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菫川ヒイロ

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旅に出る

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 ガタガタと長閑な道を馬車がゆっくりと走っている。
 その豪華な外観からも中に乗っている者の地位が高い事は分かった。
 そして何よりも連なっている兵隊達が圧倒的であった。
 
 
 第一王子にとってそれはいい報せであった。
 妹が戦場へ向かったというのは何よりもうってつけだった。
 何故ならこれで妹を戦死という事で暗殺出来ると思ったからだ。
 
 
 別に妹など眼中には無かった。
 ただ他の兄弟と共闘される事だけが気がかりだった。
 一対一ならばどの兄弟にも勝てると思っていたが、ちょこまかと動かれると
 迷惑だ。これで目障りなハエが殺せるのであれば好機だった
 
 
「何も王子自ら動かれなくともよろしいのでは? 」


 ミルジャルが俺にそう進言してくるのは分かる。
 
 
「なに、最後くらい身内が見取ってやらないとな」


 妹の敵を取って帰って来る兄というのもなかなかいいアピールになるだろう
 国民には。民はそういう話が好きだからな、俺は話題を提供できて好感度も上が
 るという素晴らしい采配ではないか。これで一気に有利になると考えたら笑いが
 止まらない。
 
 
「王子、報告が」


 進んでいた隊列がゆっくりと止まった。
 
 
「どうした? 」


 まだ戦場には程遠い場所である。
 こんな所で止まるなどあり得ない。妹に何かがあったという事か?
 流石にあの部隊では弱すぎたのだろうか? まさか勝ったのか?
 それならそれでここで殺ってしまってもいいのだが。
 
 
「前方から不審な団体が歩いて来ているという事で取り敢えず確認が済むまで
 お待ちください。おそらく問題はないと思いますが……何だと! 」
 
 
 ピーピーピー
 
 
 笛の音が鳴り響く。敵である。
 一気に緊張感が高まり、全員が戦闘態勢に入る。
 だが一切心配はしていなかった。
 我が部隊が負けるなんて事があるはずもない。
 
 
 選りすぐりの精鋭部隊でやって来たのだ。
 そこらの寄せ集めとは訳が違うのだ。
 だから第一王子は悠然と馬車の中で横たわっていたのだ。
 その大きな体を横に出来る程の大きな馬車の中で考えるのは第二王子の事。
 
 
 おそらく一番面倒な相手である事は分かっている。
 兄弟であるからこそ分かるあの陰湿さは異常であった。
 良く言えばあれは才能と言っていいのだろうが、それにしては醜悪すぎる。
 あいつだけは確実に殺さなくてはならないと思いを巡らしている中、死んだ。
 
 
 第一王子は死んだ。
 第一王子の精鋭の部隊は死んだ。
 あまりにも簡単に、あまりにも綺麗に、消し炭になった。
 
 
 
 



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