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景色
化けの皮
しおりを挟む私が教師になった理由。
子供が好きだからとか? お世話になった恩師に憧れてとか?
そんなものなど何もなく、ただ楽そうだったから。
公務員だし、食いっぱぐれもない。夏休みだってあるし、私でもなれそうだった
から。その程度のもので、結果なれてしまったのだから、私の考えは間違って
いなかったという事なのだろう。
実際、なってみればそんな甘ったれた考えなんてすぐに吹き飛んでしまった。
思いのほか面倒だ。もっとよく考えればよかったなんて思っても後の祭り。
それでも私はそれなりにうまくやって来たと思う。
昔からうまくやる事は得意だった。
だからこの生活にもすぐに慣れたし、どうすればいいのかもすぐにわかった。
要は生徒の中の中心人物に取り入ればいいだけだった。
結局の所、今までやって来た事と何の違いもない。
所詮は多数の方に良くしてやれば、少数の意見など無視しても何も問題はない。
後は勝手に自分達でどうにかするのだからほっとけばいい。
私は理解のある先生として認識されさえすればいいのである。
*****
「君、そういうのは良くないよ! 減点ね」
私はいつも通り少数の子をやり玉に上げたつもりだった。
「何でだよ! 俺じゃないだろ! 」
思っていたよりも反抗して来たので、私も強く出た。
こういう時はしっかり自分の立場を認識させなくてはならない。
「何、その態度! ちゃんと反省しなさい! 減点よ! 」
私はそれが間違いだと分かったのはしばらくしてからだった。
*****
「おはよう! 」
私が挨拶をすればいつも返って来たはずの返事が返ってこなかった。
最初は聞こえていないのかと思っていたが、違っていた。
無視されていたのだ。
「どうしたのみんな、疲れてるのかな? 」
いつも通りの授業のはずが、重苦しい空気に私は怖くなる。
何かがおかしいとようやく気付いた頃にはもう遅かった。
私の評価は地に落ちていた。
どうにかしようとすればするほど空回りして、今まで私が築いて来たものは
崩れ去っていた。
どうしてこうなった? 何処で間違えた?
「ねえ、私、あなたに何かしたかな? 」
私は思い切って聞いてみた、クラスの中心人物に。
「何? 急に」
「私、何かやっちゃったかな~って。知らないうちにそういう事してたりする事
ってあるじゃなない? ほら、私って天然だし? 」
「何それ、マジ引くわ~。 ほんと、先生って上辺だけで薄っぺらいよね。
だいたいさ、謝るんなら私じゃないっしょ? 」
「え、そうなの? ごめん、わからなくって。教えてくれる? 」
私は顔を引きつらせながらも聞いた。
「はあ~、木崎だよ。もう遅いけどね」
そういうとさっさと行ってしまう。
そして取り残された私はその名前を聞いても顔が浮かばなかった。
私はすぐに生徒のデータベースで木崎を検索する。
そして出て来た生徒は私が減点した生徒だった。
このぱっとしない見た目の生徒。明らかに少数派に属すであろうこの子が
中心人物だった。
でも私にはまったく理解できなかった。
どしてこの子が中心人物になりえるのかが、どこからどう見てもそんなタイプに
は見えないのだ。
分からない、分からない。私にはもう何も分からない。
結局私は何も出来ないまま。
彼が卒業するまで私の評価は変わる事なく終わった。
そして今も変わらいままでいる。
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