管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ

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特別編6

第7話『気持ちいいことあれこれ』

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「お風呂気持ち良かった~」

 淡い水色の寝間着を着た母さんがリビングに戻ってきた。美優先輩とソファーでキスしていたから、あっという間に母さんがお風呂から出てきたように思える。
 母さんは俺達のことを見ると、「あらあら~」とまったりとした笑顔になり、

「本当に仲がいいのね。ソファーでイチャイチャしちゃって」
「ふ、2人きりになったので……ソファーでお話しして、何度かキスしました」

 そう説明する美優先輩の顔は結構赤いけど、幸せな笑みが浮かんでいる。そんな先輩を見ていると、幸せな気持ちが膨らんでいく。頬中心に熱いから、先輩のように顔の赤みが強くなっているんだろうな。

「2人とも顔を赤くしちゃって可愛いわね。お風呂気持ち良かったわ。静岡から来た疲れが取れた」
「それは良かったです。じゃあ、私達も入ろうか」
「そうですね。母さんはゆっくりしてて」
「は~い。いってらっしゃ~い」

 母さんに手を振られる中、美優先輩と俺はリビングを後にした。
 着替えを持って洗面所に入ると、さっきまで母さんがいたから、シャンプーやボディーソープの甘い匂いが香ってくる。浴室に入るとその匂いが濃くなって。付き合い始めてからは美優先輩と一緒に入るのが普通なので、浴室に入ると甘い匂いがはっきりと香ってくるのが新鮮で。こういうことからも、今日はいつもと違うのだと実感する。
 いつもの通り、髪と体を洗い、美優先輩と一緒に湯船に浸かる。伸ばしている俺の両脚の間に先輩が座り、そんな先輩を後ろから抱きしめて。先輩の肌に触れられる面積が広くなるから、この体勢は好きだ。

「あぁ、気持ちいい。お風呂が気持ち良かったってお母様が言っていたから、いつも以上に気持ち良く感じるよ」
「ですね。いつも以上にいいお風呂に入っている感じがしますよね」
「だよね。ただ、夏でもお風呂が気持ちよく感じられる一番の理由は、こうして由弦君と一緒に入っているからだよ」

 そう言うと、美優先輩は俺の方に振り返り、持ち前の優しい笑顔を見せてくれる。そのことで抱く温かさはお湯の温もりや触れている先輩の肌の温もりよりも優しく、気持ち良くて。そして、先輩がとても可愛くて。

「俺も……美優先輩とだと、お風呂がとても気持ちいいですよ」

 俺は美優先輩への抱擁を強くし……先輩にキスをした。今はお湯と先輩の温もりに包まれているけど、唇から伝わる先輩の温もりは特別に感じられた。
 それから湯船から上がるまで、美優先輩と向かい合った状態で抱きしめ続け、たまにキスをするのであった。


 お風呂から出て、ドライヤーで髪を乾かしたり、美優先輩がスキンケアをしたりした後、俺達はリビングへ戻る。
 リビングでは母さんが食卓の椅子に座って、スマホを弄っていた。扉の開く音で俺達が戻ってきたのに気づいたのか、母さんはこちらを向いて小さく手を振った。

「2人とも、おかえり。由弦は家にいた頃よりも、お風呂に長く入るのね」
「……確かにそうかも。美優先輩と一緒に入るのが気持ちいいからだろうな」
「気持ちよさそうに湯船に入っていたもんね、由弦君」
「ふふっ。色々な意味でのぼせないように注意しなさいね。あと、由弦。お風呂を出てすぐに申し訳ないんだけど、お母さんの肩をマッサージしてくれるかしら? 肩凝っちゃって」
「ああ、分かったよ」

 今日は雨が降る中、静岡からここまで来たんだ。その疲れが肩凝りを引き起こしたのかもしれない。
 俺は母さんの後ろに立ち、寝間着越しに母さんの両肩をそっと掴む。その間に美優先輩は夕食後のときのように、母さんと向かい合う形で食卓の椅子に座った。

「由弦君が実家にいた頃は、お母様も肩をマッサージしてもらっていたんですか? お姉様の肩をよくマッサージいたと、由弦君が以前話していましたが」
「雫はかなり肩が凝りやすい体質だからね。あの子ほどじゃないけど、私も由弦に肩をマッサージしてもらうことはあったわ。年齢を重ねると共に回数が増えていってね。由弦がいたときは由弦が一番多かったわ」

 思い返すと、母さんの肩を揉むのは俺が一番多くやっていたかな。雫姉さんのマッサージの直後にしたときもあったか。たまに、父さんと雫姉さん、心愛が揉んでいる姿を見たことがある。父さんがマッサージすると、そのままイチャイチャしだすこともあるけど。

「今は主人と娘2人に揉んでもらっているの。3人も上手だけど、由弦ほどじゃないかな」
「そうなんですか。由弦君、揉み方がとても上手ですよね。私はよく肩が凝るので、由弦君と一緒に住み始めてからは由弦君にマッサージしてもらっています」
「そうなの。ということは、由弦の腕はさらに上がっているのかな?」

 母さんは俺の方にゆっくりと振り返り、ニヤリとした笑顔を見せてくる。

「結構な頻度で美優先輩の肩をマッサージしているからな。少なくとも……下手にはなっていないと思う。じゃあ、やるよ」
「お願いします」

 優しい笑みで俺にそう言うと、母さんは再び美優先輩の方を見る。
 美優先輩への肩凝りで培った技術を母さんに披露しようではないか。俺は両手にゆっくりと力を入れて、母さんの肩を揉み始める。

「あぁっ……」

 揉み始めた瞬間、母さんはそんな甘い声を漏らす。今のような声を出すのは、俺のマッサージが気持ちいいときだ。ただ、そんなことを知らない美優先輩は、見開いた目で母さんのことを見ていた。

「由弦。やっぱりあなたが一番気持ちいい……」
「そりゃどうも。肩、結構凝ってるな。ほぐれるまでしっかりやるよ」
「ありがとう、由弦。前よりも上手になっているわ。美優ちゃんにマッサージしているおかげかな」
「定期的にマッサージしているし、先輩は結構凝っているときが多いからね」
「由弦君のマッサージは本当に気持ちよくて。してもらった後は両肩がとても軽くなるんですよね。私も由弦君が一番上手だと思ってます」
「だよね! 一緒に住んでいるんだし、いつでも由弦にマッサージもらいなさい」
「はいっ!」

 美優先輩はいい笑顔で返事をする。母さんと気が合うことや、いつでも俺を使えと言われたのが嬉しかったのだろう。先輩がマッサージほしいと言ってくれたら、いつでもどこの箇所でもマッサージする所存だ。
 それからも、母さんの甘い声を聞きながら、母さんの肩のマッサージを続けていく。

「お母様。由弦君のマッサージが本当に気持ちいいんですね。今日一番のまったり顔になってます」
「あらそう? 今日一番に気持ちいいって思っているからね。これからも、お母さんがここに来たり、由弦が帰省したりしたときには一度は肩をマッサージしてもらおうかしら」
「別にいいけど」

 気持ちいいと言ってもらえるのは嬉しいからな。実家に帰省したときは母さんだけでなく、雫姉さんの肩をマッサージするのも恒例になりそうだ。ただ、もしそうなっても、実家に住んでいた頃に比べると、家族にマッサージする回数は格段に少ないんだよな。そう考えると、ちょっと寂しさを感じた。

「……母さん。ほぐれたと思うけど、どうかな?」

 俺がそう言うと、母さんは両肩をゆっくり回す。さあ、どうだろう。

「うん! 楽になったわ! さすがは由弦ね!」

 普段よりも高い声で言い、母さんは椅子から立ち上がって、俺の方を向く。肩が楽になったからか、スッキリとした笑顔を浮かべている。そして、母さんは右手を俺に伸ばし、頭を優しく撫でてくれる。

「マッサージがますます上手になったわね、由弦」
「そりゃどうも。というか、美優先輩の前で頭を撫でるのは止めてくれないか。何かちょっと恥ずかしい……」

 とは言うけど、頭から母親の温もりを感じられることに安心している自分もいて。それを言ったら、美優先輩と母さんにどう反応されるのか不安なので心に留めておこう。
 美優先輩の方を見ると、先輩は微笑みながら俺を見ていた。

「由弦君、可愛いな」
「……どうもです」
「ふふっ。あと、気持ち良さそうにしているお母様を見ていたら、私も由弦君に肩をマッサージしてもらいたくなっちゃった。そんなに凝ってないけど。いいかな?」
「由弦にマッサージしてもらっている美優ちゃんを見ていたいわ」
「……いいですよ、美優先輩」

 俺は美優先輩の背後まで動く。先輩の両肩を掴み、マッサージを始める。こうしているといつもの時間だと安心できる。

「ちょっと凝っていますね」
「うん。だから、由弦君のマッサージが凄く気持ちいいよ」

 はぁっ……と、美優先輩は可愛らしい声を漏らしている。

「美優ちゃんも今日一番のまったりとした顔になっているわよ」
「とても気持ちいいですもん」

 そう言って、美優先輩と母さんは楽しく笑い合う。本当にこの一日で先輩は母さんと打ち解けられたなぁと思う。
 美優先輩のマッサージが終わった後は、3人で話題のテレビドラマを見たり、LIMEのビデオ通話で俺の家族や先輩の家族と話したりするなど、寝るまで穏やかで楽しい時間を過ごすのであった。
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