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特別編3
プロローグ『試験明け』
特別編3
――キーンコーンカーンコーン。
「これで全教科終わったか」
5月24日、金曜日。
今日は高校生になってから初めての中間試験の最終日だ。
最終科目の試験時間の終わりを知らせるチャイムが鳴った。その瞬間、体の力がすっと抜けた気がする。さっそく解放感に浸っているのか、「終わったー!」と歓喜の声を叫ぶ生徒が何人もいる。
俺・桐生由弦は一番後ろの席なので、俺のいる席の列のテストを回収し、教卓にいる試験担当の先生に提出した。ちなみに、集めたテストの教科は古典。
あと、定期試験のときは出席番号順に座る。ということは、1年生の間は毎回こうして解答用紙を提出することになるのか……と、今さらながらに思った。
「これで中間試験も終わったな。お疲れさん、桐生」
「加藤も試験お疲れ様」
前の席に座っている俺の親友・加藤潤が右手を挙げてきたので、俺は彼と右手でハイタッチ。パンッ、と音が鳴った直後、加藤は持ち前の爽やかな笑顔を見せる。
自分の席に座った瞬間、これでようやく高校最初の定期試験が終わった気がした。同時に解放感に浸り始める。
「あと、解答用紙の回収と提出もお疲れさん」
「それについても労いの言葉をかけられるとは。一番後ろの席は好きだし、その対価としてこのくらいのことはちゃんとやるよ」
「桐生らしいな。定期試験のときは出席番号順に座るから、学年末試験まで続くのか」
「……俺もついさっき思ったよ」
「ははっ、そうか。そういえば、古典はどうだった? 奏に教えてもらって何とかなったけど。文系科目は奏の方が得意だからさ」
柔らかな笑みを浮かべながらそう話す加藤。彼の恋人の橋本奏さんは文系科目が得意なのか。橋本さんは後ろの席に座っている姫宮風花と楽しそうに喋っている。
「俺も結構な手応えがあったよ。古典は不安なところがあったから、美優先輩に教えてもらったけど」
「心強いよな。先輩が恋人で一緒に住んでいると。俺も世界史を教えてもらったけど、白鳥先輩ってかなり頭がいいと思ったよ」
「そうだな」
古典や世界史は不安な部分があったので、そういったところは同棲している恋人・白鳥美優先輩に教えてもらった。美優先輩は頭がいいし、教え方も上手なので、加藤の言う通りとても心強かった。試験中は勉強会を開き、加藤や橋本さんも一緒に勉強する日があったな。1年生組だけでなく、先輩のクラスメイトで親友の花柳瑠衣先輩が質問すると、美優先輩は張り切って教えてくれた。
家が隣同士なのもあって、理系科目を中心に風花にはたくさん勉強を教えた。そのおかげで理解も深まり、理系科目は特に手応えがあったな。
「そういえば、試験が終わったから、今日から部活が再開するのか。サッカー部の活動はあるのか?」
「ああ。今日の放課後から再開だ。明日も練習がある。サッカーは大好きだし、奏も一緒だから嬉しいな」
「橋本さんはマネージャーだもんな」
部活でも恋人と一緒にいられると嬉しくなるのはよく分かる。俺も料理部で美優先輩と一緒にいられるのは嬉しいし、楽しい気持ちになる。そんなことを考えたら、早く美優先輩に会いたくなってきた。
「桐生の入っている料理部は……活動は毎週水曜日だったか」
「ああ。買い出しも月曜日だから、活動再開は来週になってからだな」
「そうか。じゃあ、今日は白鳥先輩とゆっくりするのか? それとも、花柳先輩とも一緒にどこへ遊びに行くつもりか?」
「今日は美優先輩と花柳先輩と一緒に外で昼ご飯を食べて、その後にショッピングモールに行く予定だよ。美優先輩と寝るダブルベッドを買うんだ」
「へえ、そうなのか。同じ部屋で寝ているんだもんな。俺もいつかは、奏と同棲して、ダブルベッドで寝る未来が来るのかなぁ」
爽やかな笑みを浮かべ、橋本さんをチラッと見ながらそう言う加藤。2人は3年以上も付き合っているし、高校に入学してからずっと仲がいい。だから、加藤が今言った未来がいつか来るんじゃないだろうか。
美優先輩と恋人として付き合うようになってから、およそ1ヶ月。
先輩と一緒のベッドに寝るのが当たり前になったけど、そのベッドはセミダブル。当初はそのままもありかなと思っていた。ただ、ゴールデンウィークに行った旅行で、美優先輩とダブルベッドで寝て、ダブルベッドを買おうと決めたのだ。
ゴールデンウィークが明け、中間試験が終わった後にダブルベッドを購入すると決めた。そのため、今まで寝ていた美優先輩のベッドは、先週末に先輩の実家へ送られた。なので、現在はふとんで眠っている。
「それにしても、高校最初の定期試験が終わって、その帰りに同棲している恋人と一緒にダブルベッドを買う生徒なんて、全国でも桐生くらいじゃないか?」
「……そうかもな」
定期試験から解放され、同棲している恋人と一緒にダブルベッドを買いに行く。あぁ、幸せな気持ちでいっぱいになってきた。
「みなさん、席に座ってください。終礼を始めますよ」
担任の霧嶋一佳先生が教室にやってきた。先生の一言によって、生徒達は自分の席に座り、静かになっていく。
「みなさん、高校最初の定期試験、お疲れ様でした。各科目の答案は来週の授業で返却される予定です。私が担当する現代文と古典もそうするつもりです。あと、定期試験も終わりましたし、来週中に初めての席替えをしましょうか。それでは、これで終礼を終わります。また来週会いましょう」
こうして、今週の学校生活が終わった。
来週は席替えをするのか。きっと、今とは違う席になるだろう。窓側の一番後ろだったので結構好きだったな。
いつも通り、今日も美優先輩と花柳先輩がここに来てくれる予定なので、先輩方を待つことにするか。
「由弦、加藤君、お疲れ様!」
「2人ともお疲れ様」
俺達のところにやってくる風花と橋本さん。定期試験が終わったからか、彼女達の顔にはいつも以上に楽しげな笑みが浮かんでいる。
俺達のところに来ると、橋本さんは加藤と右手でハイタッチ。さっきも加藤がしてくれたけど、それは橋本さん発祥だったのかも。
加藤と橋本さんのハイタッチを見て羨ましくなったのか、風花は俺に両手でハイタッチしてきた。俺と手が触れた瞬間、風花は嬉しそうな笑顔を見せる。
「由弦。古典はどうだった?」
「手応えあったよ。風花や橋本さんはどう?」
「何とかなったよ。由弦達と勉強したり、先輩達が教えてくれたりしたから」
「よくできたと思うよ。あぁ、これで中間試験が終わった! 今日からマネージャー業復活だよ。風花ちゃんも水泳部の活動があるんだよね」
「うんっ! 久しぶりだし、今日はたくさん泳ぐよ!」
張り切った様子で言う風花。そんな風花の左手には赤いスイムバッグが。水泳部も今日から活動再開か。ただ、水泳部は大会前以外を除いて、土日はお休み。きっと、今日はたっぷり泳ぐのだろう。
「由弦はこの後、美優先輩と花柳先輩と一緒にダブルベッドを買いに行くんだよね」
「ああ。昼食を食べた後にな」
「美優先輩と一緒に住んでいるんだもんね。ダブルベッドかぁ。何かいい響き」
橋本さんはそう言って加藤をチラッと見る。カップルだけあって、加藤と同じようなことを考えているのかもしれないな。
「奏の言うこと分かるかも。新しいベッドが家に届いたら、一度でいいから寝かせてよ」
「分かったよ」
花柳先輩も同じことを言いそうだ。あの人の場合は、一度だけじゃなくて何度も寝かせてと言いそうだけど。
あと、美優先輩と風花、花柳先輩だったらダブルベッドに一緒に眠れそうな気がする。そんな場面を妄想してみると……うん、いいな。
「みんな、初めての定期試験お疲れ様」
「みんなおつかれー」
教室後方の扉から、美優先輩と花柳先輩が入ってきた。試験が終わったからか、先輩方も普段よりもいい笑顔になっている。俺と目が合うと、美優先輩はニッコリとした笑顔で手を振ってきた。俺達1年生4人は『お疲れ様でーす』と言う。
美優先輩は俺の目の前までやってくると、軽くキスしてくる。俺達が付き合っているのは学校でも有名だけど、キスされると恥ずかしいな。
「ふふっ、頬を赤くしている由弦君かわいい。みんないい表情をしているね。これから、風花ちゃんは水泳部だよね。加藤君と奏ちゃんはサッカー部に行くのかな?」
「ええ、そうです。今日からまたサッカー部の練習が再開します」
「私もマネージャーとして、サッカー部をサポートしていきますよ!」
「そうなんだ。3人とも、それぞれ部活を頑張ってね」
そう言って、これから部活のある3人に向けた美優先輩の笑顔は、1つ上の先輩らしく優しさに溢れていたのであった。
――キーンコーンカーンコーン。
「これで全教科終わったか」
5月24日、金曜日。
今日は高校生になってから初めての中間試験の最終日だ。
最終科目の試験時間の終わりを知らせるチャイムが鳴った。その瞬間、体の力がすっと抜けた気がする。さっそく解放感に浸っているのか、「終わったー!」と歓喜の声を叫ぶ生徒が何人もいる。
俺・桐生由弦は一番後ろの席なので、俺のいる席の列のテストを回収し、教卓にいる試験担当の先生に提出した。ちなみに、集めたテストの教科は古典。
あと、定期試験のときは出席番号順に座る。ということは、1年生の間は毎回こうして解答用紙を提出することになるのか……と、今さらながらに思った。
「これで中間試験も終わったな。お疲れさん、桐生」
「加藤も試験お疲れ様」
前の席に座っている俺の親友・加藤潤が右手を挙げてきたので、俺は彼と右手でハイタッチ。パンッ、と音が鳴った直後、加藤は持ち前の爽やかな笑顔を見せる。
自分の席に座った瞬間、これでようやく高校最初の定期試験が終わった気がした。同時に解放感に浸り始める。
「あと、解答用紙の回収と提出もお疲れさん」
「それについても労いの言葉をかけられるとは。一番後ろの席は好きだし、その対価としてこのくらいのことはちゃんとやるよ」
「桐生らしいな。定期試験のときは出席番号順に座るから、学年末試験まで続くのか」
「……俺もついさっき思ったよ」
「ははっ、そうか。そういえば、古典はどうだった? 奏に教えてもらって何とかなったけど。文系科目は奏の方が得意だからさ」
柔らかな笑みを浮かべながらそう話す加藤。彼の恋人の橋本奏さんは文系科目が得意なのか。橋本さんは後ろの席に座っている姫宮風花と楽しそうに喋っている。
「俺も結構な手応えがあったよ。古典は不安なところがあったから、美優先輩に教えてもらったけど」
「心強いよな。先輩が恋人で一緒に住んでいると。俺も世界史を教えてもらったけど、白鳥先輩ってかなり頭がいいと思ったよ」
「そうだな」
古典や世界史は不安な部分があったので、そういったところは同棲している恋人・白鳥美優先輩に教えてもらった。美優先輩は頭がいいし、教え方も上手なので、加藤の言う通りとても心強かった。試験中は勉強会を開き、加藤や橋本さんも一緒に勉強する日があったな。1年生組だけでなく、先輩のクラスメイトで親友の花柳瑠衣先輩が質問すると、美優先輩は張り切って教えてくれた。
家が隣同士なのもあって、理系科目を中心に風花にはたくさん勉強を教えた。そのおかげで理解も深まり、理系科目は特に手応えがあったな。
「そういえば、試験が終わったから、今日から部活が再開するのか。サッカー部の活動はあるのか?」
「ああ。今日の放課後から再開だ。明日も練習がある。サッカーは大好きだし、奏も一緒だから嬉しいな」
「橋本さんはマネージャーだもんな」
部活でも恋人と一緒にいられると嬉しくなるのはよく分かる。俺も料理部で美優先輩と一緒にいられるのは嬉しいし、楽しい気持ちになる。そんなことを考えたら、早く美優先輩に会いたくなってきた。
「桐生の入っている料理部は……活動は毎週水曜日だったか」
「ああ。買い出しも月曜日だから、活動再開は来週になってからだな」
「そうか。じゃあ、今日は白鳥先輩とゆっくりするのか? それとも、花柳先輩とも一緒にどこへ遊びに行くつもりか?」
「今日は美優先輩と花柳先輩と一緒に外で昼ご飯を食べて、その後にショッピングモールに行く予定だよ。美優先輩と寝るダブルベッドを買うんだ」
「へえ、そうなのか。同じ部屋で寝ているんだもんな。俺もいつかは、奏と同棲して、ダブルベッドで寝る未来が来るのかなぁ」
爽やかな笑みを浮かべ、橋本さんをチラッと見ながらそう言う加藤。2人は3年以上も付き合っているし、高校に入学してからずっと仲がいい。だから、加藤が今言った未来がいつか来るんじゃないだろうか。
美優先輩と恋人として付き合うようになってから、およそ1ヶ月。
先輩と一緒のベッドに寝るのが当たり前になったけど、そのベッドはセミダブル。当初はそのままもありかなと思っていた。ただ、ゴールデンウィークに行った旅行で、美優先輩とダブルベッドで寝て、ダブルベッドを買おうと決めたのだ。
ゴールデンウィークが明け、中間試験が終わった後にダブルベッドを購入すると決めた。そのため、今まで寝ていた美優先輩のベッドは、先週末に先輩の実家へ送られた。なので、現在はふとんで眠っている。
「それにしても、高校最初の定期試験が終わって、その帰りに同棲している恋人と一緒にダブルベッドを買う生徒なんて、全国でも桐生くらいじゃないか?」
「……そうかもな」
定期試験から解放され、同棲している恋人と一緒にダブルベッドを買いに行く。あぁ、幸せな気持ちでいっぱいになってきた。
「みなさん、席に座ってください。終礼を始めますよ」
担任の霧嶋一佳先生が教室にやってきた。先生の一言によって、生徒達は自分の席に座り、静かになっていく。
「みなさん、高校最初の定期試験、お疲れ様でした。各科目の答案は来週の授業で返却される予定です。私が担当する現代文と古典もそうするつもりです。あと、定期試験も終わりましたし、来週中に初めての席替えをしましょうか。それでは、これで終礼を終わります。また来週会いましょう」
こうして、今週の学校生活が終わった。
来週は席替えをするのか。きっと、今とは違う席になるだろう。窓側の一番後ろだったので結構好きだったな。
いつも通り、今日も美優先輩と花柳先輩がここに来てくれる予定なので、先輩方を待つことにするか。
「由弦、加藤君、お疲れ様!」
「2人ともお疲れ様」
俺達のところにやってくる風花と橋本さん。定期試験が終わったからか、彼女達の顔にはいつも以上に楽しげな笑みが浮かんでいる。
俺達のところに来ると、橋本さんは加藤と右手でハイタッチ。さっきも加藤がしてくれたけど、それは橋本さん発祥だったのかも。
加藤と橋本さんのハイタッチを見て羨ましくなったのか、風花は俺に両手でハイタッチしてきた。俺と手が触れた瞬間、風花は嬉しそうな笑顔を見せる。
「由弦。古典はどうだった?」
「手応えあったよ。風花や橋本さんはどう?」
「何とかなったよ。由弦達と勉強したり、先輩達が教えてくれたりしたから」
「よくできたと思うよ。あぁ、これで中間試験が終わった! 今日からマネージャー業復活だよ。風花ちゃんも水泳部の活動があるんだよね」
「うんっ! 久しぶりだし、今日はたくさん泳ぐよ!」
張り切った様子で言う風花。そんな風花の左手には赤いスイムバッグが。水泳部も今日から活動再開か。ただ、水泳部は大会前以外を除いて、土日はお休み。きっと、今日はたっぷり泳ぐのだろう。
「由弦はこの後、美優先輩と花柳先輩と一緒にダブルベッドを買いに行くんだよね」
「ああ。昼食を食べた後にな」
「美優先輩と一緒に住んでいるんだもんね。ダブルベッドかぁ。何かいい響き」
橋本さんはそう言って加藤をチラッと見る。カップルだけあって、加藤と同じようなことを考えているのかもしれないな。
「奏の言うこと分かるかも。新しいベッドが家に届いたら、一度でいいから寝かせてよ」
「分かったよ」
花柳先輩も同じことを言いそうだ。あの人の場合は、一度だけじゃなくて何度も寝かせてと言いそうだけど。
あと、美優先輩と風花、花柳先輩だったらダブルベッドに一緒に眠れそうな気がする。そんな場面を妄想してみると……うん、いいな。
「みんな、初めての定期試験お疲れ様」
「みんなおつかれー」
教室後方の扉から、美優先輩と花柳先輩が入ってきた。試験が終わったからか、先輩方も普段よりもいい笑顔になっている。俺と目が合うと、美優先輩はニッコリとした笑顔で手を振ってきた。俺達1年生4人は『お疲れ様でーす』と言う。
美優先輩は俺の目の前までやってくると、軽くキスしてくる。俺達が付き合っているのは学校でも有名だけど、キスされると恥ずかしいな。
「ふふっ、頬を赤くしている由弦君かわいい。みんないい表情をしているね。これから、風花ちゃんは水泳部だよね。加藤君と奏ちゃんはサッカー部に行くのかな?」
「ええ、そうです。今日からまたサッカー部の練習が再開します」
「私もマネージャーとして、サッカー部をサポートしていきますよ!」
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