悪役令嬢の子

metta

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幕間:砂糖より甘い

03

「ウィスを本気で怒らせるなんて、ある意味大物かもしれませんね。怒るタイミングを完全に逃してしまいましたよ」
 苦笑するキースの横で怒りが収まらず、ぼかすかと枕を殴るが全く収まる気配がない。
「ない。あれはない。末っ子長男だからって、あれはない。俺が男好きみたいに……! 俺はキースが好きだから結婚したんだっての!」
 そんな感じの事を何回か叫びながら、止めを刺すかのようにぼすんと枕を叩きつけた。ひとしきり怒って少しスッキリしたところでキースを見ると、苦笑していた灰の瞳が獲物を見るような目になっている。
 キースが手をつくと、ベッドがぎしりと鳴り、俺は思わず後ずさる。だが壁に背がつき、キースが俺の顔の横に手をついた。壁を殴ってはいないがいわゆる壁ドンの体勢だ。あっという間に逃げ道がなくなってキースに唇を塞がれた。いや逃げたいわけじゃないんだけどさ。
「む、んんッ、んぅ……!」
 咥内をひとしきり擽って、吸って、掻き回されてくちゅくちゅと水音がダイレクトに耳に響く。しばらくの間それが続き、ようやく解放された俺は、呼吸を整えようとしながらずるずると壁を滑っていく。
「……は、ぁ……な、なに……」
「――あの発言も行動も、普段なら流せるわけがないんですけど。これほど好きだと連呼されれば、本当に馬鹿な子どもの言うことなんてどうでもよくなりましたね」
 覆い被さってぷつぷつとボタンを外し、脇腹のスリットから入り込んでくる手にあっという間に高められながら思った。
 あぁ……そう言えば俺ずっと叫んでたね、と。
 この真っ昼間の明るいのは嫌だなぁと思ったが、スイッチを入れてしまった今となっては後の祭りだし、それを除けばキースとする気持ちいい事は好きである。早々に羞恥心を頭から追い出し、キースの服のボタンを外していると、愛おしげに俺を見下ろすキースの顔がはっきりと目に入る。俺も少しだけ苦笑してキースの首の後ろに手を回し、どちらともなく口づけを交わし始めた。
「んっ、ふ……あっ、ごめ……っ……キース、や、っぱ、あッ、あつい――」
「――っ、すみません、もう少し……済んだら水を浴びましょう」
 覆い被さってくるキースの首筋に舌を這わすと、汗なのか潮風のせいか、少ししょっぱい味がする。ぱたぱたとキースの汗が落ちて思わず目を瞑って開くと、キースが乱暴に額に浮いた汗を拭い、髪をかきあげた。小刻みに揺らされ、段々と打ちつける勢いが強くなる。
 エイラスの衣装はスリットが深いから、最初は服を着たまましていたのだが、膝に乗せられ向かい合って揺さぶられている途中で暑さに耐えきれなくなり、「あぁぁぁ! あっつい!!」と色気もへったくれもなくガバッと脱いだ上にへばってしまい、途中から完全にまな板の上の鯉というか、マグロである。ごめん……ごめんよ……。
 挿入したまま抱え上げられ下から突き上げられ、快感がぞわぞわと背中を駆け上がる中、俺は口を薄く開いてキスをねだる。
「んんぅ――……」
 キスをしながらほぼ同時に達し、腹の中をひたひたと満たす熱が、より一層俺の体温を上げている気がする。溶けていくかのようにくったりとして、キースの肩に頭を乗せ息を整えていると、そうっと伸びた手が俺の前髪を少し書き上げて額を触り、何かを口にしようとする。
「……知恵熱じゃないからな?」
「よく分かりましたね」
 このネタいつまで引っ張られるんだろうか。そろそろ引き千切れてもいい頃だと思うんだけど。今日の俺、知恵つくような事なんか一個もなかったし、むしろ頭は悪い方だと思う。
 冗談はさておき、簡単に後始末をし、湯浴み用の肌着と下履きを履き、着替えを持ってキースと一緒にプールへ向かう。二回くらいならそのあともちょっと気怠いぐらいで普通に行動出来るようになった。それを考えると、俺も随分馴らされたものである。
 エイラスという国は気候穏やかな南国で、国自体が大きなスパリゾートのようなものだ。祖父が借りているこの屋敷は比較的ルストナークの建築様式に近いものではあるが何て言うのか……ヴィラが一番近いかな? 風通しのいい別荘にプールがついた開放感のある中庭がある。ガルディア家の人間は色素が薄いからか、陽射しにも弱いし暑さにも弱い。祖父は日中に一度は水を浴びないとバテて体調を崩すそうなので、きっと俺も同じだと思われる。
 プールには通いの使用人の手によって色とりどりの花や花びらが浮かべられており、揺らぐ水面の煌めきと踊る様子は、まるでガルディアの祭り時の海のようだ。水に足先を入れてぱちゃぱちゃと掻き混ぜた感じ、温水プールくらいの温度だった。足から入水し肩まで浸かって腰をかける。
「あー……気持ちいぃぃ……」
 花びらごと水を掬って顔にぱしゃりとかける。しかし綺麗ではあるが……ここにいるのは男ばかりだから、こういうサービスは女性がいるところだけでいいのでは。祖父が女性を連れ込むとも思えないしなと目線を向けると、いつもより高めの位置で髪を束ねて緩くお団子にしている最中のキースと目があった。周りには花びらの他に薔薇やプルメリアが花のまま浮かんでいる。
「どうしました?」
「お前、薔薇が異様に似合うな……」
 キースは黒髪に灰色の目というダークなカラーリングだからか赤い薔薇はとても映える。
「そうですか? 花はウィスの方が似合うと思いますが」
「それ思ってる似合うの意味合いが多分違う」
 俺に対する似合うって言うのは、どうせ女性に対して花が似合うと言ってる意味合いと一緒だろう。そうじゃなくてこう、男っぽい色気的な意味だ。
 あとなー……この湯浴み用の肌着がなー……白いからさ、いい感じに透けて裸より逆にエロいんだよ。そんなしょうもない事を考えながらプールに浸かっていると祖父が帰って来たようだ。俺達を呼ぶ声が聴こえる。
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