悪役令嬢の子

metta

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本編

06 晩餐会

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 関係各所に顔を出したりしているうちに、やって来た晩餐会当日。
 おぉぉぉ……! やっぱり二人とも様になるなぁ……!! 
 俺は自分はさておき、祖父とキースの堂々とした着こなしに感動していた。
 キースは長めの黒髪を青紫の髪飾りでまとめ、淡いグレーを基調とした燕尾服風の衣装を身につけている。襟元は青紫の生地に黒で刺繍がされていて、釦は黒瑪瑙で統一している。キースは身長も高くて、意外と逞しいからこういう丈が長いの似合うんだよな。格好いい。祖父は亡き祖母の瞳の色である紺碧を基調とした、銀糸の刺繍が入った衣装を身に着けている。今の流行とは少し外れた古典的で豪奢な意匠だが、古臭く見せず、すっきりと着こなしている。そして身長は俺とさほど変わらないのに体に厚みがあり、羨ましいことこの上ない。
 俺はというと背も低くはないし多少は筋肉もあるが、如何せん誤魔化しようがないくらいに線が細い。身体も薄いので、黒と銀を基調とした体格を誤魔化すチュニック丈のジャケットがメインのユニセックスなデザインの衣装を纏っている。グレーの宝石が釦に使われているが、こんなのあるんだなぁと感心した。キースの目そのまんまである。取り敢えず少しでも男っぽく見せたいと思いオールバックにしてみたのだが、果たして効果はあるのだろうか。
 しかしキース、俺はいいけどお前は勘違いされてしまって本当にいいのか。今回俺はキースの色を、キースは俺の色を身に着けているが、こういうのって普通は夫婦や婚約者同士がすることだ。
 キースの案を祖父が承諾した形だが、そんなに身を削らなくてもいいと思うのだが。
「もっかい聞くけど、お前……本当に大丈夫なのか?」
「逆にお聞きしますが、ウィス様こそかまわないのですか? まあ、今さらですけれど」
「俺は結婚するつもりはないから問題ないけどさ」
「婚約者と言ったら嘘になるが、纏う色については別に規則ルールはない。婚約したのかなどと不躾に尋ねる者は普通いないから、勝手に婚約と勘違いして、お互い変な虫が減れば楽だろう」
「それはそうですが……」
 城に到着し、揃って公の場にこうして出るのは久しぶりだからか、晩餐会の護衛を受け持つ衛兵が祖父と俺達の到着を伝えると、小さなどよめきが起こり、囁き声が広がっていく。
「キース、俺がこういう会に出るのっていつ振りかな?」
「そうですね……五年振り位では」
 そんなになるのか……。ああ、それだと丁度、正式な領主代行をし始めてからは一回も出てないことになるのか。
「顔と名前が一致するか自信ないんだけど……」
「それとなくお伝えしますから」
 キースに顔を寄せてこそこそ話をしていると、一部の人間がこちらを凝視している。何か不作法だったかな。そう思った俺が誤魔化すように微笑みを浮かべれば、会場のあちらこちらから、溜息が幾つも聞こえて来た。隣からも溜息が漏れている。
「……わざとですか?」
「え、何が?」
「……いえ、いいです」
 祖父はくつくつと笑っているが……何か可笑しなことしたか? 首を傾げていると、晩餐会の開始時刻となったようだ。楽団の奏でる音色と共に、国王陛下が姿を表す。
 ルストナーク国王――アルフレッド・ルストナーク。
 精悍な顔付きをした金髪碧眼の偉丈夫だ。勇者と共に魔王を倒し、世界に平和をもたらした英雄王。そして国王陛下にエスコートされて来たのは、ロイヤルブルーに金糸の花をあしらったドレスに身を包んだ王妃殿下、精霊に愛されし勇者ローズ・ルストナークだ。五人の子を持つとは思えないような可憐な見た目に反して、魔王が倒された今はこの世で最強の存在でもある。ゲームだと最後の方には一人で国を陥とせるとか言われてれていた。
 ……こうして見ると、何だかんだ言ってリリアーナのことがなければ良い王様と王妃様だと思うんだよな。統治もバランスがいいし、王妃も後ろ楯がない代わりに柵もないし、元聖騎士だし、でしゃばるタイプでもないから王の邪魔にならない。しかも何かあった時には文字通り、一騎当千の強さを誇る国の最大戦力、切り札でもある。あとは子沢山だし、仲良くて何より。
 そして対国外に関しては、魔王を倒し、世界を救った事で得た様々な主導権イニシアティブ優位性アドバンテージはかなり大きい。事実、何十年か前は中の上くらいの国力だったルストナークは、現在では三本の指に入る程だ。
 そんな風になるだけ客観的に評価していると、スワルド公爵家出身の、先代王の正妃セラフィーナ王太后陛下に、第一王子であるディルク王太子殿下、王太子殿下にエスコートされた第三王女マリー殿下が入場する。第一、第二王女は既に他国に嫁いでおり、第二王子はまだ小さいので今回の晩餐会には出席しない。俺はこの王太子様と王女様の事が苦手だ。
 あー……挨拶行きたくないなぁ……。続けてウィルフリード王兄殿下も入場され、こちらに気付いてふわりと柔らかく微笑んだ。微妙な面々の中で知った顔を見るとものすごく安心する。
 そうして 主催者と賓客が揃い、ようやく晩餐会が始まる。
 挨拶に始まり、祖父は国王陛下よりルストナーク王国への永年の貢献に対する感謝と、宰相職を退いてからの健康と活躍を祈念する旨のお言葉を頂戴し、お礼の言葉を述べる。
「――この度はご多忙の中、このような会を開いて頂きまして誠に有難く、厚く御礼申し上げます」
 挨拶は感謝の言葉から始まり、これまでのこと、リリアーナの事件のこと、その事件の責任をとって職を辞するのも考えたこと……しかし先代の陛下の言葉もあり、滅私奉公で自分なりにこの国の発展に粉骨砕身することで償うこととしたことなどを祖父は語った。本当は辞める気満々だったくせに。一応先代の陛下に花を持たせたんだな、と思った。
 そして自分は宰相職からは離れるけれど、今後は違った形で、この国の発展に微力ながら貢献する心算であるということ、後任の宰相をよろしくお願いしますということ、最後にこの会の参加者のこれからを祈念して言葉を結び、祖父の挨拶は終了した。
 深々と礼をした祖父に会場から大きな拍手が巻き起こる。そうして後任の宰相、数名の主賓から挨拶や祝いの言葉の後、歓談が始まった。
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