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旅立つとき
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しおりを挟む私は静かに暮らしたい。
それをスローライフだとか世間では言うらしいが、そんな言葉遊びになど興味は
なく、寧ろ虫唾が走るくらいだ。
そんなものに憧れているような奴らはきっと××××で××××で××××なの
だろう。きっとそうだ、そうに決まっている!
*****
私はひっそりと山の奥で暮らしている。
それは当然、静かに暮らしたいからなのだがそう簡単に出来るものではないし、
慣れるまでにはいろいろとあった。
でもそれを乗り越えて暮らしている。
それが苦だとは決して思えない、それよりも街中に居る方が私にとっては苦行
だったから。
私が漸く落ち着いて生活が出来るようになった頃、そいつはやって来た。
私の家よりも大分離れているのでそこまで気にはしなかったし、寧ろ私と同じ
考えの奴がこうして居るという事実に少しばかり親近感さえ持っていた。
ただ、まあ、挨拶なんて事は当然しない。
それはそうだろう。そういうのが嫌でここへやって来たのだから、お互いの距離
をきっちりと守らないと、干渉なんてすべきではないのだ。
異変に気付いたのはそれから数カ月たった頃だった。
明らかに山の雰囲気が変わった。
何が起こったのかは分からないので調査する事にした私。
そうして原因が分かった。
アイツだ! アイツが勝手に山の中を変化させていた。
自分が住みやすいように改良したのだろうが、それにも限度があると思う。
でもアイツにはそんな事は関係ないようだった。
だから仕方なしに私は声を掛けた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは! どうしたんですか? こんな所に」
それはこっちの台詞だとはさすがに言えない私。
「こんな所に珍しいものがあったのでちょっと来てみたんですけど」
「そうでしたか。いやあ何かと不便なんでね。いろいろと作っていたらこんな事に
なってしまって。どうですか。折角ですし、貴女も使ってみては? 」
「大丈夫です。こんな所に似つかわしくない物があったので来ただけですから」
私はさっさとその場を離れる事にした。
久々に人と話すのはかなり疲れる事だったが、話してみてわかった。
関わってはいけない奴だった。
だから私はもう放っておこうと決めた。
*****
それから一月も経たない内にまた変化があった。
匂いだ。
とにかく臭くて仕方が無い。
私はまた調べる事にした。
原因に予想はついてはいたがそれでも突き止めるまでは分からない、そう考えて
調べた結果は予想通りだった。
アイツが動物を飼い出したのだ。
それもどこから連れて来たのか見たこともない動物が沢山いた。
それらの獣臭が風下の私の所へと来ていたのだ。
「あれ? どうしました? 前も来ましたよね? 」
「あのそれは一体? 」
「ああこれは私が召喚したんですよ。いいでしょ? とっても可愛くて癒されるん
です。貴女もどうですか? 」
私にまた勧めてくるこいつはどういうつもりでここへ来たのか?
そもそも私は動物が好きじゃない。山にいるからと言って動物が好きだなんて
誰が言った!
そもそも動物と戯れたいのなら家なんか建てずにそこら辺の洞窟で暮らせばいい
し、そんなに一人が嫌なら街で生活すればいい!
「私は貴方が嫌いです! 」
私はそう言って家へ帰るとさっそく身支度を始めた。
もうここには住めない。もっと静かな場所を求めて私は旅立つ。
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