104 / 118
特別編-Green Days-
第5話『麗しき人』
しおりを挟む
5月12日、土曜日。
今日もよく晴れている。天気予報によると、多少雲が出るそうだけど、雨が降る心配はないという。これなら副会長さんの家に行くにも問題ないな。
ちなみに、琴葉は用事があるとのことで一緒には行かない。また、体のサイズは姉さんとさほど変わりないとのこと。どうやら、姉さんが大丈夫なら自分も大丈夫だろうと考えているようだ。
午前中は沙奈会長や真奈ちゃんと一緒に、『ゴシック百合花に私達は溺れる』を観ながらゆっくりと過ごした。
また、そのときに真奈ちゃんから、昨日の夜に沙奈会長の可愛らしい声が何度も聞こえてきたと報告されてしまった。そのことに沙奈会長は悶え、果てにはベッドの中に潜ってしまう事態に。そんな彼女のことを見て、あのときはさすがに会長を弄りすぎてしまったと反省する。
お昼前に姉さんから電話がかかってきて、どこかでお昼ご飯を食べてから副会長さんの家に行かないかと提案された。僕達はそれに賛成。琴葉のお見舞いに行ったときに寄った月野駅近くの喫茶店でお昼ご飯を食べた。
副会長さんの家の最寄り駅である八神駅は、月野駅から山梨方面に2駅のところにある。
ただ、月野駅とは違って、山梨県や長野県に向かう特急列車が全て停車し、潮浜線などの複数の在来線に乗り換えもできる大きな駅だ。
八神駅のホームに降り立ったのは、月野市に引っ越してきて入学直前に家族で食事に行ったとき以来か。それから1ヶ月半くらい経ったけど、とても濃い時間を過ごしてきたからか、半年以上の月日が流れたように思える。あと、駅から見える風景が前に比べて煌びやかに思える。
沙奈会長と真奈ちゃんについていく形で、僕らは副会長さんの家に向かうことに。
最初こそは全く知らない道だったけれど、途中からはこの前の旅行の行き帰りで通った道を歩くので、彼女の家に近づいているのだと分かって安心する。
駅から10分ほど歩いて、副会長さんの家に到着する。まさか、旅行から1週間足らずでまたここに来るとは思わなかった。
――ピーンポーン。
インターホンの音が鳴った瞬間に思ったけれど、有村さんはもう来ているのかな。スマートフォンを確認しても、副会長さんからそういった旨のメッセージは届いていない。
「はーい」
玄関の扉が開き、そこに待っていたのは桃色のワンピースを着た副会長さんだった。旅行中はずっと、ゴシック風のワンピースを着ていたので何だか意外だ。
「樹里先輩、遊びに来ました」
「みんないらっしゃい。咲希もついさっき来たんだ。みんなと会えるのを楽しみにしているよ。特に逢坂君と麻実さんに」
「そ、そうなんですね」
「光栄な気分になるね、玲人」
「楽しみにしてくれているのは嬉しいよね」
「ふふっ。さっ、入ってください」
僕らは副会長さんの家にお邪魔し、2階にある彼女の部屋に通される。そこには、ベッドの上で気持ち良さそうに横になっている茶髪の女性がいた。彼女が有村さんかな。
「もう、咲希ったら。初めて会う人もいるのに、いつも通りベッドでゴロゴロして」
「ごめんごめん。樹里のベッドが気持ち良くてね。あと、樹里の匂いが好きなんだ。そっか、桜海に引っ越したらそれもできなくなるのか。寂しいなぁ」
「はいはい、それは分かったから。ほら、咲希が会いたがっていた逢坂玲人君と、彼のお姉さんの逢坂麻実さんだよ」
すると、有村さんはベッドから降りて、ゆっくりと僕らの目の前まで近づいてくる。パンツルックだからスラッとしているのがよく分かるな。写真で見るよりも綺麗な人に思えて。爽やかな笑顔がとても素敵だ。
「初めまして、有村咲希です。天羽女子高校の3年です。樹里から聞いているかもしれませんが、樹里とは小学生のときからの付き合いで。家も近所で中学卒業まではよく遊んでいました」
「そうだったんですね。初めまして、逢坂玲人です。月野学園高校の1年です。副会長さんや沙奈会長とは入学直後から生徒会でお世話になっていて、沙奈会長とは半月ほど前から恋人として付き合い始めました」
「初めまして、逢坂麻実です。多摩中央大学文学部の2年です。背丈とか顔つきとかあんまり似てないけれど、玲人の実の姉です」
確かに、姉さんに似ているって言われたことは全然ないな。琴葉さえもそういったことは言わなかった気がする。
「逢坂君に麻実さんですね。これからよろしくお願いします」
すると、有村さんは爽やかな笑みを浮かべて僕、姉さんの順に握手を交わした。本当に笑顔が素敵で、高校で何人もの生徒から告白されたのも納得できる。
「私、紅茶を持ってくるからみんなは適当にくつろいでいてね」
そう言って、副会長さんは部屋を一旦出ていった。
ベッドの近くにテーブルがあるので、僕達5人はテーブルを囲むようにして座る。もちろん、沙奈会長と隣り合って。
「真奈ちゃんと麻実さん、2人で並んでいるとどっちが年上か分からないですね」
「ふふっ、麻実さん可愛らしいですもんね。あたしも初めて会ったときは、玲人さんの妹さんだと思いましたね」
真奈ちゃんは楽しそうな様子で姉さんの頭を撫でる。
確かに、有村さんの言うように、真奈ちゃんと姉さん……どっちが年上なのか分からないな。2人とも知らない人が見たら、ほぼ全員が真奈ちゃんを年上だと思うんじゃないだろうか。僕の妹だと思った真奈ちゃんの気持ちも分かる。
「今の咲希ちゃんのようなセリフ、大学に入学したときによく言われたよ。あと、私服姿っていうのもあって、近所に住む小学生が大学に遊びに来ているって勘違いされたこともあったなぁ」
「それでも、麻実さんが可愛らしいことには変わりないと思いますよ」
「真奈ちゃんいい子!」
姉さん、とっても嬉しそうな笑顔を見せ、真奈ちゃんにピッタリと寄り添っている。そのことでますます子供っぽく見えるけれど、それは言わないでおくか。
「真奈ちゃんは中学生で成長期だからか、前に会ったときよりも大人っぽくなった気がするね。特に胸のあたりが」
「そうですね。身長も少し伸びて、胸も1つカップが大きくなりましたね」
「羨ましいなぁ。私も真奈ちゃんくらいの胸の大きさにはなりたいよ」
はあっ、と有村さんはため息をつく。大きな胸に憧れを抱いているのだろうか。僕の感覚では有村さんのスタイルはいいと思うんだけれどな。
「玲人君。咲希先輩のことをじっと見てどうしたの?」
「……色々な人がいるんだなと思いまして」
そういう風に言わないと痛い目に遭うからな。沙奈会長は怪しいと思って、少し目を細めて僕のことを見ているけれど。
「しかし、こうして見てみると、沙奈ちゃんと逢坂君はお似合いな感じがするよ」
「そ、そうですか? 咲希先輩にそう言ってもらえるなんて嬉しいです」
「そう言うってことは逢坂君が大好きだっていう何よりの証拠だね。それにしても、今までに何度か告白されたことがあるってくらいで、沙奈ちゃんはこれまで恋愛話は全然話さなかったのに。樹里から聞いているよ。沙奈ちゃん、逢坂君のことが大好きだって」
「ええ。玲人君のことは本当に好きです。ただ、それを人から言われると何だか照れちゃいますね」
えへへっ、と沙奈会長は照れくさそうに笑う。
「そんな沙奈ちゃんをゾッコンさせるなんて、逢坂君は沙奈ちゃんに何をしたのかなぁ?」
ニヤリと笑みを浮かべて、有村さんは僕のことを見てくる。むしろ、何かしたのは沙奈会長の方なんだけど。
「入学して間もない頃、学校の近所にある公園の木に登った猫を助けたことがありまして。その様子を見ていた沙奈会長が僕に一目惚れしたそうで。それからは会長から物凄くアプローチされたといいますか。色々とありまして」
「確かに色々とあったよね。私が暴走しすぎて、玲人君のことを怒らせちゃったこともあって」
「へえ、そんなこともあったんだ。それでも、今はこうして仲良く付き合っているのは、逢坂君が沙奈ちゃんのことを段々と好きになっていったからかな」
「そうですね。色々とありましたけれど、会長が僕のことが好きなのは分かりましたし、とても可愛らしい素敵な女性だなと思えて。暴走はしますけど、根は真面目ですし。ですから、会長のいる生徒会にも入りましたし、恋人として付き合おうと決めたんです。今となっては、彼女が側にいない未来が考えられないくらいですから」
「そうなんだね。沙奈ちゃん、逢坂君にとっても愛されているね。沙奈ちゃんが逢坂君を大好きな理由が分かった気がするな……」
有村さんは優しい笑みを浮かべてそう言う。
そんな彼女に視線を向けられている沙奈会長は顔を真っ赤にしながらニヤけて、
「私は幸せ者です。でも、みんなの前で私への想いをそこまで言われると、凄く恥ずかしいよ……」
そう言って両手で顔を隠した。
「ここまで恥ずかしがる沙奈ちゃんを見るのは初めてだよ。さすがは恋人だね」
「そういうところも可愛らしいと思っていますよ」
「あははっ、そっか。逢坂君ってキリッとしていて寡黙なのかなって思ったけれど、話してみると物腰が柔らかいね。……何だか、彼に似ているな」
「彼? 彼って誰のこと? あたし達に教えてごらん、咲希ちゃん」
「そういえば、咲希さんは好きな人がいるって前に言っていましたよね! その方が『彼』なのでしょうか!」
恋バナに興味があるのか姉さんと真奈ちゃん、凄く食いついているな。
すると、有村さんは初めて顔を赤くし、恥ずかしそうな様子を見せる。
「せ、正解だよ、真奈ちゃん。今月末に桜海市に引っ越すんだけど、そこに好きな男の子がいるの。実は10年前にここに引っ越すまではずっと桜海市に住んでいてね。彼とは小学校に入学したときに出会って。彼の幼なじみの女の子と3人で小学1年生の間はずっと一緒にいたな……」
「ということは、咲希先輩。桜海市に戻ったら、その彼や幼なじみと10年ぶりの再会になるんですか?」
「うん、そうだよ。年賀状で2人とも今も桜海市に住んでいるのは分かっているから」
「おおっ!」
「興奮してしまいますね、麻実さん!」
姉さんはともかく、真奈ちゃんもこういう恋愛話は大好きなんだな。
引っ越しということには変わりないけれど、幼い頃に住んでいた街に戻ると考えれば多少は寂しさも和らぐのかな。ましてや、仲良くしていた人が今もそこにいるなら。
「あたし、今、決めていることがあってね」
すると、今も顔に赤みは残っているけれど、有村さんははにかんで、
「桜海市に帰って、彼と会ったら……好きだっていう想いをまた伝えたい」
今日もよく晴れている。天気予報によると、多少雲が出るそうだけど、雨が降る心配はないという。これなら副会長さんの家に行くにも問題ないな。
ちなみに、琴葉は用事があるとのことで一緒には行かない。また、体のサイズは姉さんとさほど変わりないとのこと。どうやら、姉さんが大丈夫なら自分も大丈夫だろうと考えているようだ。
午前中は沙奈会長や真奈ちゃんと一緒に、『ゴシック百合花に私達は溺れる』を観ながらゆっくりと過ごした。
また、そのときに真奈ちゃんから、昨日の夜に沙奈会長の可愛らしい声が何度も聞こえてきたと報告されてしまった。そのことに沙奈会長は悶え、果てにはベッドの中に潜ってしまう事態に。そんな彼女のことを見て、あのときはさすがに会長を弄りすぎてしまったと反省する。
お昼前に姉さんから電話がかかってきて、どこかでお昼ご飯を食べてから副会長さんの家に行かないかと提案された。僕達はそれに賛成。琴葉のお見舞いに行ったときに寄った月野駅近くの喫茶店でお昼ご飯を食べた。
副会長さんの家の最寄り駅である八神駅は、月野駅から山梨方面に2駅のところにある。
ただ、月野駅とは違って、山梨県や長野県に向かう特急列車が全て停車し、潮浜線などの複数の在来線に乗り換えもできる大きな駅だ。
八神駅のホームに降り立ったのは、月野市に引っ越してきて入学直前に家族で食事に行ったとき以来か。それから1ヶ月半くらい経ったけど、とても濃い時間を過ごしてきたからか、半年以上の月日が流れたように思える。あと、駅から見える風景が前に比べて煌びやかに思える。
沙奈会長と真奈ちゃんについていく形で、僕らは副会長さんの家に向かうことに。
最初こそは全く知らない道だったけれど、途中からはこの前の旅行の行き帰りで通った道を歩くので、彼女の家に近づいているのだと分かって安心する。
駅から10分ほど歩いて、副会長さんの家に到着する。まさか、旅行から1週間足らずでまたここに来るとは思わなかった。
――ピーンポーン。
インターホンの音が鳴った瞬間に思ったけれど、有村さんはもう来ているのかな。スマートフォンを確認しても、副会長さんからそういった旨のメッセージは届いていない。
「はーい」
玄関の扉が開き、そこに待っていたのは桃色のワンピースを着た副会長さんだった。旅行中はずっと、ゴシック風のワンピースを着ていたので何だか意外だ。
「樹里先輩、遊びに来ました」
「みんないらっしゃい。咲希もついさっき来たんだ。みんなと会えるのを楽しみにしているよ。特に逢坂君と麻実さんに」
「そ、そうなんですね」
「光栄な気分になるね、玲人」
「楽しみにしてくれているのは嬉しいよね」
「ふふっ。さっ、入ってください」
僕らは副会長さんの家にお邪魔し、2階にある彼女の部屋に通される。そこには、ベッドの上で気持ち良さそうに横になっている茶髪の女性がいた。彼女が有村さんかな。
「もう、咲希ったら。初めて会う人もいるのに、いつも通りベッドでゴロゴロして」
「ごめんごめん。樹里のベッドが気持ち良くてね。あと、樹里の匂いが好きなんだ。そっか、桜海に引っ越したらそれもできなくなるのか。寂しいなぁ」
「はいはい、それは分かったから。ほら、咲希が会いたがっていた逢坂玲人君と、彼のお姉さんの逢坂麻実さんだよ」
すると、有村さんはベッドから降りて、ゆっくりと僕らの目の前まで近づいてくる。パンツルックだからスラッとしているのがよく分かるな。写真で見るよりも綺麗な人に思えて。爽やかな笑顔がとても素敵だ。
「初めまして、有村咲希です。天羽女子高校の3年です。樹里から聞いているかもしれませんが、樹里とは小学生のときからの付き合いで。家も近所で中学卒業まではよく遊んでいました」
「そうだったんですね。初めまして、逢坂玲人です。月野学園高校の1年です。副会長さんや沙奈会長とは入学直後から生徒会でお世話になっていて、沙奈会長とは半月ほど前から恋人として付き合い始めました」
「初めまして、逢坂麻実です。多摩中央大学文学部の2年です。背丈とか顔つきとかあんまり似てないけれど、玲人の実の姉です」
確かに、姉さんに似ているって言われたことは全然ないな。琴葉さえもそういったことは言わなかった気がする。
「逢坂君に麻実さんですね。これからよろしくお願いします」
すると、有村さんは爽やかな笑みを浮かべて僕、姉さんの順に握手を交わした。本当に笑顔が素敵で、高校で何人もの生徒から告白されたのも納得できる。
「私、紅茶を持ってくるからみんなは適当にくつろいでいてね」
そう言って、副会長さんは部屋を一旦出ていった。
ベッドの近くにテーブルがあるので、僕達5人はテーブルを囲むようにして座る。もちろん、沙奈会長と隣り合って。
「真奈ちゃんと麻実さん、2人で並んでいるとどっちが年上か分からないですね」
「ふふっ、麻実さん可愛らしいですもんね。あたしも初めて会ったときは、玲人さんの妹さんだと思いましたね」
真奈ちゃんは楽しそうな様子で姉さんの頭を撫でる。
確かに、有村さんの言うように、真奈ちゃんと姉さん……どっちが年上なのか分からないな。2人とも知らない人が見たら、ほぼ全員が真奈ちゃんを年上だと思うんじゃないだろうか。僕の妹だと思った真奈ちゃんの気持ちも分かる。
「今の咲希ちゃんのようなセリフ、大学に入学したときによく言われたよ。あと、私服姿っていうのもあって、近所に住む小学生が大学に遊びに来ているって勘違いされたこともあったなぁ」
「それでも、麻実さんが可愛らしいことには変わりないと思いますよ」
「真奈ちゃんいい子!」
姉さん、とっても嬉しそうな笑顔を見せ、真奈ちゃんにピッタリと寄り添っている。そのことでますます子供っぽく見えるけれど、それは言わないでおくか。
「真奈ちゃんは中学生で成長期だからか、前に会ったときよりも大人っぽくなった気がするね。特に胸のあたりが」
「そうですね。身長も少し伸びて、胸も1つカップが大きくなりましたね」
「羨ましいなぁ。私も真奈ちゃんくらいの胸の大きさにはなりたいよ」
はあっ、と有村さんはため息をつく。大きな胸に憧れを抱いているのだろうか。僕の感覚では有村さんのスタイルはいいと思うんだけれどな。
「玲人君。咲希先輩のことをじっと見てどうしたの?」
「……色々な人がいるんだなと思いまして」
そういう風に言わないと痛い目に遭うからな。沙奈会長は怪しいと思って、少し目を細めて僕のことを見ているけれど。
「しかし、こうして見てみると、沙奈ちゃんと逢坂君はお似合いな感じがするよ」
「そ、そうですか? 咲希先輩にそう言ってもらえるなんて嬉しいです」
「そう言うってことは逢坂君が大好きだっていう何よりの証拠だね。それにしても、今までに何度か告白されたことがあるってくらいで、沙奈ちゃんはこれまで恋愛話は全然話さなかったのに。樹里から聞いているよ。沙奈ちゃん、逢坂君のことが大好きだって」
「ええ。玲人君のことは本当に好きです。ただ、それを人から言われると何だか照れちゃいますね」
えへへっ、と沙奈会長は照れくさそうに笑う。
「そんな沙奈ちゃんをゾッコンさせるなんて、逢坂君は沙奈ちゃんに何をしたのかなぁ?」
ニヤリと笑みを浮かべて、有村さんは僕のことを見てくる。むしろ、何かしたのは沙奈会長の方なんだけど。
「入学して間もない頃、学校の近所にある公園の木に登った猫を助けたことがありまして。その様子を見ていた沙奈会長が僕に一目惚れしたそうで。それからは会長から物凄くアプローチされたといいますか。色々とありまして」
「確かに色々とあったよね。私が暴走しすぎて、玲人君のことを怒らせちゃったこともあって」
「へえ、そんなこともあったんだ。それでも、今はこうして仲良く付き合っているのは、逢坂君が沙奈ちゃんのことを段々と好きになっていったからかな」
「そうですね。色々とありましたけれど、会長が僕のことが好きなのは分かりましたし、とても可愛らしい素敵な女性だなと思えて。暴走はしますけど、根は真面目ですし。ですから、会長のいる生徒会にも入りましたし、恋人として付き合おうと決めたんです。今となっては、彼女が側にいない未来が考えられないくらいですから」
「そうなんだね。沙奈ちゃん、逢坂君にとっても愛されているね。沙奈ちゃんが逢坂君を大好きな理由が分かった気がするな……」
有村さんは優しい笑みを浮かべてそう言う。
そんな彼女に視線を向けられている沙奈会長は顔を真っ赤にしながらニヤけて、
「私は幸せ者です。でも、みんなの前で私への想いをそこまで言われると、凄く恥ずかしいよ……」
そう言って両手で顔を隠した。
「ここまで恥ずかしがる沙奈ちゃんを見るのは初めてだよ。さすがは恋人だね」
「そういうところも可愛らしいと思っていますよ」
「あははっ、そっか。逢坂君ってキリッとしていて寡黙なのかなって思ったけれど、話してみると物腰が柔らかいね。……何だか、彼に似ているな」
「彼? 彼って誰のこと? あたし達に教えてごらん、咲希ちゃん」
「そういえば、咲希さんは好きな人がいるって前に言っていましたよね! その方が『彼』なのでしょうか!」
恋バナに興味があるのか姉さんと真奈ちゃん、凄く食いついているな。
すると、有村さんは初めて顔を赤くし、恥ずかしそうな様子を見せる。
「せ、正解だよ、真奈ちゃん。今月末に桜海市に引っ越すんだけど、そこに好きな男の子がいるの。実は10年前にここに引っ越すまではずっと桜海市に住んでいてね。彼とは小学校に入学したときに出会って。彼の幼なじみの女の子と3人で小学1年生の間はずっと一緒にいたな……」
「ということは、咲希先輩。桜海市に戻ったら、その彼や幼なじみと10年ぶりの再会になるんですか?」
「うん、そうだよ。年賀状で2人とも今も桜海市に住んでいるのは分かっているから」
「おおっ!」
「興奮してしまいますね、麻実さん!」
姉さんはともかく、真奈ちゃんもこういう恋愛話は大好きなんだな。
引っ越しということには変わりないけれど、幼い頃に住んでいた街に戻ると考えれば多少は寂しさも和らぐのかな。ましてや、仲良くしていた人が今もそこにいるなら。
「あたし、今、決めていることがあってね」
すると、今も顔に赤みは残っているけれど、有村さんははにかんで、
「桜海市に帰って、彼と会ったら……好きだっていう想いをまた伝えたい」
0
あなたにおすすめの小説
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる