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菫川ヒイロ

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フィリップ・コンコルドを知っているか?

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「貴方との婚約、破棄させてもらいますわ! 」


 その言葉を聞いた時、俺はまたかと思った。
 そしてまた始まる、どうでもいい理由がつらつらと話すこの光景。
 流石にもう慣れてしまった俺はもはや別の事を考えだしていた。
 
 
 これで3回目となる婚約破棄に俺はうんざりしていた。
 一体どうなっている? こんな事が連続で続く事があり得るのだろうか?
 どれくらいの確率だ? 俺はそこまでついていない奴だっただろうか?
 
 
 俺は少しばかり昔へ思いを馳せる。
 どう考えても俺の人生は何一つとしてブレる事無く王道を進んで来た。
 だというのに何だこれは! おかしいだろ! だって俺はこの国の王子だぞ?
 
 
 そんな事をずっと考えているとそろそろ話が終わりに差し掛かっていた。
 
 
「ですから、私の運命の人、フィリップ・コンコルドと一緒になる事にしました」


 そう言って席を立った女に俺はもう興味は無くなっていた。
 『フィリップ・コンコルド』その名前がひっかかったからだ。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「おい、フィリップ・コンコルドを知っているか? 」


 俺は執事に聞いてみるが首を傾げられた。
 
 
「分かった。じゃあ今すぐ素性を調べろ! 」


 何処かで聞いたようなその名前。なかなか思い出せずにイライラする。
 
 
「一体、何処のどいつだ? 何処かで聞いた名だったはず……確か、あ! 」


 ようやく思い出した。前回もそう言っていたではないか!
 
 
「俺から婚約者を奪った奴だ、3回も! 」


 
 
 *****
 
 
 
 
「フィリップ。私、婚約破棄して来たわ! 」


 そう言って部屋に入って来た女を俺は抱きしめる。
 
 
「そうか、よくやったぞ! 」


 そして、女を寝かしつけると俺は写真に話しかけた。
 
 
「お前の無念は兄ちゃんが必ず晴らしてやるからな! 」


 妹はまだ16歳だった。
 これから楽しい人生が待っているはずの妹が突然死んだ。
 自殺だった。
 
 
 俺は妹がそんな事をするなんてどうしても思えずに、いろいろと調べて回った。
 あまりいい顔はされなかったし、いろいろ罵倒されたりもしたがそんなもの、
 妹の事を考えればなんて事はない。
 
 
 そして、少しずつ情報を集めていった結果分かった事は、妹はあの糞王子に
 弄ばれたという事だった。
 
 
 こんな事が許されていいのだろうか?
 彼奴には婚約者も居て、なのに、妹がどうしてこんな目に……
 俺はどうにかして復讐をしてやろうと考えたが、相手は王族。
 
 
 ただの一般人にはどうする事も出来なかった。
 でもそんな俺に神様はギフトをくれた。
 『魅了』という能力を俺に授けてくれたのだ!


 そして俺は『魅了』を使って糞王子の婚約者を奪ってやった。
 
 
「妹の苦しみはこの程度じゃないぞ、糞王子! 」


 俺の復讐は終わらない。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「王子、調べてみましたがフィリップ・コンコルドという人物を知っている者は
 一人も居ませんでした」
 
 
 執事が私に報告する。
 
 
「居ない? 」


「はい、おそらく偽名なのではないでしょうか? 」


 どういうつもりでその名を騙っているのかは知らないが、


「偽名ね、姑息な奴だな。まあいい、それで私の次の婚約者は決まったのか? 」


 私はさっそく次の相手を聞く。
 
 
「はい、明日に王宮にいらっしゃるとの事です」



「そうか、それで相手は誰だ? 」


「お名前の方はフィリップ・コンコルド様です」


「はあ? 何故その名前が出る」


 意味が分からず俺が聞けば執事は首を傾げた。
 首を傾げたいのはこっちだ、執事は呆けてしまったのか?
 
 
「ああ、そうでした王子。私、ここを辞める事になりましたのでご報告を」


「随分急だな。何かあったのか? 」


 そう聞いてみるが、確かに最近の執事の仕事に少しばかりの違和感を感じていた
 ので、そういう事なのだろうか? だとしたらまあ、盛大に送り出してやろうと
 は思う。
 
 
「はい、私、フィリップ・コンコルド様の元で働かせていただく事になりました
 ので。それでは失礼させて頂きます」
 
 
「おい、ちょっと待て! どういう事だ! おい、誰か来い! どうなっている
 んだ! 誰か? 誰かいないのか? 」
 
 
 俺は王宮の中を歩き周るが、誰もいない。
 何だこれは、一体どうなっているんだ? どうして誰もいない? 
 ここは何処だ? 俺は何をしているんだ?
 
 
 俺は結局一睡もせずに朝を迎えた。
 
 
 ギギギギ
 
 
 扉がゆっくりと開く。
 
 
「お前は一体誰だ? 」


「私はフィリップ・コンコルドだが? 」

 
 俺はその名を聞いて、そいつへ斬りかかった。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「王子よ、王子が来たわ! 」
「まさかこんな事になるなんてね。この国はどうなるのかしら」
「謀反でしょ? 王宮に居た人も大分居なくなったらしいわ」
「でも、これで大丈夫でしょ? 」


 周りに集まった国民たちがざわついている中で、俺は断首台の上からそれを
 見ていた。どうしてこんな事になったのか? どうして俺は国王に斬りかかった
 のか? そうだフィリップ・コンコルドが来たからだ。 だから俺は斬ろうと
 したのに…… どうなっている? 一体誰なんだフィリップ・コンコルドとは?
 
 
「おい、お前。フィリップ・コンコルドを知っているか? 」


 俺が執行人に聞けば
 
 
「嗚呼、俺がフィリップ・コンコルドだ」

 
 刃が振り下ろされた。
 
 
 
 





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