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続編
第31話『始まりの始まり』
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あれからすぐに、風花は花柳先輩と一緒に102号室に帰り、あけぼの荘の住人たちはそれぞれの部屋に戻っていった。
「それじゃ、私も帰るわ。とても思い出深い改元の瞬間だったわ。みんな、ありがとう」
「こちらこそありがとうございます、一佳先生。明日は11時頃に元号初詣に行こうと思っています」
「分かったわ。その頃に成実さんと一緒にここに来るわね」
「はい」
「霧嶋先生。途中まででも送っていきましょうか? 夜中ですから」
「お気持ちだけで十分よ、桐生君。それに、この地域の条例で高校生以下は今の時間は外出禁止だから」
「……そういえば、そんな決まりがありましたっけ」
地元でもそんな条例があった気がする。霧嶋先生の言う通り、日付が変わった真夜中に外出しちゃダメか。
「では、今年で20歳になる私が一佳さんをエスコートしましょうか?」
「ふふっ、エスコートって。雫さんは土地勘ないだろうし、今は夜中だから。お気持ちだけ受け取っておくわ。ありがとう」
「……いえいえ」
とは言うものの、雫姉さんはつまらないと言いたげな様子。それだけ、霧嶋先生と仲良くなれたってことかな。お風呂から出た後も、姉さんは先生とソファーに座ってずっと楽しそうに喋っていたし。先生も優しい笑顔で姉さんの頭を撫でている。先生と一緒だと姉さんが幼く見えるな。
「霧嶋先生、気を付けて帰ってください。お酒を呑んでもいいですが、寝坊しないように気を付けてくださいね」
「ええ、気をつけるわ。では、また明日」
霧嶋先生は俺達に小さく手を振って家を後にした。
日も跨ぎ、明日は元号初詣にも行くので、俺達はすぐに寝ることに。
昨日と同じく、雫姉さん、心愛、朱莉ちゃん、葵ちゃんは寝室で、美優先輩と俺はリビングで2人きりで眠る。もちろん、寝る前には先輩とたっぷりキスするのであった。
「さあ、由弦君! 結婚しよう!」
あけぼの荘の入り前で、ウェディングドレス姿の美優先輩がそう言ってくる。その姿はとても可愛らしいけど、どうしてここでそんな姿をしているのかという気持ちの方が勝る。
「あの、美優先輩。結婚したい気持ちはもちろんありますけど、俺はまだ15歳なので法律上結婚できないんですよ」
「もう、由弦君ったら。何を言っているの。由弦君は高校を卒業して社会人になったじゃない。あと、私のお腹の中に、私達の新しい命が宿ったからって。卒業したタイミングで入籍して、私は桐生美優になったんだよ。お腹があまり大きくならないうちに結婚式を挙げようって話したじゃない。出会いの場所であるあけぼの荘でやろうって」
「……そ、そうなんですか」
何が何だかよく分からないけれど、とにかく美優先輩と俺は入籍して、美優先輩のお腹の中には俺との子供がいるのか。新しい命を宿すような行為を美優先輩とした記憶が全くないんだけど。
「由弦! 美優先輩! 準備ができました!」
「うん! じゃあ、行こうか、由弦君!」
ウェディングドレス姿の美優先輩に手を引かれ、俺はあけぼの荘の庭に行こうとしたところで、視界が白闇に包まれたのであった。
「うんっ……」
ゆっくりと目を開けた……はずなのに、視界がやけに暗い。まだ夜明け前なのかな。昨日は日を跨いでから寝たのに、かなり早く起きることができたな。あと、なぜか目が開けにくかった。
心なしか美優先輩の匂いを普段以上にはっきりと感じるし、温もりもかなり強い。昨日は寒かったし、もしかして風邪を引いちゃったのかな。
「美優せんぱ――」
「おはよう、由弦君」
美優先輩のそんな声を聞こえた次の瞬間、頭に優しい感触が。そのことで、ようやく俺の顔にも柔らかいものが当たっていると分かった。
少し顔を動かすと、そこには美優先輩の優しい笑顔が待っていた。そんな先輩を見て一安心。あと、部屋の中はうっすらと明るくなっている。
「おはようございます、美優先輩」
「おはよう、由弦君。今は午前6時過ぎくらいだよ。今日は私が先に起きたから、由弦君の可愛い寝顔を見たり、写真を撮ったりしたの」
「そんなことをしていたんですか。全然気付かなかったですね。今日は雫姉さんって来ましたか?」
「起きたときに確認したけれど、ソファーに隠れていたり、廊下の扉からこっそり覗いていたりすることもなかったよ」
「そうでしたか」
雫姉さんなら、そのどちらかをやりそうな気がしたんだけど。2日連続でこっそりと覗いたり、隠れたりすることはなかったか。昨日は美優先輩がかなり恥ずかしそうにしていたからな。
「誰も覗いたりしていなかったから、それからは寝ている由弦君のことを抱きしめたの。由弦君にいい夢を見てもらえるように、その……顔を私の胸の中に埋めさせて。ええと……いい夢を見ることができたかな?」
「……凄い夢を見ました。今から3年後のことなんですけど、美優先輩と俺の結婚式をあけぼの荘のお庭でやることになって」
「へえ、そんな夢を見たんだ。ふふっ、あけぼの荘のお庭が会場っていうのは私達らしいかもね」
ふふっ、と美優先輩は朗らかな笑みを浮かべる。
「ただ、美優先輩のお腹には俺との子を妊娠していて。そのためか、俺は高校を卒業したら社会人になっていて。俺が高校を卒業したタイミングで入籍して、美優先輩は桐生美優となったそうです。そろそろ式が始まるってところで、目が覚めました」
「……あ、あらあら」
美優先輩は依然として笑顔だけど、さっきとは違って真っ赤になっている。子供ができているということや、入籍して桐生美優になったというインパクトが大きいからだろうか。
「昨日の夜、令和になったら結婚したいって話したから、そういう夢を見たのかもね。私も桐生美優に将来的にはなりたいかな。ただ、こ、子供は……もうちょっと大人になってからの方がいいね」
「そうですね」
夢だったからまだしも、現実の場合はちゃんと考えないと。
それにしても、美優先輩が俺のことを抱きしめて、胸に頭を埋めていたから、目を開けても視界が暗かったのか。いつも以上に先輩の温もりや匂いを強くて、顔に柔らかい感触を感じていたのも同じ理由か。
「美優先輩のおかげで、令和最初の目覚めはとてもいいものになりました」
「私も。目を覚ましたら、可愛い寝顔をした恋人がいて。そんな恋人のことを抱きしめることができて。由弦君の温かくて柔らかな吐息が私の胸元にかかるのが気持ち良くて。本当に……令和最初の目覚めは幸せな時間になったよ」
「そうですか」
最後の理由はともかく、美優先輩も幸せな目覚めになったようで良かった。
「ねえ、由弦君。令和最初のおはようのキスをしてくれますか? もう6時半だし、そろそろ誰かが起きてきてもおかしくない時間だから……」
「ええ。すぐにキスしましょう」
俺は美優先輩と抱きしめ合い、俺の方から先輩にキスをする。そのことで、さっきまであった眠気が一気に飛んでいく。
令和最初の目覚めに恋人とキスできるなんて。もちろん、俺達次第ではあるけど、令和という時代も、きっと幸せに過ごすことができるんじゃないかと思う。
「んっ……」
俺から唇を離すと、まだキスがしたいのか美優先輩はすぐに唇を重ねてきた。その際に漏らす声が可愛らしい。
あと、キスをしてスイッチが入ったのか、美優先輩はゆっくりと舌を絡ませてくる。本当に先輩は上手だなと思う。さっき、一瞬でも唇を離したことを後悔するくらいに気持ちがいい。
「はあっ、はあっ……」
気付けば、俺が美優先輩に押し倒されている体勢になっていた。なので、俺の視界が先輩に包まれているような感じがして。
あと、この前と同じように、抱きしめ合って口づけをしたせいか、美優先輩の寝間着のボタンが1つ外れている。それもあって、先輩の胸の……た、谷間がはっきりと見えてしまっている。
「もう、由弦君ったら。目線でどこを見ているか分かるよ」
「す、すみません」
「……由弦君だから許す。もう一回、ここに顔を埋めてみる? それとも、他に何かしたいことはあるかな?」
「えっと、その……」
うっとりとした表情でそう言われてしまったら、色々なことを考えてしまう。まだ朝早いし、もう少し美優先輩とこうした時間を――。
「にゃー」
「きゃっ!」
俺達以外の声が聞こえたからか、美優先輩は驚いて体をビクつかせる。
それにしても、今の声って、
「サブロウですよ。よく見るとレースのカーテンの向こうに、サブロウの姿が見えます」
「……あっ、サブちゃん」
サブロウであることが分かったからか、美優先輩はほっと胸を撫で下ろしている。
「令和最初のエサやりをしようか」
「そうですね。じゃあ、俺がエサと水を用意するので美優先輩はサブロウの相手をしてあげてください」
「うん!」
俺は台所に行き、サブロウのエサであるキャットフードとお水を用意することに。
「サブちゃん。新元号あけましておめでとう」
「にゃぉん」
「令和の初日からサブちゃんに会えて嬉しいよ。昨日は雨が降っていて寒かったけど、どこかで凌ぐことができたんだね。……サブちゃんの体あったかいねぇ」
「にゃん」
その後も美優先輩は優しい声で言葉をかけ続け、サブロウがたまに相槌する。そういえば、夢の中にサブロウは出てこなかったけど、お庭で結婚式をやるみたいだから、どこからか様子を見ていそうだな。
「サブロウ。キャットフードにお水だよ」
「にゃー」
ベランダにキャットフードとお水のお皿を置くと、サブロウはさっそくキャットフードを食べ始める。いい食べっぷりだ。
「由弦君から素敵な夢の話を聞かせてもらって、サブちゃんと戯れることができて。いい令和のスタートになりそうだよ」
「夢を見た俺としては戸惑いもありましたけどね。ただ、結婚することは正夢にしたいですね」
「うん、約束だよ」
俺は美優先輩と約束のキスをする。
その間、サブロウが餌を食べていたり、水を飲んだりする音が聞こえなかった。チラッと見ると、サブロウは黙って俺達のことを見ている。その約束を絶対に果たすんだぞってことなのかな。
「それじゃ、私も帰るわ。とても思い出深い改元の瞬間だったわ。みんな、ありがとう」
「こちらこそありがとうございます、一佳先生。明日は11時頃に元号初詣に行こうと思っています」
「分かったわ。その頃に成実さんと一緒にここに来るわね」
「はい」
「霧嶋先生。途中まででも送っていきましょうか? 夜中ですから」
「お気持ちだけで十分よ、桐生君。それに、この地域の条例で高校生以下は今の時間は外出禁止だから」
「……そういえば、そんな決まりがありましたっけ」
地元でもそんな条例があった気がする。霧嶋先生の言う通り、日付が変わった真夜中に外出しちゃダメか。
「では、今年で20歳になる私が一佳さんをエスコートしましょうか?」
「ふふっ、エスコートって。雫さんは土地勘ないだろうし、今は夜中だから。お気持ちだけ受け取っておくわ。ありがとう」
「……いえいえ」
とは言うものの、雫姉さんはつまらないと言いたげな様子。それだけ、霧嶋先生と仲良くなれたってことかな。お風呂から出た後も、姉さんは先生とソファーに座ってずっと楽しそうに喋っていたし。先生も優しい笑顔で姉さんの頭を撫でている。先生と一緒だと姉さんが幼く見えるな。
「霧嶋先生、気を付けて帰ってください。お酒を呑んでもいいですが、寝坊しないように気を付けてくださいね」
「ええ、気をつけるわ。では、また明日」
霧嶋先生は俺達に小さく手を振って家を後にした。
日も跨ぎ、明日は元号初詣にも行くので、俺達はすぐに寝ることに。
昨日と同じく、雫姉さん、心愛、朱莉ちゃん、葵ちゃんは寝室で、美優先輩と俺はリビングで2人きりで眠る。もちろん、寝る前には先輩とたっぷりキスするのであった。
「さあ、由弦君! 結婚しよう!」
あけぼの荘の入り前で、ウェディングドレス姿の美優先輩がそう言ってくる。その姿はとても可愛らしいけど、どうしてここでそんな姿をしているのかという気持ちの方が勝る。
「あの、美優先輩。結婚したい気持ちはもちろんありますけど、俺はまだ15歳なので法律上結婚できないんですよ」
「もう、由弦君ったら。何を言っているの。由弦君は高校を卒業して社会人になったじゃない。あと、私のお腹の中に、私達の新しい命が宿ったからって。卒業したタイミングで入籍して、私は桐生美優になったんだよ。お腹があまり大きくならないうちに結婚式を挙げようって話したじゃない。出会いの場所であるあけぼの荘でやろうって」
「……そ、そうなんですか」
何が何だかよく分からないけれど、とにかく美優先輩と俺は入籍して、美優先輩のお腹の中には俺との子供がいるのか。新しい命を宿すような行為を美優先輩とした記憶が全くないんだけど。
「由弦! 美優先輩! 準備ができました!」
「うん! じゃあ、行こうか、由弦君!」
ウェディングドレス姿の美優先輩に手を引かれ、俺はあけぼの荘の庭に行こうとしたところで、視界が白闇に包まれたのであった。
「うんっ……」
ゆっくりと目を開けた……はずなのに、視界がやけに暗い。まだ夜明け前なのかな。昨日は日を跨いでから寝たのに、かなり早く起きることができたな。あと、なぜか目が開けにくかった。
心なしか美優先輩の匂いを普段以上にはっきりと感じるし、温もりもかなり強い。昨日は寒かったし、もしかして風邪を引いちゃったのかな。
「美優せんぱ――」
「おはよう、由弦君」
美優先輩のそんな声を聞こえた次の瞬間、頭に優しい感触が。そのことで、ようやく俺の顔にも柔らかいものが当たっていると分かった。
少し顔を動かすと、そこには美優先輩の優しい笑顔が待っていた。そんな先輩を見て一安心。あと、部屋の中はうっすらと明るくなっている。
「おはようございます、美優先輩」
「おはよう、由弦君。今は午前6時過ぎくらいだよ。今日は私が先に起きたから、由弦君の可愛い寝顔を見たり、写真を撮ったりしたの」
「そんなことをしていたんですか。全然気付かなかったですね。今日は雫姉さんって来ましたか?」
「起きたときに確認したけれど、ソファーに隠れていたり、廊下の扉からこっそり覗いていたりすることもなかったよ」
「そうでしたか」
雫姉さんなら、そのどちらかをやりそうな気がしたんだけど。2日連続でこっそりと覗いたり、隠れたりすることはなかったか。昨日は美優先輩がかなり恥ずかしそうにしていたからな。
「誰も覗いたりしていなかったから、それからは寝ている由弦君のことを抱きしめたの。由弦君にいい夢を見てもらえるように、その……顔を私の胸の中に埋めさせて。ええと……いい夢を見ることができたかな?」
「……凄い夢を見ました。今から3年後のことなんですけど、美優先輩と俺の結婚式をあけぼの荘のお庭でやることになって」
「へえ、そんな夢を見たんだ。ふふっ、あけぼの荘のお庭が会場っていうのは私達らしいかもね」
ふふっ、と美優先輩は朗らかな笑みを浮かべる。
「ただ、美優先輩のお腹には俺との子を妊娠していて。そのためか、俺は高校を卒業したら社会人になっていて。俺が高校を卒業したタイミングで入籍して、美優先輩は桐生美優となったそうです。そろそろ式が始まるってところで、目が覚めました」
「……あ、あらあら」
美優先輩は依然として笑顔だけど、さっきとは違って真っ赤になっている。子供ができているということや、入籍して桐生美優になったというインパクトが大きいからだろうか。
「昨日の夜、令和になったら結婚したいって話したから、そういう夢を見たのかもね。私も桐生美優に将来的にはなりたいかな。ただ、こ、子供は……もうちょっと大人になってからの方がいいね」
「そうですね」
夢だったからまだしも、現実の場合はちゃんと考えないと。
それにしても、美優先輩が俺のことを抱きしめて、胸に頭を埋めていたから、目を開けても視界が暗かったのか。いつも以上に先輩の温もりや匂いを強くて、顔に柔らかい感触を感じていたのも同じ理由か。
「美優先輩のおかげで、令和最初の目覚めはとてもいいものになりました」
「私も。目を覚ましたら、可愛い寝顔をした恋人がいて。そんな恋人のことを抱きしめることができて。由弦君の温かくて柔らかな吐息が私の胸元にかかるのが気持ち良くて。本当に……令和最初の目覚めは幸せな時間になったよ」
「そうですか」
最後の理由はともかく、美優先輩も幸せな目覚めになったようで良かった。
「ねえ、由弦君。令和最初のおはようのキスをしてくれますか? もう6時半だし、そろそろ誰かが起きてきてもおかしくない時間だから……」
「ええ。すぐにキスしましょう」
俺は美優先輩と抱きしめ合い、俺の方から先輩にキスをする。そのことで、さっきまであった眠気が一気に飛んでいく。
令和最初の目覚めに恋人とキスできるなんて。もちろん、俺達次第ではあるけど、令和という時代も、きっと幸せに過ごすことができるんじゃないかと思う。
「んっ……」
俺から唇を離すと、まだキスがしたいのか美優先輩はすぐに唇を重ねてきた。その際に漏らす声が可愛らしい。
あと、キスをしてスイッチが入ったのか、美優先輩はゆっくりと舌を絡ませてくる。本当に先輩は上手だなと思う。さっき、一瞬でも唇を離したことを後悔するくらいに気持ちがいい。
「はあっ、はあっ……」
気付けば、俺が美優先輩に押し倒されている体勢になっていた。なので、俺の視界が先輩に包まれているような感じがして。
あと、この前と同じように、抱きしめ合って口づけをしたせいか、美優先輩の寝間着のボタンが1つ外れている。それもあって、先輩の胸の……た、谷間がはっきりと見えてしまっている。
「もう、由弦君ったら。目線でどこを見ているか分かるよ」
「す、すみません」
「……由弦君だから許す。もう一回、ここに顔を埋めてみる? それとも、他に何かしたいことはあるかな?」
「えっと、その……」
うっとりとした表情でそう言われてしまったら、色々なことを考えてしまう。まだ朝早いし、もう少し美優先輩とこうした時間を――。
「にゃー」
「きゃっ!」
俺達以外の声が聞こえたからか、美優先輩は驚いて体をビクつかせる。
それにしても、今の声って、
「サブロウですよ。よく見るとレースのカーテンの向こうに、サブロウの姿が見えます」
「……あっ、サブちゃん」
サブロウであることが分かったからか、美優先輩はほっと胸を撫で下ろしている。
「令和最初のエサやりをしようか」
「そうですね。じゃあ、俺がエサと水を用意するので美優先輩はサブロウの相手をしてあげてください」
「うん!」
俺は台所に行き、サブロウのエサであるキャットフードとお水を用意することに。
「サブちゃん。新元号あけましておめでとう」
「にゃぉん」
「令和の初日からサブちゃんに会えて嬉しいよ。昨日は雨が降っていて寒かったけど、どこかで凌ぐことができたんだね。……サブちゃんの体あったかいねぇ」
「にゃん」
その後も美優先輩は優しい声で言葉をかけ続け、サブロウがたまに相槌する。そういえば、夢の中にサブロウは出てこなかったけど、お庭で結婚式をやるみたいだから、どこからか様子を見ていそうだな。
「サブロウ。キャットフードにお水だよ」
「にゃー」
ベランダにキャットフードとお水のお皿を置くと、サブロウはさっそくキャットフードを食べ始める。いい食べっぷりだ。
「由弦君から素敵な夢の話を聞かせてもらって、サブちゃんと戯れることができて。いい令和のスタートになりそうだよ」
「夢を見た俺としては戸惑いもありましたけどね。ただ、結婚することは正夢にしたいですね」
「うん、約束だよ」
俺は美優先輩と約束のキスをする。
その間、サブロウが餌を食べていたり、水を飲んだりする音が聞こえなかった。チラッと見ると、サブロウは黙って俺達のことを見ている。その約束を絶対に果たすんだぞってことなのかな。
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