双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

文字の大きさ
13 / 57

13 東堂 義隆

しおりを挟む

バシャン!!!

第二数学準備室からの移動中、またもや水をかけられた。
けれど今回は腐った牛乳を準備する時間がなかったのか、ただの水のようだ。
黒月さんには昨日水をかけられたことは言っていないけど、知ったら怒るだろうな。

「ちっ。くそ」

ただの水だとしても水をかけられれば誰でもイラつく。
一応、ただの水じゃなくて、掃除した後の水とかだったら嫌なので昨日の水道に行ってシャツを脱ぎ頭を洗っていると、足音が聞こえた。俺の後ろでピタリと止まったが嫌がらせを行なってきた奴が、再度俺に嫌がらせをする気なら余裕で追いかけられる位置にいるので、放置して頭を洗うことに専念した。
そして洗い終わって今度はシャツを洗おうと手を伸ばした時、頭にふわりと何かを乗せられた。

「ん? なに?」

仕方がないので頭に何かを乗せた人物を振り返って確認すると、昨日も水浴びをしているときに話しかけてきた顔の整った生徒だった。今日は銀縁のメガネをつけていて冷たい無表情にあっている。

「タオルだ」
「いや……、まぁ、うん。ありがとう」

もう頭に乗せられてしまったタオルを洗わずに返すなんてマネはできないので、素直に受け取ることにした。

「昨日は頭を洗っている最中に話しかけるなとキレられたので、今日は洗い終わるまで待っていた」

なんの報告か知らないが、なんと返すのが正解なのか誰かに教えて欲しい。

「あ~、えっと。え、えらーい」

銀縁メガネは一瞬ぽかんとしたあと、ふっと笑った。
またその笑い方が様になっていて憎らしい。

「お前、私が誰だか知らないだろう」
「? えーと。知ってますよ。もちろん」

俺が知らないとまずい相手だったのか? 
だが黒月さんの報告では誠の友人関係はほぼ皆無だと言っていた。
だけどそうだ、1人無理やり関係を迫っている人がいたんだった。

目の前の銀縁メガネはニヤニヤと楽しそうな顔をしながら俺を見ている。

「生徒会長、さまでしょ? 大好きだもん。もちろん知ってるよ」
「……ぅくく。正解だ。いかにも私は生徒会長だが、お前は柊木誠ではないだろう?」
「っ、ひどい。なんでそんなこと言うの?」

誠お得意の被害者顔をしても、生徒会長は愉快そうに眉を上げるだけだ。

「そもそも。昨日の段階で私の顔を認識していなかったのは、ひょっとしたら昨日はたまたまメガネを忘れていたからかもと思ったが、普段あれだけアピールしてくるお前が、それだけで私のことが分からなくなるとは考えづらい。そして今日メガネをかけて接しても私に気がつく様子はなかった」
「……なるほど」

もはや言い逃れできそうにはない。
ああ、くそ。
生徒会長の顔くらい確認しておくべきだったな。
ケアレスミスとは言いづらい。かなり大きなミスだ。

「そして確信しているのはメガネのことだけじゃない」
「え?」

なに? 他にも失敗してるのか俺? 嫌だ、聞きたくない。

「その、腹筋だ」
「……は?」

思わぬ言葉に間抜けな声が出た。

「元の柊木誠は、そんなに腹がバキバキに割れていない」
「なっ……」

まさかそんなところに落とし穴があったとは。
確かに誠はトレーニングをしたりしないし、男にしては柔らかめの体をしているかもしれない。

『抱き心地抜群のこの体で黒月を堕落させるんだぁ』

と、本人が言っていたし。

「あ゛~。くそ。まぁ、失敗しても良いか。あー、どうすっかなぁ」

もうバレてしまったのなら、仕方ないと諦めるしかない。
早いとこ高卒認定試験を受けてなんとかバイトしながら大学に行けば、それなりに道はあるだろう。

「まて、諦めるのが早いだろう。なかなか面白そうだから私も協力してやろう」
「はい? あ、ちょっと」

生徒会長が俺の頭に乗せられっぱなしだったタオルを、掴んでゴシゴシと吹いてきた。

「乾かさないと風邪を引く」

世話焼きおかんなのかもしれない。

「生徒会長さん、お名前は?」
「……。東堂とうどう義隆よしたかだ。お前は?」
むらさき柊木ひいらぎ紫だよ」
「そうか、紫。これから楽しくなりそうだな?」

東堂は本当に楽しそうに笑った。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。

水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。 ※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。 「君はもう、頑張らなくていい」 ――それは、運命の番との出会い。 圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。 理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

処理中です...