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しおりを挟むその日もいつものように、仕込みをして開店の準備をしていたコンは
いつものように丁寧に仕込みをこなす。
味がよくしみこむように大根に切り込みをいれたり、イモ類も下茹でして
茹でた卵の殻向きをしたり、練りものの油抜きをしたりしていく。
「いつもご苦労さんね、コンちゃん」
「あ、女将さん。おはようございます」
女将さんに声をかけられて挨拶するコンは今日も忙しくなりそうだと思った。
*****
「二名様ですか? 」
コンはいつものように接客するが、客があまりいい印象をもっていない事は
表情ですぐに分かった。
でもこれはいつもの事なので、何も問題はない。
おでんさえ食べればみんな満足して帰って行くのだから。
だからコンは客をカウンター席に案内して、注文を取った。
客は満足そうにおでんを食べていた。
ただ「こんにゃくは破棄だな」と言うまでは……
「こんにゃく破棄だと? ふざけんなよコイツ! 」
コンは客のその行動が許せなかった。
「こんにゃくって臭くないか? 」
そしてその言動がコンをブチ切れさした。
こんにゃくはちゃんと塩をまぶして五分おき、臭みのもとを取り除いて下茹でし
味がしみこむように切り込みを入れていたのである。
食べもしないでコイツは一体何が分かるというのか。
気づいたらコンはお客をぶん殴っていた。
「こんにゃくを破棄するような奴ははんぺんでも食っておけ! 」
コンのその叫びはお客にはもう聞こえてはいなかった。
「コン! 」
「女将さん、すみません。私、つい…… 」
「ええんやで」
こうして、おでん屋「貴族」は伝説となった。
終劇
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