59 / 65
ちょっとあとのお話
02 寄る年波とともに
「こんなに長い期間2人きりというのも久しぶりですね」
「確かに……細切れでは2人でいること多いけど」
「あと、これほどまでに長い時間何もしないのも……」
「分かる……1日が……長い……! 楽しいけど……!」
以前の学術都市からのディムロス入りは陸路だったが、今回はルストナークからの船旅がプラスされている。その分旅程も長いが、今のところ全く疲れはない。
いや、だって……これは気合いが入りすぎだと思う。
今回の旅行は、みんなが総動員で計画して手配してくれたみたいなんだけど、旅の初っ端の船からして、とても船とは思えないような豪華客船。しかも広い特等客室。これはある意味先行きが不安過ぎる。宿とか大丈夫なんだろうか。
部屋以外ももちろん豪華で、食事も大変美味しく、いい酒もたくさんある。生演奏を聞けるしダンスは踊れるし買い物もできるしで、小さな図書館なんかもある。当然デッキもあって綺麗な空も大海原も見放題。
しかしながら。
最初はそれなりにはしゃいで船内をうろちょろ探検していたが、船内の豪華な諸々は、高尚な趣味もない俺の暇を潰せるものではない。なので今はぼけっとしたり、本を借りて部屋にこもり、食事をする時以外は本を読むか少し体を動かすか、キースと話すかのどれかになってしまっている。つまり普段の生活から仕事を抜いた状態である。リリアーナに言われた「引きこもり」に返す言葉もない。
そして結局――
「こんな真昼間から、爛れるなんて、どれくらいぶりですかね……」
「んっ……ディムロスのあと……宿に籠って、以来……?」
娯楽がないと、人間セックスに走りがちだと聞いたことがあるが、現在身をもって実感している。付き合わせて申し訳ないなと思いつつ誘ってみたら、案外のってくれてありがたい限りである。
一時期は慣れたというか馴らされたというか、明るいところでの情事も大丈夫だったんだが……久しぶりとなると、とても恥ずかしい。海からの光に透かされた白い自分の身体が期待に染まるように薄く色づいていくのがはっきり見える。思わず顔を背けると、顎をとられて口づけをされた。
「んっ……んんっ……」
「誘ったのはそちらですよ」
「だ、だって……!」
相手に責任転嫁するクズ男のような台詞を吐きながら、キースはもう一度唇を食む。丁寧な動きの舌は優しいが、拒むことは許していない。忍び足のようにゆっくりと入って咥内の性感帯をひとつひとつ再確認するかのように、なめらかに口の中をさらっていく。頬に、目に熱がどんどん溜まり、押し出されるように零れた涙をキースがすくうように舐め上げた。
その姿は歳を重ねてもなお蠱惑的で、俺の胎の奥をすぐに疼かせる。滑りを纏った長い指がゆっくりと挿入ってかき混ぜれば、くちゅりくちゅりと水音が聴こえ始める。
「――っ、あ……!」
「そういう初々しい反応を返されてしまう、と」
確かに外身や内心はそうかもしれない。でも胎の中は初々しさなんてとうに忘れて、キースの長い指がどこまで届くかとか、指じゃないものならどこまで届くかとか、そんなことばかりを思い出しては興奮して上擦るキースの声に自分の期待が重なった。件の指じゃないものは布の下に隠れたまま、下着を押し上げできた隙間から黒い茂みだけを見せている。あまりにもいやらしい。
早く出てこいと愛撫に負けじと下着をずらせば、露出したものは腹につきそうなくらいに勃ち上がっていた。明るいところで改めて見ると赤黒いとまではいかないが、他の肌と比べて浅黒く、肉の色をしている。
水光できらきらぬらぬらと艷めくそれは、ひくつく孔に押し当てられ、自分の身体がなんの抵抗もなくそれを引き込むように呑み込んでいく。それが急に恥ずかしくなって、ぐわっと熱を持った顔を隠そうとした途端に手首を取られ、穿たれた。
「――――あっ……! ……っちょ、や、ぃやだ……っ……」
「こんなつぶさに見られるなんて久しぶりなんだから、隠さないで」
「――~っふ、う゛……ぅぅ~……」
あまりの恥ずかしさに口をきゅっと結んでしまう。手首を握られ、抜き差しをほとんどしないまま、小刻みに揺さぶられる。くちくちとかき混ぜるような音を立てながら、羞恥の熱で潤む視界の隅で自分のものが揺れているのも、恥ずかしさに追い討ちをかける。
最初こそ思い切りえぐるように奥をついたものの、キースは激しくは動かない。
「……っ、キー、ス……もう、もっと……動いて……」
「せっかくだし、もう少し……」
「意地が……悪い……っ……!」
おねだりを聞いてもらえず、拗ねて睨んでみるものの、思い切り翻弄されている状態では何の迫力もない。
それでも恥ずかしがる俺をひとしきり視姦して満足したのか、キースは俺の腹をぐっと押しながら抽挿を激しくしていく。落差が激しすぎて喘ぎ声すらほとんど出なかった。
「――! ……」
熱を保ったまま達すれば、押し出された雫だけがぱたぱた落ちて臍に溜まる。
「っ、ちょ……イッた、ばっか……!」
「私はまだだし、出さないままも、辛いでしょう」
「こっ、ちのっ、ほ、うが……っ! ――」
出さずに達して敏感になった状態で中も外も擦られる方が辛いに決まっている。
堰き止められていた熱を吐き出すと同時に、中に別の熱が溢れていく。
「しかし……キース、お前改めて見ても全然変わらないよな……」
「ウィスが言います?」
余韻……というか動けない状態の俺を尻目にテキパキとシーツを片付けたりなんだりしている様子を見ていると、こういうことをし始めた結婚少し前から、キースの身体は引き締まったまま変わっていない。
「俺は加護持ちだから理由があるけど……キースは……やっぱ変わらなすぎじゃないか?」
なんなの?正直体型も何も、色んな意味で体力も全く衰えない。加護もないのに。いやまあ加護持ちじゃない祖父も若いけどさ。
造形は変わらないが、少しだけ質感の変わった肌を、ぺたぺたと子どものように色気なく触れていると。
「……ウィスが」
「ん?」
「ウィスが私の外見を結構気に入っているので、できる限りは維持したいな、と」
「えっ……いや、キースはずっと、格好いいけど」
えー……何これ。
めちゃくちゃ可愛い。老化が遅い俺との外見差ができるのを前々から気してるなと思ってはいたが、そっち?
いつもそつないキースの珍しく可愛い一面ににこにこしていると、何だか据わりが悪そうでこれまた珍しい。
「今のキースも格好いいし好きだけど、経年変化も楽しみのうちだぞ」
なんにも気にしなくても、キースは普通に格好良く歳取る未来しか想像できないけどな。それはそれで楽しみだ。
「俺は元が銀髪な上に、老化が遅いらしいから、髪型くらいしか変化は楽しませてやれないかもしれないけど」
「いえ。十分楽しませてもらってます。元々私にとってウィスは唯一ですが、今となっては他人から見てもあまりいない生き物だと思うので」
「生き物って」
「中身との差は若干ありますが、より美しくなりましたから」
「うわ! 恥ずかし!」
よくそんな台詞をさらりと言えるよ。
しかしこういう歯の浮くようなことを言っても許されるんだよなぁ。
「まあでも、そうだとしたら、それはキースの手柄だと思うぞ」
「それはそうです」
きっぱりと言い切る姿に思わず笑ってしまう。
実際俺を着飾るのはキースの趣味と言っても過言ではないので間違いではない。
「経年変化はいいとして……あとは……頭髪の問題ですかね……」
「……それは。俺も可能性あるし……」
「ただウィスは白髪の心配はあまりないですからね。私は黒髪なのでどうしても目立つでしょうし」
「……見つけたらすぐに言うからさ」
「お願いしますね」
若い頃から変わらないよ格好いいねって話だったはずなのに、急に会話が悲しくなる。でも、キースでも人並みにそんなことを気にする……いや、お洒落だと余計気にもするわな。
「ところで、あと2日くらいで着くんだったか? じゃあもう少し豪華客船も満喫しておかないと」
「いや、帰りもありますよ」
「そういえばそうだ。じゃあ、もう少しゆっくりしよう。着いたらどうするかでも食べながら話すか」
ある意味辛い話から話題を逸らしつつ、ディムロス到着後に思いを馳せる。前回全く街も歩いていないから色々と楽しみだ。
「……私はまず入浴したいですね。浴びられるだけいいとはいえ、魔法で湯水を浴びるだけではやはりすっきりしない……宿の風呂はかなり豪華で有名らしいので、ゆっくり浸かりたいです」
「砂の国なのにそんなに風呂が有名なんだ」
「砂の国だからこそでしょう。水を大切にする国でそこに力を入れられるのは贅の証明ですよ」
「確かに」
予想はしていたが、やっぱ宿もすごいところなんだな。本当に気合いが入ってる。それにしても。
「――なるほど」
「どうしました?」
「ううん、何でもない。早く食べに行こう」
随分と朧気になった前世では、色々なことに追われすぎていて、高級な観光列車や豪華客船など、身動きできないものに高い金を払うのだろうかと思っていた。
きっとこうやってなんでもない時間をゆったり過ごしたり、しょうもないことを楽しく語り合ったりする機会をみんな買っていたんだろうな
今でもあれこれ考えたりしがちな性分はあまり変わっていない気がするが、それでも前世を生きた年数を超えた今、ふと理解出来た気がする。
大事な人と一緒なら、それにはなお、価値がある。
他の目的もあれど、そういう時間をくれたみんなに改めて感謝しながら、不思議そうにしているキースの手を引いて食事に向かうのだった。
あなたにおすすめの小説
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!
表紙は、Pexelsさまより、Abdalrahman Zenoさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
文章にはAIを使用しておりません。校正も自力です!(笑)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。