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第39話『実は……』
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ビーチバレーをした後も、それぞれが海での楽しい時間を過ごした。3年生にとっては明日からは勉強やデッサンが中心になるので、そのための英気を養うことができたんじゃないだろうか。
午後5時半。
ビーチバレーで負けたAチームのメンバーである常盤さん、芽依、三宅さん、僕と監督の松雪先生はリビングに集まる。
「さて、これからバーベキューの準備を始めるわけだけど、どうしよっか、蓮見君」
「そうですね……一昨年と去年はコテージでやったし、今年もコテージでやる?」
「それがいいと思うな。この別荘のコテージは広いし、9人でも十分にゆったりできると思う。鉄板とかの準備はしなきゃいけないけど、それも前に芽依ちゃんや羽村君と一緒にやったことがあるから大丈夫だよ。そうだよね~、芽依ちゃん」
「そだね~、ふふっ」
芽依と常盤さん、楽しそうだな。勝負に負けて準備することになったけど、前に同じことを一緒にしたことがある人がいると楽しいのかも。
「じゃあ、二手に分かれて準備しよう。食材も準備しないといけないから、そっちは料理が得意な蓮見君と陽乃ちゃん。バーベキュー会場のセッティングを美波ちゃんと芽依ちゃんがやるってことで。私は随時2つを行き来するから、何かあったら遠慮なく言ってね。特に何かが足りなくて買わなきゃいけないってときは」
「分かりました。じゃあ、三宅さん、一緒にキッチンへと行こうか」
「そうですね」
僕は三宅さんと一緒にキッチンに。といっても、ダイニングキッチンなのですぐそこにあるけれど。これなら、2人きりの空間というわけでもないし、芽依や常盤さんのいるコテージも窓から見えるので三宅さんも安心かな。
「色々なお肉やお魚がありますね」
「そうだね。これも月影さんが用意してくれたんだと思うよ。今回は9人泊まるからか、去年よりも多いかな」
「そうなんですね。お野菜は……うわあっ、野菜も種類が豊富で凄いなぁ。これなら食材の方は大丈夫そうですね」
「うん。じゃあ、僕が野菜の下ごしらえをするから、常盤さんはお肉の方をお願いしようかな。あと、バーベキューだと串刺しで焼くときがあるんだけど、確かここに……あった」
「何度も来たことがあるだけあって、色々と分かっているんですね」
「うん。一昨年と去年来たときは、食事は主に僕と明日香で作っていたから、キッチンのことは一通り分かっているよ」
「さすがですね。分かりました。頼りにしていますよ、蓮見先輩。何だか、シー・ブロッサムで働く鈴音さんはこういう感じだったのかなって思います」
ふふっ、と三宅さんは楽しそうに笑う。確かに、こうして一緒にキッチンに立っていると、三宅さんがエプロン姿だからか鈴音さんと重なって見えるときがあるな。
僕と三宅さんは食材の準備を始める。こうしているとシー・ブロッサムでバイトをしているときを思い出す。2年以上バイトをしていたのに、辞めてからたった1ヶ月半ほどで遠い昔のことのように思えてくるよ。
「先輩、料理できますって感じの包丁さばきですね」
「小さい頃から芽依と一緒に料理の手伝いをしていたし、バイトではマスターが料理の作り方を厳しく丁寧に教えてくださったからね」
「そうなんですね。以前、蓮見先輩がバイトをしているときに喫茶店に行った友達が、ナポリタンがとても美味しかったって言っていました」
「そうだったんだ、嬉しいな。三宅さんだって、料理好きって感じの手つきだよ」
「先輩と同じで小さい頃にお手伝いして、今も休日にはたまにお母さんと一緒に食事を作っているんです。それに、今回は特に宗久会長のために美味しい食事を作れればいいなって思っていて。なので、本音を言うと勝負に負けて良かったって思ってます」
「ははっ、なるほどね。美味しいって食べてくれるのを想像しながら料理するのって楽しいもんね」
僕の場合、真っ先に思い浮かぶのは明日香と咲希かな。
どんな理由であれ、準備をすることに前向きな気持ちを持ってくれているのは一緒にやる身としては有り難い。
「話は変わりますけど、こんな素敵な別荘に何度も来たことがあるなんて。美波先輩と仲がいいんですね」
「そう……だね。常盤さんと今みたいな関係になれたのは明日香のおかげかな。常盤さんや羽村と知り合ったのは高校に入学して同じクラスだったことがきっかけだったんだ。でも、羽村とはすぐ仲良くなったけど、常盤さんとはそこまで話さなかったんだよ」
「なるほど。そこに明日香先輩が出てくるんですね」
「うん。明日香は常盤さんと同じ美術部に入部したことをきっかけに、2人がとても仲良くなってね。明日香とは変わらず僕とたくさん話していたから、自然と常盤さんとも話すようになっていたんだ。僕とよく話す羽村も自然とね。それで、特に1年生のときは誰かの家に行ったり、休みの日はどこかへ遊びに行ったりしたよ」
「そうだったんですね」
「1年の1学期の終わりに、高校生になったんだし、夏休みにみんなで旅行に行きたいって話になって。それで、常盤さんがここに来ないかって誘ってくれて。妹の芽依とも家に来たときに仲良くなっていたから5人で旅行に行ったんだ」
「なるほどです。羨ましいですね。素敵なところに一昨年から来たことがあるのと、宗久会長と旅行に行っているなんて……」
何を考えているのか、三宅さんは幸せな表情になっている。それはいいんだけれど、包丁を持ちながらだと危険だな。
「三宅さん、妄想から戻ってくるか、包丁をまな板の上に置いてくれるかな。今のままだとケガしちゃうと思うから」
「は、はい!」
すると、三宅さんは包丁をまな板の上に置いた。妄想する方を取っちゃうか。
「羽村のことがとても好きなんだね」
「もちろんです! 告白した直後に看病したときはとても幸せでしたし、生徒会室で一緒にお仕事をしているときも幸せでしたし、今回の旅行でも行きの車で隣同士に座ったのも幸せでしたし、海で遊んでいたときも……凄く幸せでしたし」
「あははっ、幸せいっぱいだね。何だか幸せのお裾分けをしてもらっている感じだよ。じゃあ、羽村とは順調なんだね」
「はい!」
三宅さんは好きな人に尽くすタイプの子かもしれないな。何にせよ、羽村と一緒にいることで幸せになっていることが分かって嬉しい。羽村がこの旅行で三宅さんとの仲を深めたいことを知っているからか。
「あと、今日、海で遊んでいるときに……」
すると、三宅さんは周りの様子を見ると僕に近寄ってきて、
「蓮見先輩ですから話しますけど、実は……海で遊んでいるとき、岩場のところで宗久会長とたくさんキスしちゃいました」
耳元でそんなことを囁いてきた。顔を真っ赤にして照れ笑い。
「あっ、この話……他の人には言わないでくださいね。恥ずかしい……ですから」
「う、うん。分かった。気を付けるね」
その話はキスシーンを見てしまった咲希から既に聞いているけど。明日香も知っているし。ただ、それを話したら三宅さんが悶絶してしまいそうなので言わないでおこう。
「そういえば、三宅さんが羽村に好意を持ったきっかけって何だったの? あのときは、告白のことばかりを考えていて、そういえば訊いていなかったなって。生徒会の仕事を一緒にやっていくうちに惹かれたとか?」
「生徒会の仕事をやっていくうちに好きな気持ちは大きくなっていましたが、会長が気になるきっかけになったのは、入学式の日だったんです。桜海高校、そこまで大きくないのに緊張していたのか、教室までの道筋が分からなくて。そのときに宗久会長が助けてくれたんです。それがきっかけでした」
「そうだったんだ」
確か、生徒会は入学式のスタッフや、困っている新入生を助けるために見回りをするって彼が行っていたか。
「中学までも男子とは普通には話していたんですけど、高校には素敵な男性がいるんだなと思って。そのときから気にはなっていて。生徒会の選挙も、宗久会長が会長に立候補するのを知って、私もやってみようと思いました。中学までもクラス委員とかはやっていて興味はあったので」
「そうなんだ。それで副会長になって、しっかりと仕事をしているんだから三宅さんは凄いなって思うよ」
「……会長達がいたから何とかできているんです。夏休みが終わって、文化祭が終わったら生徒会選挙です。私は副会長を引き続きやりたいと思っていますが、そこには会長がいないのでちょっと寂しいです」
三宅さんは寂しげな笑みを浮かべた。生徒会の選挙は毎年10月に行なわれるから、今の生徒会もあと2ヶ月か。
「でも、今の生徒会には必ず終わりがやってきて、来年の春には会長達は卒業します。きっと、会長のことですから来年、東京に行くと思います。寂しいですけど、その覚悟を決めて会長と恋人として付き合おうと思ったんですから」
「覚悟か……」
その言葉は僕に重くのし掛かった。それが僕に一番足りないものであるような気がして。もしかしたら、羽村や三宅さんのように乗り越えなければいけない状況が来るかもしれないと思えて。
「先輩、ぼうっとしていると指切っちゃいますよ」
「……そうだね。考え事をしちゃってた」
「ふふっ、そうですか。さっ、準備の続きをしないと」
「そうだね。結構お肉の方も切ることができたみたいだから、まな板にそのお肉を切ったら野菜と一緒にこの串に刺そうか」
「それ、あたしと芽依ちゃんでやってもいいかな?」
気付けば、常盤さんと芽依、松雪先生がコテージから戻ってきていた。
「コテージの方の準備はできたよ、お兄ちゃん。食材を串に刺すのは得意だからさ」
「一昨年や去年も2人と羽村が刺してくれたよね。じゃあ、2人に任せようかな」
「食材チームも順調そうだね。何か買ってきた方がいいものってある?」
「食材は大丈夫です。飲み物もお茶やジュース、スポーツドリンクはありますけどアルコールはあまりないですね。ビールとサワーくらいですか」
「そっか。う~ん、日本酒やワインとかも呑みたいな。美波ちゃん、近くにコンビニやスーパーってある? 買いに行こうかなと思うんだけど」
「ここから歩いて数分くらいのところにスーパーがありますよ。一緒に行きましょうか。ごめん、芽依ちゃん。まずは1人で串刺しをやってもらっていいかな?」
「もちろんですよ」
「それに、食材をある程度下ごしらえしたら、三宅さんや僕も手伝うから、こっちのことは気にせずに行ってきて」
芽依もすぐ側でやってくれるし、3人でやれば十分だ。
「分かった。じゃあ、先生、行きましょうか」
「ああ。Bチームのメンバーにも声をかけてみるか。3人は何かほしい食べ物や飲み物はある?」
「今のところ、僕は大丈夫です。何か欲しいものがあれば自分で買いに行くので」
「私も先輩と同じですね」
「私は……夏山町の緑茶をお願いします。ここはお茶の葉も有名らしいので」
「分かった。先生も気になるな」
さすがは茶道部の生徒と顧問。お茶については気になるんだな。
常盤さんと先生が買い出しに行く中、僕は三宅さんと芽依の3人で食材の下ごしらえをするのであった。
午後5時半。
ビーチバレーで負けたAチームのメンバーである常盤さん、芽依、三宅さん、僕と監督の松雪先生はリビングに集まる。
「さて、これからバーベキューの準備を始めるわけだけど、どうしよっか、蓮見君」
「そうですね……一昨年と去年はコテージでやったし、今年もコテージでやる?」
「それがいいと思うな。この別荘のコテージは広いし、9人でも十分にゆったりできると思う。鉄板とかの準備はしなきゃいけないけど、それも前に芽依ちゃんや羽村君と一緒にやったことがあるから大丈夫だよ。そうだよね~、芽依ちゃん」
「そだね~、ふふっ」
芽依と常盤さん、楽しそうだな。勝負に負けて準備することになったけど、前に同じことを一緒にしたことがある人がいると楽しいのかも。
「じゃあ、二手に分かれて準備しよう。食材も準備しないといけないから、そっちは料理が得意な蓮見君と陽乃ちゃん。バーベキュー会場のセッティングを美波ちゃんと芽依ちゃんがやるってことで。私は随時2つを行き来するから、何かあったら遠慮なく言ってね。特に何かが足りなくて買わなきゃいけないってときは」
「分かりました。じゃあ、三宅さん、一緒にキッチンへと行こうか」
「そうですね」
僕は三宅さんと一緒にキッチンに。といっても、ダイニングキッチンなのですぐそこにあるけれど。これなら、2人きりの空間というわけでもないし、芽依や常盤さんのいるコテージも窓から見えるので三宅さんも安心かな。
「色々なお肉やお魚がありますね」
「そうだね。これも月影さんが用意してくれたんだと思うよ。今回は9人泊まるからか、去年よりも多いかな」
「そうなんですね。お野菜は……うわあっ、野菜も種類が豊富で凄いなぁ。これなら食材の方は大丈夫そうですね」
「うん。じゃあ、僕が野菜の下ごしらえをするから、常盤さんはお肉の方をお願いしようかな。あと、バーベキューだと串刺しで焼くときがあるんだけど、確かここに……あった」
「何度も来たことがあるだけあって、色々と分かっているんですね」
「うん。一昨年と去年来たときは、食事は主に僕と明日香で作っていたから、キッチンのことは一通り分かっているよ」
「さすがですね。分かりました。頼りにしていますよ、蓮見先輩。何だか、シー・ブロッサムで働く鈴音さんはこういう感じだったのかなって思います」
ふふっ、と三宅さんは楽しそうに笑う。確かに、こうして一緒にキッチンに立っていると、三宅さんがエプロン姿だからか鈴音さんと重なって見えるときがあるな。
僕と三宅さんは食材の準備を始める。こうしているとシー・ブロッサムでバイトをしているときを思い出す。2年以上バイトをしていたのに、辞めてからたった1ヶ月半ほどで遠い昔のことのように思えてくるよ。
「先輩、料理できますって感じの包丁さばきですね」
「小さい頃から芽依と一緒に料理の手伝いをしていたし、バイトではマスターが料理の作り方を厳しく丁寧に教えてくださったからね」
「そうなんですね。以前、蓮見先輩がバイトをしているときに喫茶店に行った友達が、ナポリタンがとても美味しかったって言っていました」
「そうだったんだ、嬉しいな。三宅さんだって、料理好きって感じの手つきだよ」
「先輩と同じで小さい頃にお手伝いして、今も休日にはたまにお母さんと一緒に食事を作っているんです。それに、今回は特に宗久会長のために美味しい食事を作れればいいなって思っていて。なので、本音を言うと勝負に負けて良かったって思ってます」
「ははっ、なるほどね。美味しいって食べてくれるのを想像しながら料理するのって楽しいもんね」
僕の場合、真っ先に思い浮かぶのは明日香と咲希かな。
どんな理由であれ、準備をすることに前向きな気持ちを持ってくれているのは一緒にやる身としては有り難い。
「話は変わりますけど、こんな素敵な別荘に何度も来たことがあるなんて。美波先輩と仲がいいんですね」
「そう……だね。常盤さんと今みたいな関係になれたのは明日香のおかげかな。常盤さんや羽村と知り合ったのは高校に入学して同じクラスだったことがきっかけだったんだ。でも、羽村とはすぐ仲良くなったけど、常盤さんとはそこまで話さなかったんだよ」
「なるほど。そこに明日香先輩が出てくるんですね」
「うん。明日香は常盤さんと同じ美術部に入部したことをきっかけに、2人がとても仲良くなってね。明日香とは変わらず僕とたくさん話していたから、自然と常盤さんとも話すようになっていたんだ。僕とよく話す羽村も自然とね。それで、特に1年生のときは誰かの家に行ったり、休みの日はどこかへ遊びに行ったりしたよ」
「そうだったんですね」
「1年の1学期の終わりに、高校生になったんだし、夏休みにみんなで旅行に行きたいって話になって。それで、常盤さんがここに来ないかって誘ってくれて。妹の芽依とも家に来たときに仲良くなっていたから5人で旅行に行ったんだ」
「なるほどです。羨ましいですね。素敵なところに一昨年から来たことがあるのと、宗久会長と旅行に行っているなんて……」
何を考えているのか、三宅さんは幸せな表情になっている。それはいいんだけれど、包丁を持ちながらだと危険だな。
「三宅さん、妄想から戻ってくるか、包丁をまな板の上に置いてくれるかな。今のままだとケガしちゃうと思うから」
「は、はい!」
すると、三宅さんは包丁をまな板の上に置いた。妄想する方を取っちゃうか。
「羽村のことがとても好きなんだね」
「もちろんです! 告白した直後に看病したときはとても幸せでしたし、生徒会室で一緒にお仕事をしているときも幸せでしたし、今回の旅行でも行きの車で隣同士に座ったのも幸せでしたし、海で遊んでいたときも……凄く幸せでしたし」
「あははっ、幸せいっぱいだね。何だか幸せのお裾分けをしてもらっている感じだよ。じゃあ、羽村とは順調なんだね」
「はい!」
三宅さんは好きな人に尽くすタイプの子かもしれないな。何にせよ、羽村と一緒にいることで幸せになっていることが分かって嬉しい。羽村がこの旅行で三宅さんとの仲を深めたいことを知っているからか。
「あと、今日、海で遊んでいるときに……」
すると、三宅さんは周りの様子を見ると僕に近寄ってきて、
「蓮見先輩ですから話しますけど、実は……海で遊んでいるとき、岩場のところで宗久会長とたくさんキスしちゃいました」
耳元でそんなことを囁いてきた。顔を真っ赤にして照れ笑い。
「あっ、この話……他の人には言わないでくださいね。恥ずかしい……ですから」
「う、うん。分かった。気を付けるね」
その話はキスシーンを見てしまった咲希から既に聞いているけど。明日香も知っているし。ただ、それを話したら三宅さんが悶絶してしまいそうなので言わないでおこう。
「そういえば、三宅さんが羽村に好意を持ったきっかけって何だったの? あのときは、告白のことばかりを考えていて、そういえば訊いていなかったなって。生徒会の仕事を一緒にやっていくうちに惹かれたとか?」
「生徒会の仕事をやっていくうちに好きな気持ちは大きくなっていましたが、会長が気になるきっかけになったのは、入学式の日だったんです。桜海高校、そこまで大きくないのに緊張していたのか、教室までの道筋が分からなくて。そのときに宗久会長が助けてくれたんです。それがきっかけでした」
「そうだったんだ」
確か、生徒会は入学式のスタッフや、困っている新入生を助けるために見回りをするって彼が行っていたか。
「中学までも男子とは普通には話していたんですけど、高校には素敵な男性がいるんだなと思って。そのときから気にはなっていて。生徒会の選挙も、宗久会長が会長に立候補するのを知って、私もやってみようと思いました。中学までもクラス委員とかはやっていて興味はあったので」
「そうなんだ。それで副会長になって、しっかりと仕事をしているんだから三宅さんは凄いなって思うよ」
「……会長達がいたから何とかできているんです。夏休みが終わって、文化祭が終わったら生徒会選挙です。私は副会長を引き続きやりたいと思っていますが、そこには会長がいないのでちょっと寂しいです」
三宅さんは寂しげな笑みを浮かべた。生徒会の選挙は毎年10月に行なわれるから、今の生徒会もあと2ヶ月か。
「でも、今の生徒会には必ず終わりがやってきて、来年の春には会長達は卒業します。きっと、会長のことですから来年、東京に行くと思います。寂しいですけど、その覚悟を決めて会長と恋人として付き合おうと思ったんですから」
「覚悟か……」
その言葉は僕に重くのし掛かった。それが僕に一番足りないものであるような気がして。もしかしたら、羽村や三宅さんのように乗り越えなければいけない状況が来るかもしれないと思えて。
「先輩、ぼうっとしていると指切っちゃいますよ」
「……そうだね。考え事をしちゃってた」
「ふふっ、そうですか。さっ、準備の続きをしないと」
「そうだね。結構お肉の方も切ることができたみたいだから、まな板にそのお肉を切ったら野菜と一緒にこの串に刺そうか」
「それ、あたしと芽依ちゃんでやってもいいかな?」
気付けば、常盤さんと芽依、松雪先生がコテージから戻ってきていた。
「コテージの方の準備はできたよ、お兄ちゃん。食材を串に刺すのは得意だからさ」
「一昨年や去年も2人と羽村が刺してくれたよね。じゃあ、2人に任せようかな」
「食材チームも順調そうだね。何か買ってきた方がいいものってある?」
「食材は大丈夫です。飲み物もお茶やジュース、スポーツドリンクはありますけどアルコールはあまりないですね。ビールとサワーくらいですか」
「そっか。う~ん、日本酒やワインとかも呑みたいな。美波ちゃん、近くにコンビニやスーパーってある? 買いに行こうかなと思うんだけど」
「ここから歩いて数分くらいのところにスーパーがありますよ。一緒に行きましょうか。ごめん、芽依ちゃん。まずは1人で串刺しをやってもらっていいかな?」
「もちろんですよ」
「それに、食材をある程度下ごしらえしたら、三宅さんや僕も手伝うから、こっちのことは気にせずに行ってきて」
芽依もすぐ側でやってくれるし、3人でやれば十分だ。
「分かった。じゃあ、先生、行きましょうか」
「ああ。Bチームのメンバーにも声をかけてみるか。3人は何かほしい食べ物や飲み物はある?」
「今のところ、僕は大丈夫です。何か欲しいものがあれば自分で買いに行くので」
「私も先輩と同じですね」
「私は……夏山町の緑茶をお願いします。ここはお茶の葉も有名らしいので」
「分かった。先生も気になるな」
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