双子の兄になりすまし単位を取れと言われたが、おいおい何したらこんなに嫌われんの?

いちみやりょう

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25 俺の両親2

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「今まで隠していて申し訳ありませんでした。こうなってしまったからには、確認をしておきたいのですが、大学卒業ののち、数年勉強してからですが、柊グループの社長になっていただけますか?」
「その返事のまえに、俺、いろいろ両親についてとか知りたいんだけど」

俺がそう言うと、黒月さんは一呼吸置いてうなずいた。

「そうですよね。申し訳ありません。私の知ってる範囲の情報はとりあえずお伝えします。まず、紫様のご両親のお名前は仙崎信宏様と仙崎絵美様です。信宏様は次男でしたので絵美様の家に入られました。以前、私が、紫様のご両親には大恩があると言ったのを覚えていらっしゃいますか?」
「ああ。いずれその事について話してくれるって言ってたよね。確か東堂と付き合ってる事にしてもいいかって聞いた日に」
「ええ。それはこの仙崎信宏様と絵美様のことです。ありきたりの話で退屈させてしまうかもしれないですが、仙崎ご夫妻のお人柄を私から伝えるためには仕方がないですので、少しお付き合いください」

黒月さんは、そう言って話し始めた。

幼い頃の黒月さんは、ネグレクトで育ったらしい。
小学校高学年くらいにまで、なんとか給食だけで生き延びていた。
けれど、服も洗濯できず常にボロボロの服を着ていた黒月さんはいじめられ、服だけではなく体もボロボロになった。
生きていることに希望を見出せず、いっそ死んでしまおうかと思ってトボトボと海に向かって歩いていたところ、夫婦でバーベキューをしている俺の両親に出会ったそうだ。

「お二人は、異臭を放っていただろう私を嫌がらず、自分たちのところに呼び寄せました。そして、あれを食べろ、これを食べろと次々と食べさせてもらいました。それらは全て初めて食べるものばかりでしたが、今でも忘れる事が出来ないほど美味しく感じました。けれど、たくさん食べ慣れていない私はせっかく戴いたものを戻してしまったのです」

黒月さんは懐かしむようにどこか遠くを見ながら続けた。

「戻した後はお二人はかなり慌てて謝りながら病院に連れて行ってくれました。お二人とも私を心配しながら呼びかけてくれて、そんな風に誰かに心配してもらったのは初めてで、私は覚えている中でその時初めて泣きました」

今まで殺そうとしていた感情が一気に溢れたんだと思いますと、黒月さんは笑った。
黒月さんが子供の頃、こんなに大変な思いをしていたなんて知らなかった。

「大声で泣く私を、お二人は優しく待ってくれ、私の話を聞いてくださいました。そして、最終的には私を引き取ってくださったのです」
「え!? それって」
「ええ。私は、仙崎ご夫妻の義理の息子。あなたの義理の兄なのですよ。黒月は元の姓です」

俺は相当な衝撃が走った。

「じゃ、じゃあ、柊グループを継ぐのはそのまま黒月さんで良いんじゃないの」
「いえ。仙崎ご夫妻は、紫様か、誠様、どちらか優秀な方をとおっしゃっておりました。ですから、私は乗っ取りなどの変な憶測をされないよう黒月の苗字を名乗っているのです。柊グループの幹部は古くからいるため、あまり意味はないですが」
「なんで……なんで俺の両親は黒月さんを選ばなかったんだよ」

そう言うと、黒月さんは微笑んだ。

「それも仙崎様の優しさです。当時の私は、教師になることが夢でしたから、その意思を汲んでくださったのです」
「……そっか。黒月さんは先生になるのが夢だったのか」
「はい」

黒月さんは社長の仕事もしていたから、休憩時間はあんなに忙しそうだったのか。
それなら、教師をしている今は夢が叶っていると言うことか。

「俺、継ぐよ。社長になる。誠にやらせたらせっかく両親が残してくれた会社を1年で潰されかねないし」

このままじゃ黒月さんが過労死してしまうかもしれないし。

「そうですか。分かりました」

黒月さんは本当に嬉しそうに笑った。
恩人の息子が、恩人の会社を継ぐのが心底嬉しそうだ。

黒月さんは、愛されず過酷な生活をしていたから、家族から冷遇される俺を幼い頃の自分と重ねて優しくしてくれていたのかもしれないと気がついた。
それにもしかしたら、黒月さんは俺を恩人の息子として、義理の弟として愛しているのかもしれない。
だから、嫉妬はするけど欲情はしないのかもな。また、黒月さんの涼しげな顔を思い出してツキリと心臓が痛くなった。
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