双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

文字の大きさ
22 / 57

22 体育祭1

しおりを挟む
教室に戻った俺は、開始時刻に少し遅れてしまい、体育祭の出場種目や実行委員の役員極めなどほぼ終わってしまっていた。

「え……俺の出る競技の量、おかしくね?」

リレーや短距離走、借り物競走に棒倒し、応援団。果てはなぜか男子校なのにフォークダンスまで。
まさかのほとんどの競技の参加になっていた。
普段ならあんまりだと怒るところかもしれないが、俺はMVPを取らなければならないので、大人しく全て参加することにした。

体力づくりなどはもちろん普段からしている。
少し多めに走るなどして体を鍛えた。

応援団やフォークダンスなどは案の定、放課後の練習があり、一部不真面目な生徒が覚えないせいで昼休みまで返上させられる始末。
黒月さんとまともに会話できる時間も減って俺はカリカリしていた。

「はぁ~。だけど黒月さんは俺と話せなくてもケロッとしてそう。くそう……」

忙しすぎてメンタルがやられているのか、黒月さんとの時間が取れないことがやけに堪えた。

そんな日々も1ヶ月過ぎ。
今日は待ちに待った体育祭だ。
今日を乗り切れば、また黒月さんとゆっくりできる。

朝からドンドンッと花火の音が聞こえる。
体育祭の日のこの音は、なんでかテンションが上がるんだよな。

短距離走もリレーも無事好成績を収めて俺を目の敵にするチワワを見ると、俺を恨めしそうに睨んでいた。それに笑いかけると、チワワは驚いた顔をして、顔を逸らした。
借り物競走で俺は一番にお題まで辿りついた。
が。

「なんじゃこりゃ」

開いた紙には『むかつくやつをお姫様抱っこでゴール』と書かれていた。
いや、むかつくやつってのもいじめとか喧嘩に発展しそうだし、その上、そいつをお姫様抱っこなんて正気の沙汰じゃないな。
体育祭のお題までは生徒会は絡まないのだろうか。
絡んでいるのだとしたら、俺は東堂に一言言ってやらねば気が済まない。

だが、今は『むかつくやつ』だ。
もちろん、俺の場合は1択だろう。

俺は横目で俺を睨むチワワのもとに駆け寄った。

「なっ、なっ、なんだよ!」
「ちょっと悪い。失礼するな?」
「わぁっ!?」

聞いたこともないような声で叫ぶチワワを抱えて、ゴールまで走る。
俺も大概小柄だが、チワワもその名の通り小柄だったおかげでスムーズに運ぶことができた。

「いきなりなんだよ」
「だから、失礼するな? って言っただろ? お前が借り物だったんだから仕方がない」

ゴールした後に怒りまくるチワワに俺は淡々と言い返した。

「お題は何だったんだよ!」
「そりゃ……、あー、可愛いやつ、とか?」
「え……?」

ムカつくやつではあるが、流石にそのお題を本人に伝えるほどに俺は冷酷じゃないつもりだ。
チワワは俺のその答えは予想していなかったのかポカンと口を開いて固まった。

「まぁ、用事は済んだ。付き合わせて悪かったな」
「……あ、う、うん」

歯切れの悪い返事を聞きながら俺は次の競技の入場口に向かった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。

水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。 ※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。 「君はもう、頑張らなくていい」 ――それは、運命の番との出会い。 圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。 理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

処理中です...