管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ

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特別編10

第10話『関東大会での風花の戦い①-女子400m個人メドレー-』

 関東大会1日目。
 俺達の住んでいる東京都も、会場のある山梨県も雨が降っている。今日は夜遅くまでこの雨が続く予報になっている。ただ、会場のプールは屋内にあるため、予定通りに実施される。
 風花は関東大会で女子400m個人メドレー、女子100m自由形、女子400mメドレーリレーの3種目に出場する。今日は女子400m個人メドレーに出場する。都大会では1位になった種目だ。
 レースは午前10時からスタート。それに合わせて、俺と美優先輩、霧嶋先生、大宮先生は花柳先輩の御自宅に向かう。ちなみに、御自宅には、放課後や休日に美優先輩と一緒に何度か遊びに行ったことがある。
 大会側が大手動画サイトで生配信する。なので、花柳先輩のノートパソコンを先輩の部屋にあるテレビに繋げて、テレビ画面に映る中継を観ることに。
 テレビが見やすいように、ローテーブルの周りにカタカナの「コ」の字の形でクッションに腰を下ろす。ちなみに、俺はテレビを正面にして、美優先輩と霧嶋先生に挟まれる形で座った。
 午前10時。関東大会の競泳がスタートした。
 まずは各種目の予選が実施される。
 事前にネットで調べたら、各種目予選タイムの上位10名が決勝に進出することができるとのこと。
 また、各種目には全国大会の標準記録というもの設定されている。個人種目ではこの記録の突破がインターハイ出場の絶対条件とのこと。ただし、予選・決勝を問わず、この記録を突破すれば、その時点でインターハイへの出場が決定する。
 また、学校対抗のリレー種目は予選か決勝で全国大会の標準記録を突破するか、突破しなくても決勝のレースで第3位までに入れば、インターハイに出場することができる。
 風花の出場する女子400m個人メドレーはもちろん個人種目。なので、全国大会の標準記録の突破が必須となる。女子400m個人メドレーの標準記録は5分03秒21だ。
 陽出学院高校の水泳部部員もたまに登場する。
 みんな一生懸命になって予選レースを泳ぐ。
 ただ、全国大会の標準記録を切ってインターハイ出場を決める部員もいれば、標準記録は切れなかったものの決勝には進んだ部員、残念ながら予選落ちする部員もおり、結果は様々だ。どんな結果でも、俺達5人はレースが終わると拍手を送った。
 また、都大会のときと同じく、

「山本君! 関東大会でもいい泳ぎしてるわ!」
「高橋さん! その調子で泳ぎなさい!」

 霧嶋先生は授業で教えたことがある生徒だと特に熱を入れて応援していた。決勝進出やインターハイ出場が決まると大喜び。今回は会場ではなく配信だけど、先生の熱い応援は健在だ。先生の応援する姿を見ると、都大会や先日の球技大会を思い出す。
 そして、午前11時近くに女子400m個人メドレーの予選が実施された。
 風花は第3組目に出場し、記録は5分04秒19。都大会のときよりもタイムを結構伸ばしたけど、全国大会の標準記録は突破できなかった。ただ、予選全体で第4位になったため、決勝進出が決まった。

「風花、決勝進出が決まりましたね!」
「そうだね! 由弦君!」
「決勝で泳げるから、インターハイ出場のチャンスはまだあるわね」
「瑠衣ちゃんの言う通りね」
「決勝戦では、姫宮さんが標準記録を突破できるように応援しましょう!」

 霧嶋先生はかなり気合いを入れた様子でそう言った。そんな先生に俺達4人は頷く。
 クラス担任なのもあって、風花のレースでは、霧嶋先生は今日一番の声で応援していたな。決勝でも気合いを入れて応援してくれるだろう。
 午後1時半頃に大会が昼休みに入った。その時間に合わせて俺達はお昼ご飯をいただくことに。
 ちなみに、お昼ご飯は花柳先輩の母親の亜衣さんと父親の良樹さんが作ってくれた。メニューはミートソースパスタと生野菜サラダ。どちらもとても美味しかった。
 また、大会の昼休み中に、風花からLIMEのグループトークに、

『予選でインターハイ出場を決めらなかったですが、決勝に進めました! 決勝では標準記録を切って、インターハイに出場できるように頑張ります!』

 というメッセージが届いた。俺達は『頑張って』などと応援メッセージを送った。万全の状態で決勝のレースに臨んでほしい。
 午後2時半頃に再びレースが行なわれる。
 これから行なわれる種目は全て決勝種目だ。決勝に進出した水泳部部員は何人かいるので、その生徒達が出ると応援する。既に予選でインターハイ出場を決めていてのびのびと泳ぐ部員もいれば、決勝のレースでインターハイ出場が決まって喜んだり、惜しくも出場が叶わず涙を流したりする部員もいた。
 そして、午後3時過ぎ。

「風花が出てきましたね」

 女子400m個人メドレーの決勝の時間がやってきた。
 風花は黒い競泳水着を着て、7レーンのスタート台の近くまで歩く。午前中に予選をお酔いだけど、特に疲れた様子はなさそうだ。

「風花、頑張れ!」
「頑張って、風花ちゃん!」
「風花ちゃん、頑張って! ここが勝負所だよ!」
「姫宮さんならきっとインターハイ出場を決められるわ!」
「頑張ってね、風花ちゃん!」

 俺達5人は画面に映る遥か遠くにいる風花に向かって、大きな声で声援を送る。
 その直後、笑顔で手を振っている風花の様子が映し出される。タイミング的に俺達の声援が風花に届いているような気がして。まあ、実際には会場が盛り上がっているし、御両親や妹さん、水泳部の部員からの声援が聞こえたのだと思う。それでも、何だか嬉しい気持ちになった。
 スタート地点全体の様子が映し出される。風花は金髪のショートボブだから結構目立つなぁ。
 選手それぞれの様子も映る。そんな中、風花が7レーンのスタート地点の近くにある椅子に腰を下ろし、水泳帽を被り、ゴーグルを掛けているところが映る。風花の顔から笑みが消え、真剣な様子になる。どうやら、気持ちはレースのモードになったようだ。
 それから程なくして、審判員が笛を鳴らし、風花を含めた決勝戦を戦う10人の選手達がそれぞれのレーンのスタート台に立つ。

『Take your marks』

 という場内アナウンスで、選手達はスタートの構えを取る。
 それから数秒間、会場内は静寂に包まれ、
 ――ピッ!
 というスタート音が鳴り響き、決勝戦がスタートした! インターハイ出場を目指して頑張れ、風花!
 風花は勢い良く飛び込み、水中から姿を現すとバタフライを泳ぎ始める。5レーンと6レーンの選手と首位争いをしている。
 ちなみに、400m個人メドレーはバタフライ→背泳ぎ→平泳ぎ→自由形の順番でそれぞれ100mずつ泳ぐ。

「風花ちゃん、5レーンの選手と6レーンの選手と首位争いしてるね」
「そうね、美優!」
「4レーンから6レーンの選手は、予選でインターハイ出場を決めた3人ね。名前、覚えてるわ」

 凄いな、霧嶋先生。俺、全然覚えてなかったぞ。
 インターハイを決めている選手達と首位争いをしているとは凄いな、風花。
 風花は5レーンの選手と6レーンの選手と首位争いをしたままバタフライを100m泳ぎ切り、次は背泳ぎに。
 5レーンの選手は背泳ぎが得意なのだろうか。背泳ぎになって少しすると、それまで5レーンから風花の7レーンまで横一線だったけど、5レーンの選手がトップに躍り出る。
 風花は6レーンの選手と2位争いをしている。

「風花ちゃん、6レーンの選手と並んでるね」
「ええ。インターハイを決めている4レーンの子よりも速いから、風花ちゃんがいいペースで泳いでいると思いたいわね」
「そうだね、瑠衣ちゃん」
「花柳さんの言う通りね。頑張って、姫宮さん!」
「頑張れ、風花!」

 俺達はテレビ画面に向かって、大きな声で風花のことを応援する。
 5レーンの選手は2位以下の選手との差を少しずつ広げていき、背泳ぎが終わったときには2位争いをする風花と6レーンの選手とは体1つ分の差を付けていた。
 風花は2位争いを繰り広げたまま、6レーンの選手とほぼ同時で200mのターンをする。ここからは平泳ぎだ。
 ただ、6レーンの生徒は平泳ぎが得意なのか、風花よりも前に出始める。それまで風花と2位争いを繰り広げていたけど、ここで6レーンの選手が単独2位となる。風花は3位に後退する。
 250mのターンをしてから半分近く泳いだところで、6レーンの選手は先頭を泳いでいる5レーンの選手を追い抜いて逆転する。
 風花は2位を泳ぐ5レーンの選手とは体半分近くの差で、3位で300mのターンをした。
 ここからはゴールまでは自由形だ。風花は得意のクロールを泳ぎ始める。

「さあ、ここからはクロールですね!」
「風花ちゃんが得意なクロールだね!」
「ラスト、頑張ってほしいわね! 頑張って、風花ちゃん!」

 自由形に入ったのもあり、俺達の応援の声も大きくなる。会場も盛り上がっているようで、テレビから聞こえる歓声のボリュームも大きくなる。
 クロールが得意なのもあって、風花は2位で泳ぐ5レーンの選手との差を少しずつ縮めてきた。

「いいわよ、姫宮さん! 最後まで思いっきり泳ぎなさい! そうすればきっと、あなたはインターハイに出場できるわっ!」

 今日一番の大きな声で霧嶋先生はテレビに向かってそう言う。
 風花は5レーンの選手とは腕の長さほどまでに差を縮めて、3位で最後のターンをする。

「風花、頑張れー!」
「風花ちゃん、頑張ってー!」
「頑張って、風花ちゃんっ!」
「姫宮さん、いいわよ! そのままゴールに向かいなさい! 頑張って!」
「頑張って、風花ちゃんっ!」

 俺達の応援の声も最高潮だ。
 最後のターンをしてからも、風花はじわじわと5レーンの選手との差を縮めていく。
 そして、風花は5レーンの選手とほぼ同時にゴールをした!
 さあ、結果はどうだ? 予選でインターハイを決めた5レーンの選手とほぼ同時にゴールできたけど。
 会場にいれば電光掲示板をすぐに見られるけど、今は配信の映像なので今もレースの様子が映っており、電光掲示板を見られない。風花は……喜んでいるように見える。ということは?
 それから程なくして、10人全員の選手がゴールする。
 10人目の選手がゴールした直後に電光掲示板が表示される。
 インターハイ出場の条件となる全国大会の標準記録は5分03秒21だ。風花は――。

『3位:姫宮風花 (陽出学院・東京) 5:02.56』

「5分02秒56! 姫宮さん、標準記録を突破したわ!」
「ということは、風花ちゃん……インターハイ出場決定ですね!」
「そうよ! 白鳥さん!」
『やったー!』

 風花、インターハイに出場決定だ!
 俺は隣に座っている美優先輩と抱きしめ合う。美優先輩はとても嬉しそうで。そんな美優先輩の後ろから花柳先輩が笑顔で抱きしめている。
 霧嶋先生と大宮先生もぎゅっと抱きしめ合っている。2人とも笑顔だけど、霧嶋先生は両目に涙を浮かべていた。クラスで受け持っているし、これまでで一番っていいほどに応援していたからな。インターハイ出場決定に感動したのだろう。

「風花ちゃん凄いね! インターハイ出場だよ!」
「1年生でインターハイだなんて! 凄い後輩だわ!」
「凄いですよね! さすがは風花ですよ!」
「ううっ、クラスでの教え子がインターハイへ行けるなんて。本当に嬉しいわ……」
「嬉しいよね、一佳ちゃん。風花ちゃんは凄い子だね!」

 俺達は喜びの言葉を口にする。みんな、風花のインターハイ出場が決まったのが嬉しいことがよく分かる。特に涙を流している霧嶋先生からは。
 画面には水泳帽とゴーグルを外して、喜びの表情を見せる風花の姿が映し出される。風花を見ると嬉しい気持ちが膨らんで。

「風花おめでとう!」
「おめでとう、風花ちゃん! 凄いね!」
「風花ちゃん、おめでとう! やったわね!」
「姫宮さんおめでとう! 全国大会に行けるなんて凄いわ!」
「凄いよね! 風花ちゃんおめでとう!」

 画面に向かって、大きな声で祝福の言葉を送った。風花には聞こえないと分かっていても、おめでとうって声に出すと温かい気持ちになれる。
 俺達5人はLIMEのグループトークで、『個人メドレーでインターハイ出場おめでとう!』という旨の祝福メッセージを送る。美優先輩と花柳先輩は『おめでとう!』の文字付きの猫のイラストスタンプも送っていた。
 また、俺達のメッセージを見て知ったようで、数分ほどしてサッカー部の練習に参加している加藤と橋本さんからも、風花に向けて祝福のメッセージを送られた。
 加藤と橋本さんのメッセージから20分ほどして、

『みなさん、ありがとうございます! 400m個人メドレーでインターハイ出場が決まりました! 明日と明後日も頑張ります!』

 風花からそんなメッセージが送られた。試合直後の喜んだ様子も見ていたのもあり、メッセージを読むと風花の嬉しそうな笑顔が目に浮かぶよ。
 全種目が終わると、1日目の表彰式が行なわれる。
 各種目、決勝戦で第3位まで表彰式に参加する。なので、もちろん個人メドレーで第3位になった風花も登場し、大会運営者から賞状を受け取っていた。賞状を受け取ってとても嬉しそうにする風花も映し出されて。
 まずは女子400m個人メドレーでのインターハイ出場決定おめでとう。明日と明後日も頑張れよ。俺達も東京から応援するぞ。
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