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しおりを挟む僕にとってそれは初めての女子だった。
父さんから「お前の婚約者だ」との説明を受けた時はそれがどういう意味なのか
を理解するのに暫しの時間を要した事を覚えている。
婚約者ってこうやって決まるものだと納得したようなしないような、そんな
どっちつかずな気持ちも彼女を目の前にすればすぐに吹き飛んだ。
『か、可愛ええ~』
一目見た時にはもう僕の心は鷲掴みされていたのだ。
こんな子が僕の婚約者、お嫁さんになってくれるのだと思ったらもう有頂天、
この世の春が到来したようだった。
だから僕は必死だったのだ。
そんな彼女に嫌われないないように、彼女に相応しい男に成るべく努力した。
詰め込めるだけの情報を頭に詰め込んで初めてのデートに挑んだ。
リサーチを元に組んだデートプラン。
自分で思っていたよりも上手く進まないので、パニックになった僕に彼女が
笑いかけてくれただけで全てどうでもいいと思えてしまった。
そう、彼女が笑顔になってくれるだけで、それだけでよかった。
だからその為だけに行動したのだが、結果的にそれは間違っていたのだろう。
「婚約を破棄させて下さい、お願いします」
彼女からそう言われた。
お願いされてしまった。
僕は間違っていたのだ。
嗚呼、どうしてだろう。どうしてこんなにも僕はダメな奴なのだろう。
そんな言葉ばかりが僕の頭の中をぐるぐると回り始めていた。
ドンッ!
突然部屋のドアが開く。
それだけで僕は誰が来たのかが分かってしまう。
「姉ちゃん……」
昔からこの人はこうだった。
嵐のようにやって来て、僕を困らせるのだ。
「婚約破棄されたらしいな」
そんな姉ちゃんの言葉に僕は嫌な予感しかしなかった。
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