョーカーがない。ということは、雫姉さんか心愛のどちらかが持っているのか。
「……はあっ」
心愛のそんなため息が聞こえたので、誰がジョーカーを持っているのかが分かってしまった。
ジャンケンで勝った雫姉さんが、心愛の手札からカードを引くところからゲームがスタート。俺は雫姉さんの手札からカードを引き、心愛に自分の手札を引かれる流れに。
「あらぁ」
雫姉さんのそんな声が聞こえた瞬間、心愛の表情が凄く良くなっている。雫姉さんがジョーカーを引いたのか。
「さあ、ゆーくん」
「……ああ」
雫姉さんって昔からポーカーフェイスで、表情から読むことができないんだよな。今のように常に穏やかな笑みを浮かべていて。
どこかにジョーカーがあるのは確実なんだ。でも、どれがジョーカーなのか見当が付かない。
「もう、ゆーくんったら。お姉ちゃんのことを見つめちゃって。優しいゆーくんも好きだけど、今みたいに真剣な表情で目を鋭くしているゆーくんもかっこよくて好き」
「……そりゃどうも」
ジョーカーを持っているのに、雫姉さんは余裕そうだ。ここは何も考えずに引いた方が良さそうだな。
雫姉さんの手札からカードを引くと、それはハートの5だった。手札にスペードの5があるので枚数を減らすことができた。
それからもジョーカーを引くことはなく、順調に手札を減らしていく。心愛や雫姉さんも順調に減らしているので、結構な接戦だな。そんな中、
「やったー! 上がりー!」
「おめでとう、風花ちゃん!」
「……ブランクね。見事に負けてしまったわ」
風花、花柳先輩、霧嶋先生による予選が終わり、どうやら霧嶋先生が負けてしまったようだ。先生のため息が切なく響く。
「さあ、ゆーくん。引いて」
「うん。……あっ!」
ジョーカーを引いてしまい、思わず声が出てしまった。
俺がジョーカーを引いたことで雫姉さんは上機嫌。残り1枚というのもあるかもしれない。それに対して、俺がジョーカーを引いたことが分かったのか、心愛は不安そうな表情になる。
「さあ、心愛」
「う、うん」
心愛、ジョーカーは引くなよ。
心愛は震えた手で、俺の手札からゆっくりとダイヤの7を引いた。ペアはできなかったようだけど、ジョーカーではなかったのかとてもほっとした様子だった。
そして、雫姉さんが心愛の手札からカードを引いて、
「よしっ! 揃った! 1番乗り!」
「やりましたね! 雫さん!」
「強いですね!」
「ありがとう、風花ちゃん、瑠衣ちゃん」
雫姉さんは嬉しそうな様子で風花や花柳先輩とハイタッチ。これが勝者の笑顔なのだろうか。物凄く眩しい。その奥に、ソファーでだらけている霧嶋先生の姿が見える。
「姉さんが上がったから、心愛が俺の手札を引くんだね。ハートのQを引くことができたら、心愛の勝ちだよ」
「よーし、あたし勝つよ!」
さあ、心愛。心愛から見て左側にあるハートのQを取るんだ。
「どっちにしようかなぁ……」
「どっちがQかな?」
「う~ん、じゃあ……」
そう言って、心愛は向かって右側のカード……ジョーカーの方を取ってしまった。
「ううっ、ジョーカー取っちゃったよ……」
「大丈夫よ、ここちゃん。これで終わりじゃないから。まだまだ勝つチャンスはあるよ」
「うん!」
俺も心愛を勝たせたい。心愛に罰ゲームをさせたくないし。よし、何としても次はジョーカーを引かなければ。
「さあ、お兄ちゃん! 勝負だよ!」
「ああ」
俺から向かって右側のカードと左側のカード。どっちがジョーカーなんだ?
とりあえず、右側のカードに手を伸ばすと、心愛は凄くがっかりとした表情に。逆に左側のカードに手を伸ばすととても嬉しそうな表情に変わる。選ぶのに最適な材料があって良かったよ。
「じゃあ、こっち」
左側のカードを引くと……予想通りジョーカーだった。心愛はほっとした表情に。
「次こそQを引くよ、お兄ちゃん」
「そうか。じゃあ、どっちがQかな?」
さっきと同じで、心愛から向かって左側のカードをハートのQにした。
「さっきはあたしから見て右側のカードがジョーカーだったから、今度は左側がジョーカー……なんていう単純なことをお兄ちゃんはしないはず! 今度は左側を取るよ!」
えいっ! と、心愛は左側……ハートのQのカードを取った。
「やったー! 勝ったー!」
「おめでとう、ここちゃん!」
「心愛ちゃん、由弦に勝ったね!」
「よくやったわ!」
「えへへっ」
心愛は雫姉さん、風花、花柳先輩から祝福されて嬉しそうだ。俺も心愛が勝ってくれて嬉しいけど、風花や花柳先輩が凄く喜んでいるので複雑な気持ちになる。
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