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兄:セドリック視点1
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兄:セドリック視点
僕には弟が2人いる。
1人は母も僕と同じで、カミーユという名前だ。
僕がアルファなのに対して、オメガのカミーユは母上にそっくりな美しい顔をしていた。
母上の命と引き換えに生まれてきたカミーユは、天使のように愛らしかったけど、カミーユが生まれて数年は母上がいなくなってしまった寂しさから、僕はカミーユにどう接していいか分からなかった。
多分、父上もそんな感じなのだろう。
気がつけばカミーユは屋敷の奥に建てられた別邸に住むようになっていた。
「あの子は、アルファの男性が怖いようです。ですから、あまり近づかないようにして差し上げてください」
父上が連れてきた後妻のマリーがそう言って眉を下げた。
マリーは母上の親友だったと聞く。
僕たちよりもよっぽどカミーユのことを考えてくれていたのだと思った。
正直、今更カミーユとどう接していいか分からなくなっていた僕と父上は、その言葉に甘えた。
「あの子が、自分から近づいてくれた時には存分に甘やかしてやろう。な?」
父上はそう言って寂しそうな顔をしたから、僕もうなずいた。
そうして生活しているうちに、2人目の弟であるドニが生まれた。
ドニはベータだけれど、オメガに引けをとらないくらいに愛くるしい見た目で、僕にもよく懐いてくれた。どう接すればいいのか分からないカミーユにかけることのできなかった愛情を、ドニに存分に与えた。
「ここの庭は、あの別邸からよく見えますから、私たちがここで楽しくしていれば、カミーユも気になって出てくるかもしれませんわね」
マリーがそう言うので、僕も父もドニを連れて庭に出る機会は多くなった。
だから、ドニは3歳のころ、1人で庭に出てしまった。
屋敷にいないことに気がついた僕は、庭にいるドニを発見してすぐに叫んだ。
「何してる!! ドニ、大丈夫か?」
「おにいたま」
まだ舌の周り切っていないドニは僕を見て安心したように笑った。
けれどすぐ横で誰かが後ずさるのが見えた。
「あ……、申し訳ござ、いません。僕は失礼、します」
カミーユだ。
カミーユが自ら僕たちのそばに?
だが、とても怯えている。
やはり、兄といえどもアルファである僕のことが怖いのだろうか。
「あ、おい。待て」
考えているうちに、カミーユは去って行ってしまった。
僕はそのことを父上に報告した。
もしかしたら、僕たちが庭に出ていることが良い効果を発揮しているのかもしれない。
僕が、カミーユの兄として安心できる存在に戻れるチャンスなのかもしれない。
僕たちは怖くないアルファなのだとアピールするために庭に出ることを増やした。
お前も、ここに混ざりたいだろう。
早くそこから出ておいで。
だけど、カミーユがあれ以降庭に出てくることはなかった。
そして、僕たちにもう1人弟が出来ることになり、ついに生まれると言う段階になったのは、空がどんよりとした早朝のことだった。
僕を慌てて起こしにきた執事とともに廊下を歩いていると、庭から声が聞こえる。
「こないで! お屋敷に入らないでっ。僕の大事な弟が生まれるんだからっ」
ドニが、まるで敵でも見るような目で、カミーユを見ていて僕は思考が停止した。
「何してる! ……カミーユ……。ドニ、どうしたんだ?」
せっかくカミーユが出てきてくれたのに。
カミーユはおどおどと視線を彷徨わせて、申し訳なさそうに肩を竦ませていた。
生まれるのは、ドニだけの弟ではない。
カミーユの弟でもあるのに。
どうして、ドニはカミーユにこんな態度をとるんだ?
ドニはまるで正義は自分にあると言うように大きな声で叫ぶ。
「僕の弟、守るんだ!!」
「ドニ、どういうことだ?」
本当に訳がわからない。
頭が痛い。
なぜこんな……。
ドニはまだ幼い。
どうしてこんな非道な。
「ぁ……、ぁ……ぇっと、すみません。しつれいします」
カミーユが悪いわけでもないのに、ショックを受けたような青い顔をして頭を下げて僕たちの横をすり抜け屋敷の奥に走り去って行ってしまった。
僕には弟が2人いる。
1人は母も僕と同じで、カミーユという名前だ。
僕がアルファなのに対して、オメガのカミーユは母上にそっくりな美しい顔をしていた。
母上の命と引き換えに生まれてきたカミーユは、天使のように愛らしかったけど、カミーユが生まれて数年は母上がいなくなってしまった寂しさから、僕はカミーユにどう接していいか分からなかった。
多分、父上もそんな感じなのだろう。
気がつけばカミーユは屋敷の奥に建てられた別邸に住むようになっていた。
「あの子は、アルファの男性が怖いようです。ですから、あまり近づかないようにして差し上げてください」
父上が連れてきた後妻のマリーがそう言って眉を下げた。
マリーは母上の親友だったと聞く。
僕たちよりもよっぽどカミーユのことを考えてくれていたのだと思った。
正直、今更カミーユとどう接していいか分からなくなっていた僕と父上は、その言葉に甘えた。
「あの子が、自分から近づいてくれた時には存分に甘やかしてやろう。な?」
父上はそう言って寂しそうな顔をしたから、僕もうなずいた。
そうして生活しているうちに、2人目の弟であるドニが生まれた。
ドニはベータだけれど、オメガに引けをとらないくらいに愛くるしい見た目で、僕にもよく懐いてくれた。どう接すればいいのか分からないカミーユにかけることのできなかった愛情を、ドニに存分に与えた。
「ここの庭は、あの別邸からよく見えますから、私たちがここで楽しくしていれば、カミーユも気になって出てくるかもしれませんわね」
マリーがそう言うので、僕も父もドニを連れて庭に出る機会は多くなった。
だから、ドニは3歳のころ、1人で庭に出てしまった。
屋敷にいないことに気がついた僕は、庭にいるドニを発見してすぐに叫んだ。
「何してる!! ドニ、大丈夫か?」
「おにいたま」
まだ舌の周り切っていないドニは僕を見て安心したように笑った。
けれどすぐ横で誰かが後ずさるのが見えた。
「あ……、申し訳ござ、いません。僕は失礼、します」
カミーユだ。
カミーユが自ら僕たちのそばに?
だが、とても怯えている。
やはり、兄といえどもアルファである僕のことが怖いのだろうか。
「あ、おい。待て」
考えているうちに、カミーユは去って行ってしまった。
僕はそのことを父上に報告した。
もしかしたら、僕たちが庭に出ていることが良い効果を発揮しているのかもしれない。
僕が、カミーユの兄として安心できる存在に戻れるチャンスなのかもしれない。
僕たちは怖くないアルファなのだとアピールするために庭に出ることを増やした。
お前も、ここに混ざりたいだろう。
早くそこから出ておいで。
だけど、カミーユがあれ以降庭に出てくることはなかった。
そして、僕たちにもう1人弟が出来ることになり、ついに生まれると言う段階になったのは、空がどんよりとした早朝のことだった。
僕を慌てて起こしにきた執事とともに廊下を歩いていると、庭から声が聞こえる。
「こないで! お屋敷に入らないでっ。僕の大事な弟が生まれるんだからっ」
ドニが、まるで敵でも見るような目で、カミーユを見ていて僕は思考が停止した。
「何してる! ……カミーユ……。ドニ、どうしたんだ?」
せっかくカミーユが出てきてくれたのに。
カミーユはおどおどと視線を彷徨わせて、申し訳なさそうに肩を竦ませていた。
生まれるのは、ドニだけの弟ではない。
カミーユの弟でもあるのに。
どうして、ドニはカミーユにこんな態度をとるんだ?
ドニはまるで正義は自分にあると言うように大きな声で叫ぶ。
「僕の弟、守るんだ!!」
「ドニ、どういうことだ?」
本当に訳がわからない。
頭が痛い。
なぜこんな……。
ドニはまだ幼い。
どうしてこんな非道な。
「ぁ……、ぁ……ぇっと、すみません。しつれいします」
カミーユが悪いわけでもないのに、ショックを受けたような青い顔をして頭を下げて僕たちの横をすり抜け屋敷の奥に走り去って行ってしまった。
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