ライト文芸倉庫

菫川ヒイロ

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景色

その一瞬の煌きの為に

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 今日もいつもの様に水汲みから始まる私の一日。
 竈に火を入れて朝食の準備を始める。
 何も変わらない日々の暮らしが今日も始まったのだ。
 
 
「おはようさん」


 師匠がいつものように挨拶しながら上座に腰を下ろし、朝食が始まる。
 ただ黙々と進んで行く食事の風景を私は眺める。
 
 
 師匠に弟子入りして3年目になる。
 ようやくここでの暮らしに慣れてきた私。
 入りたての頃はよく兄弟子に怒られたものだが、それも今はもうない。
 
 
 兄弟子達は師匠よりも早く食事を終わらせて待っている。
 それがここでの仕来たりである為だ。
 
 
「ふん。美味かった。ごっつおさん」


 師匠は食事を終えると手を合わせる。
 兄弟子達も師匠に続いて手を合わせると、すぐに移動を開始する。
 
 
「あ~、ちょっと話があるがあ」


 師匠の言葉に皆すぐに席に戻った。
 あまりある事では無いが、年に数回、こういう事がある。
 
 
「本日、わしゃあ最後にしようおもお。んだらば、準備をたのんます」


 師匠の言葉にみんなが黙り込む。
 
 
「師匠、ご苦労さまです」


「ご苦労さまです」


 一番弟子のシリフさんが床に頭をつければ、他の兄弟子達も頭を着ける。
 そして私も頭を着けた。
 
 
「んじゃあ、たのんます。だば」


 師匠が行ってしまった後はみんな大慌てで準備を始めた。
 
 
 
 
 *****
 
 
 
 
「テン。おめえが来てからの飯はうめかったぞ。これからも、丁寧に生きいよ」


 台座へとつく前に師匠が私に声をかけてくれた。
 
 
「はい」


 私はそう返事をするので精一杯だった。
 涙が溢れ出るのを止められなかったからだ。
 
 
 師匠は台座へ一歩ずつ進む度に弟子達に声をかけていき、兄弟子達は皆、私と
 同じように涙した。
 
 
 台座に辿り着いた師匠はゆっくりと腰を下ろし、天を見上げてから祝詞を口に
 する。
 
 
 その一音、一音が師匠の人生だった。
 
 
 そして青く光り、弾ける。
 
 
 それが師匠の最後。
 
 
 私達が求めたもの。
 
 
 その一瞬の煌きの為に私達は生きている。
 
 
 
 



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