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26 エドガーサイド
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ジルに、護衛兼世話係として雇われてからどれくらいたったのか。
ジルは普通に歩く分に困らない程度の速度で歩けるようになり、積極的に外を歩くようになった。なので、ジルはほとんどのことは自分で出来るようになって、俺の仕事はもっぱら必要なのかも分からない護衛と簡単な家事くらいになった。
そういう生活になってしばらくしてから、俺はジルにマスクだけではなく、眼鏡も外して良いと許可を出された。
俺はエドガーなのだからエドガーに見えて当たり前なのだが、ジルは俺のことがエドガーに見える病気だと思っている。
ある日、ジルは、自分は他の世界線から来たのだと言った。
それはニコルが俺に捨て台詞のように言った話と同じで、あの時妙に俺の中でしっくりきたから、ジルの話をすぐに信じられた。
『エンバルトリアへ向かう前に、その人の恋人に言われたんだ。自分なら好きな人に看取らせる生き方はしないと。確かに俺は、そんな生き方は出来ないし、その人を幸せにすることなんて出来ないと諦めてエンバルトリアへ行った』
ジルの言う、俺の恋人と言うのはニコルのことだと分かっている。
だが、ジルが俺に看取らせない生き方を選ぶために、俺を諦めると言うのは納得できなかった。
俺の行いが許せなかったとか、俺のことを好きでは無くなったのではなく、俺のためを思って身を引くのは嫌だと思った。
ジルが俺に看取らせない生き方が出来ないのと同じように、俺だってジルに看取らせない生き方はできない。
そもそも、看取らせない生き方とは何なんだ。
家で俺の帰りを待てればいいのか?
俺はそんなのは望んでいない。
一緒に笑って、一緒に戦って、そうやって苦楽を共にしたい。
俺の幸せは、ジルと共に生きることなのだともっと早くに気がついていれば。
ジルのそばに居るようになって、俺はどんどんジルを好きになるのに、ジルは日が経つにつれて俺に興味を失っているかのように見えた。
『知らぬ間に違う世界の自分と重ねて見てしまって申し訳ないことをしたと今では思っているんだ』
俺に対してそんな風に言うジルに胸がドクリと脈打った。
『その人のことを、もう好きではないと言うことですか』
『まぁ、そうなのかもな。この世界のその人にはもう大事な人がいるからな。ほら、メガネ外せよ』
俺のことをもう好きではないのだと言われてショックを受けた。
ジルは俺をもう好きなはずがないと思っていたし、分かっていたのに、直接聞くと胸が張り裂けそうなくらいに痛かった。
『何で悲しそうなんだ?』
その言い方が本当に不思議そうで、そして心配そうで俺はいまだに痛む胸を意識しないように答えた。
『ぁ……いえ……いえ。何でもありません。では、今日からはメガネも外します』
そう言った俺にジルは満足そうに笑った。
俺がエドガーなのだと気がついて欲しい。
けれど、気がつかれたら側にはいさせてもらえなくなるかもしれない。
ならば、やはりこのままルノーのままで側にいられる方がいいのだろうか。
ルノーが本当は俺だったと知ったら、ジルはショックを受けるだろうな。
そんな風にぐるぐると考え続けた。
しばらくして、食材の買い付けに一人で街に下りている際、声をかけられた。
「エドガー教官」
「ニコル……何のようだ」
見るとニコルは頬がこけ、目の下には隈ができていた。
その窶れた様子に驚きつつもニコルの方に数歩進み出ると、ニコルは口の端をニンマリと上げた。
「迎えに来ましたよ。あれからずっと帰ってこないんですもん。僕たち付き合っているのに」
「俺はお前とはもう付き合っていない」
「付き合ってるよ。付き合ってます。ああ、教官は僕と付き合ってる。教官は僕を好きで、僕も教官が好き。愛してるし、愛されてるし、だから僕たちは一緒にいないといけないんだ」
ぶつぶつと早口で話す様は、元々のニコルとは似ても似つかない。
「ニコル、俺はお前を愛していないし、好きでもない。そんな気持ちで交際したことは申し訳なかった」
「教官は僕を愛してるよ。大丈夫ちゃんと愛してる」
ニタニタと笑いながら焦点の合わないニコルの様子はとてもまともには思えず、俺は仕方なくニコルを訓練施設に送ることにした。
訓練施設には軍の病院が併設されているのでそこで診てもらおう。
そうして俺はニコルを送り、多少時間はおしたものの、夕食を作るほどの時間は残っていてジルの生活を支える邪魔になることはなかった。
ジルは普通に歩く分に困らない程度の速度で歩けるようになり、積極的に外を歩くようになった。なので、ジルはほとんどのことは自分で出来るようになって、俺の仕事はもっぱら必要なのかも分からない護衛と簡単な家事くらいになった。
そういう生活になってしばらくしてから、俺はジルにマスクだけではなく、眼鏡も外して良いと許可を出された。
俺はエドガーなのだからエドガーに見えて当たり前なのだが、ジルは俺のことがエドガーに見える病気だと思っている。
ある日、ジルは、自分は他の世界線から来たのだと言った。
それはニコルが俺に捨て台詞のように言った話と同じで、あの時妙に俺の中でしっくりきたから、ジルの話をすぐに信じられた。
『エンバルトリアへ向かう前に、その人の恋人に言われたんだ。自分なら好きな人に看取らせる生き方はしないと。確かに俺は、そんな生き方は出来ないし、その人を幸せにすることなんて出来ないと諦めてエンバルトリアへ行った』
ジルの言う、俺の恋人と言うのはニコルのことだと分かっている。
だが、ジルが俺に看取らせない生き方を選ぶために、俺を諦めると言うのは納得できなかった。
俺の行いが許せなかったとか、俺のことを好きでは無くなったのではなく、俺のためを思って身を引くのは嫌だと思った。
ジルが俺に看取らせない生き方が出来ないのと同じように、俺だってジルに看取らせない生き方はできない。
そもそも、看取らせない生き方とは何なんだ。
家で俺の帰りを待てればいいのか?
俺はそんなのは望んでいない。
一緒に笑って、一緒に戦って、そうやって苦楽を共にしたい。
俺の幸せは、ジルと共に生きることなのだともっと早くに気がついていれば。
ジルのそばに居るようになって、俺はどんどんジルを好きになるのに、ジルは日が経つにつれて俺に興味を失っているかのように見えた。
『知らぬ間に違う世界の自分と重ねて見てしまって申し訳ないことをしたと今では思っているんだ』
俺に対してそんな風に言うジルに胸がドクリと脈打った。
『その人のことを、もう好きではないと言うことですか』
『まぁ、そうなのかもな。この世界のその人にはもう大事な人がいるからな。ほら、メガネ外せよ』
俺のことをもう好きではないのだと言われてショックを受けた。
ジルは俺をもう好きなはずがないと思っていたし、分かっていたのに、直接聞くと胸が張り裂けそうなくらいに痛かった。
『何で悲しそうなんだ?』
その言い方が本当に不思議そうで、そして心配そうで俺はいまだに痛む胸を意識しないように答えた。
『ぁ……いえ……いえ。何でもありません。では、今日からはメガネも外します』
そう言った俺にジルは満足そうに笑った。
俺がエドガーなのだと気がついて欲しい。
けれど、気がつかれたら側にはいさせてもらえなくなるかもしれない。
ならば、やはりこのままルノーのままで側にいられる方がいいのだろうか。
ルノーが本当は俺だったと知ったら、ジルはショックを受けるだろうな。
そんな風にぐるぐると考え続けた。
しばらくして、食材の買い付けに一人で街に下りている際、声をかけられた。
「エドガー教官」
「ニコル……何のようだ」
見るとニコルは頬がこけ、目の下には隈ができていた。
その窶れた様子に驚きつつもニコルの方に数歩進み出ると、ニコルは口の端をニンマリと上げた。
「迎えに来ましたよ。あれからずっと帰ってこないんですもん。僕たち付き合っているのに」
「俺はお前とはもう付き合っていない」
「付き合ってるよ。付き合ってます。ああ、教官は僕と付き合ってる。教官は僕を好きで、僕も教官が好き。愛してるし、愛されてるし、だから僕たちは一緒にいないといけないんだ」
ぶつぶつと早口で話す様は、元々のニコルとは似ても似つかない。
「ニコル、俺はお前を愛していないし、好きでもない。そんな気持ちで交際したことは申し訳なかった」
「教官は僕を愛してるよ。大丈夫ちゃんと愛してる」
ニタニタと笑いながら焦点の合わないニコルの様子はとてもまともには思えず、俺は仕方なくニコルを訓練施設に送ることにした。
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そうして俺はニコルを送り、多少時間はおしたものの、夕食を作るほどの時間は残っていてジルの生活を支える邪魔になることはなかった。
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