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 無事オープンをしたおでん屋「貴族」は繁盛していた。
 初めの内は物珍しさからやって来る客が多かったが、
 実際におでんを食べてみればそのおいしさに驚き、
 そのギャップの効果もあってか人はどんどん増えて行った。
 
 
 繁盛が続き、人の出入りが多くなると当然おかしな客も出てくる訳で……
 
 
「なんや姉ちゃん、そんなひらひらな服着て、七五三かいな! 」


「姉ちゃん。こっち来て、酌してくれ! 」


「もっとセクシーな衣装はないんか? 」


 なんて勘違いしたお客がやってくる事もあったが、コンは気にする事などなく
 口の中に熱々のおでんを入れてあげて、対応していた。
 
 
 
 *****
 
 
 
「ここですよ、最近話題のお店」


「おでん屋? 」


「うまいって評判ですよ、ほら」

 
 安田がスマホでグルメサイトの口コミを見せて来る。
 確かに評価は高いようだが、そう言うのは信じていない私はさっそく店に入る
 中に入ると出汁のいい匂いがした。
 
 
「二名様ですか? 」


「はい、カウンターでお願いします」


 私はやって来た店員の服装を見てギョッとした。
 真っ赤でヒラヒラしたドレスを着ているではないか!
 それを見て私は眉をひそめる。
 
 
「おい、本当に大丈夫なのかこの店? 」


 席に着くなり安田に耳打ちするが
 
 
「大丈夫っすよ、変な店じゃないっすから」


「そうなのか? ドレスだろ? 」


「あれも売りなんですよ、この店の。すいませーん、お任せで」


 安田が勝手に注文をすましてしまい、仕方なく私はおでんを食す。


「ううん、うまいな」


 思わず声が漏れてしまったが、本当にうまかった。店員の服が奇抜ではあるが、
 その他はちゃんとした店構えではあるし、これなら評判がいいのもうなずける。
 
 
「あれ、こんにゃく食わないんすか? 」


「ああ、こんにゃくは破棄だな」


 そう言った後の記憶が私にはない。
 
 
 







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