羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい

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9章:彼の事情

9-2

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「……お、鳳って、まさか鳳凰グループの鳳じゃないですよね⁉」

 そう、鳳とは、鳳凰グループの総帥の名字でもあり、ホウオウ社長も鳳で、鳳凰グループの会社は基本的に鳳一族が経営している。
 鳳家、だなんて一般の人からは聞かない名字だけど……。


「そうだよ。父はホウオウの社長だし、ホウオウ副社長の鳳一樹は俺の兄だ」
「だからあんなに仲良さそうに……」

 ふと最初の面接で、『健人』と副社長が先輩のことを呼び捨てにしていたのを思い出す。
 でも、よく考えてみると、私はあの時はそれどころじゃなかったからすっかり忘れていたのだ。

 それにしても、まさか親族だとは思わなかった……。先輩、名字も違うし。


 先輩は戸惑う私を見て苦笑すると、
「隠してたわけじゃないんだけど、言うタイミングもなくて」
と言い、続けた。「俺は今の社長の二番目の妻の子ども。ちなみに今は三番目の妻で本当の母じゃない。あと一番目の妻が一樹の母親」

 ちょっと待って混乱してきた。

 とりあえず、お父さまモテますね?
 社長ともなれば選び放題なのかもしれない……。ナンテヤツダ。うちの社長だけど。会ったこともないし、はっきり顔もわかんないけど。



「でも先輩だけ名字が……違うんですね?」
「俺は離婚した後、そのまま母親の旧姓に戻ったから羽柴なの。一樹は離婚後も父の家系が引き取った。長男だしね」

 それがいつのことなのかわからないけど、私が知っている先輩はすでに羽柴だった。

「全然……知りませんでした」
「高校の時は羽柴だったもんね」
先輩は少し表情を陰らすと、「母が亡くなって鳳家に出入りすることも増えたんだけど……。俺はね、父とはあまり仲良くはないんだ」
と言う。


 今は自分の母とは違う女性と結婚している父との関係と言うのも難しいんだろうな……。先輩は誰とでもうまく関係を築けると思っていたから意外ではあった。


「お兄さんとは……副社長とは、仲よさそうでしたよね?」
「うん、一樹のことは尊敬してる。底抜けにお人よしなとこも含めて」
「副社長って、お人よしなんですか」
私は思わず笑う。

「一樹って、昔から動物に好かれるんだよ。何度も、猫とか犬とか、勝手に一樹についてきてたことあったんだよね。今でも時々あるよ」
 それを想像するとまた笑った。先輩はそんな私の髪を何度も撫でる。


「それに、俺が弁護士になれたのも一樹のおかげだから」
「そうなんですか?」
「これでも一応、鳳家の……父の血がしっかり入っているからね。鳳凰グループへ入る予定で、大学も元々は経営を学ぶ予定だったんだ。でも、ほら、みゆに飛び蹴りされて進路を変えたでしょ? その時、もちろん父は大反対でね」

 突然飛び蹴りのワードが出てきて、私は、う……と言葉に詰まる。
 まさかお父様にまでご迷惑をおかけする結果になっていようとは……。そこは全く想像もしていなかった。そもそも先輩が鳳家の次男なんて全く知らなかったし!


「……とにかく先のことは分からないけど、俺が弁護士になることは、鳳凰グループにとってもいいことだって、一樹が父を説得してくれたんだ。それに鳳凰は自分がつぐし、問題ないでしょって」


 先輩は何かを思い出したようにきゅ、と唇を噛むと、
「だから、俺は、一樹が困ったときは助けたいって思ってるんだ」
とはっきりと言った。


 その先輩の決意している顔を見て、私は、先輩がまた遠い世界の人のように思えてしまったのだ。高校の時も先輩は十分に遠い存在だった。今もそういう面はある。

 でも、こうやって先輩が自分に近づいてきてくれて、身体を重ねて……。
 私も少しずつだが、先輩をただの男の人として接することもできるようになってきていた。でも……。

 大きなグループ会社の会長の孫で、今の会社の社長の息子。
 もし他のだれかの話なら『すごいなぁ』と素直に思ったのかもしれない。でも先輩がそうだなんて……私には『悪い事実』の分類にしかならない。



「みゆ?」
 先輩は不安そうな目をすると、私の頬を撫でる。

「あ、す、すみません。世界が違いすぎて。今頃驚きが来たというか……」
「ごめんね。これ聞いたらみゆは俺と付き合う事にしり込みするかなぁって思ったんだ」

 先輩は、また、ごめん、とつぶやいた。
 その様子に私は眉を寄せる。

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