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カラフル
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しおりを挟む遊園地、それは人に夢を与える場所なのだそうだ。
でもシノハラにとって今は夢を奪う場所になっている。
人知れずゆる~く生きて行く事を目標にしていた彼の夢が今、終わりそうになっ
ているからである。
「万策尽きたな」
一気に予算をつぎ込んだのでもうやる事がなくなってしまった。
後はまあ自力で何とかするしかないのだろうが、何か妙案がある訳でもないのだ。
自分にそんな力があるなんてそもそも思ってはいないが、そう簡単に諦める事も
出来ないでいた。
最後に悪あがきでもしてみようかと思いながら酒を片手に歩く帰り道、
生ぬるい風が吹いていた。よく見れば真ん丸のお月様が赤く染まっているでは
ないか。いや、あれは火星かもしれないななんて歩いていたら声をかけられた。
「こんばんわ」
そこにはすらっと髪の長い女が立っていたが、シノハラは当然のように無視を
する。自分に話しかけてくるような奴がいる訳がないと常々思っていたので、
シノハラは立ち止まらずに歩く。
「あ、あの、お兄さん? こんばんわ」
シノハラはそれでも無視をする。面倒事に関わりたくはないでこういう時は無視
をするのが一番いいのだと知っていた。向こうも暇ではないのだろうから他の人
を見つける方がいいと思い直すのが大体のパターンである。
「ちょっと? あの、こんばんわ! ねえ、聞こえてないの? 」
でも今回は諦めずについて来た。
たまにいるのだ、こういう諦めが悪い奴が。
だから仕方なくシノハラ振り返った。
「何? 」
「えっ! ああ、やっぱり聞こえているんじゃない! あ、違った、こんばんわ!」
女は慌てながらも初めの時のようにそう言った。
そしてしばらくそのまま時間が過ぎて行く。
女はその長い髪の奥でどうすればいいのか、戸惑っている様子だったがシノハラ
にはそんな事は知った事ではないのでぐびっと酒を呷る。
「お一人ですか? 私とご一緒しませんか? 」
「間に合っているので大丈夫です」
そう言ってシノハラは断ってからまた歩き出す。
誘いになど乗る訳がないのだ、だってこの後の事なんて分かり切っているから。
ふらふらとついて来た男を驚かす事が彼女の目的であり、存在理由だという事を
シノハラは知っている。
だってそれが幽霊というものだから。
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