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Fragrance 1-コイノカオリ-
第3話『恋する乙女達』
午後5時。
下校するときはいつも、鏡原駅までは3人一緒に帰る。杏ちゃんは電車通学で、鏡原駅から15分ほどの場所にある潮浜市に住んでいる。
美咲ちゃんは同じ地元であるため、途中まで一緒に歩いて帰る。美咲ちゃんの住むお屋敷は家から歩いて5分ぐらいのところ。
美咲ちゃんと別れると、すぐ近くに私の家がある。2階建ての一軒家。白い外観に夕陽が当たっていて眩しい。
「遥香ちゃん!」
家の前に立っている女性が私に向かって手を振ってくる。その女性は青いスキッパーシャツでインナーには黒いTシャツを着ており、下はキュロットスカートという可愛らしい服装をしていた。私は女性のことを知っているので手を振る。
「制服姿を見るのは初めてだね。可愛いなぁ。よく似合ってるよ!」
「私も気に入ってる。奈央ちゃんも今、帰ってきたの?」
「うん、隼人とね」
女性の名前は香川奈央ちゃんで、私の家から3つ離れたところにある家に住む大学1年生。そして、私の兄の坂井隼人《さかいはやと》の幼なじみ。お兄ちゃんとは学部は違うけど、一緒の大学に通っている。ピンク色の長髪で、ツーサイドアップの髪型が可愛い。
私にとって奈央ちゃんは親しい近所のお姉さんで、憧れの人でもある。私よりも背が高くて、スタイルも良くて。何よりも可愛くて。小さい頃は本当のお姉さんみたいに遊んでもらった。
「今帰りってことは、部活とか入ってるの?」
「茶道部に入部したの。今日はちょっと友達とお茶してた」
「茶道部かぁ。遥香ちゃんらしいかも。それで、高校生活は慣れてきた?」
「うん。友達もできたし。それに好きな人も……」
「えええっ! だ、だって……遥香ちゃんの通っている天羽女子って、もちろん女子校だよね?」
奈央ちゃん、物凄く驚いてる。
男子じゃなくて女子を好きになるって変なことなのかなぁ。奈央ちゃんはお兄ちゃんと同じ高校だったからもちろん共学だったし。男子が同じ空間にいるから、同性のことが好きになる女子ってあんまりいないのかも。
「あっ、でも……女子校なら分かるかも。私の友達にも天羽女子に進学した子がいて、その子がしきりに同じクラスにかっこいい女子がいるって騒いでいたよ」
まさに、うちのクラスがそのパターンなんだけど。私は騒いでないけどね。
「遥香ちゃんの好きな人もそんな感じなの?」
「……うん。凄くかっこよくて、優しい人ななんだ。あのね――」
奈央ちゃんには入学式の日に原田さんと出会った出来事をまだ話していなかったから、あの日のことを簡単に話した。
すると、奈央ちゃんは私の手を掴んで、
「絶対に脈あるって」
と、力強く言った。
「だって、初めて会った日にいきなり手を掴んで教室に連れてってくれたんだよ? 絶対に遥香ちゃんのことが気になってるよ」
「そんな夢みたいな話だといいけどね。でも、原田さんって凄く社交的そうだし、私じゃなくてもきっと同じことをしてたと思うけどな……」
杏ちゃんと美咲ちゃんの前ではポジティブに行くって言ったけど、原田さんの人気を考えると途端に自信がなくなっていく。
「それでも、遥香ちゃんを助けたことは事実でしょ? それから全然話せてなくても、他の子よりも絶対に有利だと思うよ。同じクラスなんだし、遥香ちゃんの顔を見れば原田さんもそのことを思い出しているかもしれないし」
「……そう、思うことにする」
正直、奈央ちゃんのような発想を今まで抱いていなかった。私だけ、原田さんと特別な体験をしているから有利なんだって。
凄いな、やっぱり。私も奈央ちゃんみたいな考え方ができるようになりたい。
「そういえば、奈央ちゃんの方はどうなの?」
「どう、って?」
「……お兄ちゃんと。何か進展があった?」
「は、隼人と? 別に進展っていうかそんな……」
夕陽に当たっているから分かりにくいけど、それでも頬が赤くなったことが分かる。そう、奈央ちゃんは昔からお兄ちゃんのことが好きなんだ。でも、今まで告白ができずに幼なじみという関係に留まってしまっている。
「まだ、告白できてないの?」
「……だって、大学には入学したけど、隼人と一緒にいることは変わりないし、ましてや学部が違うから一緒にいられる時間が減っちゃったし……」
「……そっか」
奈央ちゃんは文学部でお兄ちゃんは経済学部だもんね。お兄ちゃんの話だと、幾つかの授業は文学部と合同だから一緒だけど、それでも半分くらいの授業は別々らしい。それじゃ会える時間も自然と減っていくわけだ。
「それに、あいつ……私のこと女性として見てないような気がするの。小さい頃からの付き合いだし。私が告白してもきっと、隼人は幼なじみとしてしか見てくれない気がするんだ。彼の体質がそうさせている可能性もありそうだけど」
「じゃあ、私が代わりに言ってあげようか?」
少しからかうような口調で言ってみると、奈央ちゃんは私の両肩を掴んできた。
「そ、それだけはやめてっ! 好きな気持ちはやっぱり自分の口から伝えたいから。それに、私だって幼なじみの関係で終わりたくないって思ってるよ」
奈央ちゃんも色々と苦労しているんだ。私もできることなら協力したい。
「私は何時でも大歓迎だよ。奈央ちゃんが本当のお姉ちゃんになるの」
「き、気が早いって!」
恥ずかしがる奈央ちゃん、可愛いなぁ。きっと、昼休みの私ってこんな感じだったんだろう。杏ちゃんや美咲ちゃんがからかうのも分かる気がする。
「恋をしている者同士、大変だね。奈央ちゃん」
「……うん、そうだね」
奈央ちゃんははにかんだ。
恋人になることが大変だと分かっていて、何度も自信を失っても……また頑張ろうって思える。恋って物凄い原動力の源なんだね。
「……明日、原田さんと話してみる。そのためにも今夜はちょっと頑張らないと」
「そうなんだ。じゃあ、何か進展があったら教えて。頑張ってね、遥香ちゃん」
「うん、明日の今頃にメールで報告するよ」
「分かった」
「じゃあね、奈央ちゃん」
「うん、頑張ってね」
奈央ちゃんに手を振って、彼女の姿が見えなくなるのを確認してから、私は家の中に入るのであった。
下校するときはいつも、鏡原駅までは3人一緒に帰る。杏ちゃんは電車通学で、鏡原駅から15分ほどの場所にある潮浜市に住んでいる。
美咲ちゃんは同じ地元であるため、途中まで一緒に歩いて帰る。美咲ちゃんの住むお屋敷は家から歩いて5分ぐらいのところ。
美咲ちゃんと別れると、すぐ近くに私の家がある。2階建ての一軒家。白い外観に夕陽が当たっていて眩しい。
「遥香ちゃん!」
家の前に立っている女性が私に向かって手を振ってくる。その女性は青いスキッパーシャツでインナーには黒いTシャツを着ており、下はキュロットスカートという可愛らしい服装をしていた。私は女性のことを知っているので手を振る。
「制服姿を見るのは初めてだね。可愛いなぁ。よく似合ってるよ!」
「私も気に入ってる。奈央ちゃんも今、帰ってきたの?」
「うん、隼人とね」
女性の名前は香川奈央ちゃんで、私の家から3つ離れたところにある家に住む大学1年生。そして、私の兄の坂井隼人《さかいはやと》の幼なじみ。お兄ちゃんとは学部は違うけど、一緒の大学に通っている。ピンク色の長髪で、ツーサイドアップの髪型が可愛い。
私にとって奈央ちゃんは親しい近所のお姉さんで、憧れの人でもある。私よりも背が高くて、スタイルも良くて。何よりも可愛くて。小さい頃は本当のお姉さんみたいに遊んでもらった。
「今帰りってことは、部活とか入ってるの?」
「茶道部に入部したの。今日はちょっと友達とお茶してた」
「茶道部かぁ。遥香ちゃんらしいかも。それで、高校生活は慣れてきた?」
「うん。友達もできたし。それに好きな人も……」
「えええっ! だ、だって……遥香ちゃんの通っている天羽女子って、もちろん女子校だよね?」
奈央ちゃん、物凄く驚いてる。
男子じゃなくて女子を好きになるって変なことなのかなぁ。奈央ちゃんはお兄ちゃんと同じ高校だったからもちろん共学だったし。男子が同じ空間にいるから、同性のことが好きになる女子ってあんまりいないのかも。
「あっ、でも……女子校なら分かるかも。私の友達にも天羽女子に進学した子がいて、その子がしきりに同じクラスにかっこいい女子がいるって騒いでいたよ」
まさに、うちのクラスがそのパターンなんだけど。私は騒いでないけどね。
「遥香ちゃんの好きな人もそんな感じなの?」
「……うん。凄くかっこよくて、優しい人ななんだ。あのね――」
奈央ちゃんには入学式の日に原田さんと出会った出来事をまだ話していなかったから、あの日のことを簡単に話した。
すると、奈央ちゃんは私の手を掴んで、
「絶対に脈あるって」
と、力強く言った。
「だって、初めて会った日にいきなり手を掴んで教室に連れてってくれたんだよ? 絶対に遥香ちゃんのことが気になってるよ」
「そんな夢みたいな話だといいけどね。でも、原田さんって凄く社交的そうだし、私じゃなくてもきっと同じことをしてたと思うけどな……」
杏ちゃんと美咲ちゃんの前ではポジティブに行くって言ったけど、原田さんの人気を考えると途端に自信がなくなっていく。
「それでも、遥香ちゃんを助けたことは事実でしょ? それから全然話せてなくても、他の子よりも絶対に有利だと思うよ。同じクラスなんだし、遥香ちゃんの顔を見れば原田さんもそのことを思い出しているかもしれないし」
「……そう、思うことにする」
正直、奈央ちゃんのような発想を今まで抱いていなかった。私だけ、原田さんと特別な体験をしているから有利なんだって。
凄いな、やっぱり。私も奈央ちゃんみたいな考え方ができるようになりたい。
「そういえば、奈央ちゃんの方はどうなの?」
「どう、って?」
「……お兄ちゃんと。何か進展があった?」
「は、隼人と? 別に進展っていうかそんな……」
夕陽に当たっているから分かりにくいけど、それでも頬が赤くなったことが分かる。そう、奈央ちゃんは昔からお兄ちゃんのことが好きなんだ。でも、今まで告白ができずに幼なじみという関係に留まってしまっている。
「まだ、告白できてないの?」
「……だって、大学には入学したけど、隼人と一緒にいることは変わりないし、ましてや学部が違うから一緒にいられる時間が減っちゃったし……」
「……そっか」
奈央ちゃんは文学部でお兄ちゃんは経済学部だもんね。お兄ちゃんの話だと、幾つかの授業は文学部と合同だから一緒だけど、それでも半分くらいの授業は別々らしい。それじゃ会える時間も自然と減っていくわけだ。
「それに、あいつ……私のこと女性として見てないような気がするの。小さい頃からの付き合いだし。私が告白してもきっと、隼人は幼なじみとしてしか見てくれない気がするんだ。彼の体質がそうさせている可能性もありそうだけど」
「じゃあ、私が代わりに言ってあげようか?」
少しからかうような口調で言ってみると、奈央ちゃんは私の両肩を掴んできた。
「そ、それだけはやめてっ! 好きな気持ちはやっぱり自分の口から伝えたいから。それに、私だって幼なじみの関係で終わりたくないって思ってるよ」
奈央ちゃんも色々と苦労しているんだ。私もできることなら協力したい。
「私は何時でも大歓迎だよ。奈央ちゃんが本当のお姉ちゃんになるの」
「き、気が早いって!」
恥ずかしがる奈央ちゃん、可愛いなぁ。きっと、昼休みの私ってこんな感じだったんだろう。杏ちゃんや美咲ちゃんがからかうのも分かる気がする。
「恋をしている者同士、大変だね。奈央ちゃん」
「……うん、そうだね」
奈央ちゃんははにかんだ。
恋人になることが大変だと分かっていて、何度も自信を失っても……また頑張ろうって思える。恋って物凄い原動力の源なんだね。
「……明日、原田さんと話してみる。そのためにも今夜はちょっと頑張らないと」
「そうなんだ。じゃあ、何か進展があったら教えて。頑張ってね、遥香ちゃん」
「うん、明日の今頃にメールで報告するよ」
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「じゃあね、奈央ちゃん」
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奈央ちゃんに手を振って、彼女の姿が見えなくなるのを確認してから、私は家の中に入るのであった。
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