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続編
第40話『ウォータースライダー』
風花によるクロールの練習が終わったので、25mプールの横にあるサマーベッドで一休みする。こんなに気持ち良く泳げて、いい疲れを味わうのはこれが初めてな気がする。
「サマーベッドで仰向けになると気持ちいいですね、大宮先生」
「でしょう? もし、桐生君みたいにたくさん泳いだ後だったら、ぐっすり寝ちゃってたかも」
「分かります。目を瞑るとそのまま眠っちゃいそうです」
できないことを克服した後だから、身体的にはもちろんのこと精神的にもとても気持ちがいい。
隣のサマーベッドには美優先輩が俺の方を向いて横になっている。その姿はとても艶めかしい。プールに入った後で、たまに先輩の体から水滴が落ちるからかもしれない。気付けば、そんな先輩の姿をスマホで撮っていた。
「もう、由弦君ったら。こんな姿まで撮って」
「今の姿がとても素敵なので、つい」
「……そういう理由ならいいよ」
そう言って笑う美優先輩はとても美しくて可愛らしい。先輩は俺が25m泳げたことを誰よりも喜んでくれた。そんな人が恋人だなんてとても幸せだ。
「バタフライ気持ちいいっ! おっ、少年少女達、応援ありがとねっ!」
風花は近くにいる子供達に手を振ったり、ハイタッチしたりしている。
連休は水泳部の練習がないからか、俺のクロール指導が終わってから、風花は目の前にある25mプールで泳ぎまくっている。その姿に惹かれたのか、小中学生くらいの子供達が風花の泳ぎを見るように。風花はそんな子供達と仲良くなっていた。
「風花ちゃん、すっかりと人気者だね」
「そうですね。気さくな性格ですし、泳ぎがとても上手ですからね。さすがは風花だと思います」
「ふふっ、そうだね。……あっ、瑠衣ちゃんと一佳先生が戻ってきた」
美優先輩が指さす先には、肩を組みながらこちらに向かって歩く花柳先輩と霧嶋先生の姿が。花柳先輩は元気そうだけど、霧嶋先生は顔色が悪くなっているな。
「ただいま」
「おかえりなさい。瑠衣ちゃんは平気そうだけど、一佳先生は大丈夫ですか?」
「……ウォータースライダーをやり過ぎてしまったわ。とても怖いのだけれど、たくさん絶叫したのもあって不思議と次も行きたくなるの。中毒性があるわね。ただ……滑りすぎて、ちょっと気分が悪くなってしまったわ」
「そうですか」
「このサマーベッドで横になってください」
「ありがとう、桐生君」
俺と入れ替わる形で、霧嶋先生はサマーベッドに横になる。そのことで楽になったのか、顔色がちょっと良くなっている。
さっきはあんなに恐がっていたのに、何度も滑ってしまうなんて。霧嶋先生が言う通り、ウォータースライダーには中毒性があるのかも。あと、予想通り絶叫しまくったか。
「ハマるのはいいけど、体調には気を付けないとね、一佳ちゃん。25歳の教師なんだから」
「ええ。肝に銘じます。令和初の教訓です」
「あらあら。そんな一佳ちゃんに付き合った瑠衣ちゃんは大丈夫?」
「はい。こういう絶叫系アトラクションは大好きですし、滑ったら楽しくてどんどん元気になりました!」
「それは良かったね。一佳ちゃんも一緒に滑ったのが瑠衣ちゃんで良かったね」
「そうですね。花柳さんが頼もしく思えました」
「えへへっ」
花柳先輩はドヤ顔を浮かべて胸を張っている。
「そういえば、桐生君の方はどうなの? 風花ちゃんに泳ぎ方を教えてもらうってことになっていたけれど」
「風花の指導や、美優先輩と大宮先生のサポートもあって、クロールを25m泳ぐことができるようになりました」
「へえ、良かったじゃない。うちのプールは縦は50mあるけど、横が25mで授業ではそっち方向で使うから、25m泳げれば大丈夫だと思うよ」
「それなら一安心です」
水泳の授業までの間に、泳ぎ方のコツを忘れないように気を付けないと。とりあえず、明日もプールに入るなら復習も兼ねてクロールを泳ぐことにしよう。
「あぁ、背泳ぎも気持ち良かった。あっ、瑠衣先輩と一佳先生が戻ってきてる。おかえりなさい」
「ただいま、風花ちゃん。桐生君にクロールを教えたんだって? お疲れ様」
「ええ。最初は酷かったですけど、運動神経はいい方ですから、コツを伝えたら25mを泳ぐことができましたよ。……一佳先生はグッタリしてますけど大丈夫ですか?」
「……滑りすぎて気分が悪くなって」
「そうなんですか。過去に倒れた経験がありますけど、疲れたり、気分があまり良くなかったりしたときはゆっくりした方がいいですよ」
「そうね」
「一佳ちゃんにはあたしがついているから、4人は遊んでらっしゃい」
大宮先生がいれば大丈夫そうか。
それにしても、今日の風花は俺にクロールを教えてくれたり、気分があまり良くない霧嶋先生を気遣う言葉を言ったりとしっかりしているな。
「由弦の指導も終わりましたし、ウォータースライダー行きましょうよ!」
「いいよ、風花ちゃん。あたしももっと滑りたいと思っていたから」
「私達も行こうよ、由弦君。一緒に滑れるそうだし」
「そうですね。俺達はウォータースライダーの方に行ってきますね」
「は~い、いってらっしゃ~い」
可愛らしく手を振る大宮先生に見送られながら、高校生4人はウォータースライダーの方へと向かう。その途中で、2人乗りの浮き輪に乗ってウォータースライダーのゴールに辿り着いたカップルの姿が見えた。
ウォータースライダーの入口に辿り着き、浮き輪を持って待ち行列に並ぶ。その際、美優先輩と俺は風花と花柳先輩の後ろに並んだ。ちなみに、浮き輪は前後に座るタイプか。
「美優は絶叫系ってそこまで得意じゃないよね」
「うん。絶対にダメってわけじゃないけれど、苦手な方かな。由弦君が一緒なら大丈夫だって思ってる」
そう言って美優先輩は俺のことを上目遣いで見てくる。何かあったら絶対に俺が美優先輩のことを助けるぞ。
「凄く恐がってた一佳先生がハマるくらいだし、きっと美優も大丈夫だよ。桐生君って平気そうだし。そんな桐生君や風花ちゃんってこういう絶叫系はどう?」
「あたしは絶叫系は大好きです! 心霊系だけはダメですけど」
「俺は……強いですね。心霊系は小さい頃から結構好きですね」
「ちょっと待って。普通、美優や風花ちゃんみたいに好き嫌い、得意苦手で答えない? どうして『強い』の?」
「……俺も美優先輩みたいに元々は苦手な方だったんですよ。でも、遊園地やプールに家族で行ったとき、絶叫系が大好きな雫姉さんや心愛に付き合わされて……いつの間にか耐性が付いちゃったんです」
色々と思い出したからか、思わずため息が出てしまう。
特に雫姉さんは俺が嫌だと言っているのに、無理矢理付き合わせることもあったな。仕返ししてやろうと思ったけど、結局できたことは一度もなかった。
「な、なるほど。なかなかの経験をしているのね。それを美優のために活かしなさい」
「そうですね」
「頼りにしてるね、由弦君」
これまでの絶叫系の試練は今日のためだったのだと思っておこう。俺は美優先輩の手を今一度強く握った。
3人と話していたこともあってか、あっという間に風花と花柳先輩の順番が回ってきた。風花が前、花柳先輩が後ろの方に座る。
「由弦、美優先輩。お先に行ってきますね!」
「行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
「い、いってらっしゃい。風花ちゃん、瑠衣ちゃん」
「はーい。それではいってらっしゃーい!」
茶髪の女性の係員さんが浮き輪を押して、風花と花柳先輩のウォータースライダーがスタートした。
「つ、次は私達の番なんだね。絶対に離れないでね!」
「離れませんから安心してください」
ちょっと恐がっている美優先輩もとても可愛らしい。
「きゃーっ! すごーい!」
「でしょう! たーのしーい!」
風花と花柳先輩のそんな絶叫が聞こえてくる。その声だけでも、このウォータースライダーを楽しんでいるのが伝わってくる。
「はーい、次のカップルさん。もうすぐ滑るので準備してください」
「分かりました。美優先輩、前と後ろ、どちらの方に座りますか?」
「……う、後ろの方がまだ怖くなさそう。後ろに座れば由弦君の姿が見えるだろうし」
「分かりました」
美優先輩の希望により、先輩が後ろ、俺が前の方に座る。いざ、こういう体勢になると結構ドキドキしてくるな。
「由弦君の後ろ姿がちゃんと見えるから、少し安心できるよ」
「そうですか。俺も両側に美優先輩の綺麗な脚が見えますからドキドキしますね」
「由弦君……」
「はーい、アツアツのカップルさん! ウォータースライダーをしていらっしゃーい!」
女性の係員さんによって浮き輪を勢い良く押され、俺達のウォータースライダーがスタートする。
水の勢いが結構あるからか、スタート直後から加速していく。
「おおっ、すげー!」
「きゃあっ! ねえ、結構早くない? ウォータースライダーってジェットコースター並みに速かったっけ? きゃああっ!」
もし、美優先輩の言う通りだったら、ジェットコースターってかなり遅いことになるぞ。怖いからそう感じてしまうのだろう。
そんなことを考えている間にもスピードは加速の一途を辿る。不規則に左右に蛇行するのが結構怖い。
「いやあああっ! ゆれるー! おちるー!」
きゃああっ! と美優先輩はいつになく絶叫しまくっている。そんな先輩の顔を見てみたかったけど、後ろに振り返る余裕はなかった。
美優先輩の黄色い悲鳴が絶えることなく、俺達はゴール地点のプールに到着。しかし、勢い余って俺達は浮き輪から投げ出され、プールの中に落ちてしまった。
「ぷはっ!」
両手で顔に付いている水を拭った直後に、美優先輩が水面から姿を現した。
「あぁ、怖かった。速いし、たまに揺れるから浮き輪に落ちそうで」
「かなり大きな声で絶叫してましたもんね。あと、揺れるのは怖かったですね」
「でしょう? でも、大きな声をたくさん出したからスッキリするね。由弦君と一緒なら、もう1回か2回くらい行っても大丈夫かも」
美優先輩は爽やかな笑みを浮かべながらそう言う。
そういえば、霧嶋先生も「怖かったけど、たくさん絶叫したのもあって次も行きたくなってしまう」って言っていたな。
「美優、凄い絶叫だったよ」
「響いてましたよね」
「そうだったの? ……何だか恥ずかしいな。でも、なかなかいいね、ウォータースライダーって。由弦君、次は前の方に座ってみたい!」
「分かりました。では、もう一度行ってみましょうか」
「うんっ!」
俺は美優先輩に手を引かれて、再びウォータースライダーのスタート地点へ向かった。
2度目は宣言通り、美優先輩が前の方に座って滑る形に。ただ、今回の方が怖かったのかさっきよりも大きな声で先輩は絶叫するのであった。
「サマーベッドで仰向けになると気持ちいいですね、大宮先生」
「でしょう? もし、桐生君みたいにたくさん泳いだ後だったら、ぐっすり寝ちゃってたかも」
「分かります。目を瞑るとそのまま眠っちゃいそうです」
できないことを克服した後だから、身体的にはもちろんのこと精神的にもとても気持ちがいい。
隣のサマーベッドには美優先輩が俺の方を向いて横になっている。その姿はとても艶めかしい。プールに入った後で、たまに先輩の体から水滴が落ちるからかもしれない。気付けば、そんな先輩の姿をスマホで撮っていた。
「もう、由弦君ったら。こんな姿まで撮って」
「今の姿がとても素敵なので、つい」
「……そういう理由ならいいよ」
そう言って笑う美優先輩はとても美しくて可愛らしい。先輩は俺が25m泳げたことを誰よりも喜んでくれた。そんな人が恋人だなんてとても幸せだ。
「バタフライ気持ちいいっ! おっ、少年少女達、応援ありがとねっ!」
風花は近くにいる子供達に手を振ったり、ハイタッチしたりしている。
連休は水泳部の練習がないからか、俺のクロール指導が終わってから、風花は目の前にある25mプールで泳ぎまくっている。その姿に惹かれたのか、小中学生くらいの子供達が風花の泳ぎを見るように。風花はそんな子供達と仲良くなっていた。
「風花ちゃん、すっかりと人気者だね」
「そうですね。気さくな性格ですし、泳ぎがとても上手ですからね。さすがは風花だと思います」
「ふふっ、そうだね。……あっ、瑠衣ちゃんと一佳先生が戻ってきた」
美優先輩が指さす先には、肩を組みながらこちらに向かって歩く花柳先輩と霧嶋先生の姿が。花柳先輩は元気そうだけど、霧嶋先生は顔色が悪くなっているな。
「ただいま」
「おかえりなさい。瑠衣ちゃんは平気そうだけど、一佳先生は大丈夫ですか?」
「……ウォータースライダーをやり過ぎてしまったわ。とても怖いのだけれど、たくさん絶叫したのもあって不思議と次も行きたくなるの。中毒性があるわね。ただ……滑りすぎて、ちょっと気分が悪くなってしまったわ」
「そうですか」
「このサマーベッドで横になってください」
「ありがとう、桐生君」
俺と入れ替わる形で、霧嶋先生はサマーベッドに横になる。そのことで楽になったのか、顔色がちょっと良くなっている。
さっきはあんなに恐がっていたのに、何度も滑ってしまうなんて。霧嶋先生が言う通り、ウォータースライダーには中毒性があるのかも。あと、予想通り絶叫しまくったか。
「ハマるのはいいけど、体調には気を付けないとね、一佳ちゃん。25歳の教師なんだから」
「ええ。肝に銘じます。令和初の教訓です」
「あらあら。そんな一佳ちゃんに付き合った瑠衣ちゃんは大丈夫?」
「はい。こういう絶叫系アトラクションは大好きですし、滑ったら楽しくてどんどん元気になりました!」
「それは良かったね。一佳ちゃんも一緒に滑ったのが瑠衣ちゃんで良かったね」
「そうですね。花柳さんが頼もしく思えました」
「えへへっ」
花柳先輩はドヤ顔を浮かべて胸を張っている。
「そういえば、桐生君の方はどうなの? 風花ちゃんに泳ぎ方を教えてもらうってことになっていたけれど」
「風花の指導や、美優先輩と大宮先生のサポートもあって、クロールを25m泳ぐことができるようになりました」
「へえ、良かったじゃない。うちのプールは縦は50mあるけど、横が25mで授業ではそっち方向で使うから、25m泳げれば大丈夫だと思うよ」
「それなら一安心です」
水泳の授業までの間に、泳ぎ方のコツを忘れないように気を付けないと。とりあえず、明日もプールに入るなら復習も兼ねてクロールを泳ぐことにしよう。
「あぁ、背泳ぎも気持ち良かった。あっ、瑠衣先輩と一佳先生が戻ってきてる。おかえりなさい」
「ただいま、風花ちゃん。桐生君にクロールを教えたんだって? お疲れ様」
「ええ。最初は酷かったですけど、運動神経はいい方ですから、コツを伝えたら25mを泳ぐことができましたよ。……一佳先生はグッタリしてますけど大丈夫ですか?」
「……滑りすぎて気分が悪くなって」
「そうなんですか。過去に倒れた経験がありますけど、疲れたり、気分があまり良くなかったりしたときはゆっくりした方がいいですよ」
「そうね」
「一佳ちゃんにはあたしがついているから、4人は遊んでらっしゃい」
大宮先生がいれば大丈夫そうか。
それにしても、今日の風花は俺にクロールを教えてくれたり、気分があまり良くない霧嶋先生を気遣う言葉を言ったりとしっかりしているな。
「由弦の指導も終わりましたし、ウォータースライダー行きましょうよ!」
「いいよ、風花ちゃん。あたしももっと滑りたいと思っていたから」
「私達も行こうよ、由弦君。一緒に滑れるそうだし」
「そうですね。俺達はウォータースライダーの方に行ってきますね」
「は~い、いってらっしゃ~い」
可愛らしく手を振る大宮先生に見送られながら、高校生4人はウォータースライダーの方へと向かう。その途中で、2人乗りの浮き輪に乗ってウォータースライダーのゴールに辿り着いたカップルの姿が見えた。
ウォータースライダーの入口に辿り着き、浮き輪を持って待ち行列に並ぶ。その際、美優先輩と俺は風花と花柳先輩の後ろに並んだ。ちなみに、浮き輪は前後に座るタイプか。
「美優は絶叫系ってそこまで得意じゃないよね」
「うん。絶対にダメってわけじゃないけれど、苦手な方かな。由弦君が一緒なら大丈夫だって思ってる」
そう言って美優先輩は俺のことを上目遣いで見てくる。何かあったら絶対に俺が美優先輩のことを助けるぞ。
「凄く恐がってた一佳先生がハマるくらいだし、きっと美優も大丈夫だよ。桐生君って平気そうだし。そんな桐生君や風花ちゃんってこういう絶叫系はどう?」
「あたしは絶叫系は大好きです! 心霊系だけはダメですけど」
「俺は……強いですね。心霊系は小さい頃から結構好きですね」
「ちょっと待って。普通、美優や風花ちゃんみたいに好き嫌い、得意苦手で答えない? どうして『強い』の?」
「……俺も美優先輩みたいに元々は苦手な方だったんですよ。でも、遊園地やプールに家族で行ったとき、絶叫系が大好きな雫姉さんや心愛に付き合わされて……いつの間にか耐性が付いちゃったんです」
色々と思い出したからか、思わずため息が出てしまう。
特に雫姉さんは俺が嫌だと言っているのに、無理矢理付き合わせることもあったな。仕返ししてやろうと思ったけど、結局できたことは一度もなかった。
「な、なるほど。なかなかの経験をしているのね。それを美優のために活かしなさい」
「そうですね」
「頼りにしてるね、由弦君」
これまでの絶叫系の試練は今日のためだったのだと思っておこう。俺は美優先輩の手を今一度強く握った。
3人と話していたこともあってか、あっという間に風花と花柳先輩の順番が回ってきた。風花が前、花柳先輩が後ろの方に座る。
「由弦、美優先輩。お先に行ってきますね!」
「行ってくるわ」
「いってらっしゃい」
「い、いってらっしゃい。風花ちゃん、瑠衣ちゃん」
「はーい。それではいってらっしゃーい!」
茶髪の女性の係員さんが浮き輪を押して、風花と花柳先輩のウォータースライダーがスタートした。
「つ、次は私達の番なんだね。絶対に離れないでね!」
「離れませんから安心してください」
ちょっと恐がっている美優先輩もとても可愛らしい。
「きゃーっ! すごーい!」
「でしょう! たーのしーい!」
風花と花柳先輩のそんな絶叫が聞こえてくる。その声だけでも、このウォータースライダーを楽しんでいるのが伝わってくる。
「はーい、次のカップルさん。もうすぐ滑るので準備してください」
「分かりました。美優先輩、前と後ろ、どちらの方に座りますか?」
「……う、後ろの方がまだ怖くなさそう。後ろに座れば由弦君の姿が見えるだろうし」
「分かりました」
美優先輩の希望により、先輩が後ろ、俺が前の方に座る。いざ、こういう体勢になると結構ドキドキしてくるな。
「由弦君の後ろ姿がちゃんと見えるから、少し安心できるよ」
「そうですか。俺も両側に美優先輩の綺麗な脚が見えますからドキドキしますね」
「由弦君……」
「はーい、アツアツのカップルさん! ウォータースライダーをしていらっしゃーい!」
女性の係員さんによって浮き輪を勢い良く押され、俺達のウォータースライダーがスタートする。
水の勢いが結構あるからか、スタート直後から加速していく。
「おおっ、すげー!」
「きゃあっ! ねえ、結構早くない? ウォータースライダーってジェットコースター並みに速かったっけ? きゃああっ!」
もし、美優先輩の言う通りだったら、ジェットコースターってかなり遅いことになるぞ。怖いからそう感じてしまうのだろう。
そんなことを考えている間にもスピードは加速の一途を辿る。不規則に左右に蛇行するのが結構怖い。
「いやあああっ! ゆれるー! おちるー!」
きゃああっ! と美優先輩はいつになく絶叫しまくっている。そんな先輩の顔を見てみたかったけど、後ろに振り返る余裕はなかった。
美優先輩の黄色い悲鳴が絶えることなく、俺達はゴール地点のプールに到着。しかし、勢い余って俺達は浮き輪から投げ出され、プールの中に落ちてしまった。
「ぷはっ!」
両手で顔に付いている水を拭った直後に、美優先輩が水面から姿を現した。
「あぁ、怖かった。速いし、たまに揺れるから浮き輪に落ちそうで」
「かなり大きな声で絶叫してましたもんね。あと、揺れるのは怖かったですね」
「でしょう? でも、大きな声をたくさん出したからスッキリするね。由弦君と一緒なら、もう1回か2回くらい行っても大丈夫かも」
美優先輩は爽やかな笑みを浮かべながらそう言う。
そういえば、霧嶋先生も「怖かったけど、たくさん絶叫したのもあって次も行きたくなってしまう」って言っていたな。
「美優、凄い絶叫だったよ」
「響いてましたよね」
「そうだったの? ……何だか恥ずかしいな。でも、なかなかいいね、ウォータースライダーって。由弦君、次は前の方に座ってみたい!」
「分かりました。では、もう一度行ってみましょうか」
「うんっ!」
俺は美優先輩に手を引かれて、再びウォータースライダーのスタート地点へ向かった。
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