肉便器エンド!? それって最高じゃん

いちみやりょう

文字の大きさ
63 / 99

元バトラル視点3

しおりを挟む
「こういうことって?」

黒川さんはそう言って首を傾げた。
圭吾の体よりも、かなり大柄そうに見えるし、目つきも相当悪い。ただ生きているだけで相当迫力があるし、これは、ドMだという圭吾の好みというやつなのだろうか。例えるなら熊といった見た目だ。だが、僕に尋ねるその声は、思いの外優しくて、僕は必要以上に緊張することはなかった。

「だから、こういう……」
「友人関係を辞めたいということか?」

言い淀んだ僕の言葉に、黒川さんは助け舟を出すようにそう尋ねてくれたので、僕はそれに頷いて返した。小説に詳しく書かれていなかったので、友人関係と評して良いのか分からなかったが、黒川さんがそう言うなら、圭吾と黒川さんは友人関係だったのだろう。

「どうして?」
「どうしてって、だから、ぼ、俺はこう言うことはもうしたくない、から」
「……そうか。だが、こういうこととはなんだろう。俺は、こうして圭吾と会ってご飯を食べたり、添い寝したりする関係が気に入っているんだ。だから、そのことを言っているなら、素直に頷くことはできないな」
「ご飯を食べたり、添い寝したり?」

まさか、圭吾はそんな健全な付き合いができる人間だったのか。
圭吾はバトラルとしての僕の人生を羨むほどに、特殊な性癖を持った人間なので、多かれ少なかれ、特殊なことをしているのだと思っていた。

「確かに、俺は加虐趣味はないから、圭吾が望んでいるのだとしてもかわいそうに感じて圭吾が望むようにしてやることは出来ないが、それでも良い友人になれたと思っているんだ。俺は圭吾を大切な友人だと思ってる。だから、これからも友人関係を続けていきたい」
「……そ、そっか」

圭吾はこんなに友人に恵まれてすごいなぁ。
僕なんて結局友人の1人もできないままだったのに。

「分かってくれるか?」
「うん、えっと。分かった」
「そうか。ありがとう」

黒川さんが嬉しそうに笑うので、僕もそれにつられて笑った。
それからどんどん実感が湧いてきた。
僕の初めての友人だ。

「何か食べたいものでもあるか? 今日は出前にしよう」
「そ、それなら、すしが食べたい」
「すしか。圭吾はすしが好きだよな」
「う、うん」
「なら注文するから少し待っていてくれ」
「わかった。ありがとう」

小説に出てきたすしを食べられる。楽しみでワクワクした。
そうして、黒川さんが頼んでくれたすしは、すぐに届いて、僕は初めてのすしを堪能した。
想像していた味とは違ったけど、すしはとても美味しくて、僕も大好きな食べ物になった。

僕が美味しく食べているのを、黒川さんはまるで子供を見るかのような優しくて暖かい目で見ていて、なんだか気恥ずかしかった。

それから、僕は黒川さんとよく遊ぶようになった。
小説に出てきた場所や物を見たり聞いたり食べたり触ったり、そうやって楽しむ僕に、黒川さんはいつも優しく付き添ってくれた。

思えば誰かからこんなふうに優しくされた記憶はないし、楽しく過ごした記憶もない。
僕と友人として過ごすことに、黒川さんにはメリットが何もないけど、僕は黒川さんの見かけによらない優しさにいつしか甘えてしまっていた。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...