羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい

文字の大きさ
43 / 57
15章:ずっと一緒に

15-1

しおりを挟む


「『総務の柊みゆはとんでもないお嬢様だったのか』とか噂になってるわよ」
 昼休み、食堂でそう言った宮坂さんを見て、私はため息をついた。

「……私もびっくりです」

 ちらりと食堂の入り口に目をやる。
 泣きながら頼んで、できるだけ会社員に近い恰好にしてもらったのだけど、明らかに普通の人間とは違う戦闘能力の高そうなオーラをまとった男たちがそこには立っていた。
 しかも1人ではない。3人だ。食堂に入る社員がいちいちSPの男たちをちらちらと見ていく。そしてそのあと、必ず私に目線を移すのだ。

 これも泣きながら頼み倒して、私や周りの見える範囲には3人と言うことにしてもらったのだが、なにせ目立つ。ちなみに残りの7人は見えない範囲にいるらしい。それはそれで怖い。


(『SPを減らしてくれ!』なんて彼氏に泣いて頼んだ人間って、私以外に誰かいるのかな……)

 いるとしたらその人とはいいお友達になれそうだけど、たぶん、そんな人は他にはいない……。



 とにかくそんなSPに囲まれているものだから、会社では噂の的になった。
 『実は天皇家の人間じゃないか』とか、『石油王に嫁入りするんじゃないか』とか訳の分からない噂まである。

 そんな噂が全部自分に向けられたものだなんて、もう毎日泣きそうだ。


「しかも……」
 言おうとしたとき、みゆ、と声がかかる。

「ひっ!」
 見てみるとやっぱり羽柴先輩だった。最近出現率が高い。

「今日はこっちで打合せなんだ。終わるの夕方だから、一緒に帰ろう」
「だからそうやって急に現れないで! ってなんでここが分かったの!」
「そりゃSPにはみゆの居場所常時教えてもらってるからね。とにかく約束だよ。忘れないでね」

 そう言って羽柴先輩は歩いていく。みんなの目線がこちらに向いていたのに気づいてまた泣きそうになった。


 宮坂さんに、小さな声で、

「この際だから、付き合ってることもバラしといたほうがいいね、とか言い出したんです。だから社内でも普通に話しかけるよ、って」
私は続ける。「先輩のやりたいようにやってる感がすごいんですけど……」


「それにOKしたの⁉」
 宮坂さんが驚いたように言う。

「今一緒に住んでるし、会社も近いし……バレるのも時間の問題だから……。それなら付き合ってることくらいはいっそ先にばれたほうがマシかって……。後でバレるより、自分から堂々としているほうが印象悪くないって、先輩も言ってて。それは確かにって思ったから。ちょっと先輩の口車に乗った感はあるんですけど」
「そうなの」
「先輩が、ちょうどSPもいるから、そのことがきっかけでいたずらされることもないだろうって」
「そう。でも、……よかったわ」
 宮坂さんは意外なことを言う。


「え?」
「あなたがそうやって恋心なんて隠す必要もないもの、隠さないでもいいって思えるほど先生のこと好きになれてるならよかった」


 私はその言葉に思わず苦笑する。
 でも、あの人が彼氏と知れ渡れば、仕事やりにくいのは確かですけどね……?


 宮坂さんは続ける。
「結構うまくやってるみたいじゃない」
「まぁ……先輩のペースに少しずつ慣れてきたというか……」
「あんなに、あの人は特別、って言ってたのに」
「人は『慣れる生き物』だってこと……今まで知りませんでした」

 私がつぶやくと、宮坂さんは楽しそうに笑った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...