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100%の男
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しおりを挟む「くそ! 」
フェブラは地面を殴った。
あと少しだったのだ。あと少しで倒す事が出来たのだ、100%の男を!
足りなかった。今の自分ではまだ届かない。
だからフェブラは修行する事にしたのだ。
ただ今までのように自分一人では限界だったので、教えを乞う事にした。
老師クーリハン。名の知れた武術家だった。
「どうしたフェブラ、もう音を上げたか? 」
クーリハンの稽古は過酷であった。
でもフェブラは決して諦めなかったのだ。
彼には夢があったのだ。
100%の男を倒し、賞金で家族に言い暮らしをさせる事が彼の夢だった。
彼は貧民街の生まれで、毎日食べる物をどうにか集めて暮らしていた。
それが普通の事だと思って暮らしていたが、どうやら違うという事を知った。
それは初めて貧民街からフェブラが出た日だった。
まるっきり違う街並み、そこにいる人達はみな血色がよくふくよかだった。
フェブラにとってその事は衝撃だった。
どうしてこうも違うのか?
彼らと自分の差が何なのかフェブラには分からない。
「何だ? 貧民街のガキが何を見ている、さっさと消えろ」
そう言うと男はフェブラに食べていたものを投げつけた。
どうしてそんな事をするのか、フェブラには分からなかったけど自分が馬鹿に
された事は分かった。
だから殴りかかった。
「食い物を粗末にするんじゃね! 」
ただフェブラは人を殴った事が無かったので、相手が動く事を想定しておらず
壁を殴ってしまった。
ドコ!!!
壁にはフェブラの拳の跡がくっきりと入る。
そしてそれを見た男は目を丸くしてフェブラを見ると「これで許してくれ」
とフェブラに銭を握らせて逃げて行った。
それがフェブラにとって初めて己の拳で稼いだ銭だった。
*****
どうやら外では格闘家というものがいて、そいつらは強さだけで生きている者
なのだそうだ。格闘家は戦い、勝つと銭が貰えるという。中には20万銭も稼ぐ
強者もいるという事も聞いた。
フェブラが拳を使って稼ぐ事が出来ると知ってから、それを生業とする事にした
のはすぐだった。とは言えフェブラは人を殴るのが苦手だった為にすぐにボコボコ
にされる日々が続く。
それでもフェブラは日に日に学び強くなった。
そこそこ稼げるようになった時に知ったのが100%の男の話だった。
何でもそいつを倒せばとてつもない額の銭がもらえるのだそうだ。
それを聞いたフェブラは当然、そいつに挑んだ。
最近は自分でも強くなったと思っていたフェブラだったが100%の男に勝つ事
は出来なかった。
その男は常に100%なのだという。
100%、それはフェブラにはあと少しの差だった。
だからフェブラは悔しくて地面を殴った。
「くそ! 」
*****
「おや、また来たのですか? 」
門の前に居る男に言われてもフェブラは気にしない。
「開けろ! 」
フェブラには自信があった。
老師の元で修行した事で前よりも強くなれたと知っている。
前はあと少しだった。
今なら?
勝てるに決まっている。
だってフェブラは前よりも強くなっているのだから。
そして戦いが始まる。
*****
「くそ! 」
フェブラはまた地面を叩いた。
あと少しだった。あと少しだったのに勝てなかった。
どうしてだ? どうして勝てない?
前よりも強くなったはずなのに、どうして勝てないんだ!
フェブラはまた老師の元へ行き教えを乞い、また挑んではあと少しの所で勝つ
事が出来ないという事を何度が続けているうちにそろそろ自分の銭が無くなり
そうな事に気付く。
老師に教えを乞うには銭が必要だったからだ。
決して安くない銭を老師には渡している。100%の男に勝つ為とはいえ、もう
限界も近い。
「どうでしたか? 」
門の前に居る男に聞かれたフェブラは無視しようとも思ったが、答えた。
「もう少しだった」
「それはそれは、毎回惜しいですね。もう200%になるかもしれませんね」
「何を言っている。アイツは100%の男だ。常に100%に決まっているだろ」
「貴方は何%ですか? 」
意味の分からない会話を止めた。
*****
フェブラはまたやって来た。
「また、来たのですか? 」
「ああ。でも今回はお前に聞きたい事がある」
「何でしょうか? 」
「100%って何だ? 何処が基準だ? 何をもって100%だ? どうして毎回
俺はあと少しの所まで行ける? 修行して来たのにだぞ? 」
「良い質問ですね? そこに気付けたのならもう大丈夫でしょう。彼の100%は
貴方を基準にしているのです。ですから貴方がいくら修行しようともずっとあと
少しですよ? 」
*****
「どうした、もう音を上げたのか? 」
フェブラは言います。
「まだまだ。あと少しなんだ、あと少しで俺はアイツに…… 」
フェブラは修行を終えると銭を貰う。
最近は前よりも稼ぐ事が出来るようになった。
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