ホラー倉庫

菫川ヒイロ

文字の大きさ
3 / 31
カラフル

しおりを挟む





 遊園地、それは人に夢を与える場所なのだそうだ。
 でもシノハラにとって今は夢を奪う場所になっている。
 人知れずゆる~く生きて行く事を目標にしていた彼の夢が今、終わりそうになっ
 ているからである。


「万策尽きたな」


 一気に予算をつぎ込んだのでもうやる事がなくなってしまった。
 後はまあ自力で何とかするしかないのだろうが、何か妙案がある訳でもないのだ。
 自分にそんな力があるなんてそもそも思ってはいないが、そう簡単に諦める事も
 出来ないでいた。
 
 
 最後に悪あがきでもしてみようかと思いながら酒を片手に歩く帰り道、
 生ぬるい風が吹いていた。よく見れば真ん丸のお月様が赤く染まっているでは
 ないか。いや、あれは火星かもしれないななんて歩いていたら声をかけられた。
 
 
「こんばんわ」


 そこにはすらっと髪の長い女が立っていたが、シノハラは当然のように無視を
 する。自分に話しかけてくるような奴がいる訳がないと常々思っていたので、
 シノハラは立ち止まらずに歩く。
 
 
「あ、あの、お兄さん? こんばんわ」


 シノハラはそれでも無視をする。面倒事に関わりたくはないでこういう時は無視
 をするのが一番いいのだと知っていた。向こうも暇ではないのだろうから他の人
 を見つける方がいいと思い直すのが大体のパターンである。
 
 
「ちょっと? あの、こんばんわ! ねえ、聞こえてないの? 」


 でも今回は諦めずについて来た。
 たまにいるのだ、こういう諦めが悪い奴が。
 だから仕方なくシノハラ振り返った。
 
 
「何? 」


「えっ! ああ、やっぱり聞こえているんじゃない! あ、違った、こんばんわ!」


 女は慌てながらも初めの時のようにそう言った。
 そしてしばらくそのまま時間が過ぎて行く。
 女はその長い髪の奥でどうすればいいのか、戸惑っている様子だったがシノハラ
 にはそんな事は知った事ではないのでぐびっと酒を呷る。
 
 
「お一人ですか? 私とご一緒しませんか? 」


「間に合っているので大丈夫です」


 そう言ってシノハラは断ってからまた歩き出す。
 誘いになど乗る訳がないのだ、だってこの後の事なんて分かり切っているから。
 ふらふらとついて来た男を驚かす事が彼女の目的であり、存在理由だという事を
 シノハラは知っている。
 
 
 だってそれが幽霊というものだから。
 
 








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...