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Fragrance 7-ナツノカオリ-
第11話『修羅場注意報』
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夕飯が終わって、部屋で食休みをする中で遥香へLINEで、
『遥香、電話をしたいんだけれど大丈夫かな』
そんなメッセージを送る。
すると、すぐに既読と表示され、
『いいよ。じゃあ、こっちからかけるね』
遥香からのそんなメッセージが表示される。良かった、電話で話しても大丈夫な時間のようだ。そして、
――プルルッ。
すぐに遥香から電話が掛かってきた。
『もしもし、絢ちゃん』
「もしもし、遥香」
『合宿の方はどう? 怪我とかしてない?』
「大丈夫だよ。特に具合も悪くなっていないし」
まあ、月岡さんの半ば脅迫のような言葉の影響もあって、今日の午後は調子が悪かったけれども。
『真紀ちゃんとは上手くやってる?』
「練習自体は上手くやってるよ。彼女、とっても足が速くて、インターハイを前にとてもいい刺激になってる。ただ、ちょっと……」
『何かあったの?』
「……ああ。恩田さんと一緒に夕ご飯を食べているときに、遥香や双子のお姉さんの沙良さんとの昔話をしていたんだ」
『小学生時代に沙良ちゃんと3人で私の家でよく遊んでた、って話かな』
「まあ、そんな感じだね」
遥香からもすんなりと小学校の時の話が出るってことは、恩田さんは遥香やお姉さんの沙良さんと一緒に本当によく遊んでいたんだな。
「恩田さんの方は3年くらい遥香に会っていないから、今の遥香はどんな感じなのかを訊かれて、私の知っている遥香のことを話したんだよ」
『そっか。あと、変なことを言わなかったよね。ありもしないこととか』
「嘘なんて言わないよ。ただ、恩田さんは小学生の時の遥香のことをおっちょこちょいとか言っていたね」
『えっ! そんなこと言ってたの!? おっちょこちょいじゃなかったよ! 覚えていることと言えば、階段でつまずいてジュースをこぼすとか、何もないところで転ぶとかそのくらいのことしかなかったもん!』
「そ、そうなんだ……」
転ぶことに関しては結構あったみたいだ。遥香の忘れているおっちょこちょいエピソードがまだまだあるかもしれない。
『まったく、今はしっかりしているんだからね。次に話すときはそう伝えておいて』
「分かった。けれど、ちょっと今は話しづらいかも」
『えっ? どういうこと?』
「ああ。今の遥香をどうして知っているのかを訊かれて、遥香と付き合っていることを伝えたんだよ。そうしたら、それまで楽しそうだった雰囲気が急に消えちゃって。初めて見る表情だったよ」
『そっか……』
「遥香と付き合っていることを話した瞬間に様子が変わったってことは、考えられるのはやっぱり遥香のことが好きなのかな、って……」
『……それが一番あり得そうな感じだね。私のことが好きなのに、絢ちゃんに私と付き合っている事実を言われちゃってショックを受けたって流れかな』
そのショックをできるだけ表に出さないように、用事があると言って早々と食堂を後にしてしまった……という感じか。
『でも、仮に真紀ちゃんが私のことが好きだとしたら、こっちも色々と複雑な状況になってきそうだね……』
「どういうこと?」
『……実は沙良ちゃんが真紀ちゃんのことが好きみたいで。今日の午後、私の家に来たときにそのことで相談されたんだよ』
「そうだったんだ……」
その事実を伝えられたことで一番に思い浮んだのは月岡さんの恐ろしい笑み。もし、月岡さんがこのことを知ったらどうなるか。
沙良さんは恩田さんのことが好きで、そんな恩田さんが好きな相手は沙良さんが恋愛相談をした遥香だった。仮にそうなったら複雑な状況になりかねない。
『沙良ちゃんが好きなこと、真紀ちゃんにはまだ伝えないで。沙良ちゃん、真紀ちゃんのインターハイが終わった後に気持ちを伝えたいって言っているし、自分の想いを伝えたことで真紀ちゃんがインターハイに集中できなくなると嫌だから、って』
「分かった。恩田さんに言わないようにする」
あと、月岡さんにも言わないでおこう。彼女にこのことが知られたら、沙良さんに何をするか分からないし、恩田さんの気持ちを更に混乱させてしまうかもしれないから。
『今は真紀ちゃんとはどういう感じ?』
「食堂から立ち去ってからは一度も会ってない。だから、遥香にどうしようかって相談しようと思ったんだ」
『そうだったんだね』
「でも、同じ短距離走に出場する関係で、合宿はいつも一緒に練習してるから、明日の練習には会う」
『そっか。とりあえず、真紀ちゃんの方から話してくるまでは、私のことを話さない方がいいね。私もスマホで真紀ちゃんと連絡することはやめておく』
「分かった。そうするよ。ありがとう、遥香」
『ううん、こっちこそ教えてくれてありがとう。明日からも練習頑張ってね』
「うん、頑張るよ。また、何か分かったら連絡する」
『……うん。あのね、絢ちゃん。私の恋人は……絢ちゃんしかいないから。それはこの先も変わらない。だから、安心していいからね』
「……ああ、分かってる。私の恋人も遥香しかいないから」
遥香の声が聴けるだけでも安心できているよ。けれど、やっぱり……遥香に会いたいな。2日間も会っていないのはさすがに辛くなってきた。遥香ロスというやつか。
『もう、絢ちゃんったら。そんなことを言われたら絢ちゃんに会いたくなっちゃうよ』
「私だって遥香に会いたいよ」
『じゃあ、絢ちゃん……ちゅっ』
すると、遥香とキスをするときによく聞こえる音がスマホの向こうから聞こえる。まったく、遥香って奴は。
「……ちゅっ」
私以外に誰もいないけど、キスの音を出すのはなかなか恥ずかしいものがある。
『……ふふっ、ちょっと絢ちゃん成分を味わえた気がする。じゃあ、明日からの練習も頑張ってね』
「うん、じゃあ、またね」
『うん』
そして、遥香の方から通話を切った。
とりあえず、遥香と現在の状況の共有はできた。
沙良さんは恩田さんのことが好きなのか。恩田さんが本当に遥香のことが好きだったらややこしいことになりそうだ。まずは恩田さんの様子を見守ることにしよう。あと、月岡さんに感付かれないように気をつけよう。
『遥香、電話をしたいんだけれど大丈夫かな』
そんなメッセージを送る。
すると、すぐに既読と表示され、
『いいよ。じゃあ、こっちからかけるね』
遥香からのそんなメッセージが表示される。良かった、電話で話しても大丈夫な時間のようだ。そして、
――プルルッ。
すぐに遥香から電話が掛かってきた。
『もしもし、絢ちゃん』
「もしもし、遥香」
『合宿の方はどう? 怪我とかしてない?』
「大丈夫だよ。特に具合も悪くなっていないし」
まあ、月岡さんの半ば脅迫のような言葉の影響もあって、今日の午後は調子が悪かったけれども。
『真紀ちゃんとは上手くやってる?』
「練習自体は上手くやってるよ。彼女、とっても足が速くて、インターハイを前にとてもいい刺激になってる。ただ、ちょっと……」
『何かあったの?』
「……ああ。恩田さんと一緒に夕ご飯を食べているときに、遥香や双子のお姉さんの沙良さんとの昔話をしていたんだ」
『小学生時代に沙良ちゃんと3人で私の家でよく遊んでた、って話かな』
「まあ、そんな感じだね」
遥香からもすんなりと小学校の時の話が出るってことは、恩田さんは遥香やお姉さんの沙良さんと一緒に本当によく遊んでいたんだな。
「恩田さんの方は3年くらい遥香に会っていないから、今の遥香はどんな感じなのかを訊かれて、私の知っている遥香のことを話したんだよ」
『そっか。あと、変なことを言わなかったよね。ありもしないこととか』
「嘘なんて言わないよ。ただ、恩田さんは小学生の時の遥香のことをおっちょこちょいとか言っていたね」
『えっ! そんなこと言ってたの!? おっちょこちょいじゃなかったよ! 覚えていることと言えば、階段でつまずいてジュースをこぼすとか、何もないところで転ぶとかそのくらいのことしかなかったもん!』
「そ、そうなんだ……」
転ぶことに関しては結構あったみたいだ。遥香の忘れているおっちょこちょいエピソードがまだまだあるかもしれない。
『まったく、今はしっかりしているんだからね。次に話すときはそう伝えておいて』
「分かった。けれど、ちょっと今は話しづらいかも」
『えっ? どういうこと?』
「ああ。今の遥香をどうして知っているのかを訊かれて、遥香と付き合っていることを伝えたんだよ。そうしたら、それまで楽しそうだった雰囲気が急に消えちゃって。初めて見る表情だったよ」
『そっか……』
「遥香と付き合っていることを話した瞬間に様子が変わったってことは、考えられるのはやっぱり遥香のことが好きなのかな、って……」
『……それが一番あり得そうな感じだね。私のことが好きなのに、絢ちゃんに私と付き合っている事実を言われちゃってショックを受けたって流れかな』
そのショックをできるだけ表に出さないように、用事があると言って早々と食堂を後にしてしまった……という感じか。
『でも、仮に真紀ちゃんが私のことが好きだとしたら、こっちも色々と複雑な状況になってきそうだね……』
「どういうこと?」
『……実は沙良ちゃんが真紀ちゃんのことが好きみたいで。今日の午後、私の家に来たときにそのことで相談されたんだよ』
「そうだったんだ……」
その事実を伝えられたことで一番に思い浮んだのは月岡さんの恐ろしい笑み。もし、月岡さんがこのことを知ったらどうなるか。
沙良さんは恩田さんのことが好きで、そんな恩田さんが好きな相手は沙良さんが恋愛相談をした遥香だった。仮にそうなったら複雑な状況になりかねない。
『沙良ちゃんが好きなこと、真紀ちゃんにはまだ伝えないで。沙良ちゃん、真紀ちゃんのインターハイが終わった後に気持ちを伝えたいって言っているし、自分の想いを伝えたことで真紀ちゃんがインターハイに集中できなくなると嫌だから、って』
「分かった。恩田さんに言わないようにする」
あと、月岡さんにも言わないでおこう。彼女にこのことが知られたら、沙良さんに何をするか分からないし、恩田さんの気持ちを更に混乱させてしまうかもしれないから。
『今は真紀ちゃんとはどういう感じ?』
「食堂から立ち去ってからは一度も会ってない。だから、遥香にどうしようかって相談しようと思ったんだ」
『そうだったんだね』
「でも、同じ短距離走に出場する関係で、合宿はいつも一緒に練習してるから、明日の練習には会う」
『そっか。とりあえず、真紀ちゃんの方から話してくるまでは、私のことを話さない方がいいね。私もスマホで真紀ちゃんと連絡することはやめておく』
「分かった。そうするよ。ありがとう、遥香」
『ううん、こっちこそ教えてくれてありがとう。明日からも練習頑張ってね』
「うん、頑張るよ。また、何か分かったら連絡する」
『……うん。あのね、絢ちゃん。私の恋人は……絢ちゃんしかいないから。それはこの先も変わらない。だから、安心していいからね』
「……ああ、分かってる。私の恋人も遥香しかいないから」
遥香の声が聴けるだけでも安心できているよ。けれど、やっぱり……遥香に会いたいな。2日間も会っていないのはさすがに辛くなってきた。遥香ロスというやつか。
『もう、絢ちゃんったら。そんなことを言われたら絢ちゃんに会いたくなっちゃうよ』
「私だって遥香に会いたいよ」
『じゃあ、絢ちゃん……ちゅっ』
すると、遥香とキスをするときによく聞こえる音がスマホの向こうから聞こえる。まったく、遥香って奴は。
「……ちゅっ」
私以外に誰もいないけど、キスの音を出すのはなかなか恥ずかしいものがある。
『……ふふっ、ちょっと絢ちゃん成分を味わえた気がする。じゃあ、明日からの練習も頑張ってね』
「うん、じゃあ、またね」
『うん』
そして、遥香の方から通話を切った。
とりあえず、遥香と現在の状況の共有はできた。
沙良さんは恩田さんのことが好きなのか。恩田さんが本当に遥香のことが好きだったらややこしいことになりそうだ。まずは恩田さんの様子を見守ることにしよう。あと、月岡さんに感付かれないように気をつけよう。
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