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しおりを挟む「私はこの世界の住人だ。お前の様な奴はこの世界には要らない、さっさと出て行
くがいい」
この世界の住人だというその男はそう言い放つ。
「おい、アンタはどうして俺達がここへ来たのか知っているのか? 」
「ん? 何だ、そんな事も分からないのか? まあお前はここの住人になれると
思うから心配しなくてもいい」
俺が? どうしてそんな事が分かるのか、アキラ少年と俺の何が違うというのだ
ろうか? さっぱり分からない。大体、俺はこんな所の住人になりたくなんてな
いのだが、こいつはどういうつもりでそんな事を言っている? 俺をここから出
さないつもりなのだろうか?
いろいろ考えた所で答えなんて出て来る訳もなく俺は少年と一緒にここを出る事
にした。少年が帰れるのであれば俺も一緒にここから出る事が出来るはずだ。
「おい、アキラ。帰るぞ! 今なら帰れるらしいからさっさと帰ろう」
そう言って少年と帰る事にした俺は少年を歩かせた。まずは分からなくなるまで
歩いてもらう、そこからどうすればいいのかを考えようと思いながら歩いて行く
俺達は無事に少年の家に着いてしまった。
「あ、着きました。本当に着きましたよ! は、やったー!!! 」
少年らしく喜ぶ姿を見ていた俺はその一軒家を眺める。よくある感じの建売の
一軒家からはここが何処なのかはよく分からないが、まあ見た事はあるので
多分帰れなくはないはずだ。そう思っていたのに、
「あれ、お兄さん? 」
俺はここから出られない。
見えているのに、そこに確かにアキラ少年が居るのに、彼からは俺が見えていな
いのだ。
なんだこれ。
どうして俺は出られない?
それは恐怖。
そして俺の声がただ響き渡った。
「やっぱりそうだっただろ? お前はこちら側だ」
そして男が現れる。
「お前も私と同じなんだよ。帰りたくなんてないんだろ? あんな少しも理解する
事をしない奴らの世界になんて帰りたくはないに決まっている。あいつら結局は
自分達のルールを強制する事しか頭にないんだ。そのルールが無理だったから私
は40になっても働く事が出来ないのに、職業訓練所に行ったらやる事は強制的
にルールを覚えさす事で、あそこはただの洗脳場だったよ。それが正しい事だと
思わせるのはそれが自分達にとって有利だから。簡単な事だ、あいつらは自分達
の思い通りに動く生き物が欲しいだけなんだ」
「何の話をしているんだ? 俺はそんな事なんかどうでもいいんだ! それよりも
ここから出たいだけなんだ。ルールだとかそんな事、とっくの昔に諦めたさ。
他人に期待なんてする程俺は馬鹿じゃない! 俺は帰るんだ! 」
すると目の前が急に明るくなった。
「そうか、帰るのか。まあいいさ、今は帰ればいい。いずれ分かる時が来るんだ
お前にも、その時はお前はもうここの住人だ」
そんな事にはならない、そう思っていた。
だから必死に頑張ったんだ。でも無理をしていたのは確かで、無理はいつか必ず
限界が来るのである。ずっとあの男の言う事を否定して生きてきたのに、最近は
理解出来てしまう。ダメだと思ってみても現実は何も変わりはしない。
そして俺は40歳になった。
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