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特別編6
第9話『おともだち-前編-』
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「マジキュアおもしろかった!」
「面白かったですね!」
「面白かったね。愛莉ちゃんが教えてくれたおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ!」
マジキュアを1話観て、俺達はそんな感想を言う。
マジキュアシリーズを観るのは久しぶりで、現在放送されているのは初めて観た。ただ、愛莉ちゃんがキャラクターのことを中心に解説してくれたおかげで結構楽しめた。分かりやすかったから、将来は先生になるといいんじゃないかな?
「マジキュアもおもしろかったけど、あきとくんがおどろいたのがいちばんおもしろかった」
「あの反応は面白かったですね。……ふふっ」
「いやぁ、まさかメインキャラクターに男の子がいるとは思わなくてさ……」
魔法を使って戦うメインキャラクターは何人もいる。ただ、その中の一人が男の子だったのだ。それを愛莉ちゃんから説明されたとき、
『えっ、マジで!?』
と、驚いてしまったのだ。そのキャラクターは女の子のように可愛らしい見た目だったから面食らった。俺の反応が面白かったのか、愛莉ちゃんも氷織も大きな声で笑っていて。あのときはちょっと恥ずかしかったな。
魔法少女アニメだから、てっきり女の子だけが魔法少女になると思っていたけど……時代の変化を感じた。
俺が驚いたリアクションをしたのを思い出しているのだろうか。氷織と愛莉ちゃんは楽しげに笑っている。良かったよ、2人に笑いを提供できてさ。
それにしても、氷織と愛莉ちゃんを見ていると……氷織に似た女の子が生まれたらこういう感じなのかと想像してしまう。昨日の夜は氷織とたくさん肌を重ねたし。
いつかは俺達の子供と並んで座って、今のようにアニメを観る日が来るのだろうか。
「ひおりちゃん、すごくかわいいえがおだね!」
「そうですか?」
「うんっ! ゴールデンウィークにあったときも、えがおがかわいくなったとおもったの。でも、いまはもっとかわいいよ!」
「ありがとうございます。愛莉ちゃんは昔からずっと、凄く可愛いですよ」
氷織は嬉しそうな笑顔で愛莉ちゃんの頭を撫でる。そのことが嬉しいのか。愛莉ちゃんも嬉しそうな笑顔になって。そんな2人はとても可愛くて、心が温まる光景だ。
ゴールデンウィークにも氷織の笑顔が可愛いと思い、今はもっと可愛くなった……か。
確か、愛莉ちゃんとはその頃にあった親戚の法事の際に会ったんだよな。あの頃、氷織は俺のお試しの恋人として付き合っており、俺に中学時代の話をしたのをきっかけに、俺に笑顔を見せられるようになった時期だった。
氷織は中学1年の頃、親友だった女の子から言われた言葉をきっかけに、人前で笑顔を見せることが恐くなっていた。だから、無表情が自然になっていて。
氷織が中1の頃だから……今から4年前か。だから、6歳の愛莉ちゃんにとっては、物心がついた頃からずっと、氷織はクールで無表情なのが自然だったんじゃないだろうか。親戚の小さな女の子相手だから、微笑むくらいのことはあったかもしれないけど。子供は人をよく見ており、そして覚えているものだなと思う。
「えがおがかわいくなったのは、こいびとのあきとくんのおかげ?」
愛莉ちゃんは氷織にそう問いかける。
俺のおかげなのかと問いかけられたから、氷織は俺のことを見てくる。俺と目が合うと、氷織は持ち前の優しい笑顔を見せてくれる。その笑顔も可愛い。
「そうですね。恋人の明斗さんのおかげで、いっぱい笑顔を見せられるようになりましたね。だから、愛莉ちゃんが可愛いと思う笑顔になれているのだと思います」
「そうなんだ!」
愛莉ちゃんは俺の方を向いてニコッと笑いかけてくれる。氷織の笑顔もニッコリとしたものに変わって。
氷織の笑顔を見ていると嬉しい気持ちになるよ。1年生の秋頃、ノラ猫に微笑みかけている氷織を見て一目惚れして。俺とお試しで付き合い、やがて正式に付き合う中で、氷織がいっぱい笑顔を見せてくれるようになったから。
「あとは、今行っている学校のお友達のおかげでもありますね」
「そうなんだね! おともだちってどんなこ? きになる!」
「気になりますか。スマホに写真があるので見せますね」
そう言うと、氷織はローテーブルに置いてあるスマホを手に取り、色々と操作している。
今行っている学校のお友達……それはきっと葉月さん、火村さん、和男、清水さんのことだろう。
「これがいいですね」
氷織はそう言い、愛莉ちゃんの目の前にスマホを置いた。
愛莉ちゃんの横から氷織のスマホを見させてもらうと、スマホの画面には俺と氷織、葉月さん、火村さん、和男、清水さんの6人が映っていた。やはり、この4人が氷織の言うお友達だったか。
俺が甚平姿で、氷織と葉月さんと火村さんが浴衣姿になっているから、これは先月の七夕祭りに行ったときに6人で自撮り写真したものだな。氷織はもちろん、6人全員が笑顔で。いい写真だ。
「ひおりちゃんとあきとくんがいる! ほかのこはみんなおともだち?」
「そうです。みんな、明斗さんと私のお友達です」
「そうなんだね! おんなのこはみんなかわいいね! このおとこのこはつよそう!」
「まあ、体は大きいし、力はあるし、足も速いからな。強いと思うよ、こいつは」
デコルテから上くらいしか写っていないのに、和男を強いと思えるとは。愛莉ちゃん、凄い推理力だ。
氷織はこの写真に写っている友達4人の名前を教えた。和男と清水さんはカップルであること、葉月さんは氷織と部活が一緒であることも。また、愛莉ちゃんが名前を復唱しているのが可愛らしかった。
「しゃしんみたら、ふたりのおともだちとあいたくなってきた!」
「会いたいですか」
「うんっ!」
「じゃあ……LIMEのグループトークで誘ってみようか」
「そうですね。愛莉ちゃん、スマホでお誘いのメッセージを送ってみますね」
「俺からも送ってみるよ」
「おねがいしますっ!」
愛莉ちゃんは氷織と俺に小さくお辞儀をする。ちゃんとお願いできて偉い。そして可愛い。
俺はローテーブルに置いてある自分のスマホを手に取り、LIMEのいつもの6人のグループトークを開き、
『今、氷織の家に、氷織の従妹が遊びに来ているんだ』
というメッセージを俺が送ると、
『6歳の従妹もみなさんに会いたがっていて。来てくださると嬉しいです』
直後に氷織もそんなメッセージを送った。とりあえずはこれらのメッセージで大丈夫だろう。氷織もトーク画面を開いているので、俺の送ったメッセージはすぐに『既読1』とマークがつく。
急なことだから、みんな来てくれるだろうか。和男と清水さんは陸上部に入っているし、火村さんと葉月さんはバイトをしている。俺達のお友達に会いたいという愛莉ちゃんの願いを叶えるためにも、誰か一人でも来てくれると嬉しい。
俺の送信したメッセージの既読カウントが上がり、
『今すぐに行くわ!』
と、火村さんが返信してくれた。予定さえ合えば、火村さんなら行くと言ってくれると思ったよ。
『特に予定ないのであたしも行くッス。ヒム子、一緒に行くッス』
『行きましょう、沙綾!』
葉月さんも来てくれるのか。一緒に行こうという葉月さんの問いかけに、火村さんが秒で返信しているのが面白い。
火村さんと葉月さんが来てくれると返信したのもあって、氷織はとても嬉しそうだ。
「愛莉ちゃん。沙綾さんと恭子さんはここに来るとお返事がありました」
「そうなんだ! うれしいな! みうちゃんとかずおくんもきてくれるともっとうれしい!」
「そうですね」
「来てくれるといいな」
ただ、陸上部は学校のある時期だと、土曜日も活動している。夏休み中の今も土曜日に活動している可能性はある。
それから程なくして、俺が先ほど送信したメッセージの既読カウントが『5』になった。つまり、グループメンバー全員が見ていることになる。和男と清水さんはどうだろうか。
『すまん! 今は部活中だから、美羽と俺は行けないな』
『行けなくてごめんね。ただ、今は休憩中だから、これから氷織ちゃんのスマホにビデオ通話してもいい? それで、氷織ちゃんの従妹の子とお話しできるといいな』
和男と清水さんからそんなメッセージが届いた。
やっぱり、2人は陸上部の活動があってここには来られないか。ただ、ビデオ通話で話してくれるのは名案だと思う。会えないけど、これなら愛莉ちゃんも喜んでくれるんじゃないだろうか。
「愛莉ちゃん。美羽さんと倉木さんは部活があって来られないみたいです」
「そっか……」
「でも、今からスマホで、2人の顔を見ながらお話しできますよ」
「そうなんだ! おはなしする!」
愛莉ちゃん、嬉しそうだ。直接は会えないけど、スマホ越しに和男と清水さんと話すのを楽しんでくれたらと思う。
その後、氷織が『お話ししましょう』と返信し、和男と清水さんとビデオ通話することになった。また、安定して画面が見えるように、氷織はスマホをスマホ立てに取り付けてローテーブルに置いた。
3人が映りやすいように、氷織は正座する自分の足の上に愛莉ちゃんを座らせ、後ろから抱きしめる。こうしていると、氷織が愛莉ちゃんのお姉さんやお母さんのように見えてくる。
それから程なくして、清水さんからLIMEで氷織のスマホに電話がかかってきた。
氷織は応答ボタンをタップし、すぐにビデオ通話モードにする。そのことで、氷織のスマホには練習着姿の和男と清水さんの姿が映し出された。
『もしもーし!』
『もしもしっ!』
和男と清水さんはそう言うと、笑顔で俺達に向かって手を振ってくる。俺達3人も和男と清水さんに向かって「もしもし」と言いながら手を振った。
『青山に抱かれている子が例の従妹か! 可愛いな!』
『すっごく可愛いね! 氷織ちゃんの従妹だけあって綺麗な銀髪だね』
和男と清水さんも愛莉ちゃんを可愛いと思うか。自分の従妹ではないけど、愛莉ちゃんを可愛いと言ってもらえると嬉しい気持ちになる。
「ふふっ。この子が私の従妹の桃瀬愛莉ちゃんといいます。愛莉ちゃん、さっきの明斗さんのときのように、2人に挨拶しましょうか」
「うんっ! はじめまして! ももせあいりです! 6さいです。ほいくえんにいってます。よろしくおねがいします!」
愛莉ちゃんはしっかりと挨拶して、頭を下げた。偉いぞ、愛莉ちゃん。
氷織も同じようなことを思ったようで、優しい笑顔で「よくできました」と言い、愛莉ちゃんの頭を撫でていた。俺も「よくできたね」と褒める。
俺達に褒められたからか、愛莉ちゃんはニコニコだ。可愛いなぁ、本当に。
『あたし達も挨拶するね。初めまして、清水美羽といいます。氷織ちゃんと紙透君のお友達で、同じ学校に通っているクラスメイトです。よろしくね!』
『初めまして、倉木和男です。俺もアキと青山の友達でクラスメイトだ。それで、隣にいる美羽とは付き合っているぜ!』
和男は自己紹介すると、右手で清水さんのことを横から抱き寄せる。それを見た愛莉ちゃんは興奮した様子で「きゃーっ!」と黄色い声を出していた。保育園に通う女の子にとっては、抱き寄せることでもドキドキしてしまうのかもしれない。
「ふたりはラブラブなんだね!」
『おう! ラブラブだぜ!』
『ラブラブだよ! こうして部活でも一緒にいられて幸せだよ!』
「そうなんだ!」
画面越しでも、和男と清水さんがラブラブなのが伝わっているようで、愛莉ちゃんはニッコリとした笑顔になっている。
「みうちゃんとかずおくんも、ななみちゃんとおなじでぶかつしているんだね。ふたりもバドミントンするの?」
と、愛莉ちゃんは質問してくる。七海ちゃんがバドミントン部の活動で学校に行ったから、和男と清水さんもバドミントンをしていると思っているのだろう。
『ううん。和男君とあたしは陸上部だよ』
「りくじょうぶ?」
『陸上って単語じゃ分かりづらいかもな。簡単に言うと……かけっこだな!』
和男は持ち前の明るい笑顔でそう言う。
和男は短距離を専門にしているからな。陸上にはやり投げや砲丸投げなどの競技もあるけど、陸上っていう単語が分からない6歳の子には、かけっこという説明でいいかもしれない。
『あたしはマネージャー……和男君とかのお手伝いをしているの』
「そうなんだ!」
『ふふっ。……あっ、もうそろそろ練習が再開する時間だね』
『そうだな。愛莉ちゃん、アキと青山にいっぱい遊んでもらえよ!』
『遊んでもらってね』
「うんっ! かけっことおてつだいがんばってね!」
『おう! 頑張れそうだ!』
『あたしも!』
ビデオ通話は愛莉ちゃんだけじゃなくて、和男と清水さんにもいい影響をもたらしたようだ。
『氷織ちゃんと紙透君も、愛莉ちゃんの面倒を見るのを頑張ってね』
「はい。ビデオ通話してくださってありがとうございました。愛莉ちゃんも喜んでいて」
「ありがとう。2人ともこの後も部活頑張って」
『おう! ありがとな! 愛莉ちゃん、またな!』
『またね!』
「またねー! バイバーイ!」
俺達5人は笑顔で手を振り合って、清水さんの方からビデオ通話を切った。
和男と清水さんとは直接は会えなかったけど、愛莉ちゃんも楽しそうにしていたしいい時間になったな。
「みうちゃんとかずおくんとはなすのたのしかった!」
「良かったですね、愛莉ちゃん」
「良かったね」
「きょうこちゃんとさあやちゃんとあうのが、もっとたのしみになってきた!」
「ふふっ、そうですか」
「きっと、2人も愛莉ちゃんと会えるのを楽しみにしていると思うよ」
特に火村さんは。果たして、愛莉ちゃんと会ったらどんな反応をするのか。七海ちゃんや陽子さんにもうっとりしたり、興奮したりすることがあるからなぁ。
氷織が火村さんと葉月さんに、あとどのくらいで来られるか確認すると、あと30分くらいで2人一緒に来られるという。
火村さんと葉月さんが来るとクッションが足りない。なので、氷織は七海ちゃんにメッセージで許可をもらった上で、七海ちゃんの部屋からクッションを運んだ。
愛莉ちゃんの希望もあって、マジキュアをもう一話観ながら、火村さんと葉月さんが来るのを待つのであった。
「面白かったですね!」
「面白かったね。愛莉ちゃんが教えてくれたおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ!」
マジキュアを1話観て、俺達はそんな感想を言う。
マジキュアシリーズを観るのは久しぶりで、現在放送されているのは初めて観た。ただ、愛莉ちゃんがキャラクターのことを中心に解説してくれたおかげで結構楽しめた。分かりやすかったから、将来は先生になるといいんじゃないかな?
「マジキュアもおもしろかったけど、あきとくんがおどろいたのがいちばんおもしろかった」
「あの反応は面白かったですね。……ふふっ」
「いやぁ、まさかメインキャラクターに男の子がいるとは思わなくてさ……」
魔法を使って戦うメインキャラクターは何人もいる。ただ、その中の一人が男の子だったのだ。それを愛莉ちゃんから説明されたとき、
『えっ、マジで!?』
と、驚いてしまったのだ。そのキャラクターは女の子のように可愛らしい見た目だったから面食らった。俺の反応が面白かったのか、愛莉ちゃんも氷織も大きな声で笑っていて。あのときはちょっと恥ずかしかったな。
魔法少女アニメだから、てっきり女の子だけが魔法少女になると思っていたけど……時代の変化を感じた。
俺が驚いたリアクションをしたのを思い出しているのだろうか。氷織と愛莉ちゃんは楽しげに笑っている。良かったよ、2人に笑いを提供できてさ。
それにしても、氷織と愛莉ちゃんを見ていると……氷織に似た女の子が生まれたらこういう感じなのかと想像してしまう。昨日の夜は氷織とたくさん肌を重ねたし。
いつかは俺達の子供と並んで座って、今のようにアニメを観る日が来るのだろうか。
「ひおりちゃん、すごくかわいいえがおだね!」
「そうですか?」
「うんっ! ゴールデンウィークにあったときも、えがおがかわいくなったとおもったの。でも、いまはもっとかわいいよ!」
「ありがとうございます。愛莉ちゃんは昔からずっと、凄く可愛いですよ」
氷織は嬉しそうな笑顔で愛莉ちゃんの頭を撫でる。そのことが嬉しいのか。愛莉ちゃんも嬉しそうな笑顔になって。そんな2人はとても可愛くて、心が温まる光景だ。
ゴールデンウィークにも氷織の笑顔が可愛いと思い、今はもっと可愛くなった……か。
確か、愛莉ちゃんとはその頃にあった親戚の法事の際に会ったんだよな。あの頃、氷織は俺のお試しの恋人として付き合っており、俺に中学時代の話をしたのをきっかけに、俺に笑顔を見せられるようになった時期だった。
氷織は中学1年の頃、親友だった女の子から言われた言葉をきっかけに、人前で笑顔を見せることが恐くなっていた。だから、無表情が自然になっていて。
氷織が中1の頃だから……今から4年前か。だから、6歳の愛莉ちゃんにとっては、物心がついた頃からずっと、氷織はクールで無表情なのが自然だったんじゃないだろうか。親戚の小さな女の子相手だから、微笑むくらいのことはあったかもしれないけど。子供は人をよく見ており、そして覚えているものだなと思う。
「えがおがかわいくなったのは、こいびとのあきとくんのおかげ?」
愛莉ちゃんは氷織にそう問いかける。
俺のおかげなのかと問いかけられたから、氷織は俺のことを見てくる。俺と目が合うと、氷織は持ち前の優しい笑顔を見せてくれる。その笑顔も可愛い。
「そうですね。恋人の明斗さんのおかげで、いっぱい笑顔を見せられるようになりましたね。だから、愛莉ちゃんが可愛いと思う笑顔になれているのだと思います」
「そうなんだ!」
愛莉ちゃんは俺の方を向いてニコッと笑いかけてくれる。氷織の笑顔もニッコリとしたものに変わって。
氷織の笑顔を見ていると嬉しい気持ちになるよ。1年生の秋頃、ノラ猫に微笑みかけている氷織を見て一目惚れして。俺とお試しで付き合い、やがて正式に付き合う中で、氷織がいっぱい笑顔を見せてくれるようになったから。
「あとは、今行っている学校のお友達のおかげでもありますね」
「そうなんだね! おともだちってどんなこ? きになる!」
「気になりますか。スマホに写真があるので見せますね」
そう言うと、氷織はローテーブルに置いてあるスマホを手に取り、色々と操作している。
今行っている学校のお友達……それはきっと葉月さん、火村さん、和男、清水さんのことだろう。
「これがいいですね」
氷織はそう言い、愛莉ちゃんの目の前にスマホを置いた。
愛莉ちゃんの横から氷織のスマホを見させてもらうと、スマホの画面には俺と氷織、葉月さん、火村さん、和男、清水さんの6人が映っていた。やはり、この4人が氷織の言うお友達だったか。
俺が甚平姿で、氷織と葉月さんと火村さんが浴衣姿になっているから、これは先月の七夕祭りに行ったときに6人で自撮り写真したものだな。氷織はもちろん、6人全員が笑顔で。いい写真だ。
「ひおりちゃんとあきとくんがいる! ほかのこはみんなおともだち?」
「そうです。みんな、明斗さんと私のお友達です」
「そうなんだね! おんなのこはみんなかわいいね! このおとこのこはつよそう!」
「まあ、体は大きいし、力はあるし、足も速いからな。強いと思うよ、こいつは」
デコルテから上くらいしか写っていないのに、和男を強いと思えるとは。愛莉ちゃん、凄い推理力だ。
氷織はこの写真に写っている友達4人の名前を教えた。和男と清水さんはカップルであること、葉月さんは氷織と部活が一緒であることも。また、愛莉ちゃんが名前を復唱しているのが可愛らしかった。
「しゃしんみたら、ふたりのおともだちとあいたくなってきた!」
「会いたいですか」
「うんっ!」
「じゃあ……LIMEのグループトークで誘ってみようか」
「そうですね。愛莉ちゃん、スマホでお誘いのメッセージを送ってみますね」
「俺からも送ってみるよ」
「おねがいしますっ!」
愛莉ちゃんは氷織と俺に小さくお辞儀をする。ちゃんとお願いできて偉い。そして可愛い。
俺はローテーブルに置いてある自分のスマホを手に取り、LIMEのいつもの6人のグループトークを開き、
『今、氷織の家に、氷織の従妹が遊びに来ているんだ』
というメッセージを俺が送ると、
『6歳の従妹もみなさんに会いたがっていて。来てくださると嬉しいです』
直後に氷織もそんなメッセージを送った。とりあえずはこれらのメッセージで大丈夫だろう。氷織もトーク画面を開いているので、俺の送ったメッセージはすぐに『既読1』とマークがつく。
急なことだから、みんな来てくれるだろうか。和男と清水さんは陸上部に入っているし、火村さんと葉月さんはバイトをしている。俺達のお友達に会いたいという愛莉ちゃんの願いを叶えるためにも、誰か一人でも来てくれると嬉しい。
俺の送信したメッセージの既読カウントが上がり、
『今すぐに行くわ!』
と、火村さんが返信してくれた。予定さえ合えば、火村さんなら行くと言ってくれると思ったよ。
『特に予定ないのであたしも行くッス。ヒム子、一緒に行くッス』
『行きましょう、沙綾!』
葉月さんも来てくれるのか。一緒に行こうという葉月さんの問いかけに、火村さんが秒で返信しているのが面白い。
火村さんと葉月さんが来てくれると返信したのもあって、氷織はとても嬉しそうだ。
「愛莉ちゃん。沙綾さんと恭子さんはここに来るとお返事がありました」
「そうなんだ! うれしいな! みうちゃんとかずおくんもきてくれるともっとうれしい!」
「そうですね」
「来てくれるといいな」
ただ、陸上部は学校のある時期だと、土曜日も活動している。夏休み中の今も土曜日に活動している可能性はある。
それから程なくして、俺が先ほど送信したメッセージの既読カウントが『5』になった。つまり、グループメンバー全員が見ていることになる。和男と清水さんはどうだろうか。
『すまん! 今は部活中だから、美羽と俺は行けないな』
『行けなくてごめんね。ただ、今は休憩中だから、これから氷織ちゃんのスマホにビデオ通話してもいい? それで、氷織ちゃんの従妹の子とお話しできるといいな』
和男と清水さんからそんなメッセージが届いた。
やっぱり、2人は陸上部の活動があってここには来られないか。ただ、ビデオ通話で話してくれるのは名案だと思う。会えないけど、これなら愛莉ちゃんも喜んでくれるんじゃないだろうか。
「愛莉ちゃん。美羽さんと倉木さんは部活があって来られないみたいです」
「そっか……」
「でも、今からスマホで、2人の顔を見ながらお話しできますよ」
「そうなんだ! おはなしする!」
愛莉ちゃん、嬉しそうだ。直接は会えないけど、スマホ越しに和男と清水さんと話すのを楽しんでくれたらと思う。
その後、氷織が『お話ししましょう』と返信し、和男と清水さんとビデオ通話することになった。また、安定して画面が見えるように、氷織はスマホをスマホ立てに取り付けてローテーブルに置いた。
3人が映りやすいように、氷織は正座する自分の足の上に愛莉ちゃんを座らせ、後ろから抱きしめる。こうしていると、氷織が愛莉ちゃんのお姉さんやお母さんのように見えてくる。
それから程なくして、清水さんからLIMEで氷織のスマホに電話がかかってきた。
氷織は応答ボタンをタップし、すぐにビデオ通話モードにする。そのことで、氷織のスマホには練習着姿の和男と清水さんの姿が映し出された。
『もしもーし!』
『もしもしっ!』
和男と清水さんはそう言うと、笑顔で俺達に向かって手を振ってくる。俺達3人も和男と清水さんに向かって「もしもし」と言いながら手を振った。
『青山に抱かれている子が例の従妹か! 可愛いな!』
『すっごく可愛いね! 氷織ちゃんの従妹だけあって綺麗な銀髪だね』
和男と清水さんも愛莉ちゃんを可愛いと思うか。自分の従妹ではないけど、愛莉ちゃんを可愛いと言ってもらえると嬉しい気持ちになる。
「ふふっ。この子が私の従妹の桃瀬愛莉ちゃんといいます。愛莉ちゃん、さっきの明斗さんのときのように、2人に挨拶しましょうか」
「うんっ! はじめまして! ももせあいりです! 6さいです。ほいくえんにいってます。よろしくおねがいします!」
愛莉ちゃんはしっかりと挨拶して、頭を下げた。偉いぞ、愛莉ちゃん。
氷織も同じようなことを思ったようで、優しい笑顔で「よくできました」と言い、愛莉ちゃんの頭を撫でていた。俺も「よくできたね」と褒める。
俺達に褒められたからか、愛莉ちゃんはニコニコだ。可愛いなぁ、本当に。
『あたし達も挨拶するね。初めまして、清水美羽といいます。氷織ちゃんと紙透君のお友達で、同じ学校に通っているクラスメイトです。よろしくね!』
『初めまして、倉木和男です。俺もアキと青山の友達でクラスメイトだ。それで、隣にいる美羽とは付き合っているぜ!』
和男は自己紹介すると、右手で清水さんのことを横から抱き寄せる。それを見た愛莉ちゃんは興奮した様子で「きゃーっ!」と黄色い声を出していた。保育園に通う女の子にとっては、抱き寄せることでもドキドキしてしまうのかもしれない。
「ふたりはラブラブなんだね!」
『おう! ラブラブだぜ!』
『ラブラブだよ! こうして部活でも一緒にいられて幸せだよ!』
「そうなんだ!」
画面越しでも、和男と清水さんがラブラブなのが伝わっているようで、愛莉ちゃんはニッコリとした笑顔になっている。
「みうちゃんとかずおくんも、ななみちゃんとおなじでぶかつしているんだね。ふたりもバドミントンするの?」
と、愛莉ちゃんは質問してくる。七海ちゃんがバドミントン部の活動で学校に行ったから、和男と清水さんもバドミントンをしていると思っているのだろう。
『ううん。和男君とあたしは陸上部だよ』
「りくじょうぶ?」
『陸上って単語じゃ分かりづらいかもな。簡単に言うと……かけっこだな!』
和男は持ち前の明るい笑顔でそう言う。
和男は短距離を専門にしているからな。陸上にはやり投げや砲丸投げなどの競技もあるけど、陸上っていう単語が分からない6歳の子には、かけっこという説明でいいかもしれない。
『あたしはマネージャー……和男君とかのお手伝いをしているの』
「そうなんだ!」
『ふふっ。……あっ、もうそろそろ練習が再開する時間だね』
『そうだな。愛莉ちゃん、アキと青山にいっぱい遊んでもらえよ!』
『遊んでもらってね』
「うんっ! かけっことおてつだいがんばってね!」
『おう! 頑張れそうだ!』
『あたしも!』
ビデオ通話は愛莉ちゃんだけじゃなくて、和男と清水さんにもいい影響をもたらしたようだ。
『氷織ちゃんと紙透君も、愛莉ちゃんの面倒を見るのを頑張ってね』
「はい。ビデオ通話してくださってありがとうございました。愛莉ちゃんも喜んでいて」
「ありがとう。2人ともこの後も部活頑張って」
『おう! ありがとな! 愛莉ちゃん、またな!』
『またね!』
「またねー! バイバーイ!」
俺達5人は笑顔で手を振り合って、清水さんの方からビデオ通話を切った。
和男と清水さんとは直接は会えなかったけど、愛莉ちゃんも楽しそうにしていたしいい時間になったな。
「みうちゃんとかずおくんとはなすのたのしかった!」
「良かったですね、愛莉ちゃん」
「良かったね」
「きょうこちゃんとさあやちゃんとあうのが、もっとたのしみになってきた!」
「ふふっ、そうですか」
「きっと、2人も愛莉ちゃんと会えるのを楽しみにしていると思うよ」
特に火村さんは。果たして、愛莉ちゃんと会ったらどんな反応をするのか。七海ちゃんや陽子さんにもうっとりしたり、興奮したりすることがあるからなぁ。
氷織が火村さんと葉月さんに、あとどのくらいで来られるか確認すると、あと30分くらいで2人一緒に来られるという。
火村さんと葉月さんが来るとクッションが足りない。なので、氷織は七海ちゃんにメッセージで許可をもらった上で、七海ちゃんの部屋からクッションを運んだ。
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「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」
高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。
ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!
※特別編11が完結しました!(2025.6.20)
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