悪役令嬢の子

metta

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帝国ディムロス編(キース視点)

13 明日の花に吹く風 下(ウィス視点)

「もう戻ってますよ。仰せのままに、キース様」

 そう揶揄うように言うと、黙れと言わんばかりに喰らいつかれて、頬にはらはらと黒髪が落ちてくる。以前切ろうかと悩んでいた艶やかな黒髪は俺が切らないで欲しいと頼んだから、ずっと長いままだ。
 単純に見慣れた長髪は似合っていて好きだし、正常位で口づけを交わしあっていると、夜のとばりのようにキースしか見えなくなるのも実は好きだったりする。
 それが取り払われると本格的な愛撫が始まるが、しっかり丁寧に下ごしらえするキースにしては珍しく、雑ではないが急いている。ご奉仕が効いたのならちょっと嬉しい、が。

「ひ、あ……っ」

 三十路を過ぎてもそこそこの頻度でセックスしている俺達だが、ここ最近は本当に忙しくて疲れていたので……というより、俺の体力等々を思いやってくれた結果、一月ほどまともにはしていない。だから……というのはゆっくり挿入されただけで達してしまった言い訳だ。俺の堪え性を失くした原因たる男は、意地悪く嬉しそうに笑んでいる。

「随分期待してたんですね」
「……っ……あ……だって、気持ちい……」

 濡れた腹を撫で、臍に溜まった白濁を絡めた指を舐めて笑うキース。
 ひぃ……エロい……足を抱えられて緩く揺すられるだけで正直すぐイきそう。激しくはないが、くちりくちりと優しく内壁を擦る動きに無駄はない。よく入ってたなとさっきまで思っていたものが侵入した薄い胎をそっと押されると、そのかたちに埋まっている事が本当によく分かる。

「あっ……ぁ……っ」

 けして激しくはない動きなのに、粘膜をしっかりと抉られ、自分の意思に反して声もなく身体が跳ねる。恥ずかしくなって顔を隠そうとしたら手を取られてしまい、全てをつぶさに観られてしまう。
 ディムロスの一件後二人で宿に引きこもって爛れまくって以来、出さずに達するということを覚えたというか、覚えさせられたというか。こうなってくるともう、ふわりと浮いたような感覚のまま全身の輪郭が曖昧になり、どこを触られても気持ちいい状態になってしまう。
 正直射精しない代わりにその他の体液は出まくっているので、ぐじゅぐじゅ汚い気もするが、人をそういう状態にしている本人は楽しそうだ。ならまあいいかと反応に理性をぶつける事はせず、素直にさらけ出し、明け渡すのみ。
 ぐぐっと押し付けられながらキスをする間も、胎の中はお互い蠢き震えている。

「んっ……! あ、や、あぁ」
「……っ、く」

 奥に奥にと、これ以上入らないところまで来てやっとキースは熱を吐き出した。目を瞑ってぶるりと震える余裕のない顔が見える。いつもの俺はもっとぐずぐずなので、これを目にするのは結構レアだ。
 息を整え、胎に溜まっていく熱を感じながらその様子を堪能していると、視線に気付いたキースが微笑んで口づけを落とし、のし掛かってくる。そのまま抱き締められてごろんと体勢を変えたのはいいけど……ぬ、抜かないんですかね?
 まあ掻き出すわけでもないし、いっか……。やっぱりちょっと薬が苦手なのもあるし、まだ実年齢的にも肉体年齢的にも妊娠出産可能なので敢えて避妊はしていない。そして素肌でくっつくのは気持ちがいい。しばし無言でくっついている間に息は整い、ずるりとキースが出ていき、もう一度キスをくれる。
 久しぶりで加減してくれたので、ほどよい疲れで済み、拭いたりなんだり浄化魔法を掛けたりと、後始末してのんべんだらりとしてから寝間着を着れば本格的なピロートークの時間だ。

「さっき外見の話が出ていましたが……ロータス様よりは老けたくないと、本当に必死なウィルフリード様のご苦労を、明日は我が身と思うと……」
「むしろ加護持ちでもないお祖父様がおかしいんだけどな」

 父だって同年代よりずっと若く見えるし。嫁と義父が若すぎるからな。気の毒に。
「それより陛下とローズ妃殿下だろ。あっちの方がなかなかな年の差みたいになってる……っていうか下手すれば息子の王太子殿下の方がローズ妃殿下より年上に見える」
「下手しなくても見えますよ」
「まあ、王太子殿下、老けてるから正直キースより上に見えるしな」

 国王陛下は若い頃から実年齢より上に見えてたのもあって、異母兄である父より老けていて、外見はかなり年相応。威厳たっぷりナイスミドルになっていて俺と変わらない見た目の嫁との外見的な年の差がなかなかエグい事になっている。

「まあ、確かに。あれに比べたら公爵夫妻はずっとマシですね」

 振っておいてなんだけど王家にすごく失礼な話だし、ピロートークでもなんでもなかった。ただ割と平常運転ではある。ちょっと話題変えるかと寝転んだままキースの方へと向き直った。

「――あ、そうだ。王家で思い出したけど……うちの子の婚約関係ってどうすべきかな」

 二人には先に公爵夫妻のところへ行けとぶん投げたが、エリンとベルフランの話でもあるから、こっちはこっちでさっさと意見を擦り合わせておかないといけない。
 俺は諸事情で婚約とかしてなかったし、前世の価値観も持ってる。本来はこうすべきなんだろうなというのはあるが、色々な要素がありすぎて、どれが正解なのかがもうよく分からない。

「そうですね……あくまで私個人の意見ですが、王家の場合、今の子供達の代は断れても、次の代からはどのみち断りづらい。なら貸しがかなりある今の内に婚姻関係を結んでいた方が、大事にされるでしょうし、後々楽かなとは思います」

 確かに今ならあのローズ妃殿下だし、正直嫁姑関係は故王太后から考えたら、かなり楽そうではある。ただどのみち方向性を決めるのはうちじゃないし、一番大事なのは子の意向だけれども。

「あと……もしディムロスに行かせるとすれば、ベルフランでしょうね。エリンはウィスより丈夫といえど、体質的にはやはり厳しい。エリカも同じで、皇帝との約束を抜きにしても、厳しいでしょう」
「本人達がいいのなら……エリカかエリンが王家に行くか後を継ぐ、ベルフランがディムロス……そんな感じか」
「ええ。それが一番綺麗に纏まります」
「なるほどね……」

 ただ、いずれにせよ言えるのは。

「ま、子ども達がどういう道を選べど、『花咲くような彩り豊かな幸せを』本人なりのそれを手にして欲しい、かな」
「そうですね。そのために、私達も頑張りましょう」
「うん……明日からまたがんば……いや、でも、ちょっと家族で旅行にでも行きたいなぁ……何だかんだエレノリアすら全然行ってないし」

 何とびっくり。王都であるにもかかわらず、エレノリアには王太子殿下のご成婚以来一度も行っていない。そして外国暮らしからのディムロスの一件、そのあとガルディアに帰って魔性やら傾国オム・ファタールという噂が消えるまで大人しくしようとしていた中での妊娠発覚という流れだったため、ぶっちゃけガルディアからも殆ど出ていない。完全に引きこもりである。

「ディムロスも結局行ってないしなぁ」
「ふふ、エレノリアのネイの所でもいいですし、偵察がてらディムロスでも行きますか? もちろん非公式で」
「おー……それなら行きたい。買い物もしたいし……」
「旅行についてはまた、ゆっくりエリンとベルフランの意見も聞いて決めるとして。しばらく働き詰めで疲れているんですから、今日のところはもう休みましょう」
「えー……まだも少し……」
「ほう?」

 そう少しだけ駄々を捏ねると、キースの銀の瞳が意地悪そうに細められる。

「疲れているかと思って今日は一回で止めたのですが、まだ大丈夫だと? なら、もう一戦付き合って……」
「い、いや!」
「お嫌ですか」
「……や、いや、嫌じゃないけど……今日はもう、無理……」

 抱かれて強制的に眠らされるのも嫌いじゃないけど、今日はそういう気分ではない。

「でしょう?」
「う゛……」

 完全に見透かされて揶揄われている。そういうのも嫌じゃないけど。当然それもバレていて、くすりと笑って額へのキスが落とされる。
 するとそれがスイッチになったのか、俺は一気に眠気に押し負け始め、最後の力を振り絞って何とかキースの胸元に潜り込む。すると心得たように程好い力で抱き締められた。

「おやすみなさい。また明日」
「おやすみ、キース……また、明日……」

 明日になったらみんなで一緒に旅行計画を立てるの楽しみだな。
 遠足前の子どもがはしゃぎ疲れて眠るかのように、この世で一番安心できる腕に収まり、俺は明日へと旅立ったのだった。
 
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