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しおりを挟む俺は魔獣使いという職業である。
皆も知っていると思うが魔獣使いというのは魔獣を使役する者の事なのだが、
残念ながら俺は魔獣が苦手である。
それは言い過ぎだったかもしれない、嫌いだ。
だって気持ち悪いだろ? 一体何なんだよあの生き物達は。あんなものが可愛い
とか言っている奴はどうかしているとしか思えない。
だから俺は結局、未だに魔獣を召喚した事などないままだった。
魔獣を召喚した事がないのに魔獣使いという謎の肩書をもつ俺は、当然のように
冒険者達から馬鹿にされる訳である。
でもそれは仕方がないと思っていた。
だって彼らが言っている事は間違っていない訳だし、それに反論した所で俺が
魔獣を好きになる事なんてないのだから、放っておくのが一番だ。
こうして俺は独りで冒険者としてやっている。
まあ、自分一人くらいならどうにかやっていけるだけの稼ぎはあるのだ、贅沢
さえしなければ。
*****
その日も俺は一人で雑魚モンスターを狩る。
いつもの狩場でいつものようにモンスターを狩っていた俺の目の前に現れたのは
こんな所に居るはずのないモンスター「ドラグネス」
俺はどうにかして逃げようと走り回るも追い詰められてしまった。
『こんな所で死にたくない! 』
死を感じた俺はそう強く願った結果、俺は初めて魔獣を召喚してしまった。
俺に召喚された魔獣は一撃でドラグネスを倒してしまい、俺はその強さに自分の
身の危険を感じずにはいられなかった。
そしてその魔獣は俺に聞く
「お前が私を呼び出したのか? 」
「たぶん、そうだ」
俺は今の状況から考えて、おそらくそうなのだろうというしかなかった。
その召喚した魔獣は体中が真っ白な毛で覆われており、オオカミのような姿を
していた。
「ふん、そうか。では、我と契約するか? 」
その質問に俺は当然のようにノーを口にする。
「大丈夫です。もう、帰ってもらっていいので。本当、ありがとうございました。
助かりました。じゃあ」
俺はお礼を言ってその場から立ち去ろうとしていたら、魔獣が俺を呼び止めた。
「おい、ちょっと待て。どういう事だ? こういう時は契約するものだろう?
なのにどうしてお前は契約しないんだ? 」
だから俺は仕方なく話すのだ。自分が魔獣の事を嫌っていると。
「お前、なかなかはっきり言う奴だな。一体、魔獣の何が嫌なんだ? 」
「その毛がもじゃもじゃ生えている所とかですかね。不気味で気持ち悪いです」
俺ははっきり言ってやる。そうでもしないといつまでのこの魔獣と会話しないと
いけないからだ。さっさと消えてもらう為にも、こいつと一緒に居る意味がない
と分かってもらわないといけないからだ。
「成程な。じゃあこれならどうだ? 」
そういうと魔獣は人型へと姿を変えたのだ。
「お前、雌だったのか! 」
俺は驚く。
「まあそうだが、そんな事よりもどうだ、この姿ならいいだろ? 」
そう聞かれて、正直悪くないと思った。
その出る所は出て、締まるところは締まっている。そんな体に、顔はとても
美しい。理想的な美女だったからだ。
「おう。その姿ならまだ……」
「よし、じゃあ契約だ。契約しろ、我と」
結局俺は押し切られてしまった。
俺が魔獣使いになった瞬間だった。
*****
俺が冒険者ギルドへと戻ると、いつも俺を馬鹿にしている連中が目をひん剥いて
いるのが分かった。まあ、俺が美女を伴って現れたせいだろう。
「おい、アンタ。そんな奴と一緒にいるよりも俺達のパーティーに入らないか? 」
「黙れ、雑魚どもが! 臭い口を開くんじゃない!」
思っていたのと違った反応が返ってきて、あんぐりしている彼らをいつもの様に
スルーして俺は換金をする。今日はドラグネスを狩ったおかげで大分豪華な食事
が出来そうだ。
*****
飯を食って家に帰る。
豪華な食事が出来た事は出来たが、大食いだったせいですっからかんになって
しまった。まあ、これからはコイツが稼いでくれるのだろうと淡い期待をして
その日は眠った。
翌日、目が覚めた俺は横で魔獣が眠っている事に気が付く。
その大きな口から見える鋭い牙を見て俺は思った。
『魔獣が可愛いなんて言う奴らの気が知れない』
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