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元バトラル視点3
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「こういうことって?」
黒川さんはそう言って首を傾げた。
圭吾の体よりも、かなり大柄そうに見えるし、目つきも相当悪い。ただ生きているだけで相当迫力があるし、これは、ドMだという圭吾の好みというやつなのだろうか。例えるなら熊といった見た目だ。だが、僕に尋ねるその声は、思いの外優しくて、僕は必要以上に緊張することはなかった。
「だから、こういう……」
「友人関係を辞めたいということか?」
言い淀んだ僕の言葉に、黒川さんは助け舟を出すようにそう尋ねてくれたので、僕はそれに頷いて返した。小説に詳しく書かれていなかったので、友人関係と評して良いのか分からなかったが、黒川さんがそう言うなら、圭吾と黒川さんは友人関係だったのだろう。
「どうして?」
「どうしてって、だから、ぼ、俺はこう言うことはもうしたくない、から」
「……そうか。だが、こういうこととはなんだろう。俺は、こうして圭吾と会ってご飯を食べたり、添い寝したりする関係が気に入っているんだ。だから、そのことを言っているなら、素直に頷くことはできないな」
「ご飯を食べたり、添い寝したり?」
まさか、圭吾はそんな健全な付き合いができる人間だったのか。
圭吾はバトラルとしての僕の人生を羨むほどに、特殊な性癖を持った人間なので、多かれ少なかれ、特殊なことをしているのだと思っていた。
「確かに、俺は加虐趣味はないから、圭吾が望んでいるのだとしてもかわいそうに感じて圭吾が望むようにしてやることは出来ないが、それでも良い友人になれたと思っているんだ。俺は圭吾を大切な友人だと思ってる。だから、これからも友人関係を続けていきたい」
「……そ、そっか」
圭吾はこんなに友人に恵まれてすごいなぁ。
僕なんて結局友人の1人もできないままだったのに。
「分かってくれるか?」
「うん、えっと。分かった」
「そうか。ありがとう」
黒川さんが嬉しそうに笑うので、僕もそれにつられて笑った。
それからどんどん実感が湧いてきた。
僕の初めての友人だ。
「何か食べたいものでもあるか? 今日は出前にしよう」
「そ、それなら、すしが食べたい」
「すしか。圭吾はすしが好きだよな」
「う、うん」
「なら注文するから少し待っていてくれ」
「わかった。ありがとう」
小説に出てきたすしを食べられる。楽しみでワクワクした。
そうして、黒川さんが頼んでくれたすしは、すぐに届いて、僕は初めてのすしを堪能した。
想像していた味とは違ったけど、すしはとても美味しくて、僕も大好きな食べ物になった。
僕が美味しく食べているのを、黒川さんはまるで子供を見るかのような優しくて暖かい目で見ていて、なんだか気恥ずかしかった。
それから、僕は黒川さんとよく遊ぶようになった。
小説に出てきた場所や物を見たり聞いたり食べたり触ったり、そうやって楽しむ僕に、黒川さんはいつも優しく付き添ってくれた。
思えば誰かからこんなふうに優しくされた記憶はないし、楽しく過ごした記憶もない。
僕と友人として過ごすことに、黒川さんにはメリットが何もないけど、僕は黒川さんの見かけによらない優しさにいつしか甘えてしまっていた。
黒川さんはそう言って首を傾げた。
圭吾の体よりも、かなり大柄そうに見えるし、目つきも相当悪い。ただ生きているだけで相当迫力があるし、これは、ドMだという圭吾の好みというやつなのだろうか。例えるなら熊といった見た目だ。だが、僕に尋ねるその声は、思いの外優しくて、僕は必要以上に緊張することはなかった。
「だから、こういう……」
「友人関係を辞めたいということか?」
言い淀んだ僕の言葉に、黒川さんは助け舟を出すようにそう尋ねてくれたので、僕はそれに頷いて返した。小説に詳しく書かれていなかったので、友人関係と評して良いのか分からなかったが、黒川さんがそう言うなら、圭吾と黒川さんは友人関係だったのだろう。
「どうして?」
「どうしてって、だから、ぼ、俺はこう言うことはもうしたくない、から」
「……そうか。だが、こういうこととはなんだろう。俺は、こうして圭吾と会ってご飯を食べたり、添い寝したりする関係が気に入っているんだ。だから、そのことを言っているなら、素直に頷くことはできないな」
「ご飯を食べたり、添い寝したり?」
まさか、圭吾はそんな健全な付き合いができる人間だったのか。
圭吾はバトラルとしての僕の人生を羨むほどに、特殊な性癖を持った人間なので、多かれ少なかれ、特殊なことをしているのだと思っていた。
「確かに、俺は加虐趣味はないから、圭吾が望んでいるのだとしてもかわいそうに感じて圭吾が望むようにしてやることは出来ないが、それでも良い友人になれたと思っているんだ。俺は圭吾を大切な友人だと思ってる。だから、これからも友人関係を続けていきたい」
「……そ、そっか」
圭吾はこんなに友人に恵まれてすごいなぁ。
僕なんて結局友人の1人もできないままだったのに。
「分かってくれるか?」
「うん、えっと。分かった」
「そうか。ありがとう」
黒川さんが嬉しそうに笑うので、僕もそれにつられて笑った。
それからどんどん実感が湧いてきた。
僕の初めての友人だ。
「何か食べたいものでもあるか? 今日は出前にしよう」
「そ、それなら、すしが食べたい」
「すしか。圭吾はすしが好きだよな」
「う、うん」
「なら注文するから少し待っていてくれ」
「わかった。ありがとう」
小説に出てきたすしを食べられる。楽しみでワクワクした。
そうして、黒川さんが頼んでくれたすしは、すぐに届いて、僕は初めてのすしを堪能した。
想像していた味とは違ったけど、すしはとても美味しくて、僕も大好きな食べ物になった。
僕が美味しく食べているのを、黒川さんはまるで子供を見るかのような優しくて暖かい目で見ていて、なんだか気恥ずかしかった。
それから、僕は黒川さんとよく遊ぶようになった。
小説に出てきた場所や物を見たり聞いたり食べたり触ったり、そうやって楽しむ僕に、黒川さんはいつも優しく付き添ってくれた。
思えば誰かからこんなふうに優しくされた記憶はないし、楽しく過ごした記憶もない。
僕と友人として過ごすことに、黒川さんにはメリットが何もないけど、僕は黒川さんの見かけによらない優しさにいつしか甘えてしまっていた。
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