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続編
第58話『兵達、実家へ走る。』
午前9時半過ぎ。
霧嶋先生と大宮先生がチェックアウトの手続きを済ませ、俺達は荷物やお土産を車まで運ぶ。といっても、ホテルのスタッフさんが入口近くまで車を動かしてくれたので結構楽だった。お土産を大量に買ったけど、荷室に何とか収められた。
これから美優先輩の実家に向かうため、助手席には先輩が座ることに。運転席には大宮先生が座り、先輩の実家までは先生が運転することになった。
せっかくだからこれまでと違う席順にしよう、と風花や花柳先輩が提案したので、後部座席の1列目に風花と俺、2列目に花柳先輩と霧嶋先生が座ることに。
「美優先輩の実家までは隣でよろしくね」
「うん、よろしく」
俺の隣に座れて嬉しいのか、風花はこれまでの車中にいるときと比べて楽しそうな笑顔になっている。
「花柳さん。とりあえず白鳥さんの実家まではよろしく。私が隣で良かったかしら?」
「全然かまいませんよ。一緒にウォータースライダーをたくさん滑った仲じゃないですか」
「そう言ってくれて嬉しいわ。ありがとう。この旅行を通じて、あなたがとてもいい女性だと思えるようになったわ」
「あははっ、そうですか。……というか、今までのあたしってどんな印象だったんです?」
「……学校では大好きな白鳥さんといつも一緒にいて、たまに私を小馬鹿にしてくる子? 特に1年生のときは。基本的にはいい子なのだけれど。……いえ、今でも私を小馬鹿にすることがあるわね、あなた」
「そんなことないですよぉ、一佳せんせぇ~」
「ひゃっ! ど、どこを触ってくるの! 桐生君、こちらを見ないように!」
「はい」
胸でも触られているのかな、霧嶋先生は。そういえば、大浴場で一緒に入ったときはたくさん触られたって言っていたっけ。
ウォータースライダーで一緒に滑ったのが良かったのか、花柳先輩と霧嶋先生という組み合わせもなかなか盛り上がるんだな。
あと、花柳先輩には悪いけど、霧嶋先生が抱いている先輩の印象は当たっているんじゃないかと思う。さすがは教師。俺と同じことを考えているのか、風花はクスクスと笑っている。俺も笑いそうになるけど、先輩に何をされるか恐いので堪えた。
前方を見ると、美優先輩と大宮先生がカーナビを操作している。このホテルから先輩のご実家までの経路を調べているのだろうか。
「よし、道順が表示されたね」
「そうですね。……みなさん、ここから私の実家までは1時間ちょっとで着く予定です。成実先生、私の実家まで運転をよろしくお願いします」
「分かったわ。じゃあ、美優ちゃんの実家に向かってしゅっぱーつ!」
『おー!』
大宮先生の運転によって、俺達の乗る車は御立シーサイドホテルを出発する。
このホテルではたくさんの思い出を作ることができたな。その中には初めての経験をし、一生忘れないこともあって。またこのホテルに泊まりに来たいな。できれば、このメンバーで。段々と小さくなっていくホテルを見ながらそんなことを思った。
「いやぁ、ホテルを後にするときって寂しいよね。今回は由弦達と一緒に来て楽しかったから特に寂しく思うよ」
「俺も楽しかったから寂しいよ。もし、また来ることがあったら、今回の美優先輩みたいに懐かしさを感じることがあるかもしれないな」
「そうだね。それにしても、一昨日ホテルに来たときはろくに泳げなかったのに、2日間でクロールと平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライと一通り泳げるようになって良かったね」
「風花の教え方と、美優先輩のサポートが良かったからだよ。これで来月から始まる水泳の授業も何とかなりそうだ。ありがとう、風花、美優先輩」
「いえいえ」
「由弦君の不安が解消されて良かったよ」
もっと早く風花や美優先輩と出会いたかったくらいだ。
家に帰ったら、風花に教わった泳ぎ方のポイントをノートとかにまとめておこう。
「そうだ、ホテルを出発したから家の方に連絡しよう」
そう呟くと、美優先輩はスマホを手に取る。自宅に電話するのかな。
「お母さん? もしもし、美優だよ。今ね……」
どうやら、美優先輩のお母様が電話に出たようだ。話し相手が母親だからか、いつもより少し幼い感じに聞こえる。そこがとても可愛らしい。
「1時間くらいでそっちに着くから。前に話したように由弦君の他にも、友達や先生方も一緒だよ。うん、また後でね。……あっ、葵」
今度は葵ちゃんが話し相手なのか。だからか、今度は落ち着いた声色になっている。
「いつもの美優先輩って感じがするよね」
「そうだな」
「でも、お母さんと話すときの美優先輩の声は可愛かったよね。普段は私達の先輩だし、朱莉ちゃん達が遊びに来たときもお姉さんとしてしっかりしていたからか」
「俺も同じことを思った」
お母さんが相手だと甘えやすくなるのかな。普段とは違う気持ちの持ち方が、声となって現れたのかもしれない。
声の変化でいうと、俺と2人きりになったときも甘い声を出すことがあるな。付き合い始めてからはそれが多くなって。もちろん、一昨日の夜や昨日の夜に色々したときも、美優先輩は可愛らしい声をたくさん出していた。
「由弦、どうしたの? 頬がほんのり赤くなってるけど」
「声が変わる先輩が可愛いなと思って」
「そういうことか」
「……由弦君。朱莉が由弦君と話したいんだって。いいかな?」
「もちろんいいですよ」
葵ちゃんならまだしも、朱莉ちゃんが俺と話したいと言うなんて意外だ。何か俺に伝えたいことでもあるのかな?
美優先輩からスマホを受け取る。
「お電話代わりました。桐生です」
『おはようございます、由弦さん』
「おはよう、朱莉ちゃん」
『姉さんから、由弦さん達との旅行を楽しんでいると聞きました。由弦さんはどうですか?』
「俺も美優先輩達と楽しい時間を過ごしているよ。これから、朱莉ちゃん達の家に行って挨拶するから、それはちょっと緊張しているけど」
『ふふっ、そうですか。お母さんとお父さんの様子を伝えたくて、由弦さんに代わってほしいと姉さんに言ったんです。もしかしたら、由弦さんが緊張しているかもしれないと思いまして。もちろん、由弦さんの声を聞きたかったのもありますけど』
「ははっ、そうなんだ。ありがとう」
俺の声が聞きたいと言われると、恋人の妹さんでもちょっとキュンときちゃうな。
「さっそくだけど、御両親は今、どんな感じなのかな?」
『お母さんはとても楽しみにしています。この前泊まりに行ったときの写真を見せたら、由弦さんはかっこいいし、風花さん達も可愛らしいからと』
「そうなんだ」
お母様の方は大丈夫そうかな。まずはそこで一安心する。
「ちなみに、お父様の方はどうかな?」
『以前、姉さんと由弦さんが付き合い始めたと報告をされた直後は泣いていましたけど、日も経ったので、今は由弦さんと会うのが楽しみだと言っています。先日、お泊まりに行ったときに撮った姉さんと由弦さんの楽しそうな写真を見せたら喜んでいましたし』
「そうなんだね」
楽しみだと言ってくださっているのは嬉しいけど、付き合い始めたとテレビ電話で報告した直後に泣いたとは。不安が付きまとってしまうな。
『何かまずそうな雰囲気になったら、私と葵もサポートしますから安心してください! 実のところ、私もお姉ちゃんが由弦さんと一緒に住んだり、付き合い始めたりしたことを聞いたときは不安な気持ちもありました。でも、先日、実際に会って、由弦さんはとても素敵な方だと分かりましたから。今は姉さんとずっと一緒にいてほしいと思っています』
「ありがとう、朱莉ちゃん。君にそう思ってもらえて嬉しいよ。あと、風花達も俺と美優先輩のことをサポートするって言ってくれているよ」
『そうですか。それだけ、由弦さんと姉さんの関係を受け入れてくれていたり、2人のことを信頼してくれていたりする証拠ですね。きっと、お母さんもお父さんも会って話せば大丈夫だと思います』
「……そうだね」
家に着いたら、しっかりと挨拶しないとな。美優先輩と一緒に恋人として仲良く付き合っていて、ちゃんと同棲生活を送っているとも話さないと。
「じゃあ、あと1時間くらいで到着するから」
『分かりました。楽しみに待っています』
「うん。美優先輩に戻すね」
『はい』
「……美優先輩、ありがとうございました」
美優先輩にスマホを返す。
「朱莉ちゃんと何を話したの?」
「……御両親の今の様子を教えてくれたよ。俺が緊張しているかもしれないからって」
「そうなんだ。優しい子だね、朱莉ちゃんは。さすが美優先輩の妹さんだけある」
「そうだね」
朱莉ちゃんの言うように、会って話せば大丈夫だと思いたい。
それからは風花達と話したり、車窓から見える景色を眺めたり、ボトル缶のコーヒーを飲んだりしながら気持ちを少しでも落ち着かせていくのであった。
霧嶋先生と大宮先生がチェックアウトの手続きを済ませ、俺達は荷物やお土産を車まで運ぶ。といっても、ホテルのスタッフさんが入口近くまで車を動かしてくれたので結構楽だった。お土産を大量に買ったけど、荷室に何とか収められた。
これから美優先輩の実家に向かうため、助手席には先輩が座ることに。運転席には大宮先生が座り、先輩の実家までは先生が運転することになった。
せっかくだからこれまでと違う席順にしよう、と風花や花柳先輩が提案したので、後部座席の1列目に風花と俺、2列目に花柳先輩と霧嶋先生が座ることに。
「美優先輩の実家までは隣でよろしくね」
「うん、よろしく」
俺の隣に座れて嬉しいのか、風花はこれまでの車中にいるときと比べて楽しそうな笑顔になっている。
「花柳さん。とりあえず白鳥さんの実家まではよろしく。私が隣で良かったかしら?」
「全然かまいませんよ。一緒にウォータースライダーをたくさん滑った仲じゃないですか」
「そう言ってくれて嬉しいわ。ありがとう。この旅行を通じて、あなたがとてもいい女性だと思えるようになったわ」
「あははっ、そうですか。……というか、今までのあたしってどんな印象だったんです?」
「……学校では大好きな白鳥さんといつも一緒にいて、たまに私を小馬鹿にしてくる子? 特に1年生のときは。基本的にはいい子なのだけれど。……いえ、今でも私を小馬鹿にすることがあるわね、あなた」
「そんなことないですよぉ、一佳せんせぇ~」
「ひゃっ! ど、どこを触ってくるの! 桐生君、こちらを見ないように!」
「はい」
胸でも触られているのかな、霧嶋先生は。そういえば、大浴場で一緒に入ったときはたくさん触られたって言っていたっけ。
ウォータースライダーで一緒に滑ったのが良かったのか、花柳先輩と霧嶋先生という組み合わせもなかなか盛り上がるんだな。
あと、花柳先輩には悪いけど、霧嶋先生が抱いている先輩の印象は当たっているんじゃないかと思う。さすがは教師。俺と同じことを考えているのか、風花はクスクスと笑っている。俺も笑いそうになるけど、先輩に何をされるか恐いので堪えた。
前方を見ると、美優先輩と大宮先生がカーナビを操作している。このホテルから先輩のご実家までの経路を調べているのだろうか。
「よし、道順が表示されたね」
「そうですね。……みなさん、ここから私の実家までは1時間ちょっとで着く予定です。成実先生、私の実家まで運転をよろしくお願いします」
「分かったわ。じゃあ、美優ちゃんの実家に向かってしゅっぱーつ!」
『おー!』
大宮先生の運転によって、俺達の乗る車は御立シーサイドホテルを出発する。
このホテルではたくさんの思い出を作ることができたな。その中には初めての経験をし、一生忘れないこともあって。またこのホテルに泊まりに来たいな。できれば、このメンバーで。段々と小さくなっていくホテルを見ながらそんなことを思った。
「いやぁ、ホテルを後にするときって寂しいよね。今回は由弦達と一緒に来て楽しかったから特に寂しく思うよ」
「俺も楽しかったから寂しいよ。もし、また来ることがあったら、今回の美優先輩みたいに懐かしさを感じることがあるかもしれないな」
「そうだね。それにしても、一昨日ホテルに来たときはろくに泳げなかったのに、2日間でクロールと平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライと一通り泳げるようになって良かったね」
「風花の教え方と、美優先輩のサポートが良かったからだよ。これで来月から始まる水泳の授業も何とかなりそうだ。ありがとう、風花、美優先輩」
「いえいえ」
「由弦君の不安が解消されて良かったよ」
もっと早く風花や美優先輩と出会いたかったくらいだ。
家に帰ったら、風花に教わった泳ぎ方のポイントをノートとかにまとめておこう。
「そうだ、ホテルを出発したから家の方に連絡しよう」
そう呟くと、美優先輩はスマホを手に取る。自宅に電話するのかな。
「お母さん? もしもし、美優だよ。今ね……」
どうやら、美優先輩のお母様が電話に出たようだ。話し相手が母親だからか、いつもより少し幼い感じに聞こえる。そこがとても可愛らしい。
「1時間くらいでそっちに着くから。前に話したように由弦君の他にも、友達や先生方も一緒だよ。うん、また後でね。……あっ、葵」
今度は葵ちゃんが話し相手なのか。だからか、今度は落ち着いた声色になっている。
「いつもの美優先輩って感じがするよね」
「そうだな」
「でも、お母さんと話すときの美優先輩の声は可愛かったよね。普段は私達の先輩だし、朱莉ちゃん達が遊びに来たときもお姉さんとしてしっかりしていたからか」
「俺も同じことを思った」
お母さんが相手だと甘えやすくなるのかな。普段とは違う気持ちの持ち方が、声となって現れたのかもしれない。
声の変化でいうと、俺と2人きりになったときも甘い声を出すことがあるな。付き合い始めてからはそれが多くなって。もちろん、一昨日の夜や昨日の夜に色々したときも、美優先輩は可愛らしい声をたくさん出していた。
「由弦、どうしたの? 頬がほんのり赤くなってるけど」
「声が変わる先輩が可愛いなと思って」
「そういうことか」
「……由弦君。朱莉が由弦君と話したいんだって。いいかな?」
「もちろんいいですよ」
葵ちゃんならまだしも、朱莉ちゃんが俺と話したいと言うなんて意外だ。何か俺に伝えたいことでもあるのかな?
美優先輩からスマホを受け取る。
「お電話代わりました。桐生です」
『おはようございます、由弦さん』
「おはよう、朱莉ちゃん」
『姉さんから、由弦さん達との旅行を楽しんでいると聞きました。由弦さんはどうですか?』
「俺も美優先輩達と楽しい時間を過ごしているよ。これから、朱莉ちゃん達の家に行って挨拶するから、それはちょっと緊張しているけど」
『ふふっ、そうですか。お母さんとお父さんの様子を伝えたくて、由弦さんに代わってほしいと姉さんに言ったんです。もしかしたら、由弦さんが緊張しているかもしれないと思いまして。もちろん、由弦さんの声を聞きたかったのもありますけど』
「ははっ、そうなんだ。ありがとう」
俺の声が聞きたいと言われると、恋人の妹さんでもちょっとキュンときちゃうな。
「さっそくだけど、御両親は今、どんな感じなのかな?」
『お母さんはとても楽しみにしています。この前泊まりに行ったときの写真を見せたら、由弦さんはかっこいいし、風花さん達も可愛らしいからと』
「そうなんだ」
お母様の方は大丈夫そうかな。まずはそこで一安心する。
「ちなみに、お父様の方はどうかな?」
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「そうなんだね」
楽しみだと言ってくださっているのは嬉しいけど、付き合い始めたとテレビ電話で報告した直後に泣いたとは。不安が付きまとってしまうな。
『何かまずそうな雰囲気になったら、私と葵もサポートしますから安心してください! 実のところ、私もお姉ちゃんが由弦さんと一緒に住んだり、付き合い始めたりしたことを聞いたときは不安な気持ちもありました。でも、先日、実際に会って、由弦さんはとても素敵な方だと分かりましたから。今は姉さんとずっと一緒にいてほしいと思っています』
「ありがとう、朱莉ちゃん。君にそう思ってもらえて嬉しいよ。あと、風花達も俺と美優先輩のことをサポートするって言ってくれているよ」
『そうですか。それだけ、由弦さんと姉さんの関係を受け入れてくれていたり、2人のことを信頼してくれていたりする証拠ですね。きっと、お母さんもお父さんも会って話せば大丈夫だと思います』
「……そうだね」
家に着いたら、しっかりと挨拶しないとな。美優先輩と一緒に恋人として仲良く付き合っていて、ちゃんと同棲生活を送っているとも話さないと。
「じゃあ、あと1時間くらいで到着するから」
『分かりました。楽しみに待っています』
「うん。美優先輩に戻すね」
『はい』
「……美優先輩、ありがとうございました」
美優先輩にスマホを返す。
「朱莉ちゃんと何を話したの?」
「……御両親の今の様子を教えてくれたよ。俺が緊張しているかもしれないからって」
「そうなんだ。優しい子だね、朱莉ちゃんは。さすが美優先輩の妹さんだけある」
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