48 / 62
2020/06/26
しおりを挟む
2020/06/26
「お酒って美味しいの?」
忍び足の背後から掛けられた声に硬直を余儀なくされる。寝酒を漁りに寝室を抜け出せば見咎められる可能性は考慮していたものの矢張り幾許かの気拙さを覚えつつ振り返る。
「まぁ、なんだ、嗜みだな」
酒精の美味を知ってから此方肝の臓に年中無休を強いる暴飲を其れと呼んで良いのかは甚だ疑問であるが。
「手指に震えが出る程ではねぇさな」
ショットグラスに注いだ蒸留酒を片手にすれ違いざま彼の髪を撫ぜご機嫌を取ってみる。御不満遣る方無いと言った風に顔を背ける。残念、振られたか。
気に入りの座椅子に腰掛け紙巻に火を着ける。使うのは心覚え深い錆の浮いたZippo、結局手放さず手元に留まった。
「『生き急ぐ』ってのを此処まで行動で体現しなくても良いと思いますけど」
「時勢に逆行していると言う観点でだけは同意してやっても良い」
頃年喫煙者には肩身の狭い御触書の多い所は全く悩みの種だった。
「不機嫌の理由は聞いときてぇな」
未だ頬を膨らまさんばかりの勢いで不満気を放つ彼に問い掛ける。酒気の為か口角の引き上がりが厭らしく作られている自覚が有った。
「肺でも肝でも腎でも然程に違いが有るかねぇ」
『同じにしたい』と思っても意図的に腎臓を壊す手に凡そ見当は付かないのだから他の手で納得しろよと言った心算だった。
「そんな話じゃない」
見当違いにご不興の強まり。抑彼の思う所など的確に読み切れた経験に乏しい私に核心など突きようもない。
「…終わりは綺麗で在って欲しいよ」
やや微睡む程の数舜の後に放たれた言葉は想定していた彼是よりも数段いじらしい其れだった。
「チアノーゼの浮いた男はお嫌いですか」
満足げに鼻を鳴らす心算がせせら嗤う様な響きで息が抜けて行った。
「茶化すなよ」
声色の真意を量りかね彼の表情を伺えば成程、不興というよりは照れ隠しの風情が強いらしかった。
「俺が素直さをどの程度好ましく思うかはもう少し説いておいても良かったかも知れんな」
「性分だよ、君の好みなんて知ったことか」
「お酒って美味しいの?」
忍び足の背後から掛けられた声に硬直を余儀なくされる。寝酒を漁りに寝室を抜け出せば見咎められる可能性は考慮していたものの矢張り幾許かの気拙さを覚えつつ振り返る。
「まぁ、なんだ、嗜みだな」
酒精の美味を知ってから此方肝の臓に年中無休を強いる暴飲を其れと呼んで良いのかは甚だ疑問であるが。
「手指に震えが出る程ではねぇさな」
ショットグラスに注いだ蒸留酒を片手にすれ違いざま彼の髪を撫ぜご機嫌を取ってみる。御不満遣る方無いと言った風に顔を背ける。残念、振られたか。
気に入りの座椅子に腰掛け紙巻に火を着ける。使うのは心覚え深い錆の浮いたZippo、結局手放さず手元に留まった。
「『生き急ぐ』ってのを此処まで行動で体現しなくても良いと思いますけど」
「時勢に逆行していると言う観点でだけは同意してやっても良い」
頃年喫煙者には肩身の狭い御触書の多い所は全く悩みの種だった。
「不機嫌の理由は聞いときてぇな」
未だ頬を膨らまさんばかりの勢いで不満気を放つ彼に問い掛ける。酒気の為か口角の引き上がりが厭らしく作られている自覚が有った。
「肺でも肝でも腎でも然程に違いが有るかねぇ」
『同じにしたい』と思っても意図的に腎臓を壊す手に凡そ見当は付かないのだから他の手で納得しろよと言った心算だった。
「そんな話じゃない」
見当違いにご不興の強まり。抑彼の思う所など的確に読み切れた経験に乏しい私に核心など突きようもない。
「…終わりは綺麗で在って欲しいよ」
やや微睡む程の数舜の後に放たれた言葉は想定していた彼是よりも数段いじらしい其れだった。
「チアノーゼの浮いた男はお嫌いですか」
満足げに鼻を鳴らす心算がせせら嗤う様な響きで息が抜けて行った。
「茶化すなよ」
声色の真意を量りかね彼の表情を伺えば成程、不興というよりは照れ隠しの風情が強いらしかった。
「俺が素直さをどの程度好ましく思うかはもう少し説いておいても良かったかも知れんな」
「性分だよ、君の好みなんて知ったことか」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
分かりやすい日月神示のエッセイ 🔰女性向け
蔵屋
エッセイ・ノンフィクション
私は日月神示の内容を今まで学問として研究してもう25年になります。
このエッセイは私の25年間の集大成です。
宇宙のこと、118種類の元素のこと、神さまのこと、宗教のこと、政治、経済、社会の仕組みなど社会に役立たつことも含めていますので、皆さまのお役に立つものと確信しています。
どうか、最後まで読んで頂きたいと思います。
お読み頂く前に次のことを皆様に申し上げておきます。
このエッセイは国家を始め特定の人物や団体、機関を否定して、批判するものではありません。
一つ目は「私は一切の対立や争いを好みません。」
2つ目は、「すべての教えに対する評価や取捨選択は読者の自由とします。」
3つ目は、「この教えの実践や実行に於いては、周囲の事情を無視した独占的排他的言動を避けていただき、常識に照らし合わせて問題を起こさないよう慎重にしていただきたいと思います。
この日月神示は最高神である国常立尊という神様が三千世界の大洗濯をする為に霊界で閻魔大王として閉じ込められていましたが、この世の中が余りにも乱れていて、悪の蔓延る暗黒の世の中になりつつあるため、私たちの住む現界に現れたのです。この日月神示に書かれていることは、真実であり、これから起こる三千世界の大洗濯を事前に知らせているのです。
何故?
それは私たち人類に改心をさせるためです。
それでは『分かりやすい日月神示のエッセイ 🔰女性向け』を最後まで、お読み下さい。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年(2025年)元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる