恋人、はじめました。

桜庭かなめ

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特別編9

第1話『席替え-2学期編-』

 2学期初日の今日は始業式とロングホームルームをやり、お昼頃に終わる予定だ。
 始業式はテレビでの校内放送形式だ。移動しなくていいし、自分の席に座っていられるので快適だ。だから、校長先生の話もそこまで長くは感じなかった。
 始業式の後はロングホームルームだ。
 各教科の先生が教室に来て、夏休みの課題を提出した。課題は全て終わっているので、問題なく提出することができた。
 課題提出が終わると、担任の高橋先生が教室に戻ってきて、先生から2学期の主な予定や勉強のことについて話された。
 2学期は文化祭や球技大会、高校生活の中で最大とも言える修学旅行といったイベントが目白押し。文化祭や修学旅行の話をしたときは教室内がちょっと盛り上がった。氷織達と一緒にそういったイベントに参加できると思うとワクワクする。
 また、高校生活もこの2学期で折り返しとなる。なので、受験生となる3年生に向けて、学力をしっかりと身に付けてほしいと高橋先生は話していた。文系クラスなので国語や社会科科目、英語を中心にちゃんと勉強していかないと。
 2学期について高橋先生が話した後は、文化祭実行委員や修学旅行の実行委員を決めた。文化祭の方は1年生のときの経験者が、修学旅行の方はやる気になっているクラスメイトがいたのですんなりと決まった。
 各委員が決まった後は、

「2学期が始まったので席替えをしま~す!」
『はーい!』

 席替えをすることになった。元気良く返事をする生徒が多い。ちなみに、そのうちの3人は和男と清水さんと火村さんである。

「1学期のときと同じで、くじ引きで新しい席を決めますよ~」

 そう言って、高橋先生は黒板に6×6の座席表を描いていく。
 今回もくじ引きか。前回の席替えでは氷織の後ろの席を引き当てられたので、今回も氷織の近くの席を引き当てたい。
 座席表を描き終わると、高橋先生は前の方の席がいい人がいるか訊いた。目が悪かったり、背が低かったりする生徒達への配慮だろう。
 教卓の目の前の席に座っている男子生徒と女子生徒が手を挙げた。2人の希望は認められ、今の席と同じになった。そういえば、あの2人は確か、前回の席替えでも前の席がいいと手を挙げていたな。もしかしたら、2人の席は年度末まで変わらないかもしれない。
 高橋先生は座席表に前の方の席がいいと希望した生徒2人の名前と、各席に1から順番に番号を書いた。うちのクラスは36人で2人希望をしたから、1から34まで。
 氷織の近くの席になるのが一番の希望だ。あと、場所的な意味での希望は窓側、廊下側、最後尾。窓側は1から6、廊下側は29から34、最後尾は6、12、17、22、28、34か。
 くじを引くのは廊下側の席からか、窓側の席からかを決めるため、それぞれの最前列の生徒がジャンケンをする。その結果、窓側の席の生徒が勝利したので、窓側から引くことになった。ということは、氷織と俺は序盤でくじを引くんだな。ちなみに、和男と清水さんは廊下側、火村さんは清水さんの隣の席だから終盤に引くことになる。
 高橋先生はトートバッグから、大きめの封筒とビニール袋を取り出す。封筒を何度も振った。

「これで混ざったかな。それじゃ、窓側から順番に封筒からくじを引いてね~。35番と36番を引いたらもう1枚引いてね~。黒板の座席表に名前を書いてね~。あと、引いたくじはビニール袋に入れてね~」

 こうして、席替えのくじ引きが始まった。
 窓側の先頭に座る生徒から順番にくじを引き、黒板の座席表に自分の名前を書いていく。

「はい~、次は氷織ちゃ~ん」
「はいっ」

 すぐに氷織の番がやってきた。
 氷織は席から立ち上がり、教卓の近くでくじが入っている封筒を持つ高橋先生のところへ行く。
 氷織は封筒に右手を入れて、中から1枚くじを引いた。

「12番ですね」

 そう言い、氷織は黒板の座席表に自分の名前を書き込む。
 12番は……窓側から2列目の最後尾か。今の俺の席の右隣だ。結構いい席を引いたな。
 まだ序盤なのもあり、氷織の両隣である6と17は誰にも引かれていない。このどっちかを引きたいなぁ。その次に氷織の前の席である11。右斜め前と左斜め前も引かれていないのでこの2つのどちらかでも。
 氷織は教卓にあるビニール袋にくじを入れると、自分の席に戻ってきた。

「最後尾の席でした。今の明斗さんの右隣ですね」
「いい席を引いたな」
「はいっ」
「氷織の両隣か前の席を引きたいな。あとは斜め前でも」
「私の席の周辺はまだ誰にも引かれていませんね。明斗さんが引いてくれるように祈っています」
「ありがとう」
「じゃあ、次は紙透く~ん」
「はい」

 俺は席を立ち上がり、くじが入っている封筒を持つ高橋先生のところへ向かう。

「氷織ちゃん周辺の席になるといいわね~」
「そうですね」

 氷織の名前が出たので氷織の方をチラッと見ると……氷織は俺のことを見ながら両手を組んでいる。周辺の席を引いて欲しいと強く願っていると窺える。
 俺は高橋先生が持っている封筒に右手を入れ、くじを1枚引いた。二つ折りになっているくじを開くと、

『6』

 と書かれていた。
 6は……座席表を見ると、窓側最後尾の席が6だった。今と同じ席だけど、氷織の左隣の席なので物凄くいい席を引けたな。凄く嬉しい!

「6です」

 俺がそう言うと、

「良かったですっ」

 と、氷織は弾んだ声でそう言った。氷織はとても嬉しそうな笑顔で拍手している。そのことで嬉しい気持ちが膨らむ。運が良かったのもあると思うけど、氷織が祈ってくれたのもあって、氷織の隣の席を引き当てることができたんじゃないかと思う。
 座席表に自分の名前を書き、引いたくじをビニール袋に入れて、自分の席へと戻った。その際、氷織は両手を出してきたので、俺達はハイタッチした。

「凄いです、明斗さん! 左隣の席を引けるなんて」
「ありがとう。引けて良かったよ。氷織が祈ってくれたおかげだよ」
「お力になれていたら嬉しいです。……今後はお隣同士の席になれるのが嬉しいです」
「俺も嬉しいよ。これからもよろしくな、氷織」
「はいっ、よろしくお願いします」

 氷織はニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。氷織の左隣の席を引くことができて良かった。
 その後もクラスメイト達は新しい席のくじを引いていく。
 順番も終盤になったところで火村さんの番になり、

「やったわ! 11番! 氷織の前ー!」

 火村さんは氷織の前の席を引き当てて大喜びしていた。バンザーイ! と、両手を挙げているし。火村さんも運がいいな。
 氷織の前の席ってことは、俺の右斜め前か。ということは、火村さんとはご近所さんになるのか。
 そして、くじ引きもラスト付近になって、

「27番! やったよ!」
「俺の前じゃねえか、美羽!」

 和男と清水さんが前後の席を引き当てた。ラスト付近まで前後の席が空いていて、そこを2人が引き当てるとは。2人ともかなり運がいいな。
 清水さんも和男もかなり喜んだ様子だ。清水さんは座席表に書いて自分の席に戻った際、和男とハイタッチしていた。
 清水さんがくじを引いてから程なくして、クラス全員がくじを引き終わった。
 高橋先生は黒板に書かれた新しい座席表をスマホで撮影した。

「OKっと。はい~、では、新しい座席に移動してくださ~い!」
『はーい!』

 クラスメイト達は机と椅子を持って新しい席へと移動し始める。
 俺は前の席と変わらないので、座り続けてクラスメイト達が移動する様子を見守ることに。席替えをしても移動しないのは学生生活で初めてだから新鮮だ。

「お引っ越し完了ですっ」

 みんなが移動し始めてすぐ、俺の右隣の場所で氷織は席に座った。これまでは目の前に後ろ姿の氷織がいたけど、こうして隣に氷織がいるのもいいな。幸せだ。本当にいい席を引き当てられたな。

「改めて、お隣さんとしてよろしくお願いします」
「ああ、よろしくな」
「あたしとは前後さんとしてよろしくね、氷織! 紙透もご近所さんとしてよろしく」

 気付けば、氷織の前の席に座る火村さんが、俺達のことを見ながらそう言っていた。氷織の前に座れる嬉しさからか凄くいい笑顔だ。あと、「前後さん」って言葉を初めて聞いたな。

「よろしくお願いします、恭子さん」
「よろしくな」

 氷織と俺がそう言うと、火村さんはニコッとした笑顔で「うんっ」と頷いた。

「あぁ……氷織の前の席を引き当てられるなんて。本当に嬉しいわ! 勉強頑張れそう!」
「そう言ってくれて嬉しいです。私も恭子さんが私の前の席を引いてくれて嬉しいですよ」

 氷織が嬉しそうな笑顔でそう言うと、火村さんの笑顔は幸せそうなものに変わって。今の2人を見ていると、火村さんが氷織の前の席を引き当ててくれて良かったなって思うよ。
 和男と清水さんはどんな様子だろうか。2人の方を見ると……前後の席だからか、2人とも嬉しそうにしている。いい光景だ。

「みなさん、席を移動しましたね~。少なくとも、中間試験まではこの席で学校生活を送ってもらうつもりです~」

 と、高橋先生は言った。
 少なくとも中間試験までは……ってことは、1ヶ月半ほどは氷織と隣同士で学校生活を送ることができるのか。右斜め前には火村さんもいるし賑やかになりそうだ。これからしばらくの間は氷織の隣で学校生活を楽しんでいこう。
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