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Short Fragrance 3-ヨイノカオリ-
前編『絢の場合』
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Short Fragrance 3-ヨイノカオリ-
7月20日、土曜日。
今日から約1ヶ月半の夏休みが始まった。絢ちゃんと一緒に楽しいことをたくさんしたいと思っているけれど、インターハイが開催されるので、7月中は絢ちゃんと一緒にいられる時間があまりない。陸上部は夏休み初日から練習があった。
ただ、そんな理由から絢ちゃんの提案で、今夜は私の家に泊まることに。これまでも絢ちゃんが泊まりに来たことはあったけれど、お兄ちゃん以外に絢ちゃんと付き合っていることを話していなかったので、自分の部屋に入らないと恋人らしいことができなかった。
けれど、今は違う。お父さんにも交際を許してもらって、絢ちゃんと一緒にいるときはどこでも恋人らしい振る舞いができている。それがとても嬉しかった。
絢ちゃんと一緒に夕ご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、今は私の部屋で一緒の時間を過ごしている。
――コンコン。
ノックの音が聞こえた。
「はーい」
部屋の扉を開けると、そこには何やら綺麗に包装されている箱を持ったお兄ちゃんが立っていた。
「母さんから。近所の人からチョコを貰ったんだって。粒の数もあまりないらしいから、絢さんと2人で食べちゃってって」
「……お兄ちゃんはいいの?」
スイーツへの欲が半端じゃないから。
「俺も同じもんをもらっているから気にするな。まあ、奈央と期末試験の勉強をしながら食べることにするよ」
大学の期末試験はこれからだもんね。
「そっか。ありがとう」
お兄ちゃんからチョコレートの入った箱を受け取る。そして、お兄ちゃんは自分の部屋へと入っていった。
「お母さんがチョコレートを貰ったんだって。あまり量はないみたいだから、2人で全部食べちゃおうよ」
「そうだね。暑いし早く食べた方がいいね」
「うん。じゃあ、さっそく食べようか」
包装紙を丁寧に開けて、チョコレートの入った箱のふたも開ける。すると、そこには10粒ほどのチョコレートが入っていた。見た感じ、10粒それぞれ違うものみたい。どれも美味しそう。
「どれも美味しそうだね。遥香はこれが食べたいとかある?」
「このブランドのチョコは初めてだからどれでもいいかな」
「そっか。私も同じ」
「じゃあ、適当に食べよっか。10粒あるから5粒ずつってことで」
「うん、そうしよう」
10粒の中で1つだけ白いものがあったので、それを食べてみる。結構甘いので、ホワイトチョコレートかな。
「美味しい。絢ちゃんの方はどう?」
「……ふぇ?」
「……えっ?」
何だか聞き慣れない声が聞こえたんだけれど。今の声って絢ちゃん、だよね? いや、絢ちゃんしかあり得ないよね?
絢ちゃんのことを見てみると、そこには頬を赤くしてぼうっとしている絢ちゃんがいた。
「絢ちゃんどうかした? 練習疲れでお風呂にも入ったから眠い?」
「……ううん、眠くない。ただ、ふわふわして気持ちいい、なって」
そう言うと、絢ちゃんは四つん這いの状態で私の所までやってきて、
「ねぇ、はるかぁ。もっと気持ち良くさせて」
普段からは考えられない甘えた声で私に囁いてくる。そして、私にせがむようにキスをする。その瞬間、チョコレートの甘い匂いの中に慣れない匂いが混ざっていた。
「絢ちゃん、もしかしてブランデー入りのチョコレートを食べたんじゃない?」
「ぶらんでー?」
この様子だと絢ちゃんは明らかに酔っている。
「ねぇねぇ、はるかぁ。気持ちいいことしようよ。私、今日だって遥香と気持ちいいことをしたいから練習頑張ったんだよ。私にご褒美ちょうだい」
「ご、ご褒美って……んっ」
私がこれから答えようとしているのに、絢ちゃんはまたキスをしてくる。しかも、今度は嫌らしい音を立てながら舌を絡ませて。絢ちゃんから甘い唾液が入り込んできて、この甘い感覚に酔ってしまいそう。
「分かった。分かったからちょっと落ち着いて! ね?」
「そう言って、私を寝かせる魂胆なんでしょ」
「そうじゃないって! ちゃんと……きゃあっ!」
私は絢ちゃんに押し倒されて、3度、キス。
口の中で絡ませてきた絢ちゃんの舌は、私の顔、首、そして胸元まで滑らせる。舌の柔らかさと生ぬるさが絶妙で、私の中にある厭らしい気持ちが引き出していく。
「絢ちゃんのえっち……」
「そう言う遥香も気持ち良さそうな顔をしてるよ。本当にえっち。……暑いから脱いじゃおうっか」
そう言うと、絢ちゃんは自分の着ていた寝間着を脱いで、素肌を私に見せる。本当に綺麗な体をしている。そして、絢ちゃんは私の着ていた寝間着も脱がせていく。
「遥香、今夜は寝かせないよ」
私達は抱きしめ合って、キスをする。
初めてじゃないけれど、やっぱりこういうことをするときは緊張して。今夜はどうなるんだろうって思っていたら、私の耳元で絢ちゃんの呼吸音が聞こえた。
「……絢ちゃん?」
体を起こして絢ちゃんのことを見ていると、絢ちゃんはぐっすりと眠っていた。部活の疲れの上にお酒の力で一気に眠っちゃったのか。
「まったく、寝かさないって言ったのは絢ちゃんの方なのに」
自分で勝手に寝ちゃって。絢ちゃんは気持ちよく眠っているかもしれないけど、中途半端な気持ちよさで取り残された私のことをどうしてくれるの?
「……後でお仕置きかな」
絢ちゃんが私と気持ちいいことをしたかったように、私だって絢ちゃんと気持ちいいことをしたいって思っているんだよ? だって、今月中は一緒にいられる時間が少ないんだから。
7月20日、土曜日。
今日から約1ヶ月半の夏休みが始まった。絢ちゃんと一緒に楽しいことをたくさんしたいと思っているけれど、インターハイが開催されるので、7月中は絢ちゃんと一緒にいられる時間があまりない。陸上部は夏休み初日から練習があった。
ただ、そんな理由から絢ちゃんの提案で、今夜は私の家に泊まることに。これまでも絢ちゃんが泊まりに来たことはあったけれど、お兄ちゃん以外に絢ちゃんと付き合っていることを話していなかったので、自分の部屋に入らないと恋人らしいことができなかった。
けれど、今は違う。お父さんにも交際を許してもらって、絢ちゃんと一緒にいるときはどこでも恋人らしい振る舞いができている。それがとても嬉しかった。
絢ちゃんと一緒に夕ご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、今は私の部屋で一緒の時間を過ごしている。
――コンコン。
ノックの音が聞こえた。
「はーい」
部屋の扉を開けると、そこには何やら綺麗に包装されている箱を持ったお兄ちゃんが立っていた。
「母さんから。近所の人からチョコを貰ったんだって。粒の数もあまりないらしいから、絢さんと2人で食べちゃってって」
「……お兄ちゃんはいいの?」
スイーツへの欲が半端じゃないから。
「俺も同じもんをもらっているから気にするな。まあ、奈央と期末試験の勉強をしながら食べることにするよ」
大学の期末試験はこれからだもんね。
「そっか。ありがとう」
お兄ちゃんからチョコレートの入った箱を受け取る。そして、お兄ちゃんは自分の部屋へと入っていった。
「お母さんがチョコレートを貰ったんだって。あまり量はないみたいだから、2人で全部食べちゃおうよ」
「そうだね。暑いし早く食べた方がいいね」
「うん。じゃあ、さっそく食べようか」
包装紙を丁寧に開けて、チョコレートの入った箱のふたも開ける。すると、そこには10粒ほどのチョコレートが入っていた。見た感じ、10粒それぞれ違うものみたい。どれも美味しそう。
「どれも美味しそうだね。遥香はこれが食べたいとかある?」
「このブランドのチョコは初めてだからどれでもいいかな」
「そっか。私も同じ」
「じゃあ、適当に食べよっか。10粒あるから5粒ずつってことで」
「うん、そうしよう」
10粒の中で1つだけ白いものがあったので、それを食べてみる。結構甘いので、ホワイトチョコレートかな。
「美味しい。絢ちゃんの方はどう?」
「……ふぇ?」
「……えっ?」
何だか聞き慣れない声が聞こえたんだけれど。今の声って絢ちゃん、だよね? いや、絢ちゃんしかあり得ないよね?
絢ちゃんのことを見てみると、そこには頬を赤くしてぼうっとしている絢ちゃんがいた。
「絢ちゃんどうかした? 練習疲れでお風呂にも入ったから眠い?」
「……ううん、眠くない。ただ、ふわふわして気持ちいい、なって」
そう言うと、絢ちゃんは四つん這いの状態で私の所までやってきて、
「ねぇ、はるかぁ。もっと気持ち良くさせて」
普段からは考えられない甘えた声で私に囁いてくる。そして、私にせがむようにキスをする。その瞬間、チョコレートの甘い匂いの中に慣れない匂いが混ざっていた。
「絢ちゃん、もしかしてブランデー入りのチョコレートを食べたんじゃない?」
「ぶらんでー?」
この様子だと絢ちゃんは明らかに酔っている。
「ねぇねぇ、はるかぁ。気持ちいいことしようよ。私、今日だって遥香と気持ちいいことをしたいから練習頑張ったんだよ。私にご褒美ちょうだい」
「ご、ご褒美って……んっ」
私がこれから答えようとしているのに、絢ちゃんはまたキスをしてくる。しかも、今度は嫌らしい音を立てながら舌を絡ませて。絢ちゃんから甘い唾液が入り込んできて、この甘い感覚に酔ってしまいそう。
「分かった。分かったからちょっと落ち着いて! ね?」
「そう言って、私を寝かせる魂胆なんでしょ」
「そうじゃないって! ちゃんと……きゃあっ!」
私は絢ちゃんに押し倒されて、3度、キス。
口の中で絡ませてきた絢ちゃんの舌は、私の顔、首、そして胸元まで滑らせる。舌の柔らかさと生ぬるさが絶妙で、私の中にある厭らしい気持ちが引き出していく。
「絢ちゃんのえっち……」
「そう言う遥香も気持ち良さそうな顔をしてるよ。本当にえっち。……暑いから脱いじゃおうっか」
そう言うと、絢ちゃんは自分の着ていた寝間着を脱いで、素肌を私に見せる。本当に綺麗な体をしている。そして、絢ちゃんは私の着ていた寝間着も脱がせていく。
「遥香、今夜は寝かせないよ」
私達は抱きしめ合って、キスをする。
初めてじゃないけれど、やっぱりこういうことをするときは緊張して。今夜はどうなるんだろうって思っていたら、私の耳元で絢ちゃんの呼吸音が聞こえた。
「……絢ちゃん?」
体を起こして絢ちゃんのことを見ていると、絢ちゃんはぐっすりと眠っていた。部活の疲れの上にお酒の力で一気に眠っちゃったのか。
「まったく、寝かさないって言ったのは絢ちゃんの方なのに」
自分で勝手に寝ちゃって。絢ちゃんは気持ちよく眠っているかもしれないけど、中途半端な気持ちよさで取り残された私のことをどうしてくれるの?
「……後でお仕置きかな」
絢ちゃんが私と気持ちいいことをしたかったように、私だって絢ちゃんと気持ちいいことをしたいって思っているんだよ? だって、今月中は一緒にいられる時間が少ないんだから。
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