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どうやら転生したようです
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しおりを挟む「ねえあんた、最近変じゃない? 何かあったの? 」
ミリキリにそんな事を聞かれた俺は少し考えてから言った。
「なんかさ、もういいかなって」
「はあ? あんたそれ本気で言っているの? 」
彼女が睨みつけて来るが、俺はただ頷く。
「あんたが言い出した事なのよ! それなのに、信じられない! 」
パンッと頬を打たれた俺はそれはそうだろうなと納得してしまった。
「何よあんた! いつからそんな意気地なしになったのよ! もういい。
あんたなんかもう知らない! 」
去って行くミリキリの目には涙が浮かんでいた。
でも俺は悪い事をしたなん1ミリも思っていなかった。
だってそうだろ?
俺が勇者になんてなれる訳がないんだから。
*****
「ただいま」
「お帰りってあんたどうしたの? 」
母親が俺の顔を見て言う。
「何でもないよ」
「そうなの。でも謝るなら早い方がいいわよ! 」
母親のそんな御節介を聞きながら自分の部屋に入ると、そこにはミカリガが俺の
ベットの上に寝転がっていた。
「まだ居たのか」
「居たよ~。うわ、痛そう~ 」
相変わらず返事が軽い。
「で、どうするんだよ? 準備は済んだんだろ? 」
本当、口の利き方ってものがあるとは思うが……まあいい。
「嗚呼。今夜にする」
「それはそれは。じゃあ俺ももうここに居る意味はないか。またね~」
ミカリガは言いながら煙の様に姿を消した。
*****
その日の夜はとてもいい夜だった。
星がこんなにも瞬いているのは俺の出発を歓迎しているようだ。
トントン
両親の部屋をノックする。
「どうしたこんな夜更けに、それにお前…… 」
「すいません、こんな夜更けに。でもまあ許して下さい、子供の最後の我が儘だと
思って」
そう言った後に言葉は何も帰って来なかった。
両親だった者の首はあるべき場所にはもう無かったからだ。
「ふむ、思っていたよりも俺はナイーブなようだ」
自分の気持ちを分析する。
ただそんな感傷もすぐに消えてしまった。
仕方がない、俺は自分が転生者だという事に気付いてしまったのだから。
きっかけはミカリガだった。
奴は俺が初めて出会った魔族である。
俺は初めてミカリガに出会った瞬間、コイツが魔族だという事に気付き、
すぐにぶん殴った。それは当然の行動だった、俺は自分が勇者になると信じて
疑っていなかったからだ。
「うぎゃ! あんたなんて事をするんだ! 同族だろうに」
「何を言っている! 俺が同族だと? 俺がお前ら魔族と同じと言う意味か! 」
「うがぁ! そうだよ、だから殴るのは止めてくれって、うぎゃ! 」
ふざけた事をいうミカリガをもう一度殴るが反撃にあった。
「止めろって言っるだろうが! あ、やべ」
俺はぶっ飛ばされ、その時の衝撃で自分が転生者だった事に気が付いた。
「おい、生きているか? 大丈夫だよな? 」
「思い出した! 」
「何を? 」
「魔族だって事をだよ。嗚呼、そうだ。俺はこんな所で何をしているんだ? 」
「さあ? 俺は知らないが、まあ思い出せてよかったな! じゃあ俺はこれで」
「おい、ちょっと待て」
そのまま立ち去ろうとしたミカリガを俺は呼び止める。
「何だよ、俺も忙しいんだよ! 」
「気にするな、そんな事より俺に教えろ」
「何を? 」
「今の魔族についてだ」
そして俺は今の魔族の近況を聞いた。
どうやらあまり昔とは変わっていないようだった。
それならそれで一向に構わない。
そして今夜、俺は帰る事にしたのだ。
自分が居るべき場所、魔王ベルニナルドが居るべき場所に。
「あれ、魔王城ってどっちだったけ? 」
それを思い出したのは三日後の晩だった。
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