管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ

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特別編8

第5話『試験勉強』

 放課後。
 霧嶋先生の体調が良くなって日常が戻ったからだろうか。今日はあっという間に放課後になった気がする。
 昨日の約束通り、今日の放課後は俺、美優先輩、風花、花柳先輩、加藤、橋本さんの6人で期末試験に向けた勉強会をする。場所は美優先輩と俺の家。中間試験のときも、この6人で勉強会をすることが多かった。
 リビングのテーブルで6人椅子を囲んで勉強会を始める。その際、俺と美優先輩は隣同に座って。ちなみに、俺から時計回りに美優先輩、花柳先輩、橋本さん、加藤、風花という並びで座っている。
 まずは今日の授業で出た課題を片付け、その後に期末試験に向けた勉強をするという流れに。放課後の勉強会ではこの流れで実施することが多い。
 1年3組は、今日の授業で数学Aと古典の課題が出ている。なので、

「ねえ、由弦。問3の確率の問題を教えてくれない?」
「あっ、私も同じ問題を桐生君に教えてほしいな」
「その問題は俺も合ってるか不安だな。確認したい」
「いいよ。じゃあ、橋本さんはこっちに来て」

「桐生。古典のこの問題……どうやって現代語訳にすればいいのか教えてくれないか?」
「……ああ、この問題か。これはまず……」

 俺が教えることが結構多い。数学Aは風花、加藤、橋本さんが苦手で、古典は加藤が苦手にしている科目だからなぁ。個人的には授業の復習になるし、理解が深まるのでこれもいい勉強になっている。それに、3人とも苦手なりに頑張って勉強しているし、教えた後はお礼を言ってくれるから。

「美優。数Ⅱの課題で分からないところがあるんだけど、教えてもらってもいい?」
「いいよ。どの問題かな」

 美優先輩は花柳先輩に数学Ⅱを教えているのか。美優先輩は中間試験で全教科いい点数を取っていたからなぁ。
 そういえば、以前、花柳先輩は理系教科が苦手だと言っていたっけ。これまでも、理系科目の課題や試験勉強をするときに、花柳先輩が美優先輩に質問する場面を何度も見ている。

「あの、先輩方。数Aなのですが、ちょっと分からないところがありまして。訊いてもいいですか?」
「いいよ、奏ちゃん。……おぉ。こ、こういう問題かぁ。お、教えられるかなぁ。美優はどう?」
「……うん、教えられるよ。問題文がちょっと捻ってあるね。まずは……」

 座っている席の位置もあって、橋本さんは美優先輩と花柳先輩に質問することもある。ただ、今のように理数系科目だと、主に美優先輩が教える。
 花柳先輩や橋本さんに勉強を教える美優先輩は、普段以上に大人っぽく見えて。特に橋本さんに教えるときは頼れるお姉さんオーラが出まくっている。時にはそんな美優先輩の姿に見入り、課題をやる手が止まってしまうことも。ただ、そのことで、今日の学校生活と課題をやることの疲れが取れていった。

「……だから、確率は5分の2になるんだ」
「なるほどね! 分かった。これで、数Aの課題も終わったぁ」
「お疲れ様、風花」
「風花ちゃん、お疲れ様。勉強会を始めてから1時間くらいだったし、みんな今日の課題が終わったから、ここでちょっと長めに休憩しようか」

 美優先輩のその提案に俺達はみんな賛成。俺達はちょっと長めの休憩を取ることに。
 勉強会が始まる前に淹れたアイスコーヒーを一口飲み、美優先輩と花柳先輩が学校の購買部で買ってくれたクッキーを1枚食べる。甘さもちょうどいいし、香ばしさもあってとても美味しい。

「いやぁ、由弦様々だよ。いつも課題教えてくれてありがとね」
「いえいえ。こちらこそ、教えるのがいい勉強になってるよ」
「奏や俺にもありがとな。桐生に教えてもらえれば、期末も何とかなりそうだ」
「教え方が上手だから本当にそう思えるよね、潤。中間試験のときから思っていたけど、桐生君って昔から誰かに勉強を教えることが多かったの?」
「そうだね。妹がいるから、小さい頃から教えることは多かったよ。中学になってからは、試験前には今みたいに友達と何人かで勉強会をして、こうして教えてた。もちろん、教えるだけじゃなくて、分からないときは姉や先生に質問してたよ。今は美優先輩にも」
「由弦も誰かに教えてもらうから、分かりやすく教えるコツが分かるのかな」
「それはあるかもな」

 長い時間考えても分からなくて、美優先輩や雫姉さん、担当する先生に質問したらすぐに理解できたこともある。分からなかったときの気持ちも含めて、教えてもらったときのことは今でもよく覚えている。それも参考にして、風花達の分からない内容を教えるようにしている。
 そういえば、心愛はちゃんと期末試験の勉強をしているかな。中学の期末試験も、陽出学院と同じくらいの時期にあるし。夜にでも、ちょっと訊いてみるか。

「期末試験が終わった頃には、七夕がもうすぐよね。美優、今年もやるの? そうめんパーティー」
「うん、そのつもりだよ」
「美優先輩と花柳先輩。そうめんパーティーって何なんですか?」
「凄く興味が惹かれるのですが!」

 目を輝かせながら美優先輩を見る風花。風花は食べることが大好きだからなぁ。そうめんはこれからの季節にピッタリな食べ物だし。

「そういえば、由弦君や風花ちゃん達に話していなかったね。あけぼの荘では毎年、七夕直前の週末に、庭でそうめんを食べるのが恒例になっているんだよ。七夕にそうめんを食べる風習もあるし。去年もあけぼの荘の住人みんなと瑠衣ちゃん、大宮先生が参加したよ。あとは伯父夫婦も顔を出したかな」
「お花見のときみたいに、レジャーシートを敷いてみんなでそうめんを食べるのよ。去年は美優とあたしでそうめんを茹でたり、具材を用意したりしたっけ」
「2人で準備したね」

 当時のことを思い出しているのか、美優先輩と花柳先輩は楽しそうな笑みを浮かべる。
 あけぼの荘には七夕絡みのイベントがあるんだ。きっと、お花見のときみたいに、みんなで楽しくそうめんを食べるんだろうな。

「あとはみんなで短冊に願いごとを書いて、笹に飾ることもするんだよ」
「そうなんですね。本当に七夕らしいイベントですね」
「その話を聞いたら楽しみになってきました!」
「ふふっ。じゃあ、風花ちゃんは参加だね。由弦君も参加する?」
「もちろん参加します。あと、俺は管理人である美優先輩の恋人ですし、料理部の部員でもありますから、色々と準備をさせてください」
「ありがとう、由弦君」

 ニッコリと可愛らしい笑顔でそう言う美優先輩。笹を飾ったり、そうめんや具材を準備したり俺のできることをやっていきたい。

「瑠衣ちゃんも参加するよね?」
「もちろんよ!」
「奏ちゃんと加藤君はどうする? 午後6時頃から始めるつもりだから、部活があっても大丈夫だと思うけど。もちろん、遅れてもかまわないし」
「私達も参加していいんですか?」
「あけぼの荘に住んでませんけど」
「もちろんいいよ。あけぼの荘の住人と、住人ととても親しい人達だけでやるイベントだけど、2人とはいつもお昼ご飯を一緒に食べているし。それに、瑠衣ちゃんも参加しているからね」

 美優先輩は持ち前の優しい笑顔を浮かべながらそう言う。花柳先輩ほどじゃないけど、加藤と橋本さんもあけぼの荘の住人である俺達3人と一緒にいることが多いからな。あけぼの荘のイベントに参加する資格はあると思う。
 今の美優先輩の言葉を受けて、加藤は爽やかに、橋本さんは嬉しそうに笑う。

「そうですか! じゃあ、潤と一緒に参加してもいいですか?」
「部活次第で途中からの参加になっちゃうかもしれませんが」
「もちろんそれでかまわないよ。じゃあ、奏ちゃんと加藤君も参加だね」

 美優先輩のその言葉に、加藤と橋本さんはしっかりと首肯した。

「美優。あとは誰を誘う?」
「ここにいるみんなとあけぼの荘の住人以外だと……あとは成実先生と一佳先生だね」
「おっ、いいね。成実先生はうちの担任と料理部顧問だし、一佳先生は風花ちゃん達の担任だもんね。それに、今年度になってから関わりがとても深くなったし」

 大宮先生は去年から続いて美優先輩と花柳先輩の担任教師。霧嶋先生は俺、風花、加藤、橋本さんの担任教師。どちらの先生もプライベートでの交流があるし、先生方が来るのは賛成だ。
 リビングにかかっているカレンダーで、七夕周辺の曜日を確認すると、七夕当日……7月7日が日曜日であると分かった。そのため、あけぼの荘のそうめんパーティーは7月7日の午後6時から開催することに決定。
 美優先輩はLIMEのあけぼの荘のグループトークと、霧嶋先生、大宮先生にそうめんパーティーの招待メッセージを送った。みんな、参加してくれると嬉しいな。
 それから少しの間雑談して、俺達は勉強会を再開する。そうめんパーティーが決定したからか、風花達は休憩前よりもやる気になっているように見えた。


 美優先輩のスマホがたまに鳴り、そうめんパーティーに参加表明する人が続々と増えていく。
 部活やバイトがあって遅れるかもしれない人はいるけど、最終的には美優先輩がメッセージを出した人達は全員参加することが決まった。春休みのお花見のとき以上に賑やかで、楽しいイベントになりそうだ。
 七夕当日に雨が降らないことを願おう。できれば、雲が晴れて星空が見えますように。
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