108 / 118
特別編-Green Days-
第9話『コスプレ-後編-』
しおりを挟む
会場の中に入ると、サークル参加の人、一般参加の人、僕らのようにコスプレ参加の人、運営スタッフの方。様々な人がいるけど、みんな楽しみながらイベントに参加しているのが分かる。
「これが同人誌即売会なんだね! レイ君!」
「楽しそうな感じが伝わってくるね、琴葉」
「そうだよね! あと、こういうところに初めて来たからか、新しい世界を見ているような気がするよ」
「確かに、それは言えているかもしれないね。僕もこういうイベントに参加するのは初めてだし、女性キャラクターにコスプレしているからな……」
小さい頃、琴葉や姉さんなどの服を着せられたことはあるけど、ゴシックドレスを着るのは昨日が初めてだから尚更。
「草原先生オンリーだけれど、色々な作品の同人誌を売っているんだね、玲人君」
「そうですね。草原先生はデビューしてからたくさんの作品を発表していますからね。それぞれの作品にファンも多くいるのでしょう」
さすがは、女性のライトノベル作家の中では最も人気と評されるだけはある。
パンフレットによると、頒布する同人誌の作品によって、サークルのスペースが振り分けられているようだ。その中でも、代表作である『ゴシック百合花に私達は溺れる』と『未必の恋』の同人誌を頒布するサークルさんが特に多い。
「ねえねえ、玲人君。あそこのサークルさんのポスター、とてもセクシーなアリシアちゃんが描かれているよ。すっごく可愛いね」
「ええ。可愛らしいですが『For Adult』って文字も見えますので、成人向けの同人誌を扱うサークルさんじゃないでしょうか。絶対に買っちゃダメですよ。あと、自分が読みたいからといって姉さんに買わせるのもNGです。何かあったとき、販売したサークルさんにも多大な迷惑がかかりますし」
その姉さんも見た目が子供っぽいので、販売してくれるかどうかは微妙だけど。高校の制服にコスプレしているし。
「そうだね。成人向けは成人になったときのお楽しみにしておくよ。今は頭の中で妄想するか、玲人君と……えへへっ」
そんな厭らしい笑いは、クレアの清楚でお淑やかなイメージからかけ離れている。
「みんな、あそこがコスプレスペースだよ。このイベントでは会場内なら、許可さえ取れば写真を撮ってもいいことになっているんだ。その専用スペースがコスプレスペースなの。あとはコスプレした人との交流の場でもあるんだよ」
「そうなんですね。あそこには特にコスプレした人やカメラを持った人が多くいますね」
アリシアにコスプレしている人はいるけれど、いずれも女性によるコスプレであり、男性は1人もいないな。沙奈会長達がコスプレしているキャラクターにコスプレする人もそれぞれいる。さすがは代表作のキャラクターだ。
コスプレスペースに辿り着くと、コスプレしている方もそうでない方も僕らの方を注目してくる。
「凄くクオリティの高いコスプレイヤー集団が来たぞ」
「アリシア様がとても綺麗でかっこいい! 中の人は女性かな? でも、背がかなり高いから男性かも……」
「クレアが原作よりもかなりスタイルがいいけど、これはこれでいい……」
「『未必の恋』のヒロイン3人組もかわいい!」
どうやら、僕らのコスプレはかなり好評なようだ。あと、コスプレをする人のことをコスプレイヤーって言うのかな。
「あの、すみません!」
琴葉や真奈ちゃん達に黒髪の女性が声をかけてきた。コスプレはしていないけれど、デジカメを持っているな。
「あたし、『未必の恋』のメインキャラクター3人が大好きで! みなさんとっても可愛らしいですね! あと、寄り添っている3人のお姿の写真を撮りたいのですが……」
「おっ、いいじゃん。やってみようよ」
「そうだね、麻実ちゃん。コスプレしているキャラクター的に、麻実ちゃんと真奈ちゃんがあたしに寄り添うってことになるのかな?」
「そうですね。では、麻実さんとあたしで琴葉さんのことを抱きしめましょう」
まるで作品の世界観を表現するように、真奈ちゃんと姉さんが琴葉のことを抱きしめて、顔を寄り添わせる。
「いいですね! 最高です! では、撮りまーす!」
女性は、3人がピースサインをしたところを写真撮影する。
「最高の写真が撮れました! ありがとうございました!」
「はーい、ありがとうございました」
さすがは真奈ちゃん。写真を撮影できたことで興奮している女性に対して、落ち着いて対応している。
「僕らも写真撮影を頼まれたら、今みたいに対応すればいいんですね、副会長さん」
「そうだね。今くらいの要望ならその通りに応えてもいいけれど、過激な要求だなって思ったら遠慮なく断っていいからね。コスプレする私達だって人間なんだし。もちろん、断るときにはやんわりとね」
「そうですね。心がけます」
当たり前の話だけれど、コスプレしている人もそうでない人も、みんなイベントに参加している人間なんだよな。どうしてもダメなときはダメだと伝えるのも重要だよね。
「あ、あの! すみません!」
「はい」
声をかけられたので、声の主の方に顔を向けると、目の前には茶髪の女性が。
「アリシアちゃんのコスプレ、とても美しいですね! 写真を撮ってもいいですか?」
「いいですよ」
僕は女性の要望でピースサインやウィンクなどのポーズをして撮影に応じる。最初は恥ずかしいけれど、喜んでくれる様子を見るとこちらまで楽しくなってくる。
「ありがとうございます! あと、もう一つお願いがあるのですが……」
「はい、なんでしょう」
「私、アリシアとクレアのカップリングが物凄く好きで! お二人が腕を絡ませて会場に入ってきた姿を見ましたし、もし大丈夫であれば、お二人がキスしている姿を撮影したいのですが! ネットにはアップしませんので!」
「そ、そうですね……」
クレアにコスプレしているのは沙奈会長だから、キスしても大丈夫だけど、公然の場でキスするのはさすがに恥ずかしい。ネットにアップしないとは言っているけど、どうすべきか。
沙奈会長とキスするかどうかなので沙奈会長の方を見てみると、彼女はとってもやる気に満ちた表情で僕の方を見ていた。
「玲人君。要望があるんだからそれに応えてもいいんじゃないかな。ねえねえ、アリシアちゃん、私とキスしちゃおうぜぇ」
「クレアのキャラがダダ崩れじゃないですか。まあ、沙奈会長がそう言うのであれば、彼女の要望に応えましょうか。僕は恥ずかしいですけど」
「うん、そうだね。……いいですよ、こちらのアリシアにコスプレしている彼と私は、リアルに恋人として付き合っていますから。ただし、ネットにアップするのは絶対にダメですからね」
「ありがとうございます!」
「……さあ、アリシア様。私に愛情たっぷりのキスしていただけますか?」
「分かったよ、クレア」
いざというときはクレアになりきるんだから。本当に凄い人だ、沙奈会長は。
僕は沙奈会長のことを抱き寄せてキスを交わす。その瞬間、
『お~』
という多くの方の歓声が上がり、明らかに複数台のカメラによるシャッター音が聞こえてくる。アニメ最終話を再現しているようにも見えるこのキスは、多くの人が求めていると思えばいいか。
唇を離すとそこには顔を真っ赤にする沙奈会長の姿がいて。それが分かった瞬間、周りから歓声と拍手が。
「みなさま、後でこの出来事をSNSで呟くのはかまいませんが、写真をアップすることだけはご遠慮ください。これは次期王女のアリシアお嬢様とクレア様からのご命令です。どうか宜しくお願いいたします」
『はーい!』
コスプレしたメイドのエトーレ風に注意を促すという副会長さんの粋な演出により、コスプレスペースは大盛り上がり。沙奈会長も笑顔で拍手を送っている。
「さすがは樹里。場慣れしているね」
「そんな感じがしましたよね。ありがとうございます、副会長さん」
「いえいえ。それに、少なくとも、私はこのイベント会場の中ではアリシア様に仕えるメイド・エトーレですから」
ふふっ、と副会長さんは落ち着いた笑みを見せてくれる。何だか今まで以上に頼りになる人だなと思った。
「あの、すみません。アンナとアリシアの組み合わせが好きなので、2人が寄り添っている写真を撮りたいのですが!」
眼鏡の男性からそんな要望が来たので、沙奈会長のことをちらっと見ると、会長は笑顔で頷いた。
「分かりました。どんな感じに寄り添うといいですか?」
「さっきのクレアのときのような感じで、アリシアがアンナのことを抱き寄せる形で……」
「了解です。……アンナ、ちょっとこっちに来なさい」
「はい、アリシア様」
有村さんのことを抱き寄せたところで男性に写真を撮ってもらう。ただ、彼の横では沙奈会長と副会長さんもちゃっかりと写真を撮っている。
「ありがとうございました」
「いえいえ」
どうやら、満足のいく写真を撮ることができたようだ。
「みなさん、楽しんでいますね」
「あっ、アリスちゃん」
「琴葉から今日のことを聞いていましたので、向こうでの用事を済ませてここにやってきました。琴葉達のコスプレも見たかったですし。琴葉の制服姿はとても可愛いですね。この会場にいる方の中で一番可愛いですよ」
「そういう風に言われると照れちゃうよ。でも、嬉しいな」
すると、琴葉はアリスさんと抱きしめ合う。
気付けば、コスプレスペースにはいつものワンピースを着たアリスさんがいた。アリスさんにとっては普段着だけど、ここにいても全く違和感がないな。もしかして、今日は最寄り駅まで一緒に来たりしたのかな。
「琴葉ちゃん、この銀髪の女の子は知り合いなの?」
「ええ。アリス・ユメミールちゃんといいます。ええと、遠い国に住んでいる方で、小さい頃に知り合ったんです」
「そうなんだ。初めまして、有村咲希といいます」
「初めまして、アリス・ユメミールと申します。よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします。それにしても、とても綺麗なゴシックワンピースですね。ただ、こういった服を着たキャラクターが草原先生の作品にいたかどうか……」
「ふふっ、この服は私服です。あたしの生まれた国では、お出かけのときはこういう感じの服を着る人が多くて。ただ、『ゴシック百合花に私達は溺れる』という作品の世界観には合っていそうですね」
「確かに違和感はなさそうですね」
アリスさんの存在感が凄くて、僕らを含めてコスプレをしている人達が霞んでいる気がする。アリスさんは異世界で魔法学校に通っている本物の魔女だもんな。あと、アリスさんは草原先生の作品を知っているのか。
その後も、多くの方の要望に応えながら写真を撮ったり、他のコスプレをしている方と交流したり、同人誌を何冊か買ったり。個人的にも満足だけど、沙奈会長達もとても楽しんでいそうで良かった。
「これが同人誌即売会なんだね! レイ君!」
「楽しそうな感じが伝わってくるね、琴葉」
「そうだよね! あと、こういうところに初めて来たからか、新しい世界を見ているような気がするよ」
「確かに、それは言えているかもしれないね。僕もこういうイベントに参加するのは初めてだし、女性キャラクターにコスプレしているからな……」
小さい頃、琴葉や姉さんなどの服を着せられたことはあるけど、ゴシックドレスを着るのは昨日が初めてだから尚更。
「草原先生オンリーだけれど、色々な作品の同人誌を売っているんだね、玲人君」
「そうですね。草原先生はデビューしてからたくさんの作品を発表していますからね。それぞれの作品にファンも多くいるのでしょう」
さすがは、女性のライトノベル作家の中では最も人気と評されるだけはある。
パンフレットによると、頒布する同人誌の作品によって、サークルのスペースが振り分けられているようだ。その中でも、代表作である『ゴシック百合花に私達は溺れる』と『未必の恋』の同人誌を頒布するサークルさんが特に多い。
「ねえねえ、玲人君。あそこのサークルさんのポスター、とてもセクシーなアリシアちゃんが描かれているよ。すっごく可愛いね」
「ええ。可愛らしいですが『For Adult』って文字も見えますので、成人向けの同人誌を扱うサークルさんじゃないでしょうか。絶対に買っちゃダメですよ。あと、自分が読みたいからといって姉さんに買わせるのもNGです。何かあったとき、販売したサークルさんにも多大な迷惑がかかりますし」
その姉さんも見た目が子供っぽいので、販売してくれるかどうかは微妙だけど。高校の制服にコスプレしているし。
「そうだね。成人向けは成人になったときのお楽しみにしておくよ。今は頭の中で妄想するか、玲人君と……えへへっ」
そんな厭らしい笑いは、クレアの清楚でお淑やかなイメージからかけ離れている。
「みんな、あそこがコスプレスペースだよ。このイベントでは会場内なら、許可さえ取れば写真を撮ってもいいことになっているんだ。その専用スペースがコスプレスペースなの。あとはコスプレした人との交流の場でもあるんだよ」
「そうなんですね。あそこには特にコスプレした人やカメラを持った人が多くいますね」
アリシアにコスプレしている人はいるけれど、いずれも女性によるコスプレであり、男性は1人もいないな。沙奈会長達がコスプレしているキャラクターにコスプレする人もそれぞれいる。さすがは代表作のキャラクターだ。
コスプレスペースに辿り着くと、コスプレしている方もそうでない方も僕らの方を注目してくる。
「凄くクオリティの高いコスプレイヤー集団が来たぞ」
「アリシア様がとても綺麗でかっこいい! 中の人は女性かな? でも、背がかなり高いから男性かも……」
「クレアが原作よりもかなりスタイルがいいけど、これはこれでいい……」
「『未必の恋』のヒロイン3人組もかわいい!」
どうやら、僕らのコスプレはかなり好評なようだ。あと、コスプレをする人のことをコスプレイヤーって言うのかな。
「あの、すみません!」
琴葉や真奈ちゃん達に黒髪の女性が声をかけてきた。コスプレはしていないけれど、デジカメを持っているな。
「あたし、『未必の恋』のメインキャラクター3人が大好きで! みなさんとっても可愛らしいですね! あと、寄り添っている3人のお姿の写真を撮りたいのですが……」
「おっ、いいじゃん。やってみようよ」
「そうだね、麻実ちゃん。コスプレしているキャラクター的に、麻実ちゃんと真奈ちゃんがあたしに寄り添うってことになるのかな?」
「そうですね。では、麻実さんとあたしで琴葉さんのことを抱きしめましょう」
まるで作品の世界観を表現するように、真奈ちゃんと姉さんが琴葉のことを抱きしめて、顔を寄り添わせる。
「いいですね! 最高です! では、撮りまーす!」
女性は、3人がピースサインをしたところを写真撮影する。
「最高の写真が撮れました! ありがとうございました!」
「はーい、ありがとうございました」
さすがは真奈ちゃん。写真を撮影できたことで興奮している女性に対して、落ち着いて対応している。
「僕らも写真撮影を頼まれたら、今みたいに対応すればいいんですね、副会長さん」
「そうだね。今くらいの要望ならその通りに応えてもいいけれど、過激な要求だなって思ったら遠慮なく断っていいからね。コスプレする私達だって人間なんだし。もちろん、断るときにはやんわりとね」
「そうですね。心がけます」
当たり前の話だけれど、コスプレしている人もそうでない人も、みんなイベントに参加している人間なんだよな。どうしてもダメなときはダメだと伝えるのも重要だよね。
「あ、あの! すみません!」
「はい」
声をかけられたので、声の主の方に顔を向けると、目の前には茶髪の女性が。
「アリシアちゃんのコスプレ、とても美しいですね! 写真を撮ってもいいですか?」
「いいですよ」
僕は女性の要望でピースサインやウィンクなどのポーズをして撮影に応じる。最初は恥ずかしいけれど、喜んでくれる様子を見るとこちらまで楽しくなってくる。
「ありがとうございます! あと、もう一つお願いがあるのですが……」
「はい、なんでしょう」
「私、アリシアとクレアのカップリングが物凄く好きで! お二人が腕を絡ませて会場に入ってきた姿を見ましたし、もし大丈夫であれば、お二人がキスしている姿を撮影したいのですが! ネットにはアップしませんので!」
「そ、そうですね……」
クレアにコスプレしているのは沙奈会長だから、キスしても大丈夫だけど、公然の場でキスするのはさすがに恥ずかしい。ネットにアップしないとは言っているけど、どうすべきか。
沙奈会長とキスするかどうかなので沙奈会長の方を見てみると、彼女はとってもやる気に満ちた表情で僕の方を見ていた。
「玲人君。要望があるんだからそれに応えてもいいんじゃないかな。ねえねえ、アリシアちゃん、私とキスしちゃおうぜぇ」
「クレアのキャラがダダ崩れじゃないですか。まあ、沙奈会長がそう言うのであれば、彼女の要望に応えましょうか。僕は恥ずかしいですけど」
「うん、そうだね。……いいですよ、こちらのアリシアにコスプレしている彼と私は、リアルに恋人として付き合っていますから。ただし、ネットにアップするのは絶対にダメですからね」
「ありがとうございます!」
「……さあ、アリシア様。私に愛情たっぷりのキスしていただけますか?」
「分かったよ、クレア」
いざというときはクレアになりきるんだから。本当に凄い人だ、沙奈会長は。
僕は沙奈会長のことを抱き寄せてキスを交わす。その瞬間、
『お~』
という多くの方の歓声が上がり、明らかに複数台のカメラによるシャッター音が聞こえてくる。アニメ最終話を再現しているようにも見えるこのキスは、多くの人が求めていると思えばいいか。
唇を離すとそこには顔を真っ赤にする沙奈会長の姿がいて。それが分かった瞬間、周りから歓声と拍手が。
「みなさま、後でこの出来事をSNSで呟くのはかまいませんが、写真をアップすることだけはご遠慮ください。これは次期王女のアリシアお嬢様とクレア様からのご命令です。どうか宜しくお願いいたします」
『はーい!』
コスプレしたメイドのエトーレ風に注意を促すという副会長さんの粋な演出により、コスプレスペースは大盛り上がり。沙奈会長も笑顔で拍手を送っている。
「さすがは樹里。場慣れしているね」
「そんな感じがしましたよね。ありがとうございます、副会長さん」
「いえいえ。それに、少なくとも、私はこのイベント会場の中ではアリシア様に仕えるメイド・エトーレですから」
ふふっ、と副会長さんは落ち着いた笑みを見せてくれる。何だか今まで以上に頼りになる人だなと思った。
「あの、すみません。アンナとアリシアの組み合わせが好きなので、2人が寄り添っている写真を撮りたいのですが!」
眼鏡の男性からそんな要望が来たので、沙奈会長のことをちらっと見ると、会長は笑顔で頷いた。
「分かりました。どんな感じに寄り添うといいですか?」
「さっきのクレアのときのような感じで、アリシアがアンナのことを抱き寄せる形で……」
「了解です。……アンナ、ちょっとこっちに来なさい」
「はい、アリシア様」
有村さんのことを抱き寄せたところで男性に写真を撮ってもらう。ただ、彼の横では沙奈会長と副会長さんもちゃっかりと写真を撮っている。
「ありがとうございました」
「いえいえ」
どうやら、満足のいく写真を撮ることができたようだ。
「みなさん、楽しんでいますね」
「あっ、アリスちゃん」
「琴葉から今日のことを聞いていましたので、向こうでの用事を済ませてここにやってきました。琴葉達のコスプレも見たかったですし。琴葉の制服姿はとても可愛いですね。この会場にいる方の中で一番可愛いですよ」
「そういう風に言われると照れちゃうよ。でも、嬉しいな」
すると、琴葉はアリスさんと抱きしめ合う。
気付けば、コスプレスペースにはいつものワンピースを着たアリスさんがいた。アリスさんにとっては普段着だけど、ここにいても全く違和感がないな。もしかして、今日は最寄り駅まで一緒に来たりしたのかな。
「琴葉ちゃん、この銀髪の女の子は知り合いなの?」
「ええ。アリス・ユメミールちゃんといいます。ええと、遠い国に住んでいる方で、小さい頃に知り合ったんです」
「そうなんだ。初めまして、有村咲希といいます」
「初めまして、アリス・ユメミールと申します。よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします。それにしても、とても綺麗なゴシックワンピースですね。ただ、こういった服を着たキャラクターが草原先生の作品にいたかどうか……」
「ふふっ、この服は私服です。あたしの生まれた国では、お出かけのときはこういう感じの服を着る人が多くて。ただ、『ゴシック百合花に私達は溺れる』という作品の世界観には合っていそうですね」
「確かに違和感はなさそうですね」
アリスさんの存在感が凄くて、僕らを含めてコスプレをしている人達が霞んでいる気がする。アリスさんは異世界で魔法学校に通っている本物の魔女だもんな。あと、アリスさんは草原先生の作品を知っているのか。
その後も、多くの方の要望に応えながら写真を撮ったり、他のコスプレをしている方と交流したり、同人誌を何冊か買ったり。個人的にも満足だけど、沙奈会長達もとても楽しんでいそうで良かった。
0
あなたにおすすめの小説
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる